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世界初演から50周年、いまだ革新的なミュージカルとして孤高の存在であり続ける『ラ・マンチャの男』が、大阪で9月2日に開幕した(21日までシアターBRAVA!、9月26日〜28日松本公演、10月4日〜27日東京・帝国劇場で上演)。

その舞台でヒロイン・アルドンザをつとめるのが霧矢大夢。宝塚時代から歌、ダンス、芝居のいずれにも秀でたエンターティナーぶりを発揮し、愛され続けてきた。そして退団後、着実に歩み続ける女優としての道で、傑作ミュージカル『ラ・マンチャの男』のヒロイン・アルドンザ役にめぐり会った。浜木綿子、上月昇、鳳蘭と、名だたる宝塚OG達が演じてきた大役に挑む彼女に、作品への思い、主演者で作品の牽引者である松本幸四郎のこと、更に女優としての現在を語ってもらった。

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作品と松本幸四郎さん双方の大きなパワー
 
 
──『ラ・マンチャの男』という名作ミュージカルについてはどういう印象を持っていましたか?
私は恥ずかしながら拝見したことがなかったんです。もちろん作品自体を存じ上げてはいたのですが、実際に劇場で拝見する機会が無くて。それで今回お話を頂いて、資料映像と台本から作品を知ったというおこがましい状態だったのですが、まず作品自体が持つ力強さと、松本幸四郎さんのパワーに圧倒されました。「ドン・キホーテ」には、ほんわかしたイメージを持っていたので、こんなにもシリアスな内容だったのかと。「見果てぬ夢」は、宝塚歌劇団の試験の課題曲にもなっていましたが、他にも素晴らしいミュージカルナンバーがたくさんあって、すごい作品だなと思いました。またアルドンザがとても難しい役どころで、大変だなとまず感じましたが、でも役者としてこれができたら大きな経験になるだろうと、不安と期待が半々の気持ちになりました。
──これまでも宝塚の先輩の方達が、数多く演じて来ている役柄を継承するかたちになりますね。
ありがたいことに私はそういう機会を頂くことが多くて、『マイ・フェア・レディ』『I DO! I DO!』に続いて、今回『ラ・マンチャの男』で、やはり先輩方が道を切り拓いてくださった役どころを、後輩として演じさせて頂くのは、大変光栄で感慨深いですし、責任を感じます。

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ただただ圧倒されている今の自分をそのままに

──製作発表では早くも幸四郎さんとの一場面を披露されて素晴らしかったです。
あの時は、幸四郎さんにスイッチが入られたのを見て、私もまだお稽古にも入っていない状態にも関わらず、条件反射のようにスイッチが入りました。それに続く英語での「見果てぬ夢」は、私自身ほとんど一観客になって幸四郎さんに見入っておりました。これを毎日間近で観させて頂けるのか!と感じましたし、幸四郎さんが人生を賭けて演じられていらっしゃる役なので、私などがとてもはかり知ることなどできない思いを持って演じられていると思います。まさに幸四郎さんなのか、ドン・キホーテなのかというくらい、役柄と人生が交差しておられて、その凄味に圧倒されました。でもアルドンザ自体もドン・キホーテが騎士道を語るのを間近に聞いて、はじめは何も理解できないところから少しずつ変化していく役どころなので、私も今の「ただただ圧倒されて、呆気にとられている」という今の自分の状態を、そのまま役とをリンクさせていけばいいのかなと。
──そういう意味で役柄に共通点を見出せそうですね。
アルドンザもだんだんドン・キホーテに感化されていって、彼の思いをくみ取って危険な集団の中に自ら足を踏み入れた為に、痛めつけられて傷つくのですが、その彼の臨終の場面になった時には、今度は彼に騎士道を思い出させる立場になるわけです。その流れがとても素敵なので、これからそれをどう表現していけるか、自分自身も楽しみですし、今の自分も活かせると思うので、出会いに感謝して務めたいです。

