宝塚ジャーナル : とびっきりカラフルな昆虫たちの世界！地球ゴージャス最新作『The Love Bugs』　

岸谷五朗と寺脇康文による演劇ユニット「地球ゴージャス」が、2016年の年頭を飾る最新作『The Love Bugs』を赤坂ACTシアターで上演中だ（２月24日まで。のち、愛知、福岡、大阪でも上演）。

地球ゴージャスとして、14作品目となる今回の舞台で取り上げられるのは、人間が住む世界のすぐ近くにありながら、誰も知らない昆虫ワールド。羽根を持ち、飛び回ることも、宙返りをすることにもなんの説明もいらない存在であることに、まず着目したという作・演出の岸谷五朗の発想がユニークで、小さな住人たちが繰り広げる「命」と「愛」の物語が、ファンタジック、かつダイナミックに描かれてゆく。

そんな作品が、初日を前にした１月８日のゲネプロで１幕のみ公開され、総勢34名によるパワフルなステージが展開された。

まず何よりも目を引いたのが山本寛斎チームによる個性豊かなコスチュームだ。メインキャストはもちろん、34名全員が、それぞれ異なる衣装を着こなすのだが、そのカラフルで独創的な視覚効果に惹きつけられる。次々と舞台をおおいつくす色彩の洪水は、まるで異世界で繰り広げられるカーニバルのようだ。

その先頭をきって、大原櫻子が登場。「THE TOP OF THE BEST！」を歌い上げる。年末の紅白歌合戦でもトップパターを務めたアーティストの大原だが、初舞台のこの作品でも愛らしさだけでなく、熱いエネルギーを放出。実際は小柄な人だが、舞台姿が大きく見えるのは、才能の表れだろう。

続いて平間壮一が持ち前のダンステクニックを駆使して、ソロナンバーを。近年卓越したダンサーとしてだけでなく、役者としても進境著しい人で、人懐っこい笑顔を役柄がよく活かしている。大原との掛け合いも楽しい。

そこから「伝説の雄(おとこ)」のナンバーで城田優が登場。一気にこのカラフルな世界に城田の色が広がるスターオーラは圧倒的だ。それでいながら『エリザベート』のトート役で見せたこの世の者でない神秘性とは、まるで違う一面も示す展開が、思わず微笑も誘う。城田のスター性あったればこそ成立した在り様だった。

突然雰囲気が変わり、しなやかなダンスで登場したのが蘭寿とむ。ミステリアスな雰囲気をまとっていたかと思うと、一転して明るい「ENJOY MY LIFE」を歌い踊る。宝塚時代には骨太な男役であり、ダンサーとしても鳴らした人だが、すっかり女優としての柔らかさを身に着けていて、気負わずに歌い踊る姿が伸びやかだ。

そうして次々とメインキャストが登場し、舞台のボルテージが高まっていったところに、飄々と現れる岸谷五朗が笑わせる。雰囲気を変える巧みなアクセントになっているし、更に異質な風体で登場する寺脇康文の個性と共に、さすがは長年の盟友。自分たちの立ち位置を作品の中で如何に効果的に発揮するかを、当然でもあろうが知り尽くしていて面白い。

その異質さをまとった寺脇の存在が更に物語を進めたところで、いよいよマルシアが登場。「Birthplace The Earth～私はグザべロペ～」で、これだけの個性派が揃った中にあっても、尚強い存在感を発するのはさすがだし、過去、数々の舞台でショーストップを成し遂げてきた歌唱力で魅了する様は圧巻。

さあ、すべての登場人物(昆虫？)は出揃った。さて、物語はどんな展開を見せるのか？は、実際の舞台を観て体感して欲しい。とにかく個性的で、色鮮やかな舞台に更なる期待が高まる時間だった。

【囲み取材】

このゲネプロ公開の前に、城田優、蘭寿とむ、大原櫻子、平間壮一、マルシア、岸谷五朗・寺脇康文が囲み取材に応えて、公演への抱負を語った。

──明日が初日となりましたが？

岸谷　あっという間ですね。いよいよ初日、頑張ります。

──仕上がりはいかがですか？

岸谷　稽古というのはいくらやっても足りないもので、２ヶ月やったのですが、４ヶ月欲しいなと。でも総勢34名の素晴らしい俳優が全力で作り上げてくれたので、逆にお客様が初日にいらっしゃってご覧頂けるのが楽しみです。

