春日局_右高島礼子_左一路真輝

明治座の新春を飾る公演は『春日局』。戦乱の世が治まりかけた江戸初期を舞台に、三代将軍徳川家光の乳母となった春日局と、生みの母お江与の方という、2人の女性の確執と絆を中心に描いている。
1昨年の明治座正月公演『女たちの忠臣蔵』の好評を受けて、橋田壽賀子×石井ふく子の名コンビが送る、女性が主人公の時代劇である。タイトルロールの春日局には高島礼子、彼女と対峙するお江与には一路真輝、この2人の顔合わせも『女たちの忠臣蔵』に続いて2度目となっている。

【物語】
時は江戸時代初期。戦国の世に翻弄され、悲しい子供時代を送ったおふく(後の春日局)は、貧しいながらもやっと掴んだ家族との幸せなときを噛みしめていた。
しかしその幸せもつかの間、徳川家の乳母として推挙されたおふくは、悩んだ末、家族と別れ江戸城・大奥へ──。竹千代君が天下の和平を支える将軍にお育ち下さるように、自分が役に立てればと心に固く誓う。江戸城の大奥には、おふくと同じように戦国の世に翻弄されたもう一人の女性がいた。二代将軍秀忠の正室・お江与。お腹を痛めて生んだ我が子を、自らの手で育てることを許されず、その寂しさに苦しめられていた。子を思う二人の母の愛は、天下を、和平を築き上げていくのか…。

平成元年にNHKの大河ドラマとして、同名タイトルで放送された春日局の生涯を描いた物語が原作となっているが、この舞台はおふくが乳母として大奥に上がることになったいきさつに始まり、竹千代が成長して家光となるまでの歳月が描かれている。そのなかで大きなドラマとして、竹千代の生母であるお江与とおふくの相克、竹千代と父徳川秀忠との確執、青年期になった竹千代の初恋の悲劇、また将軍家の跡目争いなどが浮かび上がる。
 
春日局(高島礼子)

高島礼子はおふくの時代は子沢山の母親らしい素朴な包容力を感じさせ、やがて竹千代の乳母・春日局になってからは、忍耐強く賢明な女性としての懐の深さがあって魅力的だ。
一路真輝のお江与の方は、生まれたばかりの我が子を取りあげられる母の悲しみや怒り、嘆きを表現。同時に、移り変わる世を生き抜いてきた女性ならではの、強さと誇り高さを
大きな存在感のなかで見せてくれる
男優たちは、徳川家康の西郷輝彦が圧倒的な貫禄で場を引き締めれば、徳川秀忠の山崎銀之丞は父に頭のあがらない二代目らしさを醸し出す。少年時代の竹千代を演じるのは加藤清史郎(土師野隆之介とダブルキャスト)で、実母に疎まれ傷つくシーンなどさすがの天才子役ぶり。また竹千代が長じての家光には金子昇が扮していて、清潔感と品の良さではまり役。そのほか、おふくの夫・稲葉正成に丹羽貞仁、徳川忠長(幼名・国千代)に森宮隆などが活躍。女優陣は家康の側室に中田喜子、おふくの侍女に沢田雅美、おふくの母の大空眞弓、家光が通う吉原の遊女には京野ことみ、秀忠の息女・千姫の村井麻友美など、個性豊かで華やかな顔ぶれが各場面を支えている。

将軍の乳母になるために自分の子供たちを置いて出るおふくの切なさ、お江与が竹千代のために乳母を受け入れる辛さ、また竹千代が母の面影を見て愛した遊女との悲恋など、思うままに生きられないそれぞれの立場ならではの哀歓が情感豊かに描かれていて、橋田壽賀子×石井ふく子コンビならではの世界だ。とくに竹千代を巡って闘ってきた春日局とお江与の方が、長年の思いを話し合う場面など圧巻で、歴史を動かした女性たちの命がけの強さが、時代劇ならではの端正な造りのなかにもほとばしる舞台となっている。

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加藤清史郎、大空眞弓、一路真輝、高島礼子、西郷輝彦、石井ふく子


【囲みインタビュー】


この公演の初日終演後に出演者の高島礼子、一路真輝、大空眞弓、西郷輝彦、加藤清史郎と演出の石井ふく子を囲んでインタビューが行われた。
 
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──初日を終えての感想は?
大空 頭が真っ白で(笑)。初日は緊張しますね。
高島 はい。しかも12月の30日と31日がお休みで2日空いてしまったので、みんなの緊張感が伝わりました。自分もそうですけど(笑)。
一路 でも、いい緊張でしたね。
西郷 いい緊張感ですよ。これがあるから千秋楽があるんだなと(笑)。
大空 私はあまりいろいろな人と舞台で会わないので。
西郷 僕の場合なんか、みんな顔を見てくれないんです。下を向いてて(笑)。
一路 偉い方なので(笑)。
 
