姿月あさとというジャンルの確立をめざして

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ソロのアーティストとして、宝塚退団後はミュージカルからライブまで、フィールドも広く活躍している姿月あさと。

クラシックからポップス、ロック、あらゆるジャンルを歌いこなす歌唱力は、ますます磨きがかかり、柔らかく深い歌の世界に聞くものを連れていってくれる。

宝塚時代から定評のあった芝居心は、ミュージカルでももちろん発揮されているが、昨年末に開催された秋元康脚本・プロデュースのディナーミュージカル『Actress』で、 女優の内面描写を綴ったストーリーをみごとに表現してみせた。

その『Actress』で好評だったオリジナルの楽曲を、今度はガラ・コンサートとして、新たな光を当てるという。宝塚歌劇団を退団して11年目、ますます意欲的な姿月あさとにこれからの活動を含めてインタビューした。


【1人の女優の裏と表】


——6月の 『「Actress」ガラ・コンサートvol.1』は、昨年のディナーミュージカル『Actress』をもとに発想されたということですが。
 

そうです。あのときはダンサーさんはいましたが、音は生ではなくてミュージシャンがいなかったんです。今回は3人のミュージシャンを入れた形で、逆にあのときあった楽屋とか鏡とかセットはなく、楽曲だけで1人芝居を見ていただこうということです。
 

——あのときはまるごとお芝居の中の歌でしたが、今回はいわゆる歌として歌うという感じですか?
 

お芝居は入ります。ただ、より音楽的にはなると思います。
 

——会場がMLB Caféというライブハウスで素敵なところですね。
 

とても綺麗でお洒落な会場です。360度から見える円形シアターのようなカフェで二階席もあって、円い感じのライブハウスです。
 

ーー12月の 『Actress』は、これまでにない形のディナーショーでした。 
 

セリフが一言もなくて、始まりがガウン姿で出てきていきなり歌い出すという演出でしたから、観ていたお客様は「何が起きたのだろう」と思われたようです。ちょうどクリスマスのディナーショーでしたが、皆さんの固定観念を逆にとりはらって、歌詞とお芝居をじっくりと見ていただきたいというコンセプトで構成していました。
 

——ストーリーの流れは今回も同じですか?
 

ディナーショーは時間の制約があったんですが、今回はもう少し時間が取れますから、お芝居の間の時間もかなり取れると思います。今回ならではという演出が後半の第2部で、1部の最後でブザーが鳴って楽屋のドアを開けて出ていったその女優が舞台上で行なうライブになるんです。ですから2部の始まりは舞台上に女優が登場するシーンから始めようと思っています。
 

——舞台に出る前と舞台、両方見せてもらえるわけですね。ディナーショーでは、ラストシーンのあと、彼女が何を歌うのか想像をかきたてられました。その歌が具体的に聞けるわけですね。
 

そこで姿月あさとのいろいろな面を観て、聞いていただければいいなと。1部が全部オリジナルな曲ばかりなので、2部では皆さんの知っているような曲も入れて。この2部仕立てのスタイルを、これからシリーズとして続けていけたらいいなと思っているんです。
 

ーー 『Actress』の主人公は、姿月さんの女優としての顔がリアルに映し出されていたような気がします。
 

舞台に出て行く前のアクトレスの姿には、私も含めさまざまな女優さんの生き方、過去、心などを描き出したいと思ったんです。朝起きて鏡を見て、楽屋で舞台に出ていくまでの自分を作り上げて、そして出て行く。
 

ーーその内面のドラマが、姿月さんに重なって、たとえば不安、恐怖、嫉妬、自信、プライドなどいろいろな感情が見えました。
 

たぶんいちばん出ていたのは孤独だと思います。自分の中の孤独と闘う、それがいちばん大きいから。
 

ーー演じることはそんなに孤独ですか?
 

