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宙組公演『美しき生涯』(作・大石静、演出・石田昌也、新人公演担当・岡本寛子)の、東京での新人公演が7月28日に行われた。

主演となる石田三成を演じたのは、愛月ひかる(本役・大空祐飛)。
前回の『誰がために鐘は鳴る』の新人公演に引きつづき、2度目の主演である。
下手からセリ上がりで登場した際の華やかさは抜群だった。
忠義と愛との間で揺れる三成の心情を丁寧にみせ、堂々とした主演ぶり。
歌声も台詞声もしっかりとした芝居の中での男役姿と、最後の挨拶で見せたおっとりとした役を離れた姿との間には、まだまだ下級生らしいギャップがあり、ほっこりした気持ちにさせられた。
正統派で品のある雰囲気が愛月の魅力かと思うのだが、そこがまた日本物のしっとりとした空気にも合っていたと思う。 

相手役となる茶々を演じたのは瀬音リサ(本役・野々すみ花)。
銀橋でのソロなども綺麗に聞かせて、歌える娘役なのだという印象を第一に持った。
芝居も本役の野々の茶々をなぞるようにそつなくこなしていたが、その一方で個性に欠けてしまったところが惜しい気がする。
宝塚で1回、東京で1回、たった2回限りの新人公演で役として生きることは本当に難しいことだと思うが、段取りや台詞に捕らわれることなくもっと茶々として息づくことができたら、そこから瀬音にしかない何かが生まれたのではないだろうか。

忍びでありながら茶々に思いを寄せる、疾風役には蒼羽りく(本役・凰稀かなめ)。
感情を殺し影で生きる身でありながら、三成の誠実さや茶々への思いに触れ、徐々に人間らしい熱さを見せるようになるのが疾風。
冷徹なところから、人としての心を感じさせるところまで、変化をしっかりとみせた。
愛月共々、蒼羽も歌は特別得意ではなさそうなのだが、二人とも押し出しよく歌いきることができるので不安は感じない。これからどんどん上手くなっていくのだろう。
やわらかで大きな光を感じさせる愛月と、見た目はクールでありながら内側に熱を秘めた蒼羽とが銀橋に並ぶと、宝塚らしい華やかさが一層際立つ。良い同期のコンビだ。

そのほか、福島正則役の澄輝さやと(本役・北翔海莉)、豊臣秀吉役の松風輝(本役・未沙のえる)、加藤清正役の風馬翔(本役・悠未ひろ)あたりも印象に残る。
澄輝は新人公演の最上級学年らしい落ち着いた、すっとした舞台姿が綺麗だった。
松風は秀吉という狡猾さがもとめられる難しい役どころであったのだが、ちょっとした表情や仕草で、腹の底では何を考えているのかわからない秀吉の嫌らしい部分を感じさせる好演。
風馬は元気があってパワフルな舞台姿がぱっと見たときに目に入ってくる。覚えてもらいやすい何かがあるのも、宝塚では重要なことかもしれない。

娘役では、おねを演じた百千糸(本役・美穂圭子)が歌に芝居に活躍していたし、さぎり役の藤咲えり(本役・純矢ちとせ)も、きりっとした美しさがくのいちらしく、演技の中にも積み重ねてきた経験を感じた。またこの公演での退団が決まっている七瀬りりこには、大坂城の中庭の場面で加藤清正の妻役としてソロがあり、その豊かな歌声には大きな拍手が送られていた。

日本物ということで所作や立ち回りなど、普段とはまた違った苦労も多い新人公演だったと思うが、それぞれが自分の役割を精一杯果たそうとしている意識が感じられる清々しい新人公演だった。

 



<新人公演>
『美しき生涯−石田三成 永遠(とわ)の愛と義−』

作◇大石静
演出◇石田昌也
新人公演担当◇岡本寛子

●7/28◎東京宝塚劇場


<本公演>
美しき生涯−石田三成 永遠(とわ)の愛と義−』

作◇大石静
演出◇石田昌也

レヴュー・ロマン
ルナロッサ−夜に惑う旅人−』

作・演出◇稲葉太地 

●7/8〜8/7◎東京宝塚劇場

<料金>
SS席 11,000円、S席 8,500円、A席 5,500円、B席 3,500円(税込)

<HP>
http://kageki.hankyu.co.jp/index.shtml


 

 

【文/岩見那津子】

演劇キック演劇情報コーナーhttp://blog.livedoor.jp/enbublog-forecast/