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──稽古の苦労などは?
高島 私は舞台の経験が少ないので、それで皆さんに迷惑をおかけしてることは置いておきまして、稽古場からいい緊張感というか毎日が楽しくて、新鮮なことが多くて、こんなこともさせていただけるんだというワクワク感のほうが強くて、苦労なんですけど楽しゅうございました(笑)。
一路 高島さんとは『女たちの忠臣蔵』でご一緒させていただいて、今回が2度目なんですけど、目付きが違っていてきりっとされてて、稽古場に行ったときびっくりしました。短い期間にいっぱい吸収されて舞台に立っていらっしゃるんだなと、私も刺激を受けてすごく楽しい稽古場でした。
大空 私は若い人と一緒にお芝居ができて楽しいです。
西郷 まず女優さんがみんな綺麗で楽しいですね(笑)。それに座長が1回目と違ってしっかり舞台を背負っているなと。本当にたいへんだと思いますよ。
大空 たいへんよね。礼子ちゃんがんばってる。でもがんばってるって見えないから。
一路 そう、さらっと。
西郷 題材がね、女性が家を守り国を守っているという、そのままで(笑)。

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──清史郎くんはいかがですか?
加藤 僕は和物の舞台をやるのは初めてなので、セリフとか言い回しとか難しくて、時代ものは大河ドラマとかはあるのですが、それぶりなので。それからお客さんに顔が見えるようにとか舞台での立ち位置の角度とか、和物の特徴的な細かいことがいろいろあったので、それを自分の頭にインプットするのに、すごく時間がかかりました。最初の頃、今もなんですけど、たいへんです(笑)。
全員 (笑)。
──歴史とか勉強になりましたか?
加藤 そうですね、この『春日局』のお話では何回かナレーションが入るので、この春日局さんが生きた時代のことはちょっと頭に入ったかなと思います。
高島 ナレーション覚えてるのよね。
加藤 いや、ちょっとしか覚えてないです(笑)。
──母が2人いますがどうですか?
加藤 すごく優しいです。稽古とかでセリフを間違えても「大丈夫!」みたいな、本当のお母さんみたいに接してくださるので、僕も安心してできて、そうやってもらったときは嬉しいし、本当に優しい方たちです。
 
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──母のお2人はどうですか?
高島 おふくとお江与さまは生い立ちも違うし立場の違いで、子供に対する思いも別の形で出てきているんですけど、でも基本、今も女は強いといわれますけど、昔から女は強かったんだと、それを再確認させていただいてます。
一路 本当に石井先生と橋田先生がタッグを組まれると、女性の強さが二乗になって出てくるので(笑)、演じる私たちも覚悟を持って臨まないとと思っています。清史郎くんは、母であるお江与への愛と乳母であるおふくへの愛をちゃんと演じ分けているので、すごいなと思います。
──演出の石井さんはご覧になっていかがですか?
石井 この作品は26年前に一度帝劇でやってて、それを忘れてて、明治座さんからやってますと台本見せられて(笑)。あのときは3幕で4時間だったんですが、2幕で3時間に縮めました。こういう強力な皆さんがいらして、今日初日が開けられて、本当によかったなと思っています。初日の舞台を客席から観ていて、演出としてはもっとこうすればということはあるんですけど、それとは別に「この舞台はとても美しいな」と思ったんです。色彩とかのことではなくて、人間の心といものが美しく映っていると感じたんです。今のこの時代で、いろんなことがある時代ですが、こういう人たちが生きていたんだなと。今、文明と文化の差がたいへん激しいじゃないですか。そういう意味で、こういう時代劇をちゃんとやっていかないといけないなと、そういう気がしました。

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──最後に今年をどういう年にしたいですか?
高島 私は欲が深いんです。とにかくやれるものはやっていきたいと。やったことないこともやってみたいので、公私ともにチャレンジしていきたいです。
一路 昨年もいろいろな舞台をさせていただいて、今年もお正月からこの素敵な舞台に立たせていただいているので、またいろいろな舞台に出会えればと思っています。
大空 いい千秋楽を迎えたいです(笑)。
西郷 そうですね、悔いがないように。人生悔いのないように。そしていい仕事ができるようにというのをテーマに(笑)。
石井 私は現代劇もやってはいるんですが、こういう時代劇をきっちりやるところが少なくなってるので。そしていらしてくださった方にお土産を持って帰っていただけるようにと思っています。
加藤 充実した年にしたいです。この舞台が和物の初挑戦ですけど、2月には歌舞伎にも初挑戦で、初挑戦ばかりなんですけど、初挑戦の波にちゃんと打ち勝っていこうと思います。
全員 おおーっ!
西郷 一番いいこと言ったね(笑)。

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──最後にメッセージを。
高島 石井先生がおっしゃるように、映像でも最近は時代劇が減ってきていると思いますので、こういう本格的なこだわった時代劇を沢山の方に観ていただければと。子供さんから大人までどなたでも楽しんでいただけるものですし、内容も実在の人物ばかりですので、その人たちのことを想像していただいれ観ていただければ見方がまた変わりますので。こういう歴史を描いた美しい舞台を沢山の方に観ていただきたいと思っております。ぜひ皆さまよろしくお願いいたします。

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明治座新春特別公演『春日局』
原作・脚本◇橋田寿賀子
演出◇石井ふく子
出演◇高島礼子、一路真輝/中田喜子、沢田雅美、京野ことみ、山崎銀之丞、金子昇/大空真弓、西郷輝彦 ほか
●1/2〜23◎明治座
〈料金〉S席(1、2階席)¥13,000 A席(3階席)¥6,000(全席指定・税込)
学割S席(2階席)¥6,500 A席(3階席)¥3,000(全席指定・税込)
〈問合わせ〉明治座チケットセンター 03-3666-6666


【取材・文/榊原和子 舞台写真提供/明治座】
 


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