宝塚を退団してから、まもなく丸3年になる元星組トップスターの湖月わたる。女優としての仕事ぶりも順調で、今年7月には『COCO』で鳳蘭と共演、女性らしい魅力とミュージカルスターとしての実力を発揮してみせた。そしてこの10月9日には、ラブコメディミュージカル『ALL SHOOK UP(オール・シュック・アップ)』の幕が開く。そのあとも出演作品が目白押しという湖月わたるに、熱気溢れる『ALL SHOOK UP』の稽古場で話を聞いた。
【退団後、初めての再演作品】
ーーこれは確か2年前、2007年12月に初演でしたね。
退団して初めての作品が『くたばれ!ヤンキース』で、そのあと、ダンス公演の『DANCIN'CRAZY』とか『夜叉ケ池』の男役などがあって、女性役は2度目でした。それなのにいきなり坂本(昌行)さんと尾藤(イサオ)さんに一目惚れされる役で、すごいプレッシャーだったのを覚えてます(笑)。
初めてウェディングドレスやピンクのドレスを着て。『くたばれ!ヤンキース』のローラは魔女でしたから、考えてみたら生身の女性を演じるのは初めてでした。今回はあれから2年経ったので少しは慣れたかなと(笑)。
ーーメインのメンバーも玉置成実さんと神田恭兵さん以外は、初演とほとんど同じですね。
演出のデビッド(スワン)さんもその安心感をベースに、再演ならではのアイデアを盛り込んでいらして、私たちへの要求もグレードアップしているのがわかります。役を深めていきつつ初演のパワーを忘れないでということでしょうね。玉置さんは、私の扮するミス・サンドラが好きになるエド役なんですが、とても新鮮です。初演のときは宙組の花影アリスちゃんで、彼女も華奢でしたが、玉置さんも小柄で本当に可愛くて、私と身長が20センチ違うんです(笑)。外見ではなく中身に惚れるというのがサンドラなので、身長差は気にせず恋におちます。
ーーサンドラ本人も見た目とのギャップがある人ですよね。
外見はセクシーなのですが、芸術や学問の世界を追い求めている女性なので、坂本さんのチャドのカッコよさには振り向かないんです。
ーー坂本さんが座長として一回り大きくなってるのを感じました。
以前にも増してたくましくなられてますよね。相変わらずの美声で「ラブミー・テンダー」を歌っていただくんですが、サンドラは最後に固めの本でバシッと頭をなぐるのが申し訳なくて(笑)。初演の稽古場で初めて「ラブミー・テンダー」を見つめられながら歌われたときは本当にドキドキして、坂本さんに「こんなふうにされるとドキドキして困っちゃう」と言ったら、坂本さんが「自分もこの間までこうやってたんでしょ?」って(笑)。
ーー2年の間に女性らしくなっただけでなく、音域も広がりましたね。
1作目の『くたばれ!ヤンキース』は、地声でも大丈夫な音域でしたけど、このサンドラは裏声のけっこう高い音を出すので、かなり苦労しました。なにしろ裏声で歌うのは初めてでしたし。音域を広げても本番でうまく力が抜けないと苦しかったりしたんですが、今回はそこは少し大丈夫になったかなと。女性らしくしなくてはという神経を克服したぶん、楽に歌えてるような気がします。それにともなってお芝居の中身もより深まればいいなと思っているんですが。
【最後はライブ感覚で】
ーーこの作品はテーマが愛で、しかも愛のなかった町に最後は愛が溢れるというのがいいですね。
たくさんのカップルが出てくるし、いろいろな恋愛が盛り込まれていて、本当の愛というものをラストで教えられる形になってると思います。とにかくハッピーになれるし元気になります。
ーーエルヴィスの名曲はもちろんですが、音楽が素敵で、すごくノリのいいミュージカルですね。
懐かしいエルヴィス・プレスリーを楽しんでいただけますし、ライブ感覚でノリノリになっていただきたいですね。この作品は初演時にお客様がすごくのってくださったのが印象的で、お客様とのコミュニケーションを感じられる作品なんです。ですから最後はまたお客様と一緒に盛り上がりたいと思っています。
(vol.2に続く)
『ALL SHOOK UP』
●10/9〜17◎青山劇場
●10/23〜25◎シアターBRAVA!
● 11/7〜8◎愛知県芸術劇場 大 ホール
演出・振付◇デビッド・スワン
脚本◇ジョ−・ディピエトロ
出演◇坂本昌行 玉置成実 湖月わたる 岡田浩暉 諏訪マリー 尾藤イサオ 他
<料金>青山劇場/SS席¥12000 S席¥11000 A席¥9500
<お問合せ>東京公演/Quarasエンタメ事務局 0570-044-099
東京グローブ座 03-3366-4065
大阪公演/キョードーチケットセンター 06-7732-8888
名古屋公演/キョードー東海 052-972-7466
【取材・文/榊原和子】