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昨年の夏、彩吹真央が演じた舞台『End of the RAINBOW』は、『オズの魔法使』や『スタア誕生』など数々のミュージカル映画で世界を魅了し、伝説のエンターテイナーにして名女優と謳われたジュディ・ガーランドの晩年を描いた作品だった。その劇中に登場した名曲の数々を、彩吹真央が歌い上げる。当時のエピソードを盛り込み、ジュディの娘で稀有なエンターテイナーとして知られるライザ・ミネリが歌った曲も加えたトリビュート・コンサートとなる。そのステージへの意欲、そしてどんな内容になるかを彩吹真央に存分に語ってもらった。

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豪華なキャストたちに囲まれた密度の濃い稽古場

──今回のコンサートのお話を伺う前に、昨年の『End of the RAINBOW』のお話を伺いたいのですが、フィアンセのミッキー・ディーンズ役が小西遼生さんと伊礼彼方さんのダブルキャストで、それぞれと組む彩吹さんが全く違っていたのが印象的でした。
私のなかではそんなに意識はなく、無意識に変わっていたんですよね。変えようと思って演じていなかったので、自然に演じた結果がそうなったのではないかと思います。ふたりが全然違いましたから。ミッキーだけでなくピアニストのアンソニー(鈴木壮麻)にもぶつかるのですが、それぞれ跳ね返り方も全然違っていた気がします。とにかく今日は誰だからこうしようとか全く考えずにやっていました。
──彩吹さんがダブルキャストの片方を演じる機会は多かったと思うのですが、相手がダブルキャストというのは、あまりなかったのでは?
そうですね。『ビクター・ビクトリア』で、岡幸二郎さんと下村尊則さんがダブルキャストでしたけれど、絡みは少しだけでしたし、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』では新妻聖子さんと菊地美香さんがダブルキャストでしたが、絡みはありませんでしたから。
──ストレートプレイでダブルキャストということも珍しいですね。
そう思います。最初にキャストが決まったときに、こんな豪華なダブルキャストでありがたいと思いましたし、もし私がお客様だったら両方見たくなると思いました。同じ舞台に立つ役者としては、どういうふうに響き合いが変わるのか、同じ公演のなかで同時に体験できるのは楽しみだなと思っていました。ところが稽古に入ったらとんでもない(笑)。すごく大変でした。もちろんそのぶん身になったものは本当に多いし、舞台の上で自由に息づくためには、応用力やその場その場の感覚で芝居する力が必要で、それが養われたと思います。小西さん伊礼さん、そして壮麻さんという素晴らしい方々と密にお芝居ができたことが有り難かったですね。それにダブルキャストのおかげで、稽古では演じていないほうの方が客観視した意見を出してくださって、それを取り入れて作っていきました。そういう作り方も含めて、それはそれは密度の濃いお稽古でした。
──見る立場の方もいることで、色々な意見が出るんですね。
ミッキーのおふたりが特に熱い方でしたから。それはもちろん芝居を良くしようすることに繋がるし、その思いが一番にあるから熱くなってくださったと思います。それぞれ、彼方くんがこうしているから遼生くんはこうしようと考えていたかもしれないし、その逆もあっただろうと思います。それを隠すことなく、いわば裸になって作品と向き合ってくださったので、私にとってはとても気持ちが良い稽古でした。私も稽古に入る前から、この作品、この役に向き合うためには、自分自身が裸にならなければダメだと意気込んで入っていましたし、そういう意味ではまさに戦場でした。今思えば皆さんにご迷惑をおかけしたこともあったのですが、色々な意味で裸になってぶつかることができました。受けてくださった皆さんに本当に感謝しています。
──そこまでの経験は初めてでしたか?
ここまでの経験はないですね。まず、ストレートプレイに出演したことがほとんどなくて、この舞台の前に出演させて頂いた『アドルフに告ぐ』が初めてでした。でもヒトラー役の高橋洋さんと私のエヴァ・ブラウンは、ぶつかるというような場面はなかったので、それを思えば『End of the RAINBOW』は格闘技みたいでした(笑)。でも、それはジュディ・ガーランドがそういう生き方をしたことと繋がって、彼女がそうだったからそうならざるを得なかったと思うんです。ですから何の恥じらいや躊躇もなく、とにかくぶつかるしかなかった。それによって私ですら知らない私の一面もたくさん発見できたかなと思います。自分のことは自分が一番よくわかっているつもりでも、自分が知らない部分がまだまだあると、ジュディを演じたことによって気づかされました。本当に出会えて良かったと思います。

