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昨年の4月に上演され、大評判を呼んだブロードウェイ・ミュージカル『サイド・ショウ』が、シアター1010で10月1日から上演中である。
 

昨年初演された日本版は、結合性双生児のヒルトン姉妹に扮した貴城けいと樹里咲穂という2人が見事な舞台をみせ、また男優陣やアンサンブルなど出演者たちのクオリティの高さもあって、上質のエンターテイメントとなった。

初演時からす再演希望の声が高く、直後にガラコンサートが行なわれ、今年もまた6月に「ミュージカルライブ」という形でガラコンサートを行ない、その席で今回の東京・大阪での再演が発表された。

キャストは昨年に引き続き、妹のヴァイオレットに貴城けい、姉のデイジーを樹里咲穂。
新加入の男優は、ヴァイオレットに恋する青年バディに吉田朋弘、姉妹を支える黒人ジェイクの吉原光夫。初演に引き続き見世物小屋のボスに大澄賢也、デイジーを愛するテリーには下村尊則が参加している。


その『サイド・ショウ』の初日も近いある日、稽古場に貴城けいと樹里咲穂を訪ねた。

 

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【テレパシーでより一体化】
 

ーー待望の再演がいよいよ始まりますが、6月にまずライブがありましたね。

貴城 ちょうど1年ぶりくらいでした。

樹里 またくっついて(笑)一緒に歌いました。
 

ーーそのときも見事なくっつきぶりでしたが、今回の稽古場でもその感覚はすぐに?

樹里 もう、自転車に1度乗れるようになったら、いつでも大丈夫みたいなね。

貴城 そうそう。いつでもくっつけます(笑)。

樹里 フィット感はより増してます。
 

ーー考えてることも、けっこうわかる感じになっているとか?

樹里 今回はテレパシーを導入したいなと。

貴城 言葉で伝えなくても何を考えてるかわかるように。

樹里 「沈黙の会話」という双子の人とか結合双生児の研究書があるそうなんです。それによると言葉は喋ってないのに「うんうん」「だよね」とかうなづいているらしいんです。

貴城 (頭を指して)こことここで会話してるみたいな。
樹里 前は違う人間2人がくっついてるというような感覚でしたが、今回はまさに一体化した形になるといいなと。

貴城 違うことを考えててもより分かり合えるような、より2人一緒に生きていくというテーマに近づいてると思います。

 

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【楽屋にくる人が興奮!】
 

ーー初演時は難易度の高いミュージカルの初演という不安もあったと思うのですが、初日を開けたらどんどん盛り上がって評判になりましたね。

樹里 あの感動は忘れられません。

貴城 私たちも興奮してましたけど、楽屋に来てくださる方たちがみんな興奮して昂揚してて、一生懸命この『サイド・ショウ』について語ってくれるんです。

樹里 そうそう!

貴城 私たちは演じてるから知ってるよというようなことまで、全部解説したり教えてくれて(笑)。それくらい、自分たちが今見た、感じたものについて伝えたくてしょうがないという、ああいう光景はあんまりないよね。

樹里 嬉しかったよね。

貴城 だいたい皆さん泣いてるし。

樹里 ボロボロになってて(笑)。こっちもつられて。 
貴城 そう、ボロボロ(笑)。
 

ーーたいへんな作品のパイオニアになったわけですが、お2人にも大事な作品になりましたね。

樹里・貴城 宝物です(笑)。

樹里 初演の時はスケジュール的にきつい時期で、どうしようと思ったりしましたけど、やってよかったです。音楽のテクニック的にもこれだけのものを歌える機会は少ないですし、毎日それを公演で歌うことでこちらの身につくものがすごく大きいので。

貴城 私は初演はとにかく必死でした。樹里さんだからやれた部分は大きいと思います。稽古3日目で敬語禁止令が出されました。

樹里 敬語でしゃべってたら絶対に姉妹になれないから。

貴城 それまでちゃんと敬語だったのに、今やすっかり(笑)。本当に最強のパートナーです。この作品に出会えた時期もよかったと思うんです。退団直後だったら難しすぎたと思うから。
 

ーー貴城さんはニューヨークまで舞台のフィルムを観に行ったんですよね。

貴城 初演というだけでもプレッシャーなのに、すごく異色な作品ですから、どうなのかな?という気持ちがありました。そしてニューヨークで映像を観て「すごい」って感動してメールして(笑)。でも、素晴らしさはわかったけど、どうしたらこの良さを伝えられるだろうという不安もありました。だから初日が開いて、お客様の拍手とか空気感を感じて、初めて「やってよかった」と。

樹里 本当にお客様の反応で安心したし、助けられた感じだったよね。

貴城 劇場が一体化してる感覚がすごく伝わってきて「ああよかったな」と。 

 

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【くっついてるのが自然になりすぎて?】
 

ーーなぜこの作品がこんなに愛されると思いますか?