男性でも女性でも最終的に1人で、私を含め、みんなそうだと思います。そういう道をあえて選び、闘っているし、これからも闘い続けるしかないです。



【自分のオリジナルを知ってもらう】


ーー今回、たくさんの楽曲を歌うと思うのですが、とくに気に入っている曲などありますか?
 

 『Actress』のオリジナルで、秋元さんに「夜明け」という曲を作っていただいたんですが、これをずっと自分の曲として歌っていきたいので、今回もじっくり聞いていただければいいなと。
 

ーー自分のテーマ曲が1つ増えたわけですね。
 

私がこういう活動を続けている目的の1つに、自分のオリジナル曲、オリジナル作品に巡り会いたい、そしてそれを聞いていただき、広めていければいいなという思いがあるんです。宝塚を退団して11年目、ずっと自分の歌に巡り会いたいということでやってきたんです。それはそんなに簡単なことではないんですけどね。
 

ーークラシックからロックまで、未知の領域にチャレンジしてるのは、そういう思いもあるからなんですね。これからチャレンジしていきたい方向は見えていますか?
 

もっと熱いもの、もっと情熱的なパッションの表現できるような歌に出会いたいと思ってます。そして、いろいろなジャンルをやってきて、それは自分の武器でもあるので、この『 「Actress」ガラ・コンサート』の2部に入れていきたいし、素晴らしい音楽仲間にも出会って財産になってますから、このライブでそういう出会いも生かせるかなと思ってます。
 

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【フレキシブルな榊原大さん】


ーーその他の活動として、5月はステージが目白押しですが、まず5月15日に榊原大さんとの軽井沢のデュオコンサートがありますね。
 

大さんのピアノは、まるでご自身が鍵盤に乗り移ってるみたいで、そしてお互いに身体が楽器みたいなセッションができるんです。私のやりたいことをよく理解してくださるかたです。チャレンジャーで、ご自身へのチャレンジとして、クラシックを1人でやるというのを始められてて、原点に戻るという基本を大事にしていらっしゃいます。
 

ーー『THE PRAYER』シリーズでも、すごく息が合ってるなと思います。
 

フレキシブルという言葉がぴったりで型にはまらないで、その時その瞬間で、お互いに出てくるものを、思うぞんぶん出し合えるんです。私はクラシックの世界に関しては、まず譜面をもらっていかにそれを確実に正確に歌うかに一生懸命だだった。でも、ジャズやセッション的なもの、書かれていないものを出すこと、表現するのには時間がかかったんですが、大さんがここまで導いてくださったと思ってます。
 

ーー軽井沢の大賀ホールですが、素敵なホールみたいですね。
 

5月の軽井沢はすごく綺麗ですよ。ピアノとのデュオです。生のピアノとのデュオは久しぶりです。今まで歌ったことのないポップスとか、皆さんが知ってる曲も歌います。


【越路吹雪さんとの出会いを生かして】


ーーそして5月19日に越路吹雪さんへのトリビュートコンサート。
 

今回、声をかけていただいた機会に、越路さんのシャンソンを全部聞いたんです。そしたら知ってる曲がいっぱいあって。ああ、私はいつのまにか沢山聞いていたんだなって。歌うのは「パリの空の下セーヌは流れる」と「恋ごころ」などで、歌いたい曲を選んだのですが、「私ってこういう曲を好きなんだ」って自分でも新鮮でした。
 

ーー意外なようでもあり、姿月さんらしくもあります。
 

宝塚音楽学校って、カンツォーネとシャンソンの授業があったんですよ。教本とかもらって歌ってました。それに舞台でもいろいろ歌ってて。でも15〜16歳で歌詞の意味もまるでわからないまま歌ってた。今、大人になって出会うというのは、やっぱり全然違いますね。歌詞の1つ1つにのめり込みながら歌えそうです。
 