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彼女の20歳までの経験値にさえ今の私はまだ達していない

──作品を引き受ける時点から、ジュディ・ガーランドにとても興味を持たれていたそうですね。
4年前の夏に『End of the RAINBOW』がブロードウェイで上演されていたときに、ニューヨークに行っていて、たまたま観たんです。英語がほとんどわからないので、ミュージカルをたくさん見ようと思って滞在したのですが、タイトルに惹かれて調べてみたら、ジュディ・ガーランドの晩年を描くストレートプレイで。主演の方が彼女の歌をたくさん歌うと書いてあったので、じゃあ観てみようという軽い気持ちでした。それがすごい作品で衝撃を受けて、でも3年後にまさか自分がやるなんて想像もしませんでした。ですからお話をいただいたとき、「え? あの作品!?」と。
──やはり縁があったのですね。
まずびっくりして。私にとっては初めて挑戦する役柄ですし、劇中での年齢のことや、実在の有名なエンターテイナーを演じるというプレッシャーもあってハードルは高かったです。 でも、やってほしいと言われることは本当にありがたいことですから、ぜひやらせてください、やらなきゃ嫌だ(笑)ぐらいの勢いで、何がなんでも上演にこぎつけてほしいと。私がジュディを演じたいと心から願いました。ですから正式に上演が決まったときは本当に嬉しかったです。
──そういう思いがあって、濃密な稽古をへて本番を迎えたわけですが?
逆にいかがでしたか?ご覧になった方にご意見を伺いたいなと(笑)。
──やはりふたつのバージョンがあまりに違ったことが面白かったです。ジュディの強さと脆さの現れ具合や、女っぽさの見え方が違いました。ぶつかっていく勢いも小西さんと伊礼さんの違いで、彩吹さんも変わっているのがよくわかりました。それから、ジュディ・ガーランドという名前は知っていたけれど、どんな方か知らなかったので、物語としても新鮮に拝見しました。どうしても演じたいと思って取り組んだジュディに対して、舞台を経て今はどう思っていますか?
もう、尊敬以上のなにものでもないですね。演じるときに何度も読んだジュディの生涯を書いた本を、今回のコンサートにあたって、もう一度読み返したんです。最初に読んだときにも思ったのですが、私はまだ彼女が亡くなる47歳まで達していませんが、彼女の20歳までの経験値でさえ、今の私がまだ達していないほどの人生なんです。そして、何よりもエンターテイナーとしての技術が素晴らしい。2歳で初舞台を踏んで、ショービズの中でどっぷり浸かって生きてきた彼女は、薬物やお酒、度重なる結婚、離婚、中絶などの経験をしました。
──波乱の人生ですね。
そういう全てを熟知したうえで、彼女を演じたいと思って演じました。振り返ってみると、自分がやるべきたくさんのことに集中して、あっという間に終わってしまったという思いもあるんです。今回ご縁をいただいてコンサートをさせていただくにあたり、ジュディが何歳ぐらいのときの作品でこういう役を演じて…というようなエピソードを交えながら、『End of the RAINBOW』では見えなかった彼女の輝かしい時代の、そういう楽曲をお届けしたいと思いました。ジュディ・ガーランドのことをすべて知っているという日本人はなかなかいらっしゃらないと思います。そして『End of the RAINBOW』を見た方は、『オズの魔法使い』でドロシーをやった人がこんなことになっていたんだと思われただろうと思うので、その間を補う意味でも、輝かしい時代を、こんなに有名な曲がたくさんあるということをお見せしたいと思って曲をセレクトしました。例えば、宝塚のショーで使われているナンバーも結構あるんですよ。宝塚をご存知ない方も知っている曲が絶対にあると思いますし、それだけ影響力があった方なんですよね。かなり厳選してしまったのですが、もっともっと入れたかったです。

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イベントの企画や構成を考えるのは大好きなんです!

