roco_0025

いよいよ待望のタンゴ・ミュージカル『ロコへのバラード』の初日が、目の前に迫ってきた。2年前よりしなやかさと色気を増して、自信に溢れながらタンゴを踊る彩吹真央。初演時にブエノスアイレスまで旅をして、初の主演作に打ち込んだ情熱は、この再演に際して、さらに深く熱く彼女を駆り立てているように見える。そんな彩吹真央に、稽古場レポートに続いて、『ロコへのバラード』への現在の想いを語ってもらった。

 
roco_0260

「タンゴ」に正面からぶつかって得たもの


──この『ロコへのバラード』は、彩吹さんにとって大きなステップになった作品ですね。
初演のお稽古に入ったときすぐに、自分にとって大きな意味があって、また得るものが多い舞台になるだろうなということを感じました。この作品の世界観は、作・演出の小林香さんとの何度かのお仕事の経験で、きっと素敵なものになるだろうなと思っていましたし、実際に期待通りになりました。なんといっても「タンゴ」に正面からぶつかっていったことによって、私の女優としての部分で、女性らしさとか舞台の立ち方など、得たものは大きかったです。
──女性性をてらいなく正面から押し出していましたし、その後の作品でも女性らしさが一気に加わったなと。
物語の中でマリアという人格とは別に出るシーンがあるのですが、そこはすごく大きな振り幅で変化することを要求されたので、思い切ってやるしかなくて、それがよかったという気がします。
──官能的で奥深いタンゴの世界を踊って、ダンスの面でも得るものが多かったでしょうね?
それが、せっかくあんなに踊り込んだのに、そのあと出演したミュージカルはほとんど歌ばかりで、あまりダンスを踊らせていただくチャンスがなかったんです(笑)。そろそろ思い切りダンスを踊りたいなと思っていたところに、この再演のお話をいただいたのですごく嬉しかったですね。
──今回は、キャストと振付に『フォーエバー・タンゴ』で主役をしていらしたクラウディオ・ビシャグラさんが、新参加されているそうですね。
すごく嬉しいです。Chizukoさんが扮するロミーナの夫、ハビエルの役を演じてくださるのですが、振付もしていただいてます。基本的には初演のマリオ・モラーレスさんの振付なのですが、新しいシーンがいくつかありまして、小林さんの意向で作っていただいたところとか、最後のショーの中でChizukoさんと踊るところはクラウディオさんの振付になっています。
──初演の振付とクラウディオさんの振付で、ニュアンスの違うところなどがありますか?
私はそんなに語れるほど詳しくはないのですが、その私が見て感じることは、初演のマリオさんは古典的というか伝統あるアルゼンチンタンゴを忠実に表現する振付をされていたと思うんです。クラウディオさんはブロードウェイ・ミュージカル等で何回も主演されたように、タンゴ以外のダンスも踊られますし、歌も歌われます。そういう、いわばアメリカン・テイストというようなものがあるので、馴染みやすさが加わったのではないかと思っています。


roco_0256

より高いものをみんなが目指している
 

──今回はキャストも半分くらい入れ替わっているのですね。
前回が8人で、そのちょうど半分が新しいキャストですが、さらに今回は1人増えて、進藤学さんというタンゴをされている方が書店の店員さんの役で加わります。オラシオ書店は店長の石井一孝さんと私が演じる店員のマリア、そしてカフェで働く石井一彰さんのミゲル、それに進藤さんのエンリケという4人になります。それに伴って全体の人間関係もちょっと変化します。
──その新キャストの1人が、雪組時代に何度か組んだことのある大月さゆさんですね。
そうなんです。ミゲルの恋人のアメリータ役で出てくれています。アメリータは30才を過ぎて、そろそろ結婚を考えているけれどいろいろ問題もあってという、そういう恋人たちを、2人はよく一緒に残ってお稽古したりしているんですが、その姿がなんだか微笑ましくて(笑)。
──大月さんはいつまでも素朴な可愛さがありますね。
でも3年半ぶりに一緒にお仕事して、さゆちゃんも大人になったなと(笑)。外見は相変わらず可愛いんですけど、中身は確実に大人になっていて、そこが年下のミゲルをリードするアメリータにぴったりなんです。すごくいいコンビです。

roco_0200

──タンゴの世界選手権チャンピオンのChizukoさんには、初演で素晴らしい踊りを見せていただきました。
私も舞台以外ではお会いしてはいましたが、舞台でまたご一緒できるのは2年ぶりなので、本当に楽しみです。Chizukoさんもミュージカルなどに出ていらした方なので、「早くこの舞台に立ちたかった」と喜んでくださっていて、嬉しいです。
──そしてラロ役の西島千博さん、今回もバレエのデュエットが楽しみです。
あのシーンは西島さんの振付なのですが、マリアとラロの距離感がもっとちゃんと見えるようにと、さらにブラッシュアップしてくださっています。もちろん振付そのものは変わらないのですが。演出や音楽の方もそうですが、やはり一度舞台になったことで、こうしたほうがより良くなるという思いが出てきて、より高いものを目指されているのを感じます。

