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ごく普通の女の子だったヒロイン北島マヤが、秘められた演劇の才能をつぎつぎと開花させていく物語「ガラスの仮面」。75年の連載開始から30年以上も経つが、今もなお根強い人気を誇り、これまで数多くのアニメ、テレビドラマなどの題材としても親しまれてきた。まさに少女漫画の金字塔である。
その作品中に登場する劇中劇である『女海賊ビアンカ』が、なんと原作者である美内すずえ自らの監修によって、「劇団つきかげ」というカンパニーのスタート作品として、舞台化されることになり、11月27日より渋谷のアイア・シアターで幕を開ける。(12月1日まで) 


【あらすじ

ところはイタリア西部。ジェノバ海軍が地中海である海賊船を捉えた。船上で行われた裁判の途中、海賊一味に男装の女性が見つかった。彼女の名はビアンカ・カスターニ。実はジェノバと敵対する大貴族の一員で、和平を結ぶためジェノバへ嫁いできたのだが、反対者の妨害にあい、追われる身となってしまった。逃げる船上で海賊に襲われた彼女は捕まり、海賊の一味となってしまったのだった…。
 

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制作発表より児玉明子、原嶋元久、瀬戸祐介、唯月ふうか、加藤雅也、大沢逸美、根本正勝、塩田結以


注目のキャストは、ビアンカ役に抜擢された17歳の若さはじける唯月ふうか。また加藤雅也、瀬戸祐介、原嶋元久、大沢逸美、美郷真也、田渕法明、岩崎大(Studio Life)、根本正勝など実力派のメンバーに加えて、オーディションで選ばれたアンサンブルキャストが多数出演。「劇団つきかげ」は、約50名にも及ぶ大きなカンパニーとしての公演となる。

そして、その舞台化の脚色と演出を手がけるのが、宝塚歌劇団の演出家だった児玉明子。美術や照明などに独自の感覚を生かし、ときには宝塚の舞台らしからぬトリッキーな演出でも注目された彼女に、本作を演出するようになった経緯や、美内すずえから受けた刺激、演出家としての思いなどを語ってもらった。



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原作ファンに人気の劇中劇


──演出家として、この『女海賊ビアンカ』に携わるよことになったいきさつは?

このプロジェクトのプロデューサーとは、私が宝塚歌劇団にいた頃から、大阪市のこどもミュージカルやダンスオペラなど外部のお仕事でご一緒させていただいていたんです。そのプロデューサーが美内先生と長年お付き合いがあって、美内先生にとっては「劇団つきかげ」のような企画をされるのがずっと夢だったということで、今回、本格的に始動することになったわけです。そして、その演出には、大人数の劇団を経験している人がいいということで、私に声をかけていただいたんです。当時はまだ歌劇団に在団中でしたが、ぜひやらせていただきたいなと思いました。

──美内先生は、「ガラスの仮面」を描かれるぐらいですから演劇への想いはとても深い方ですね。ところでなぜこの劇中劇を選ばれたのでしょうか?

美内先生のなかでは、「ガラスの仮面」の劇中劇でやってみたいものがいくつかあるなかで、この作品は「これで1作描いてしまおう」と思えるくらいの題材だったようです。『女海賊ビアンカ』や『ふたりの王女』などは、劇中のオリジナル物語としてすごく有名ですが、とくに『女海賊ビアンカ』は原作ファンの方に人気が高いと聞きました。

──児玉さんも原作コミックの「ガラスの仮面」は読んでいましたか?

もちろん! といっても全巻持っているわけではないのですが。小中学生の頃など、学校でみんなで回し読みしていました。

──その劇中劇を舞台化するということについては?

「ガラスの仮面」自体は何回も舞台化されていますが、そのなかに出てくる創作物語を、しかもエッセンスしか描かれていないものを舞台化するという企画は、これまでになかったと思いますし、いわゆる“原作ありき”のものとはまた違う面白さがあるのではないかと思っています。


美内先生との贅沢な共同作業


──原作・原案は美内先生ですが、台本作りはどのように進められたのですか?

まずは私が漫画の『女海賊ビアンカ』で描かれているストーリーをもとにシノプシスを書きました。劇中劇の部分は基本的に“未完成”で、貴族についてはたくさん描かれていても海賊の生活は描写が少なかったりしたので、私がオリジナルのキャラクターを提案して登場させたり。その段階でまず先生に見ていただいて。OKが出てから第一稿を書いて、それを先生が細かくチェックされて、イメージやご指摘などをいただいて、それを踏まえて、私がまた書き直して…という作業を7回ぐらい重ねました。

──まさに共同作業という感じで、美内先生の演劇への情熱はさすがですね。そのプロセスのなかで「美内先生ならでは!」という部分はありましたか?