──コンサートは全部日本語で歌われるのですか?
『End of the RAINBOW』の中で歌った曲が半分ぐらいあるのですが、それは高橋亜子さんが訳してくださっているのでそのまま使わせて頂きます。作品では曲の全てを歌っていなかったりするので、高橋さんにお願いして完全版を作って頂きました。また、新たに訳詞をして頂いた曲もあります。皆さんがよくご存知の「I Got Rhythm」などは英語にしようかなと思って練習していますが、だいたいは日本語です。
──作品ではジュディ・ガーランドとして、今回は「彩吹真央」として歌われると思いますが、どんな感じでしょうか?
お稽古していても不思議な感じなんです。最初は舞台のときの音源を聞いて練習していたのですが、違うなと思いました。ジュディが歌ったらこうだけれど、彩吹真央コンサートで歌う『JUDY GARLAND SONG BOOK』の私の歌はそうじゃない、というところに自然といくので、キーも変えているんです。そこは舞台のとき、音楽の岩崎廉さんともすごく意見を交わした点なんですが、廉さんは私の強みになるキーで歌を聞かせたいと。でも、私はお芝居の中に入ってくる歌なので、ジュディ・ガーランドが発している言葉にあわせて、低めに歌いたいと思ったんです。今回は私寄りにいくつかキーを上げた曲もありますから、必然的にジュディの声ではなくなります。舞台でもジュディの声を真似たつもりはないのですが、今回は彩吹真央が舞台の上でジュディ・ガーランドの歌を歌うとどうなるのかというところが、やはり大事ですし、声色もシチュエーションも違いますから。例えば「Dear Mr.Gabie」は、舞台ではコンサートのワンシーンのなかで46〜47歳のジュディが歌っていますが、実は15歳のジュディが歌った曲なので、若い雰囲気がでればいいなと思っています。ライザ・ミネリのコーナー以外は、ジュディの出演した映画の曲を時系列で歌います。最後の曲が「スタア誕生」なのですが、それでも30歳過ぎくらいまでです。それ以降はほとんど映画に出ていなくて、歌手活動をしていたんです。今回は映画に出ていた時期までの歌を歌います。
──全盛期の頃の曲なんですね。歌う曲など、彩吹さんご自身が構成をされているんですね。
はい。コンサートやライブはいつも自分で決めています。コンサートの企画を頂いて、どんな内容にしようかと相談していて、せっかくだからジュディ・ガーランドの曲を歌うコンサートにしたらと言っていただいて、「なるほど!」と。その翌日にはほぼ構成ができあがっていました。
──こういう作業はお好きですか?
大好きです(笑)。宝塚のディナーショーでも、構成や曲の流れはだいたい自分で決めていました。
──何かを企画することがお好きなんですか?
好きかもしれません。色々なイベントなどでも、こんなことをしたらなどと考えるのは好きなんです。自分がお客さんだったらこんなものを見たいという視点で考えるので。コンサートも、頭の中で自分が客席に座って、自分が歌っているのを思い浮かべながら決めるんです。それが楽しいんです(笑)。

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ミュージカル研究部のようだった音楽学校時代のふたり

──今回もゲストが出演しますが、東京では水夏希さん、大阪では霧矢大夢さん。
おふたりにはソロとデュエットを用意していて、ライザ・ミネリのコーナーに出て頂いて、それぞれ違うナンバーを歌って頂きます。
──どんな思いでこのおふたりに?
同じお仕事をさせて頂いていて、それぞれとお食事をしたり、いろいろとお話をする仲なのですが、水さんはすごくお忙しくされていらっしゃるので、今回出て頂くことは考えていなかったんです。でも、もし出て頂けたら嬉しいなと思って、スケジュールをチェックしてみたら、コンサート当日はなんとかなりそうとわかったので、すみませんとお願いしたら、いいよとおっしゃって。
──水さんのスケジュールを自らチェックしてお願いしたわけですね。
はい(笑)。お忙しいのに出て頂けるのは、親しくさせて頂いているおかげで、良かったなと(笑)。このご恩はまた何かの形でお返ししなければと思っています。
──霧矢さんにはどんな経緯から?
霧ちゃんとまた何か一緒にしたいなとずっと思っていたのですが、彼女も色々と忙しくて、やっと今回一緒にできます。霧ちゃんとの思い出というと、現役中は組が違いましたが、音楽学校時代には、まるでミュージカル研究部のように色々なミュージカルの話をしていたんです。その当時上演されていた『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』などを一緒に観に行ったり、私が知らないミュージカルの曲を、「これいいよ」と霧ちゃんが持ってきて聞かせてくれて、その曲を私も気に入ってふたりでハモったり。元々宝塚が好きで入った世界ですが、音楽学校時代に霧ちゃんと出会ったことで、宝塚だけでなくミュージカルという大きな世界への興味を分かち合えた思い出があります。今回のコンサートの大阪公演は、もし霧ちゃんに出てもらえたら、私自身すごくなつかしくていいなと思ったのでお願いしたら、本当に出てくれることになりました。

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ゲストとの歌とトークはガチで期待していただけます!

