424日に千秋楽を迎えた『愛のプレリュード/Le Paradis!!』で花組トップスターの真飛聖が宝塚を退団した。1995年星組公演『国境のない地図』で初舞台を踏んだ真飛はそのまま星組に配属され、2005年に花組に組替え。前トップスター春野寿美礼の後を継ぎ、2008年より花組のトップスターに就任し、『太王四神記』のタムドクや、『相棒』の杉下右京、『虞美人』の項羽など幅広い役を演じてきた。退団公演となった『愛のプレリュード』ではフレディー・クラークという一人の男性として生きる中に男役の集大成をみせ、ショー『Le Paradis!!』では花組の男役らしい色気や、組だけでなく客席全体をも包み込むような大きな包容力を感じさせてくれた。
同じくこの日に宝塚を退団したのは眉月凰、真野すがた、祐澄しゅん、天宮菜生、天咲千華、鳳龍アヤ、朝陽みらいの7名で通常のショーの後に退団者を中心とした真飛聖サヨナラショーが行われた。真飛のショー代表作『EXCITER!!』ではじまり、『EXCITER!!』で終わるサヨナラショーは、退団の寂しさすら吹き飛ばす笑顔に溢れた真飛らしいものとなった。サヨナラショーの内容は以下の通りである。

【真飛聖サヨナラショー】 

1.「CHANGE LIFE」(09年、10年『EXCITER!!』より)
真飛聖

2.Passionate Night B(09年、10年『EXCITER!!』より)
真飛聖、他男役

3.「インシャアッラー」(08年『愛と死のアラビア』より)
真飛聖、壮一帆、愛音羽麗

4.「僕の悪いクセ」(09年『相棒』より)
真飛聖、壮一帆

5.「フィフティ・フィフティ」(09年『フィフティ・フィフティ』より)
真野すがた、華形ひかる、桜一花

6.「MIND TRAVELLER(06年『MIND TRAVELLER』より)
真飛聖

7.「愛のはじまり」(10年『麗しのサブリナ』より)
真飛聖、蘭乃はなのデュエットダンス

8.「愛のかたち」(09年『外伝ベルサイユのばら〜アンドレ編〜』より)
真飛聖、眉月凰、祐澄しゅん、天宮菜生、天咲千華

9.「花は花」(10年『虞美人』より)
真飛聖、眉月凰、真野すがた、祐澄しゅん、天宮菜生、天咲千華、鳳龍アヤ、朝陽みらい

10.「希望の瞳」(09年『太王四神記』より)
真飛聖、花組全員

11.Life Exciter!!」(09年、10年『EXCITER!!』より)
退団者7

12.「ドリームゲート〜チェンジBOX〜」(09年、10年『EXCITER!!』より)
真飛聖、Mr.YUとして登場

13.「EXCITER!!(09年、10年『EXCITER!!』より)
チェンジBOXで変身した真飛が花組を率いて歌い踊る

なんといっても、Mr.YUの大階段からの登場と、その後の変身から幕が降りるまでの盛り上がりが真飛を中心とした花組の団結力を象徴していたように思う。終演後に行われた会見で記者から「この公演で真飛さんが一回り大きくなった印象を受けた。」という言葉が出たが、まさにその通りである。不安な状況の下、最後までトップスターとして舞台を務めきった真飛からは、組を守りたいがゆえに生まれた大きさと、たくさんの愛、そして清々しさが感じられた。以下、会見の模様を紹介する。


【真飛聖退団記者会見】

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──宝塚は真飛さんにとってどんな場所でしたか?
想像を超える幸せな空間で、幸せな時間を過ごせた場所ですね。想像していなかったです。ここまで自分が宝塚を愛せると。そして、こんなにも幸せな時間を過ごせると思っておりませんでしたので、繰り返しますが(笑)、想像を超える時間を過ごせた場所、でした。

 ──チャリティー公演ということで公演後にご挨拶をされたり、ロビーに立っていらっしゃったり…ご苦労様でした。真飛さんは初舞台も阪神大震災後の再開公演でしたがそれを経験したことや、何か今回の震災を経ての思いがあれば。
初舞台公演だということも重なって、星組の方々が一丸となっていた空気を私たちもその時に感じていました。そこで「乗り越えられないものはない」と感じましたが、今回また改めて、自分が退団とはまた関係なく、やはり乗り越えられない事を神様は人に与えない、本当にその通りなのだと思いました。
今、募金の事でご苦労様と言っていただいて、みなさまからも、「無理をしないでね。」とよく声を掛けていただきましたが、でも、こういった言い方は間違っているかもしれませんが、私にとって、あの時間はある意味本当に幸せな時間で。
本来ならば舞台からしか皆様にはご挨拶できない、感謝の気持ちを舞台からでしかお伝えできないのですが、ロビーにいて観劇されたみなさまの姿を「あ、こうやって帰って行かれるんだ。」と初めて見ることができましたし、そこでみなさまと会話できたこと、目での会話、本当にそれは義援金の協力という形ではありましたが、とても大切な、かけがえのない時間でした。

