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戦国の世を背景に、強大な力を持ち「天魔(サタン)」と恐れられた織田信長と、彼の前に立ちはだかった仏門のカリスマ顕如を中心に、乱世を生きる人間たちそれぞれの正義や生き様を描く舞台『Honganji』が、2月17日から東京公演の幕を開ける。
演出はウォーリー木下、脚本は斎藤栄作。信長には陣内孝則、顕如に水夏希が扮し、信長を"憑き"動かす平将門には市川九團次、鉄砲傭兵集団・雑賀衆のリーダーに諸星和己と豪華な顔ぶれが並ぶ。さらにベテラン俳優の大橋吾郎から若手の渡辺大輔、滝口幸広、佐野和真、男装モデルのルウト、また、ゲストとしてグァンス(超新星)とセヨン(MYNAME)が参加するなど、まさに異種格闘技的なスケール大きな作品だ。
そんな物語の中で、門徒200万人を従え信長と対峙した浄土真宗の第11代門跡・顕如を演じる水夏希に、大阪公演を終了した時点で、この作品の役柄と見どころを話してもらった。

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幅広いキャストならではの幅広く熱いお客様たち

──まずこの作品に参加しようと思った動機はどんなところから?
昨年の7月に日本物の舞台、『新版 義経千本桜』 に出演したばかりでしたから、できれば続けて時代ものの舞台を経験してみたかったということ、この作品は出演者の方たちがすごくバラエティに富んでいて、そこがとても面白そうだなと思いました。
──本当に幅広いフィールドからのキャスティングですね。元アイドルの方から歌舞伎の方、K=POPの方もいますし。
出演者だけでなくお客様もバラエティに富んでいて、初日が開いてから客層の幅広さにびっくりしました。しかもそれぞれコアなファンの方が多くて、その人しか見てないんじゃないかというような熱さを感じます。

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──そんな幅広い出演者たちが集まる稽古はたいへんだったのでは?
そうですね。それぞれ稽古の方法も違うだけでなく、舞台より映像の方が多いかたもいましたし。でも一番大変だったのはプロジェクションマッピングでした。映像とどう絡むのかは、実際に舞台に立ってみないとわからないことも多かったですから。それに台本自体も、宗教を扱っていることやタイトルが『Honganji』ということで、内容にOKをいただけるまで書き直しが何回かありました。
──物語には顕如が大きな役割で出てきますが、歴史的にもよく知られている方ですね。ということはあまりフィクションを入れてはいけないわけですか?
入れようと思えば入れられたと思いますし、実際に史実とは違うところもあります。でも、今も続いている宗教ですから門徒の方たちからご覧になって納得していただくようなものにしたいし、門徒の方たちに「この作品ではこれでいいのだ」と納得していただけるようにしたいなと思いました。ですから演じる立場としても色々勉強しました。
──本山の京都の西本願寺を訪ねてお話を聞いたそうですね?
お話も伺いましたし、お寺自体が国宝ですから、荘厳な空気も流れていて、歴史の重さも感じました。この物語に出てくる大阪の石山本願寺の跡にも行きました。お寺はもちろん焼けてしまってありませんが、石碑があって、そこで戦いがあったことを思い浮かべたりして…。平将門の首塚にも行きました。史実に基づいた作品では、なるべく関連の場所に行くようにしているんです。やはりそこに行ったからこそ感じられることが沢山ありますから。

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200万門徒を束ねる存在感は男役の経験を生かして

──顕如さん自身はどんな方というイメージで、どう演じようと思いましたか?
史実では信長と武力で真っ向から戦っている方なんですよね。僧兵を使って。でもこの作品の顕如は戦わないんです。あくまでも戦わないという姿勢を貫こうとします。そこは史実とは違います。
──その戦いの部分は息子の教如の役割になっているのですか?
そうですね。実際に教如は徹底抗戦するという考えの人でしたし、石山本願寺を守るために最後まで残って戦いましたから。
──ではこの作品の顕如は、かなり精神的な存在として門徒を従えているわけですね。
今の本願寺のご門主さまは第25代なのですが、一昨年継がれたばかりの30代の若い方なんです。でも親鸞上人からの血筋で、3メートルくらい手前で目が合わせられなくなるほどオーラが違うそうです。そういう意味では顕如は第11代ですから、さらに親鸞上人に近いわけで、当時の人たちにとっては、阿弥陀様の生まれ変わりというくらい崇拝される存在だったと思います。
──そんな顕如のオーラを出すわけですが、水さんの宝塚のトップスターだったというキャリアは武器になりますね。
顕如の衣装も1人だけ光ものを付けていただいてます(笑)。
──そのカリスマ性と200万門徒を束ねるエネルギーを持ちながら、役としては表面的には穏やかでいないといけないわけですね?
そうなんです。でも私はすぐ「戦だー」って立ち上がってしまうタイプですから(笑)、言葉に殺気を宿らせないように気をつけています。劇中で多少はそれを見せていい場面と殺気を宿してはいけない場面とがあって、それを演じわけているのですが、周りの男性陣は声が大きいし、皆さん迫力があるので、そこに混じって相手を説得するには、ただ声が大きければいいわけではないし、とても難しいです。