──そんなお話を伺うと両方とも見たくなりますね。
ぜひ!(笑)どちらも面白いだろうなと思います。コンサートのコンセプトがかっちりしているので、かっちりしたコンサートかなと思っていらっしゃる方が多いかもしれませんが、私のライブやコンサートは私の性格みたいにちょっとのんびり型なんです(笑)。そのときの私の気持ちを交えたり、お客さんとのトークを大切にしたいと思っているんです。特におふたりに出て頂くコーナーは、歌って頂きますけれど、私のなかではトークがかなり楽しみで(笑)。水さんとのトークは、もちろんファンの方は大体ご存知だと思いますが、それでも喋りたりない部分がたくさんあるので(笑)。そして、霧ちゃんとこういう形でトークするのは初めてなんですよ!
──地元ですし関西弁で盛り上がりそうですね!
ガチ関西弁で、ガチトークになると思います。必見です(笑)。それ以降の歌が大阪弁にならないかと思うぐらい、本当にドキドキです!(笑)
──東京と大阪では、彩吹さん自身やっぱり違いますか?
こればかりは隠せないんですよね。東京のファンの方に「大阪に来ると変わりますね。東京人としては残念ですが、のびのびしているゆみ子ちゃんが見れて良かった」と言われることがたまにあるんです。そこはやっぱりバレてしまいますね。
──今回は霧矢さんと一緒ですから。
よけい漏れ出でしまうと思います(笑)。 
──(笑)。おふたりが地元の言葉でのびのび語る姿を、ファンの方もご覧になりたいんじゃないでしょうか。
関西弁のお芝居があったらどれだけ楽だろうかと、よく思うんです。大阪生まれの上級生の方が関西弁でお芝居されたとき、水を得た魚のように見事だったと聞きました。私はまだ体験したことがなくて、でも関西弁の芝居をいつかやりたいと思っていて。藤山直美さんの丁々発止な感じとか、めちゃくちゃ憧れます。いつか関西弁の役がくることを願ってやみません。
──霧矢さんと共演でやってほしいです。
最高でしょうね! もう、漫才ができます(笑)。
──この際ですから、アピールしておきましょう!
ぜひぜひ!企画のほうよろしくお願いいたします!ここ太文字でお願いします(笑)。
──最後に、コンサートを楽しみにしている方にはもちろん、まだ迷っている方にもぜひ後押しとなるようなメッセージをお願い致します。
今、作っていく段階で、私がお客さんだったら見たいと思うものを作っているのですが、これは私自身、客席で見たいと思えるコンサートになるぞって(笑)思っています。東京、大阪各1回ずつしかないので、観た方は「ああもう一度観たかった」と思って頂けるコンサートにしたいですね。ふたりの思い出の曲を聴けるのは、この瞬間しかないと思います。ぜひ生で、東京も大阪も耳にして、目にして頂きたいです。ぜひ期待していらしてください。

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あやぶきまお○大阪府出身。94年宝塚歌劇団に入団、10年に同歌劇団を退団。退団後も女優としてミュージカルを中心に活動。主な舞台は『DRAMATICA/ROMANTICA』『ロコへのバラード』『シラノ』『サンセット大通り』『モンテ・クリスト伯』『ウェディング・シンガー』『ラブ・ネバー・ダイ』『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』『Argentango  DANCE LEGEND vol.2』オリジナルミュージカル『道化の瞳』 SHOW-ism 次悒罐ぅ奪函拑命畤娠LIVE 2015『The woman Y』舞台『アドルフに告ぐ』『End of the RAINBOW』『The Sparkling Voice ー10人の貴公子たちー』。映像はフジテレビ『女性作家ミステリーズ美しき三つの嘘』第1話「ムーンストーン」など。

〈公演情報〉
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MAO AYABUKI CONCERT「JUDY GARLAND SONG BOOK」
出演◇彩吹真央 高原紳輔 三井聡 
東京公演スペシャルゲスト:水夏希 
大阪公演スペシャルゲスト:霧矢大夢
訳詞◇高橋亜子 音楽監修◇岩崎廉 音楽監督◇栗山梢 ステージング・振付◇TETSUHARU
●2016年2月14日(日) 16:30開場/17:00開演
◎Bunkamuraシアターコクーン
●2016年2月16日(火) 18:30開場/19:00開演◎
サンケイホールブリーゼ
〈料金〉
東京/指定席¥9,000 コクーンシート¥8,500(全席指定・税込)
大阪/指定席¥9,000
〈お問い合わせ〉東京音協 03-5774-3030(平日11:00〜17:00)




【取材・文・撮影/岩村美佳】


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