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その独特の感性と才能で優れた舞台を生み出し続けている荻田浩一演出・脚本による、O-Parts公演 コメディプレイ『リビング』が3月2日から赤坂RED/THEATERで上演される。
物語は、家庭の集まるリビングを舞台にしたワンシチュエーションコメディ。赤坂RED/THEATERならではの客席と舞台が一体化する濃密な空間で、家族の時間を荻田ワールドがどう描き出すのかに、期待と注目が集まっている。
そんな作品に出演する、元宝塚雪組トップ娘役舞羽美海が、作品のこと、役柄のこと、また宝塚時代から縁のあった荻田ワールドについて、また女優として充実した時間を過ごしている現在などを語ってくれた。
 
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通じるところがあって、理解できる「シズカ」

──まずこの『リビング』という作品について教えてください。
元々引きこもり気味だった主人公の少年「マタロウ」君が、あることをきっかけに完全な引きこもりになってしまったのを、色々な人たちが励まし、関わることによって、新しい1歩を踏み出すまでが、リビングの1室で描かれてゆきます。転換も全くなくて、とにかくそのリビングの中で、様々なドラマが繰り広げられていくんです。装置などもシンプルに作られているので、お客様からご覧になった景色は全く変わりませんから、すべては役者次第というところがあって、他の情報がない分、役者の細かい芝居までを観て頂けるのではないかと思います。
──舞羽さんが演じる役どころはどんなものなのですか?
私の役は「シズカ」ちゃんと言って、「マタロウ」君が好きで、彼に対して一生懸命にがんばるところが、ちょっとズレてもいるのですが、それは彼にだから見せられる面でもあるし、とにかく早く引きこもりから踏み出してほしいという一心のいじらしさなんですね。そうして彼を励ましているうちに、自分自身も自分らしく生きていくようになれる、本当の自分に向き合えるようにもなりますし、とにかく真剣に生きている女性です。作品がコメディですから、笑えるシーンもあるのですが、でも自分としてはあくまでも真剣に演じたいと思っています。
──真剣に演じる姿から生まれる可笑しみを大切にするということでしょうか?
そうですね。「シズカ」ちゃんはざっくり言うとオタク気質で、その血は私にも流れているので(笑)、私と共通するところがあるかもしれないなと。動きもちょっとうるさいのですが、私自身も先日この作品ではない現場で、自分としては普通にびっくりしただけだったのに、「アニメみたいな反応するね」と言われたことがあって(笑)。だから通じるところはありますし、稽古を進めて行くうちにどんどん楽しくなっています。今まではどこかにはじらいが残っていて、もっと行ききりたいのに、行ききれないというジレンマをずっと抱えていたのですが、今回はお稽古場でも全く恥ずかしくなくて。最初からポンと飛び込んでいくことができたので、楽なように思います。それは、これまでの経験を良い形で重ねられているからこそかもしれないです。
──では、ご自身としても新しい発見が?
はい。それから、今回の出演者が7人で、宝塚の上級生の方が1人いらっしゃるのですが、あとの皆さんはそれぞれが育ってきた分野が違うので、すごく色がカラフルなんです。ある意味むちゃくちゃで(笑)。でもそのむちゃくちゃな人たちが一生懸命にやると、それはそれは個性的で面白くて! 最初の本読みの時から皆さんのインスピレーションのすごさに、「私しっかりしないと消されちゃう!」と少し焦りが出たくらいでした。お稽古初日に本を頂いて全員初見だったのですけれど、にもかかわらずその段階から皆さんとても面白くて、勉強になります。コメディと言ってもそこは荻田(浩一)先生の作品なので、一筋縄ではいかないのですが、でも7人全員、お客様には最後に爽やかな気持ちで劇場を後にしてほしいと願っています。笑ってちょっとグッときて、でも楽しかったと思って帰って頂ける作品になると思います。
 