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──信長と対峙する場面は?
ありますが1場面だけです。
──それ以外の場面も含めて、信長VS顕如という構図を成立させないといけないわけですね?
そこで男役をやっていたことが大きく役に立っている気がします。トップとして組を背負い、宝塚という名前を背負いながらやってきた経験があるのは大きいかなと。信長と対峙する覚悟や、その持ちどころは「そうか、男役でやればいいんだ」と思いました。
──今回は殺陣とかアクションは?
ないです、お坊さんなので(笑)。こんなに動かない作品は初めてです。そのぶん昼夜の間の休憩に筋トレをして、だーっと汗かいて。そして舞台では静かに(笑)。
──見どころの1つに合戦の場面があると思うのですが?
そこはプロジェクションマッピングで見せているのですが、脚本と演出がとても素晴らしいです。そんなに人数はいないのですが、それをプロジェクションマッピングでダイナミックに、迫力ある見せ場にしています。たとえば石山本願寺の広いお堂の中を逃げ回る様子などは、お堂の映像と人間のシルエットで見せてしまうし、物語の中で、武田信玄とか足利義昭をはじめ色々な歴史上の人物たちが出てくるわけですが、それぞれの関係性や当時の勢力図など、全部プロジェクションマッピングで見せていくので、とてもわかりやすく、面白く見ていただけると思います。

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日本物の良さに加えて2.5次元やゲームみたいな面白さ

──共演者のことも伺いたいのですが、信長役の陣内孝則さんは?
舞台ではすごい迫力で、本当に恐いです!(笑)でもふだんはめちゃめちゃ優しくて気遣いの方で、カーテンコールで信長でなくなった途端にお客様を沸かせて(笑)、物語にのめり込んで観ていらしたお客様をほっとさせてくださるんです。この作品の終わり方にはズシリと心に響くものが残るので。
──歴史には必ず勝者と敗者がいて、悲劇がありますね。
この作品ではその部分に救いがあるというか、「顕如と信長は幼なじみだった」という設定を入れているんです。そのことで、信長はサタンで「第六天魔王」と呼ばれて殺戮を繰り返したと言われているけれどそれだけではないと。子供時代の2人を見せることで、信長の中にも平和な世の中への純粋な想いがあったのだと。それが最後に優しさとして滲みでてくる感じがして、思わず「つらかったねえ信長」と胸にくるものがあるんです。
──その部分はこの作品ならではの設定ですね。
焼き討ちされた側の本願寺の方たちから見れば、信長と顕如が幼なじみという設定にはやはり抵抗があったと思います。でも実際に舞台をご覧になった本願寺の方たちが、「すごくよかった」と感動してくださって、とても安心しました。

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──平将門が信長に“憑く”というのもオリジナル設定ですね?
そうです。九團次さんが「ザ・歌舞伎」でやってくださって、ふだん歌舞伎は敷居が高くて観に行けないような若い方が、歌舞伎を観てみたいと思うような、そういう魅力と迫力を見せてくださって、さすがだなと思います。
──そして諸星和己さんとも初共演ですが、どんな方ですか?
会見などでご存知のように、言いたいことを言うみたいに振る舞っていらっしゃいますけれど、その裏で優しさとか気遣いとかすごい方です。
──顕如を守るために戦う下間衆(しもつましゅう)の1人を、ゲスト出演のグァンスさんとセヨンさんが演じていますね。
ダブルキャストで同じ役をやってくださっています。おふたりのキャラクターが全然違うので、観ている方にもその違うところが面白いのではないかと思います。

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──そのほかの方たちも含めて、幅広い座組みと難しい内容をよくまとめ上げて、一大エンターテイメントに仕上げているという評判が聞こえてきています。
先ほど話に出てきたプロジェクションマッピングの面白さ、そして日本物の良さもあるし、2.5次元ものやゲームみたいな感覚もあって、そういう舞台はありそうでないと思います。そういう意味でも色々な層のお客様に楽しんでいただけると思います。
──最後に水さん自身の顕如への意気込みを。
静で表現する感情の動きをどれだけ表現できるかですね。起承転結の一番盛り上がるシーンで信長と対決するので、そこでどれだけ信長と対等にいられるか、それも丁々発止ではないやり方で、というのが非常に難しいので。そして顕如はある決断をするのですが、それが結果的には正解であったというところにもっていく表現が、どこまで静の芝居でできるか。毎日チャレンジだと思っています。


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みずなつき○93年宝塚歌劇団入団。07年『エリザベート』のトート役で雪組トップスターに就任、10年『ロジェ/ロックオン』で宝塚を退団。退団後の主な舞台は『7DOORS〜青ひげ公の城〜』『TATTOO 14』『客家〜千古光芒の民〜』『屋根の上のヴァイオリン弾き』『BADGIRLS meets BADBOYS DANCE LEGEND vol.1』『Love Chase!!』『Argentango』ブロードウェイミュージカル 『CHICAGO』〜宝塚歌劇100周年記念OGバージョン〜、リーディングドラマ『サンタ・エビータ〜タンゴの調べに蘇る魂』音楽朗読劇『幸せは蒼穹の果てに』『新版 義経千本桜』DANCE SYMPHONY〜最終楽章〜『THE DANCERS』、など。13年のSHOW『Beyond the Door』では出演のほか構成・演出も手がけた。この夏にはブロードウェイミュージカル 『CHICAGO』宝塚歌劇OGバージョンでは、日本での公演以外にニューヨークでの公演にも参加する。

〈公演情報〉
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スター★シアタープロデュース
舞台『Honganji』
原作◇保志忠彦
演出◇ウォーリー木下
脚本◇ 斎藤栄作
衣装◇ 小篠ゆま
題字◇ 紫 舟
出演◇ 陣内孝則 / 市川九團次 / 水夏希 / 諸星和己 
大橋吾郎(特別出演)/ 渡辺大輔/ 滝口幸広 / 佐野和真 / ルウトほか
ゲスト出演:Wキャスト グァンス(超新星)セヨン(MYNAME)
●2/17〜27◎EX THEATER ROPPONGI
〈料金〉S席¥13,000 A席¥10,000(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉 Honganji舞台製作委員会 03-5772-3220




【取材・文/榊原和子 撮影/岩村美佳 舞台写真提供/
Honganji舞台製作委員会


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