 roco_0269

樹でいえば年輪とか葉っぱの濃さのような深さを

 
──彩吹さん自身は、マリアと取り組むにあたっての変化はいかがですか?
初演ではマリアに自分が似ているところを探して役をとらえ、できるだけ掘り下げたいなと思っていたのですが、やはりタンゴの振りを覚え、振りをこなしという作業が膨大で、そちらに追われていた気がします。今回は精神的に余裕があるぶんマリアのことを深く考えられて、彼女の落ち着きというかアルゼンチンの大地に根を生やした「家系樹」、この作品の背景に出てきますが、そんな存在感を出せたらいいなと思っているんです。それは私がこの2年間にやってきたことで引き出しが増えたことや、自信になっているからだと思います。それから、マリアという人は自分の幸せはさておき、まず周りの幸せを考える人なのですが、そのマリアが「自分も1人の女性として幸せを掴んでいいのかな」と考えるようになる。そこを前回よりちゃんと出せたらいいなと思っています。
──彩吹さんのなかでマリアが、よりリアルになっている感じですね。
リアルです。年齢的にもリアルですし(笑)。
──マリアが朗読会で読むガルシア・マルケスやミラン・クンデラなどの小説が、かなり官能的な描写もあって面白かったのですが。
あのときは朗読すること自体が初めてでしたが、その後、2度ほど朗読の舞台に立たせていただいたので、その経験をうまく生かしたいですね。でもマリアの朗読であるということも忘れないで、より皆さんにイメージしていただきやすい形で読めたらいいなと思っています。
──この舞台に、2年間のいろいろな経験が大きく役立ちそうですね。
やはり再演をするからには初演より絶対にレベルを上げたいですし、作・演出の小林さんも初演でできなかったことがあるので、それは今回は絶対にやりたいと。私も初演のときに「全部出し切った」と思いましたけれど、この2年間で新しく得たことがたくさんあって、それが、樹でいえば年輪とか葉っぱの濃さとか、そういう深さみたいなものに繋がればと思っています。
──そういう意味では、作品自体も、初演がタンゴのエッセンスをダイレクトに伝える公演だとしたら、再演はそれに味わいみたいなものが加わるのかなと。
そう思います。初演はChizukoさんをはじめとする本場の方たちと一緒の舞台で、本物のタンゴをお伝えするために必死でついて行きました。今回も新しい振付があったりするのですが、自分のなかで「こう表現してみたい」とか「ここまで表現できるな」と考えられるようになりました。ですから、より楽しんで観ていただけるようになったと思います。


roco_0294

──ダンスもですが、彩吹さんが歌う「ジョ・ソイ・マリア」も楽しみです。
あの曲の歌詞は「私はマリア、ここで生まれ育ち、ここで生きていく」と、女性の強い意志が歌われていて、それは私が女優として舞台の上で生きていくという思いとリンクしているんです。本当に大切に歌いたい曲ですし、2年前よりさらにお聴きいただけるものにしたいと思っています。この作品はピアソラの名曲がふんだんに演奏されて、有名な「リベルタンゴ」や「レナセレ」、石井一孝さんが歌う「ロコへのバラード」などもありますし、みんなで歌う「チェ・タンゴ・チェ」や、コンチネンタルタンゴの「小さな喫茶店」「小雨降る径」まで、いろいろな楽曲がたくさん出てきます。ここまでタンゴを堪能できる作品はそんなにないと思います。
──そして、小松亮太さんのバンドネオン演奏もあって。
あの世界的なバンドネオン奏者の小松さんが、ライブで演奏してくださるのですから、すごく贅沢ですよね(笑)。
──季節も秋ですし、「タンゴ」を堪能するにはちょうどいいですね。
そうなんです。深まりゆく秋に、素敵な「タンゴの世界」を、皆さまに楽しんでいただければと思っています。


 


587aaff8-s

タンゴ・ミュージカル

『ロコへのバラード』2013

作・演出◇小林香

音楽監督◇小松亮太

振付◇Claudio Villagra、Mario Morales、西島千博、港ゆりか

出演◇彩吹真央/Claudio Villagra、Chizuko/石井一彰、大月さゆ、進藤学、Andres Gonzalez/西島千博(特別出演)/石井一孝

ゲスト出演◇小松亮太

演奏◇キンテート・オセイロ

●9/19〜29◎東京グローブ座

〈料金〉S席 8,500円、A席 5,500円、プレミアムシート11,000円(全席指定/税込) 
〈問合わせ〉アトリエ・ダンカン 03-3475-0360(平日12:00〜18:00) 
●10/4、5◎サンケイホールブリーゼ

〈料金〉8500円(全席指定/税込)  
〈問合わせ〉ブリーゼチケットセンター 06-6341-8888(11:00〜18:00)
〈公式HP〉http://www.duncan.co.jp/web/stage/loco/



【取材・文/榊原和子 撮影/岩田えり】 

話題の舞台を“お得に”観る!チケット日時・枚数限定、お得に販売中!
shop_rogo_sp

header_rogo

side_facebook