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自分の芝居の根底にある大切な言葉

──久しぶりの荻田浩一さんとのお仕事はいかがですか?
私は荻田先生の宝塚の退団作品だった『ソロモンの指輪』にも出演させて頂きましたから、それ以来ですね。最初に出して頂いたのは、私にとって初めて役を頂いた作品でもあった『凍てついた明日』(08年)です。当時研1から研2になる間で、最下級生で初めてのバウホールで、初めて役をいただいてというかたちだったので、相当にしごかれました。ダブルキャストでしたので、それも難しかったですし、振り返ると一番最初のキーポイントだったと思います。歌で怒られて、芝居で怒られて、相手役をしてくださった沙央くらまさんとも何回も何回もお稽古を繰り返して、引っ張って頂きましたし、ダブルキャストの透水さらささんとも一緒に悩んで悩んで、本当に濃い時間でした。
──入団して1年目でそれだけの経験ができるというのもなかなかないですよね。
そうなんです。しかも、私は宝塚に入っての夢が5つあったのですが、その1つが「荻田先生の作品に出る」ということだったので、それが叶ったことが何よりうれしかったです。「ヅカオタ」としての私のツボをどんどんついてくる大好きな演出家さんでしたから。それだけに退団されると聞いた時は衝撃でしたが、その退団作品にも出られたし、自分自身が退団してからも荻田先生の作品はよく観に行っていました。そこで先生にお会いする度に「是非出してください!」とお願いして、ずっとラブコールしていたので、3年経った今それが実現してとても幸せです。しかも、ショーではなくてお芝居ですから。私、今までお芝居で頂いたダメ出しの中で、一番強烈な記憶として残ったのが、荻田先生から言って頂いた「ダメをなぞろうとする芝居はやめなさい」ということなんです。それは今でも私の芯に残っている大切な言葉で、確かにダメだしされて直したものをなぞっていれば、芝居は安定するんですね。でもそこから先にいくとき、皆感情があってロボットではないから、気温が変化するように芝居も毎日変わっていく。そこに自分1人変わらないでいるわけにはいかないですよね。「ダメをなぞろうとする芝居はやめなさい」、それが今でも私の芝居の根底にあって、大切にしています。
──そういう出会いをされた荻田さんと、経験を積んだ今改めて作品作りをしていてどうですか?
8年も経ったんだねというお話をしたのですが、私まだこんなことも知らなかったんだと毎日思っています。荻田先生から言って頂くことが、「あぁそうか!」と思うことばかりで。こうしなさいとおっしゃる方ではないのですが、色々なアドヴァイスをくださるので、とりあえずまずそれをやってみると、自分がやりたいことと、それを客観的に観ている演出家さんからの見え方が一致することによって、スッキリするんですね。今までやってきたことも、こうすれば良かったんだなとクリアになったりもしています。また主演の栗山航さんが2回目の舞台作品だそうで、その栗山さんに荻田先生がおっしゃっているダメ出しを伺っていても、自分がちょっと忘れかけていたことを思い出させて頂けたりもするので、シンプルに取り組めています。本読みから本当に丁寧にやってくださる演出家さんなので、そういう方にまた良いタイミングでめぐり会えているので、荻田ワールドを満喫して充実しています。