ーーこの 『「Actress」ガラ・コンサート』の2部にシャンソンもいいですね。
 

3月の『THE PRAYER V』では「ケ・サラ」を歌ったんですが、あれも好きです。今回も歌います。それから音楽担当の先生に歌ってと言われたのが「筏流し」で。
 

ーーすごいですね。越路さんならではのいなせな歌ですね。
 

越路吹雪さんを宝塚の出身というのを知らないかたも多いと思うんです。それくらい歌手として女優として確立されていたかたで、私もずっと姿月あさとというジャンルをどう確立したらいいのか探ってる最中で、ですからこういう形で越路さんという方と出会えたことはいいきっかけになりました。そして、初舞台からまだ23年目なのだから、焦らず、かたくなにがんばろうと。自分という信念を持ち続けるしかないと思っているんです。


【何かが降りてくる瞬間】


ーー5月30日は元宝塚歌劇団理事長だった小林公平さんの1周忌で、そのチャリティコンサート出演がありますね。
 

宝塚歌劇100周年に向けての、こういう節目節目に呼んでいただけるのは嬉しいです。公平先生は海外公演に功績のあったかたですから、今回は海外公演のトップだけが出るという趣旨で。私は1998年の香港公演のトップでした。あのときに広東語で歌ったものを、今度は日本語で歌います。
 

ーーそして6月7日には、震災で中止になった『THE PRAYER V』が振り替え公演が行われるとか。
 

そうなんです。3月14日の東京のスィートベイジル公演が中止になったので、振り替え公演をします。 こちらは 『「Actress」ガラ・コンサート』とはちょっと違う素顔の私というか、このままの私です。ミュージシャンのかたとフリーダムな感じで好きに作っています。
 

ーーお芝居も、昨年は30日間ロングランの『Dianaー月の女神ー』がありましたが、役者の姿月あさとは健在でした。
 

お芝居は稽古場では計算しなければいけないのですが、公演が始まるとその場で作りあげていくんです。30日間、毎日お客様が違うし、とにかくその作品に慣れてしまわないことが大事だと思っています。慣れると柔軟性がでてきてより深くなるんですが、反比例してどんどん厳しくしていかないと決め事になってしまう。相手のセリフも、初めて聞くセリフとして捉えて対応していかないと全部作り物になってしまうんです。1回限りの芝居を生きることと、深みという、一見反比例するものを成立させていかないといけないんです。
 

ーーそこに集中する力がすごいなといつも思います。
 

お芝居は2時間半、歌は4分、でも同じことをしてるんです。役が降りてくるというか歌が降りてくる、その自分じゃない時間、その瞬間をいかに作りだせるかですね。自分の体を借りて何かが降り注いでくる、そういうことがやっぱり好きなんだなと思います。


姿月恵比寿用写真

 

■予定■

 『「Actress」ガラ・コンサート』

出演◇姿月あさと

演奏◇大石真理恵 (マリンバ、パーカッション、コーラス、アレンジ)、杉野裕(バイオリン)笠原あやの(チェロ)

●6月24日(金)11時半開場 13時開演/18時開場 19時半開演

恵比寿「actsquare」MLB cafe 2階

〈料金〉8000円(税込・飲食代別)

〈問合せ〉actsquare  03-3448-8902 

http://actsquare.com/



■その他の予定■

5/15◎軽井沢大賀ホール 

『姿月あさと×榊原大 デュオコンサート』

〈問合せ〉0268-72-1158 リモージュコンサート 

http://091225.jp/


5/19◎神戸国際会館

没後30周年記念『越路吹雪トリビュートコンサート』

〈問合せ〉06-6966-6555 グリークス 


5/30◎宝塚宝塚大劇場

小林公平没後1周年チャリティスペシャル『愛の旋律〜夢の記憶』

〈問合せ〉0570-00-5100 宝塚歌劇インフォメーションセンター


6/7◎六本木スイートベイジル

『Shizuki Asato Birthday live Tour 2011 THE PRAYER V』

〈問合せ〉TB 139 TEL 03-5474-0139




【取材・文/榊原和子 撮影/冨田実布】