樹里 音楽が素晴らしいのはもちろんなんですが、2人の生き様だと思います。本当にたいへんだっただろうなと。でも2人ともどんな普通の人よりも普通だしピュアで。だからこそより辛いこともあっただろうなと。でもそれを乗り越えて誇り高く生きていくんですよね。

貴城 強くなっていくんです。見世物小屋にいたときよりも2人なりに強くなって、一幕での記者会見では傷ついていた部分も二幕のパーティではかわせるようになっているし。そこに行くまでの葛藤はやっぱり2人なりの闘いがあったと思うんですけど、でも根底にあるピュアさは変わらずにあるんですよね。
 

ーー2人だから強くなれる部分もあるし、逆に2人だから縛り合う部分も出てきますね。恋の悲しみとか。

樹里 1人でも恋なんてたいへんなのに(笑)。自分でも自分のコントロールが効かなくなるのに、横にね。

貴城 洩れなくついてくるし(笑)。でも映画の『フリークス』の中にもあるように、1人が恋人とハグしてるともう1人も幸せそうにうっとりしてて、「あ、これだよね」って。幸せも一緒に感じるんだなと。もちろん絶望感も一緒に味わうんですけど、支え合うし、補い合うし。

樹里 最強だよね。

貴城 最強!
 

ーー初演の時よりアプローチがより深くなってますが、稽古中に新たな発見などありますか?

樹里 全部クリーンナップしてるので発見は多いです。

貴城 発見だらけ!

樹里 気がついたところはディスカッションして変えていってますから、ずいぶん違う印象になると思います。振付の大澄賢也さんが、また新しい振りを考えてきてくれて。

貴城 より華やかに、より高度なテクニックで。

樹里 より激しくね。くっついたままこんなこともできるんです、みたいな(笑)。

貴城 あんなこともできますけどとか、こちらからもリクエストしてます。

樹里 私たちがくっついてできることを最大限に表現しますので!

貴城 「いつでも一緒」などはとくにショーアップされたナンバーですから、初演を観た方には「1年経ったらここまでやるか!」というのを見ていただきたいし、初めての方には「くっついたまま?」とびっくりしてほしいですね(笑)。

樹里 最近、私たちがくっついているのが自然になりすぎて、あまりびっくりしてもらえないのね(笑)。

貴城 すごいことしてるのに気づいてもらえない(笑)。

樹里 これ自力ですから。自力でついてるんですから(笑)。

貴城 いまだに服がつながってると思ってる人もいるから(笑)。

 

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【恋へのアプローチも変化】
 

ーー再演でキャストも変わって、貴城さんは新しい恋人ですね。

貴城 バディが吉田朋弘さんになりました。今回は私のヴァイオレットは一目惚れで、無防備に好きになってます。

樹里 恋に関しては出かたがお互いに前と逆になってるのね。

貴城 別に話し合ってるわけではないのにね。

樹里 デイジーはもともと考えるほうだから、ちょっと警戒心を表に出すようになって。

貴城 そしたらヴァイオレットがなんだか無防備になっちゃった。

樹里 自動的にね。デイジーは初演ではテリーにすぐファーとなっていたけど、今回は最初は「あなた誰?何しに来たの?」というような警戒心をきちんと見せようと。デイジーは姉だし、性格的にもA面とB面があっていいんじゃないかと思ったので。

貴城 ヴァイオレットがそのまんまだから(笑)。

樹里 そして警戒心の裏で「もしかしてあの人を好き?」とか揺れてたりする初々しいところが見え隠れすると、この双子の世の中に慣れてない部分も、より出せるかもしれないと思うんですよね。
 

ーーそうなると相手役の下村尊則さんも変化してきますね?

樹里 テリーは今回やっと私のことを好きになってくれたみたいで(笑)。

貴城 えーっ?!

樹里 というか、テリーには恋に落ちる瞬間の場面がないんです。気がついたらデイジーを好きになってて「何故か忘れられない」と歌ってて(笑)。この間、演出の板垣さんと下村さんで「今のデイジーなら、がんばってるけどまだまだ世間知らずで、なんか守ってあげたくなる」と。

貴城 そうなんだ!

樹里 でも、二幕にいたっても、私とテリーは恋愛感情をそのまま出さないところがあるんですけど、この子たち(ヴァイオレッとバディ)はまんまで「好き!」「きらい!」って(笑)。

貴城 バディもそういうタイプだから(笑)。

樹里 今回はそういう恋の形も、よりクリアにより深く見えてくると思います。

貴城 お芝居っていいなあと、稽古しててすごく思いますね。ライブもすごく楽しかったけど、やっぱり全編通してやれることが嬉しい。

樹里 歌にも気持ちが乗るのね。

貴城 再演できたことに感謝して、改めてがんばりたいなと。

樹里 うん。思います。
 

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ブロードウェイ・ミュージカル

『サイド・ショウ』

脚本・作詞◇ビル・ラッセル

作曲◇ヘンリー・クリーガー

演出◇板垣恭一

出演◇貴城けい、樹里咲穂、大澄賢也、吉田朋弘、吉原光夫、下村尊則 他

●10/1〜10◎シアター1010

●10/15◎森ノ宮ピロティホール

〈料金〉11000円 (全席指定、税込)未就学児童の入場不可

〈問合せ〉東京/03-3202-5400 コマ・スタジアム

大阪/キョードーインフォメーション 06-7732-8888

http://www.sideshow.jp/(PC&携帯)


 

【取材・文/榊原和子 撮影/冨田実布】

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