細雪舞台写真1
舞台写真提供/明治座

明治座6月公演『細雪』が1日、華やかに幕を開けた。

この作品は昭和10年代の大阪と神戸を舞台に、徳川の時代から船場に大店を構える木綿問屋・蒔岡商店に生まれた4姉妹を通して、激動の時代とそのなかで翻弄される人々、そして変わらない日本の美しさなどを描く名作舞台である。
原作は谷崎潤一郎の小説で、太平洋戦争末期に連載開始、時局に合わないと弾圧を受けて、戦後、やっと刊行されるやいなやベストセラーとなった。
舞台化の初演は1966年で、以来1400回にも及ぶ上演回数を誇る人気作品で、明治座では2010年以来、4年ぶりの上演となる。

 

今回の4姉妹は08年から長女鶴子を演じている高橋恵子、同じく08年から次女幸子役の賀来千香子、三女雪子は11年以来この役を演じている水野真紀、そして四女妙子に今回初参加の大和悠河という顔ぶれとなっている。

舞台は三幕構成で、昭和12年の春から昭和14年の春まで、上本町の蒔岡家(本家)、幸子一家の住む芦屋(分家)、妙子が人形展を行う神戸の画廊など場所を移しながら物語は進められていく。その2年間という時間のなかに、中国本土での戦火の拡大、蒔岡商店の倒産、神戸の大水害などの時代背景が巧みに織り込まれ、また、それによって姉妹の生活に落ちる影も浮かび上がる。この絶妙な構成を手がけたのは名演出家・菊田一夫で、その手腕は50年近く経った今でも鮮やかだ。
 

美術・衣裳ともに豪華さが大きな見どころとなっている舞台で、古いが格式を感じさせる上本町の本家、モダンで明るい芦屋の分家と、それぞれリアルに建て込んであって、本家の庭にある桜の古木や、ラストシーンの満開のしだれ桜、そして降りしきる花びらなどが、贅沢なまでに目を楽しませてくれる。4姉妹の着る着物は、オープニングの色紋付の微妙な違い、それぞれの普段着はもちろん付下げや振袖など、さまざまに着替えて見せてくれる。また、舞台いっぱいに色とりどりの着物が広げられた虫干しのシーンなど、まるで錦絵巻のようで壮観だ。

そんな豪華な舞台のなかで、4姉妹がそれぞれに人の世を生きる悲しみを味わい、ときにはそれに打ちひしがれそうになりながら、たおやかに折れずに人生の歩を進めていく。その姿は、今は散ってもまた次の春には鮮やかに咲く桜の花にも似て、しなやかで強く美しい。


細雪舞台写真2
舞台写真提供/明治座


【囲みインタビュー】


この明治座『細雪』の初日後に、しだれ桜のセットもそのままの舞台上で、4姉妹の高橋恵子、賀来千香子、水野真紀。大和悠河の囲みインタビューが行われた。


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──明治座で4年ぶりの『細雪』、初日を終えていかがでしたか?

高橋 何度演じさせていただいても、初日は緊張いたします。でも今日のお客様はとても反応がよくて、よく笑ってくださって、それも話の内容で笑ってくださっているのがわかりましたので、うまく伝わっているのだなと。とてもいい初日でした。ほっとしております。

賀来 再演の有り難みを感じながら。その再演組の緊張と初演組の大和さんの緊張がいい感じに合わさって。今、お姉ちゃまがおっしゃったように、温かくて、ああ幸せだなあと思いながらカーテンコールをさせていただきました。感謝しております。

水野 私は明治座では初めてになります。賀来さんのおっしゃったように再演の有り難みを、また演じられてよかったなあと、本番になってより深く感じました。それから桜吹雪を浴びながら、あの瞬間、このお仕事をしていてよかったなあと(笑)。
大和 私は『細雪』も明治座さんも初めてだったんです。やはり最初は緊張したのですけれど、舞台に出たらお客様がすごく温かくて、『細雪』を待っていてくださったという感じがすごく伝わってきて、感動いたしました。やはり3人のお姉さまがすごく温かく見守ってくださったので、本当に幸せな初日でした。

──大和さんは初めての稽古場からこの初日までいかがでした?

大和 初日が近づいてくるたびに本当にドキドキしていました。でも初日が開いたら、『細雪』って本当に素晴らしい作品なんだと思いまして、そこに出させていただいた幸せを改めて感じています。
──今回、新メンバーもいて何か変わったでしょうか?

高橋 また、新しい感じでフレッシュになりましたね。

賀来 いろいろ発見があるんです。やっぱり深い作品なんだなと思います。以前から深くて素晴らしい作品だという話はしておりましたけど、新しい方が加わることで、こういう解釈もあるわねと、思うところがありました。
 

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──水野さんはたくさん笑いを誘ってましたね。

水野 「ふーん」という返事で(笑)。あまりあざとくなってもいけないので、気をつけています。先ほど知人が楽屋にきてくれて「あれ、なんか話変わった?」と。

高橋 そう! 変わったように見えるみたいね。まったく一緒なんですけどね。

水野 「違った?」と言われて、お客様はそういうふうに見てくださってるんだと嬉しくなりました。

高橋 以前、ご覧になったかたも、そういう意味ではまた観にいらしていただければ、違った『細雪』を発見できると思います。

水野 観る側の方たちも年を重ねると、見方が変わると思います。それに、幕が降りたあと、一緒に観に来られた方の間で、いろいろ会話が弾む作品だと思います。
──4姉妹の誰かに置き換えて見ていらっしゃるとか。

賀来 私は誰型とかね(笑)。

──ご自分がどの役の性格とかいうのはありますか?