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同性を演じることは楽しさと苦しさが半々

──退団後、色々な経験を重ねて、女優としての変化は感じますか?
宝塚時代は基本的には宝塚という世界の中で、更に私は月組だったので「月組」という同じチームの中で育てて頂いていたのですが、卒業しますと「作品」というカンパニーの中で過ごすことになります。その時、「この役柄の方はきちんと立てなければいけない」とか、「この輪からはみ出してはいけない」という、宝塚で学んで身についていたもので、自分の立ち位置を図ってしまうところがありました。でも外の世界では、言ってしまえば「はみ出てナンボ」(笑)というところもありまして、自分自身を立たせていくことが作品の為でもあるのだなと。元々人見知りの面があったのですが、そんなことは言ってられなくなりました。それに、作品ごとに新しい仲間に出会っても、その作品が終わってしまうとお別れですから、一抹の寂しさもありつつ、また次の作品で新しい出会いや結束が生まれる。その出会いと別れの日々を、ようやく楽しめるようになってきました。
──女子力もずいぶんアップされましたね。
いえ、これはテクニカルメンバーのおかげで(笑)。自分では今着ているような花柄のワンピースなどはとても選べません。まだまだ発展途上です。
──女性を演じる上での楽しさなどは?
自分と同じ性別を演じることは、楽しさと苦しさが半々です。役柄を演じる時に「同じ女性として自分はどうなのか?」と突きつけられますので。これまではそこを追及して生きていなかったので、自分の女性としての引き出しのなさに自己嫌悪になったり。また一方で「私にこんな面があったのか!」と気づかされて、嬉しくもあり恥ずかしくもあり(笑)。やはり男役の時には「男役」という鎧を着て舞台に立つところがあったのですが、女性として舞台に出ると生身の自分を見られているような恥ずかしさがあるんですね。私は男役時代に女役を演じた経験もある方なのですが、やはり男役のベースがあって演じていた女役と、今の女優として演じる時の違いは大きくて。だから私の中ではまだ「女優4年目です」という初々しい気持ちがあるのですが(笑)、ひとたびキャリアですとか年齢を考えますと、「そんな新人ぶるなよ」という立場でもあるので(笑)、そのせめぎ合いです。そんな自分に折り合いをつけつつ、『ラ・マンチャの男』は「折り合いをつけてはいけない」とおっしゃっていますが(笑)、新たな自分も発見しつつの毎日です。単純に自分の中での芸歴が違いますから当然なのですが、男役は無意識でできる域に達していたけれど、女性役はまだ意識しないとできないので、女性役も無意識にできるようになっていきたいですね。
──では改めてこの大作に挑まれる意気込みを。
大作で大役、更に偉大な松本幸四郎さんとご一緒させて頂くというあまりに大きなものがのしかかり過ぎて、今、逆に麻痺状態なのですが(笑)。「いきなりドルシネアとして扱われても」と戸惑っているアルドンザと同じ状態でもあるので、ここから温かいカンパニーの皆様と作り上げていく月日を経て、自分なりのアルドンザになっていけるように。そして、両手を広げていてくださる幸四郎さんを信じて体当たりで挑みたいと思います。そんな姿を観に、是非劇場に足をお運び頂けたら幸いです

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きりやひろむ○岸和田市出身。1994年宝塚歌劇団で初舞台。実力派の男役として頭角を現し、10年月組トップスターに就任。様々な作品で活躍した。12年退団後女優に転身。『マイ・フェア・レディ』のイライザ、『IDO! IDO!』のアグネス、『オーシャンズ11』のクイーンダイアナ、『ヴェローナの二紳士』のシルヴィアなど、ミュージカルを中心に活躍中。


PRラマンチャ のコピー
ミュージカル
『ラ・マンチャの男』
脚本◇デール・ワッサーマン 
作詞◇ジョオ・ダリオン
音楽◇ミッチ・リー 
演出◇松本幸四郎
出演◇松本幸四郎、霧矢大夢/駒田一 ラフルアー宮澤エマ
石鍋多加史、荒井洸子、祖父江進、宮川浩 上條恒彦  ほか
●9/2〜21◎シアターBRAVA!
〈お問い合わせ〉シアターBRAVA! 06-6946-2260
〈料金〉S席¥13,5000 A席¥9,000 B席¥3,500(全席指定・税込) 
9/26〜28◎まつもと市民芸術館 主ホール
〈料金〉S席¥14,000 A席¥11,000 B席¥7,000(全席指定・税込)
10/4〜27◎帝国劇場
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777
 〈料金〉S席¥13,500 A席¥8,000 B席¥4,000(全席指定・税込)
http://www.tohostage.com/lamancha/



【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】


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