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──改めてステージを降りられたお気持ちと、これからやってみたいことがありましたら。

今このように記者会見をしておりますけれど、まだまだ男役でキザれるんじゃないかと思っておりますし(笑)、明日も公演があるならば、同じ事はできると思うんですね。今回はこうして幕を無事におろすことが目標であり、本当に今やり終えたばかりなので、「本当に終わったのかな?」と。もしかしたら夜寝るまで、そして次の日、公演がないと思うまでは実感はわかないのかもしれません。でもそれが本当は幸せなことかもしれないと思うくらい、今、満たされた時間をゆっくりと過ごしている感じです。
これからのことは、正直に申し上げまして本当に何も考えておりません。この状況で公演をさせていただけたことだけでも感謝しておりますので、今、次のことを考えることは、私にはできませんでした。
とにかく目の前にあることを全力で、100%の思いでやっていくことが私の務めだったので、明日、12時が過ぎて「あぁ、私どうしよう。」って思うのかな、と(笑)。ゆっくりと、焦らずに自分がやりたいと思うことを、少しずつ見つけていきたいと思っています。

 ──外の舞台に立つ予定も今のところはない?
そうですね、今のところ。もちろん宝塚の舞台には立てないですけど(笑)、立たせてもらえる?いや、立たせてもらえないですね(笑)、立たせてもらえませんけれど、今後、外の舞台ということで、そのことも本当に何も今は考えておりません。もう、この舞台でこんなにも素敵な時間を過ごせる事ってないんだろうな、と思いながら1ヶ月間を過ごしていたので、今は、すごく清々しくて…だからゆっくり考えたいと思っております。

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──走り続けてきた自分へ贈る言葉と、まもなく
100周年を迎える宝塚歌劇に残していく言葉があったら教えてください。
とても難しいですが、ただ、今の自分に言えることは、心に嘘をつかずに、素直な思い、素直な気持ちで諦めずにいたからこそ、この時間が持てているんだということで、「諦めなければこういう時間って、持てるんだね。」と自分に語りかけております。
100周年に向けて今はこういう状況ですが、いろいろな思いを抱えながらも宝塚を愛し、そして1ヶ月間観に来て下さったたくさんの方がいらっしゃいました。みなさまがいてくださるからこそ、宝塚歌劇団というのは成り立っているということに改めて深く気付くことが出来ました。
こういうお客様と共有できる空間というのは、宝塚以外、世界にどこにもないと思うので、みなさまにたくさんの心ある舞台、そして愛を一緒に感じられる時間を宝塚は作っていって欲しい思いますし、作っていくと信じております。

──真飛さんはこの公演で、一回り大きくなられた印象を受けたのですが、ご本人の自覚は。
いや(笑)、ございません。まだまだ未熟者ではございます、本当に。ただ地震がありまして、花組のみんなで話し合いを重ね、その中で花組がもしかしたらバラバラになってしまうのではないか、という不安をみんな感じていたと思うんです。でも行こう!と決めた、そして私について行こうとみんなが思ってくれた、その思いを私は全力で受けて止め、みんなをただひたすら引っ張ってきたので、ピーンと糸はたぶん…今も張っているかもしれないし、興奮状態だとは思うんですが、でもおかげで元気でいられました。
よく睡眠もとっておりましたし(笑)、「最後なのに私こんなに元気なの、なんでだろう?」思うぐらい元気に。やはり花組みんなの思いと、宝塚を支えて下さるすべてのみなさまの思いで、もしかしたら私がそういう風に見えたのかもしれません。

 
記者からの質問に答え、会見場を去る際に真飛は一言「これからも花組をよろしくお願いいたします。」と言葉を添え、頭を下げた。真飛が、まず第一に組のことを考え、花組を笑顔で引っ張ってきた、大きな優しさをもったトップスターであったことを、この最後の一言で改めて実感した。

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花組公演
ミュージカル・ロマン
『愛のプレリュード』作・演出/鈴木 圭

『Le Paradis!!−聖なる時間(とき)−』
作・演出/藤井大介

3/35〜4/24◎東京宝塚劇場



【取材・文/岩見那津子】【撮影/岩村美佳】