──では皆さん、今の心境を一言ずつ。

マルシア　頑張ります。ドキドキしています。本番前は大変なんですよ。やっぱり誰もがめちゃくちゃ緊張するでしょうし、地球ゴージャスさんを観に来てくださるお客様に、絶対に損はさせない！という自信を持ってお伝えしたい。心に残るものをと、皆で頑張ります。

城田　僕ももう本当に緊張しています。だいたい僕、こういうゲネの前の取材の時には大概緊張していますと言うのですが、結構かつてないくらい不安要素がたくさんある作品なので。やることがたくさんあるので、それだけ見応えのある物語にはなっているんですけど、その分すごく緊張する場面が多くて。ソロだったりとか、殺陣だったりとか。芝居においても、全てに緊張する場面がたくさんあるので、とりあえず今日ゲネプロやって「よし、明日から頑張るぞ！」ということなんですけれどね。

蘭寿　私も本当に緊張しているんですけれど、すごく大切に大切に皆さんと一緒に作り上げてきたので、岸谷さんの書かれた物語はとてもあたたかくて大きくて心に残るものだと思うので、その本筋をきちんと描き出したいなと今思っています。よろしくお願いします。

大原　私にとっては初舞台ということで、すごい緊張もあるのですが、ここまでの稽古が楽しくて楽しくて、リハーサルの時には怖さも感じていたのですが、今日のゲネプロから明日の本番が逆に今は楽しみで、お客様が入ると作品も変わるのかな？自分が感じることも変わってくるのかな？というので、すごく楽しみです。頑張ります。

平間　『The Love Bugs』に出ているキャスト全員で作り出す世界観の中で、必死に生きられるように頑張ります。緊張しています。

寺脇　最新作が代表作であるという風にいつも思って作っている訳ですが、本当にこれは僕らの誇れる代表作になる自信があります。もちろん緊張はしていますが、劇場にくる前の稽古場段階での完成度というのは僕らがいくら頑張っても、ほぼ60％なんですね。それが劇場にお客様が入って、お客様とエネルギーの交感をした時に、その呼吸の中で100％になっていくというイメージがあって。ですから劇場にお客様がいらっしゃってくださらないと作品は出来上がりませんので、是非劇場に足をお運びください。よろしくお願いします。

──衣装がとても個性的ですね。

岸谷　そうなんです。本当に時間をかけて山本寛斎チームが作ってくれまして、今回34名それぞれ同じ衣装は１人もいないんですね。Bugsたちの個性が表れています。稽古場でも何回も着てもらって意見も取り入れてもらいました。

──着心地はいかがてすか？

マルシア　故郷に帰ったようで最高ですね。もう文句なし。このままカーニバルに出られるんじゃないかと。衣装も含めてすべてが総合芸術なので、出演者１人１人、装置の１つ１つ、スタッフの１人１人すべてがパーツなので、それが明日合体しますので、絶対に観に来てください！

大原　私は初めて衣装を着て稽古をした時の感覚が、全くそれまでの稽古の感覚と違っていて。本当に衣装を着ると気持ちが入れ替わると言うのか、今まで体験したことがない感じで。この山本寛斎さんの素敵な舞台衣装で、お芝居も変わるんだなという実感があるので、魔法にかけられたみたいです。

マルシア　いいこと言うね～！魔法にかけられた！

岸谷　櫻子ちゃんは今回が演劇、ミュージカル初舞台なのですが、もう毎日毎日稽古場ですごい吸収力で、音をたてて成長していくんです。これから地球ゴージャス10万人のお客様を動員しようと思っているのですが、３ヶ月後の大千秋楽にはどれだけすごい女優になっているんだろうかと。いきなり大御所になっているかも知れません（笑）。

大原　頭の中パンクしそうです！

──紅白もあって、忙しかったですね。

大原　あれも緊張しましたし、やっぱり生でライブでお客様が目の前にいて、という感覚でしたが、今回は毎日舞台があって、毎日舞台に上がれる幸せを感じられるなと。

──皆さんからのエールもありましたか？

岸谷　皆で応援しましたね。

s_IMG_4790-1