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濃密な時間を経て、更に新しい挑戦へ

──昨年は、大きなお仕事が続きましたが今振り返ってみていかがですか?
濃厚でした。何かあまりにも濃厚過ぎて、夢だったんじゃないか?と思う瞬間があるくらいです。今、思うことはやはりこの仕事は「まだまだ奥が深い」ということです。『ダンス オブ ヴァンパイア』は、公演期間も長かったですから、初日の自分と千秋楽の自分を思うと、もし千秋楽の自分からスタートできていたとしたら、もっともっと上がれたのに!という悔しさもありました。そうは言っても過去には戻れないですが、良い意味であの経験が今後ミュージカルをやっていく自分の基盤になると思います。あんなに緊張したのも初めてでしたし、逃げ出したくなったくらいだったんです。初日など幕が開かなければいいのにと思ったほどでしたし、緊張しない日は1日もありませんでした。それがだんだん良い緊張になっていって、その良い緊張感が気持ちいいということも学びました。デュエット曲も多かったですし、その瞬間舞台でちゃんと生きる、歌で表現するというミュージカルの素晴らしさを改めて知った気がします。更にダブルキャストの良さとか、長い期間1つの役をやり続ける良さや、得るものの大きさも感じました。
──またひとつ、貴重な経験になりましたね。
楽しかったですね。最後は楽しかったと言えます。夢みたいな時間でした。
──そして、この夏には『ピーターパン』への出演も控えていますね。
そうなんです!私はタイミングが合わなくて、『ピーターパン』自体は残念ながらこれまで客席で拝見させて頂く機会がなかったのですが、演出をされる玉野和紀さんは、宝塚時代、『ロシアン・ブルー』の稽古場にいらしてましたし、『CLUB SEVEN』なども拝見させて頂いていましたから、是非ご一緒させて頂きたいと思っていました。『ピーターパン』という、私が生まれる前から続いてきた公演に関われることを本当に嬉しく思います。インディアンの役柄は宝塚時代新人公演でもさせて頂いたことがあって、すごく魅力を感じていますし大好きなので、タイガー・リリーができることが楽しみです。しかも同じ作品の中で3役させて頂くというのも初めて、ちゃんと母親としてお芝居で歌を歌うのも初めてという、何もかも挑戦です。ダンスも久しぶりなので、踊りたいなと思っていたところでもありますから、発散したいです。
──白羽ゆりさんから引き継ぐというのもご縁ですね。
もうびっくりしました! 前回の時に、「となみさん(白羽)がやるんだ!」と、とても気になっていて、写真など拝見させて頂いて、「となみさん綺麗、すごく可愛い!」と思っていただけに、まさかそれを自分が引き継ぐことになるとは思いもよりませんでした。嬉しいです。『ダンス オブ ヴァンパイア』で歌を頑張って、今回の『リビング』でがっちりとお芝居に取り組んで、次に歌とダンスと芝居のあるミュージカル『ピーターパン』と続くので、本当に恵まれています。私は作品もそうですし、人もそうですし、出会いに恵まれていて、周り中素晴らしい方ばかりで、人にもお仕事にも助けて頂いて、いい時間を過ごさせて頂いています。
──では、改めてこの『リビング』への意気込みと楽しみにしている皆さんにメッセージを。
私は赤坂RED/THEATERが大好きでよく観に行っていたんです。舞台が近くて、きちんと客席に届く、新しいのに温かい珍しい空間だなと思ってきました。その劇場に立てることもすごく嬉しいですし、お客様にも気楽に観に来て頂ければ。遊びにくる感覚でいらして頂いて、笑って頂いて、お客様のパワーになったらいいなと思っています。ライブの場でリアルにお客様と掛け合いをして、その中で一緒に作っていく。舞台はお客様がいらしてくださらないとできないものですから、是非劇場にいらしてください。

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まいはねみみ○兵庫県出身。07年に宝塚歌劇団入団。11年から雪組トップ娘役を務め、様々な作品で可憐な魅力を披露した。12年『JIN─仁─』『GOLD SPARK─この一瞬を永遠に─』で惜しまれつつ退団後は女優としての活動を開始。舞台『道頓堀パラダイス〜夢の道頓堀レビュー誕生物語』『ドリアングレイの肖像』『ダンス オブ ヴァンパイア』映画『マザー』『超高速!参勤交代』など、多方面で活躍中。7月にはミュージカル『ピーターパン』への出演が控えている。


〈公演情報〉
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O-Parts公演 
コメディプレイ『リビング』
脚本・演出◇荻田浩一
出演◇栗山航 舞羽美海/三上俊 佐野大樹 大野幸人/香坂千晶 治田敦
●3/2〜7◎赤坂RED/THEATER
〈料金〉¥7,000(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉03-5413-4815 atlas


【取材・文/橘涼香 撮影/岩田えり】



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