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映画史上最高のダンシング・ペアとされるフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースの代表作であり、日本初上演となる宝塚宙組公演、ミュージカル『TOP HAT』が赤坂ACTシアターで上演中だ(20日まで)。

ハリウッドのミュージカル映画黄金期に、ダンスの神様とも称されたアステア&ロジャースコンビによって作られた映画をもとに、この作品が舞台化されたのは2011年のこと。イギリス国内ツアーで初演され、後にロンドンのウエストエンドに進出。2013年にはイギリス最大の演劇賞、ローレンス・オリビエ賞において、新作ミュージカル作品賞、衣装デザイン賞、振付賞の3部門で最優秀賞を受賞するなどの高い評価を得てきた。

そんな傑作の本邦初演が、この宝塚宙組による公演。これまでも高いダンス力に定評があり、この作品より宙組トップスターに就任した朝夏まなとと、引き続いて宙組トップ娘役を務める実咲凛音による新コンビのお披露目で、2人の早くも息の合った演じぶりと、タップダンスをはじめとした華麗なダンスシーンの数々が大きな注目を集めている。

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ストーリーはブロードウェイの人気スター・ジェリー・トラバース(朝夏まなと)が、友人でプロデューサーのホレス・ハードウィック
七海ひろきの招きで、ロンドン公演に出演する為イギリスを訪れたところからはじまる。ジェリーは宿泊するホテルで偶然出会ったファッション・モデルのディル・トレモント実咲凛音に一目惚れ。早速猛アタックを開始するうちに、ディルもジェリーに惹かれるようになり、2人は一時心を通じ合わせる。だが、ジェリーがホレスの名前で投宿していたことから、ジェリーを友人のマッジ・ハードウィック純矢ちとせの夫のホレス本人だと勘違いしたディルは、怒りのあまり衝動的に、イタリア人で自分の専属デザイナーでもあるアルベルト・べディーニ愛月ひかると結婚してしまった! 事態を知ったジェリーは、あわててディルの後を追うが……。

思い込みによる勘違いから混乱する恋の顛末は、基本的にはとても単純なものだ。けれども、だからこそここにはハリウッドのミュージカル映画黄金期の作品が持っていた、おおらかさと、ハッピームードがあふれていて、細かいことを考えずに楽な気持ちで客席にいることができる。しかもなんと言っても楽しいのが、次々と繰り出される華麗なミュージカルナンバーによる、ダンスシーンの数々。主人公の2人はもちろんのこと、アンサンブルの面々が様々に演じる、ホテルマンや街の人びとなどが、ダンスシーンに自然に加わって違和感がないのは、こうした王道ミュージカルだけが持つ醍醐味だろう。これまで個性的な作品を発表することが多かった演出の齋藤吉正が、その王道の魅力を素直に正面から描くことに成功していて、改めてその守備範囲の広さにも感心させられた。

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何より出演者がそれぞれ実に魅力的。これがトップスターデビューとなった朝夏は、持ち前の長い手足を駆使して、得意のダンスを時に軽やかに、時に優雅に踊りきる。これまで意外に明るい役柄は回ってきていなかったが、本人の陽性な個性が、このブロードウェイのスター役にピッタリ。フレッド・アステアが演じた役を演じるというのは、舞台人として相当大きなプレッシャーだったと思うが、それを微塵も感じさせない悠然とした舞台ぶりが頼もしい限りだ。
一方のヒロイン・ディルの実咲凛音も、歌にダンスに大活躍。宝塚の典型的な娘役の役柄とは異なる、こうした海外ミュージカルのヒロインならではの、ファッション・モデルとして自立している女性を堂々と演じていた。朝夏との息もよく合い、トップ娘役第二章とも言えるスタートは、順風満帆のようだ。

これが宙組での最後の公演となる七海ひろきは、溌剌としたアイドル的持ち味の人だから、所謂「おじ様」役であるこの役どころはどうだろう?と興味深かったが、想像以上に味わい深い役作りで、新境地を開拓している。星組に組替え後ミュージカル『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』でも主人公の疑似父親的役回りの刑事役を演じることが決まっているが、このホレス役の好演でますます期待が高まった。新天地でも伸び伸びと活躍して欲しい。

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そのホレスの妻マッジ役の純矢ちとせは、さすがの芝居巧者ぶりを披露。彼女が登場する2幕で、ドラマがグッと締まってくるほどの存在感はさすがだった。またイタリア人ファッションデザイナーの愛月ひかるの突き抜けた役作りが、作品の面白さを底上げしている。宝塚では難しいだろうシーンも嫌味なくこなして、成長を感じさせた。ドラマを大団円に向かわせるカギを握る執事役の組長寿つかさの相変わらずの達者さ、白の衣装のデュエットダンスで力量を見せつけた大海亜呼と和希そらなど、大きな役が一見少ないようで、前述したように役名のない登場人物たちも、華やかなダンスシーンに加われるようになっていて、出演者それぞれに見せ場があるのも好印象。何度でも観たくなる楽しい舞台となっていた。

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初日を控えた4月4日、通し舞台稽古が行われ、主演のトップコンビ朝夏まなとと実咲凛音が囲み取材に応えて、公演への抱負を語った。

【囲み取材】

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朝夏 宙組の朝夏まなとでございます。本日はお忙しい中舞台稽古にお越し頂きまして誠にありがとうございます。明日の初日から20日の千秋楽まで、宙組『TOP HAT』メンバー一丸となって頑張りますので、どうぞよろしくお願い致します。
実咲 同じく宙組の実咲凛音でございます。本日はお忙しい中本当にありがとうございました。明日の初日から皆さんと心をひとつにして精一杯頑張りたいと思いますのでどうぞよろしくお願い致します。

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──トップ披露ということで、力は入りましたか?
朝夏 トップになるからと言うことではなく、作品の難易度が高かったので、私達にとっても挑戦でしたし、イギリスでも同じミュージカルが上演されているところで宙組がさせて頂くので、すごい作品だと思いましたから、それに挑戦する意気込みの方が強かったです。もちろんチームをまとめるという意味ではトップとして、という気持ちもありました。

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──相手役として、朝夏さんは男らしい方ですか?
実咲 男らしい?どうでしょうか…。
朝夏 男らしいですかね?メンバーにはジェリーのままだと言われます(笑)。
実咲 役作りしていないって(笑)。
朝夏 すごく大変だったんですけれど、役作り(笑)。自分ではそのままだとは思っていないので、役が乗り移っているのではないでしょうか(笑)。

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他に、作品の見どころや、どんなトップコンビになって行きたいか?などの質問があり、終始お互いを確認しながら和やかに話す2人の姿が印象的で、共に花組時代から馴染みの深かった2人が、改めて歩み出すにあたって、心を一つにしていることが感じられる時間だった。

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尚、囲み取材の詳細は、5月9日発売の演劇ぶっく6月号にも掲載致します。どうぞお楽しみに!


宝塚宙組公演
ミュージカル『TOP HAT』
Music&Lyrics by Irving Berlin
Based RKO's Motion Picture
Book by Matthew White & Howard Jacques
脚本・演出◇齋藤吉正
出演◇朝夏まなと、実咲凛音 ほか宙組
●4/5〜4/20◎赤坂ACTシアター
〈料金〉S席 8,800円、A席 6,000円
〈問合わせ〉阪急電鉄歌劇事業部 03-5251-2071




【取材・文・/橘涼香 撮影/岩村美佳】



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