たくさんありました。私が最初に書いたものから、だいたい20ページくらい増えているのですが、その部分はお客さんが喜ぶためのものなんです。美内先生はあれだけのベストセラーを何十年も描かれている方なので、ストーリーをどうすればお客さんにわかりやすく、喜んでもらえるのか、それを熟知されている。私は細かいところはけっこう飛ばしたりしていたのですが、先生から「この人の結末まで知りたい人もいるんじゃない?」とか、「お客さんがついていけないかもしれないから、もう少し書き込んだほうがいい」などのアドバイスをいただいて、書き足していったんです。

──演劇の神様に、作劇の秘密をいただいたような感じですね。

まさにそうです!ものすごく贅沢な経験をさせていただきました。書き直しに熱が入りすぎて、他のセクションとの打ち合わせに間に合わなくなりそうになったり、たいへんな時期もありましたが(笑)。でも、自分が演出するので、脚本を書き直しながらも「こういうふうになる」とイメージできるので、打ち合わせもそれで進められたり、すごくいい経験になりました。このシリーズにこれからも関わらせていただいて、何年か美内先生との作業ができたら、脚本家としてすごい修業になると思います。

──漫画に出てくる他のオリジナル劇を順番にやっていくとなったら、美内ファンの方たちもご覧になりたいでしょうね。

そのためにも、まず『女海賊ビアンカ』の成功が大事だと思いますので、がんばらないといけないと思っています。


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宝塚の新人公演の演出経験が役に立つ


──現場ではたくさんのキャストを演出されることになると思いますが、人数の多いカンパニーを動かすことは、宝塚歌劇団時代に慣れているのでは?

そういう意味では、宝塚にいたことは大きいです。ただ今回のカンパニーはいろいろなところからの出身者で出来ていて、その部分では、宝塚の新人公演をさせていただいた経験が役に立っています。宝塚の本公演は、いわばできあがった方が主役ですから、それなりにやりやすい部分もありますが、新人公演には初舞台生もいますし、一から教えていくところもありましたから。

──今回のアンサンブルはオーディションで選ばれたわけですが、活躍するのは戦いや貴族たちの場面でしょうか?

海賊の戦いの場面はもちろん必要ですが、オーディションを受けに来た90パーセント以上は女性でしたから、合格者もほとんど女性で、海賊の役はつけられないのが悩みなんです(笑)。ただ、この劇中劇のもとのシチュエーションは「北島マヤの体育倉庫での一人芝居」で、1幕目はビアンカの貴族時代への彼女の回想、イメージの世界から始まるんです。だから、たとえばビアンカが婚約者に会見するために、ゴンドラで初めてフィレンツェに行く時に、アンサンブルのみんなで小さなゴンドラを動かして運河を渡らせていくとか、キャストたちで巨大な馬車になるとか、そんなふうにたくさんの出演者を見せていきながら、「マヤの一人芝居」というイメージと重なるといいなと思っています。


舞台の概念を壊されたカナダ留学


──そういうフレキシブルな発想は、宝塚の演出家としてもトリッキーなことを試みてきた児玉さんらしいですね。その志向があったから、留学時にロベール・ルパージュの地元カナダを選ばれたわけですね?

はい、本当に大好きなんです(笑)。この仕事をしてみたいと思うようになって、あらゆる舞台を観ていたなかで、一番好きだったのがルパージュの舞台でした。ちょうど毬谷友子さんがパナソニック・グローブ座(現・東京グローブ座)で『テンペスト』(93年)に出られていた頃で、世界中からカンパニーが来てシェイクスピア劇を上演していました。そのなかで、サイモン・マクバーニーをはじめ、外国の演出家の発想がすごく面白くて。常識にとらわれずに、観ている人のイマジネーションを刺激することで、不思議な感覚を作り出すんです。なかでもとくに惹かれたのがルパージュだったんです。彼の『ニードルズ・アンド・オピウム』(93年)がものすごく面白くて「この人の舞台っていいな」と。宝塚に入団してからは、演出助手としてすごく忙しくて、しかも東京ではなく宝塚にいるので、舞台を観に行く時間もあまりないという時に、ルパージュのアンデルセンをモチーフにした作品『アンデルセン・プロジェクト』(06年)が兵庫に来たんです。それを観に行って「やっぱりこの人はすごい!」と。今も、世界で一番憧れている演出家です。

──シルク・ド・ソレイユの『KA』などでも有名ですね。児玉さんが、彼の地元のケベックに留学したのが2010年ですね。留学によって大きく変わったことは?

