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日生劇場でミュージカル『マイ・フェア・レディ』が5月5日から上演中だ(28日まで。大阪公演あり)。

日本初演50周年の記念公演にあたり、キャスト、翻訳、演出、衣装、舞台装置などを一新。名作が新たに生まれ変わった。個性的でチャーミングな役たちが織りなす物語を見ていると、自然に自分の口角が上がっていることに気づく。役たちが愛おしくてたまらなくなってくるのだ。
イライザ役は霧矢大夢、真飛聖のダブルキャスト、ヒギンズ教授は寺脇康文、ピッカリング大佐は田山涼成、ドゥーリトル役は松尾貴史、ヒギンズ夫人は江波杏子、ピアス夫人は寿ひづる、フレディは平方元基、その母のアインスフォード・ヒル夫人を麻生かほ里が演じていて、そのほかに20人のアンサンブルが、いくつもの役で舞台を支えている。


【あらすじ】

ロンドンの下町。貧しい花売り娘イライザは、言語学者のヒギンズ教授の提案で、下町なまりの矯正と淑女になるための礼儀作法を教わることになる。厳しいヒギンズ教授のレッスンに耐えたイライザは見違えるような麗しき貴婦人へと変貌を遂げる。華々しく社交界へのデビューを飾ったイライザだったが、ヒギンズ教授にとって自分は研究対象にしか過ぎないと気づき、彼のもとを去ってしまう…。
 

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劇場に入ると、舞台セットでステージが埋め尽くされている。オープニングでミュージカルナンバーが演奏されるなか、ひとりの花売り娘(美鳳あや)が踊り通ると、その舞台セットがひとつひとつ開いていく。物語への扉が開くように、イライザとヒギンズ教授ら出会う場面へと誘う。古い洋画のプロローグを見ているようで、期待感が高まる。


下町育ちのイライザは、誰に対しても臆することなく立ち向かい、雑草のようにどこでもたくましく生きて行きそうな女性だ。貴婦人へと変化する中で、女性の繊細な面や恋心を覗かせるようにもなる、人間味溢れた魅力的なキャラクターだ。

霧矢イライザは、からっと元気で勢いがある花売り娘っぷりが実に気持ちいい。あの子と友達になりたいと思わせるような、楽しくて可愛い下町っ子だ。物語の後半に向けての感情の変化を芝居と歌にきっちり乗せて表現し、ミュージカルの王道を見せる。

真飛イライザは、くるくると変わる表情や、ひとつひとつの言葉に細かく反応する様子が何とも愛くるしい。人生を楽しく生きている様子を見てこちらも楽しくなる。心のひだを丁寧に表現して、繊細な思いを歌に込める。美しくナチュラルな魅力のイライザだ。

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ふたりのイライザは全く違うのだが、ともにチャーミングで愛おしく、ダブルキャストならではの見どころが際立っていて、名曲の「じっとしていられない I Could Have Danced All Night」は楽しく、終盤の「あなたなしで Without You」は切なく、それぞれの色でいくつものナンバーを歌ってみせる。とくに物語の後半、ヒギンズ教授の元を離れたイライザが、自分の住んでいた下町を訪れるシーンがあって、昔の仲間たちに出会うが、彼らはすでに貴婦人となったイライザに気づかず、彼女に丁寧に接する。物語の冒頭では彼らと一緒に「だったらいいな Wouldn't It Be Loverly?」を楽しく歌った、でも今は「花市場 The Flower Market」を別々に、違う気持ちで歌う。優しいメロディー、行商人たちのハーモニーの温かさ、イライザの寂しさと懐かしさが、それぞれ深く伝わってくる。

 

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ヒギンズは貴族で、音声学の教授。寺脇はマイペースに楽しく自由に生きるヒギンズを、無邪気でユニークな男に見せている。イライザとヒギンズ教授のレッスンは「日向のひなげし The Rain In Spain」の言葉遊びが面白く、掛け合いが楽しい。不器用でイライザへの思いをうまく整理出来ない様子は憎めない。

田山はピッカリング大佐で、常にイライザを見守る紳士的な人物。イライザが安心出来る、一番の拠り所的存在だ。イライザ、ヒギンズ教授、ピッカリングは、舞台上に三角形を描くように常に一緒にいるのだが、出過ぎず引き過ぎずの絶妙な存在感で、さすがのベテランぶりだ。

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ドゥーリトルは酒浸りの自由人。ひょんなことから人生が変わってしまう様を皮肉に思いながらも、人生を楽しむ術に長けた人だ。松尾はミュージカル初出演だが、有名なナンバー「運がよけりゃ With A Little Bit Of Luck」がアンサンブルと息が合っていて素晴らしい。また、結婚を前に最後の自由を楽しむ軽快なナンバー「教会へは遅れずに Get Me To The Church On Time」は、人間のしぶとさや下町で生きる人々の生命力を存分に見せる。

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ヒギンズ夫人はヒギンズ教授の母親。貴族のお高い雰囲気かと思いきや、物わかりがよくイライザの味方となる人物だ。「あの子のファンになっちゃった」という江波が何ともキュートだ。寿のピアス夫人は、ヒギンズ邸の召使いを束ねる貫禄と人間的な懐の深さがあって、召使いたちと歌う「召使いの嘆き The Servant's Chorus」などを聴かせる。

花売り娘のときからイライザに魅せられてしまう貴族の御曹司のフレディは、育ちのよさがそのまま素直な人柄に映し出される素敵な青年だ。演じる平方は名曲「君が住む街 On The Street Where You Live」を伸びやかに甘く歌って魅力的だ。その母のアインスフォード・ヒル夫人の麻生には貴族らしい優雅な雰囲気がある。
 

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数々の名曲の楽しさで耳を楽しませてくれるのが、この『マイ・フェア・レディ』の魅力だが、舞台を彩る衣裳の素晴らしさで目も楽しませてくれる。とくにアスコット競馬場の衣裳がファッショナブルで、全体をモノトーンでまとめ、中心のイライザが白メイン、主要キャストがグレー、アンサンブルが黒メインと、美しいグラデーションになっている。その他の場面もイライザをはじめ主要キャストの衣裳が、次々と移り変わる舞台セットと融合して、伝統あるミュージカル『マイ・フェア・レディ』の世界観を華やかに彩っている。


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日本初演50周年記念公演

ミュージカル『マイ・フェア・レディ』

脚本・作詞◇アラン・ジェイ・ラーナー

音楽◇フレデリック・ロウ

翻訳・訳詞・演出◇G2

出演◇霧矢大夢(Wキャスト)真飛聖(Wキャスト)/寺脇康文 田山涼成 松尾貴史

寿ひづる 平方元基 麻生かほ里 江波杏子ほか

●5/5〜28◎日生劇場

<料金> S席¥9,500 A席¥7,000 B席¥4,000(全席指定・税込)

金沢、福岡、名古屋、大阪公演あり

<問い合わせ>東宝テレザーブ 03-3201-7777

<公式HP>http://www.tohostage.com/myfairlady/index.html



【取材・文/岩村美佳 写真提供/東宝】

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