高橋 性格はどうでしょうね? どこか役に合っているからこうやって演じさせていただいているのだと思います。でも地とは違いますよ(笑)。本当は鶴子みたいに厳しくないので(笑)。

幸子 そうやねえ(笑)。

──ラストシーンで降ってくる花吹雪は綺麗ですね。

高橋 今回は、いつもより量がすごく多いそうですね。明治座ならではですね。

賀来 劇場が違うと眺めも違うんですよね。私も舞台稽古で客席から見せていただいたんですが、額縁が違うとやはり違っていて、明治座さんならではの温かくて重厚な感じはよそにはないので、ぜひここでの『細雪』を観に来ていただきたいと思っているんです。こういう和のお芝居はだんだん少なくなっていますから。
 

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──ご自分の見どころをそれぞれ。

高橋 いっぱいありすぎて!

水野 舞台もなんですけど、明治座さんは休憩がまた楽しいんですよ。

全員 (笑)。

賀来 見どころじゃないわね(笑)。

水野 でも本当に楽しいの(笑)。売り場のお姉さんが試食をいろいろ勧めてくださるんです(笑)。

賀来 うちの母がすごく買い込んでました(笑)。

水野 そこも楽しみの1つですから。

賀来 3時間45分、ずっと楽しめますから。

高橋 出演者のアンサンブルも見どころですよね。

大和 チームワークがいいんですよ。

高橋 隅々まで仲良しの輪が行き渡ってますよね。

水野 キラキラしてます。音楽もクラシックでゴージャスですしね。客席の椅子もふかふかで(笑)。

高橋 とにかく全部いいんです(笑)。とくに最近、こういう作品はないので。
──昭和の日本ですね。

高橋 昭和なんですけど、普遍ですね。今の方が観ても琴線に触れる部分が多いと思います。姉妹のこととか夫婦の愛とか。

賀来 綺麗が大事な作品なんです。表面的なものだけではなくて、綺麗であるということが大事な作品だと思います。

高橋 日本人とか日本の心の美しさがすごく表れていると思いますね。

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──衣裳が素敵ですが、何着くらいで舞台裏はいかがですか?

賀来 よくぞ聞いてくださいました(笑)。私は8回着替えてます。

水野 幸子ちゃん(賀来)がいちばんたいへんね。

賀来 緞帳が降りてきて暗くなると帯じめにまず手が行って(笑)。

高橋 舞台上では優雅にしておりますけど、緞帳が降りた途端忙しいんです(笑)。

賀来 私は、いちばんたいへんなのは、その前のシーンですごく幸せな様子で幕が降りて、すぐ次のシーンでは体調を悪くして出てくるんです。

高橋 気持ちの変化もあって、いちばんたいへんなシーンね。

水野 それから、着ているほうは慣れてしまっているのですが、お客様から見ると姉妹の着物の色合いが少しずつ違っていることや、虫干しのところとか「わあ!」と思ってくださるみたいで。

高橋 着物がずらっと掛かっててすごいのよね。
大和 私は洋服も着ていますので、そのつど頭も変えるのがたいへんですね。それに地唄舞の「雪」を舞うときは日本髪の鬘をかぶっているので、白塗りもあるんです。衣裳を替えながらメイク替えもして、たいへんなんですけど。両方着られるので嬉しいです。

高橋 妙子は最後にピンクの振り袖で出てくるでしょう。それを見て、ああ蒔岡家だなとしみじみします。

──お客様も着物を楽しんでいて、虫干しのシーンなども歓声があがってましたね。

賀来 私たちも、お互いに「綺麗!」とか「可愛い!とか言ってます(笑)。

高橋 本当に質の良いものばかりなんですよね。着ていてそれはよくわかります。

──最後に公演の意気込みを。

高橋 久々の『細雪』です。本当に日本人に生まれてよかったなと思いながら、毎日演じさせていただいております。こうした和の作品が少なくなっておりますので、ぜひ明治座にいらして、心豊かな時間を過ごしていただきたいと思います。お待ちしております。

 

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明治座6月公演『細雪』
原作◇谷崎潤一郎 (中公文庫版)
脚本◇菊田一夫 
潤色◇堀越真 
演出◇水谷幹夫
出演◇高橋惠子 賀来千香子 水野真紀 大和悠河
葛山信吾 磯部 勉 太川陽介 川崎麻世 橋爪淳 他
●6/1〜27◎明治座
〈料金〉S席¥13,000 A席¥6,000(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉
明治座チケットセンター 03-3666-6666(10:00〜17:00)


【文/榊原和子】 
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