ケベックはフランス語圏なので、フランスのものも含めてあらゆる国から舞台が来ているんです。そういうものを観ていると、それまで自分が考えていた演劇の“枠”とか、当たり前だと思っていたことなどを、全部くつがえされました。演出だけでなく、舞台が終わっても勝手に帰れなくてパフォーマーたちにいじられたり、逆に劇場に残りたいのに帰らされたり、開演時間になっても入れなかったりとか(笑)。パフォーマンスがすべて面白いというわけではないですが、舞台という概念を壊されたような感じでした。

──もともと児玉さんの演出には、照明や美術などを含めて「普通の方法では見せたくない」というこだわりを感じていたのですが、留学でさらに刺激を受けたということですね。

帰国後に作品を作らせてもらえるようになって痛感するのは、私は振付も作曲もできないし、絵も描けない。ですから、それを共有し、さらにそこに新しいものも加えて表現してくれるスタッフがいかに大事かということなんです。

──そういう優れたスタッフと自分の表現を結びつけていくことが、これからますます大切になっていきますね。児玉さんの発想の大胆さは、外のほうが生かしやすいかもしれませんね。

でも、先ほどの美内先生のお話ではありませんが、トリッキーなことをやるにはストーリーがちゃんとしていないと、お客さんはついてきてくださらないんですよね。それは、私がよく落ちちゃう罠でもあって(笑)。見せたいものありきでストーリーを繋げていく形だと、無理が生じることもあるので、まず丁寧に物語を作ること。今回、そのことを美内先生に学ばせていただきました。


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人生で倍苦労して倍得するような感じ


──今年の5月末日で宝塚を退団したわけですが、何かきっかけがあったのですか?

具体的なきっかけになったのは、まだ宝塚に在団していた頃に、ある劇団の方から外部のお仕事の依頼が来たのです。それまでも外部の仕事は、いろいろさせていただいていたのですが、そのときは宝塚歌劇団との調整で、なかなか折り合いがつかなかったんです。その時にその劇団の方から「宝塚と同じ待遇にするのでうちの専属になりませんか」というお申し出があって、もちろんお断りしましたが、「辞めるという選択肢もあるんだな」と、ふと思ったんです。そして、この『女海賊ビアンカ』のお話をいただいた時に、自分自身のことを考えて、もう30代後半だし、仮にあと20年くらい作品が作れるなら、留学でせっかく自分の好きなものも再確認できたので、残りの人生をトライしてみようかなと。今までは宝塚で育てていただいたけれど、今なら、まだ体力も残っているし(笑)、ちょっと厳しい環境でもできるかもしれないので。

──美内先生との出会いで、脚本家としての部分も鍛え直せるチャンスが得られたのは大きいですね。

そのことだけでもすごく大きいです。でも、宝塚の良さも、改めてすごく感じています。贅沢な舞台や訓練された生徒さんたちは、やはり素晴らしいですから。それに、外の世界でも退団したOGの方たちがたくさん活躍していて、今回も美郷(真也)さんや振付のAYAKOさんに助けていただいています。そういう宝塚の良さもわかりますし、こうして外の舞台の面白さも経験できるというのは、人生で倍苦労して倍得しているみたいな感じでしょうか(笑)。
 



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こだまあきこ○74年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業。在学中から宝塚歌劇団の演出助手となり、98年に宝塚バウホール花組公演『Endless Love』で演出家デビュー。主な演出作品は『冬物語』『龍星ー闇を裂き天翔けよ。朕は、皇帝なりー』『シークレット・ハンター』『メイちゃんの執事』『仮面の男』など。10年に文化庁の新進芸術家海外研修制度でカナダへ留学。13年5月に宝塚歌劇団を退団。


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美内すずえ×ガラスの仮面劇場

劇団つきかげプレ旗揚げ公演『女海賊ビアンカ』

●11/27〜12/1◎AiiA Theater Tokyo(アイア シアター トーキョー)

原作・原案◇美内すずえ

脚色・演出◇児玉明子

振付◇TAKAHIRO・AYAKO

音楽◇玉麻尚一

出演◇唯月ふうか/加藤雅也/瀬戸祐介 原嶋元久/大沢逸美/美郷真也 田渕法明/岩崎大(Studio Life)/根本正勝 他

〈料金〉6,800円(全席指定・税込)

〈問合わせ〉

劇団つきかげ製作実行委員会 事務局 03-3548-8307

<公式HP>http://www.gekidan-tsukikage.com/


【インタビュー/榊原和子 文・撮影/塩田史子】



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