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ーーこの名作に宝塚版としてどんな特色を持たせるのか。また大空、野々さんのどんな魅力を引き出したいか。

小池「宝塚というのは組単位で公演してますから、宙組の79名いるその人たちが何らかの役割りを、本人たち自身もそしてお客様にも意味を感じていただける出しかた、作品構造が必要だと思うんです。
映画でも役の数は意外と多いんですが、短いなかでものすごいスピードで進んでいく作品ですし、今みても若い人とか高校生くらいの人が見ても面白いと感じると思います。それは情報量がものすごく多いからで、そういう点では役はあるんですけれども、それぞれの役が有機的に絡んで話が進んでいけばいいなと思っています。
沢山の生徒がただ出ていたというのではない意味のある存在というか、『カサブランカ』という物語に、リックとイルザのラブロマンスにからんで、ダイナミックな展開ができればと思っております。
 _MG_9874それから大空ですが、今日も最後にちょっとやってもらったんですが、キスがたいへんうまい人で(笑)。ラブシーンがうまいというか、あんまりベタベタした表向きにフェロモンを出すタイプではないんですが。
今、ちょうど星組が東京公演中の『太王四神記verll 』で、1月と2月に公演した花組版のほうで、ヨン・ホゲという役で出てもらったんですが、偽りの結婚をするキハという女性に婚約披露のときにパッとキスするシーンがあって。これは台本上はしないほうがいいようになってたんですが、動きをつけるときに“ちょっとしてみたら”と言ってみたんです。それをすぐやってくれて、それがかっこよくて。相手がちょっと嫌がってる、避けてるような隙に、唇を盗むのが素早くうまくて(笑)。ないほうがいいという意見もあったんですが、彼女の場合そのほうがかっこいいし、そこにその男性の情念とか思いというのが、自然に一瞬で出ていたので、生かそうと思ったんです。ですから、のちに死ぬ時に「指一本触れてない」というのは大空版では割愛させていただきました(笑)。
今、ヨン・ホゲは凰稀かなめがやってるんですが、こちらは婚約披露でパッと逃げられてしまってキスできないんです(笑)。そのあと死ぬときに「指一本触れてない」というのが、ちょっと無念さが残るみたいな(笑)。大空さんはそういうのが自然にストンといくのがすごいなと。ちょっとヒリズムというんですか虚無的な、あまり明日を信じてないぞみたいで、内側では熱い思いが燃えてる。それ_MG_0318こそハンフリー・ボガードとかが築いた1つのスタイルだと思うんですが、それと非常に近いものを、宝塚の男役のかっこよさだとか美しさ綺麗さ、それを美学というならそれを残しつつ出せるというのが、彼女の最大の魅力だと思うし、一朝一夕で出せるものではないので、これまで彼女が培ってきた1つの芸だと思います。


_MG_0331野々すみ花はこう見えてたいへんな演技派で、今日もピアノのそばに行って「もう一回弾いて」と言葉をかけますが、相手のかたはピアノで精一杯でたいへんだったと思うんですけど、そのへんのもっていき方が彼女は非常にうまいので、リハーサル見て大丈夫だなと思っていたんです。こういう至近距離にいても、この役の人は本当にそう思っているんだなという、役の内側からの衝動とか動機というものを確実に持って演じることができる。そういう点で宝塚の娘役の中で、たぶん世間全体の演技者のなかでも数少ない本物の才能を持った人だと思います。
誉めすぎてはいけないんですが、この狭い空間でやってることになんらかの真実味というか、2人の間に緊密な感情がそこにあるんだということを感じさせる、そういうことでは彼女はたいへん優れてると思います。若くして主演という地位に就きましたので、わりと等身大に上手い人なので、こんどは2000人に伝えていけるかですね。
大空祐飛という人とのコンビは『銀ちゃんの恋」でたいへん素晴らしかったのですが、大空もニヒルにやってても、たぶんリアリティを求めていると思うので、ぴったりのコンビだと思うし、役の上で好きになったり喧嘩したりというなかで、野々が返してくる球がちゃんと意味を持ってると思うので、まだ新進であってもやりやすいんじゃないか、いい演技派の2人だと思います」

_MG_0208ーー有名な作品ですが、名台詞は再現されるのですか? また映像の使用は? 

小池「セリフ関係で参考にさせていただいてるのは、アメリカで出版されている対訳のものですが、あちらでは10種類くらい出てます。英語の勉強用の中級なんだそうですが。映画の字幕でいちばん有名なのは高瀬鎮夫の訳なんですが、確かに面白いんですけど意訳というか超訳なんです。2行くらいでばっと読ませるので、高瀬さんの解釈、高瀬さんの表現になってますから。一応今回はもとのシナリオからいちいち訳しています。映像はですが最後に飛行場のシーンなどに使うと思います」

ーー大空さんと野々さんは、映画のボガードとバーグマンについてどんなイメージを。

大空「私が持ってるイメージとしてはダンディで大人で、宝塚の男役としては一朝一夕では表現できない魅力出すね。ちょっとした仕草であったり佇まいだったり、懐の深さとかチャーミングなところとか、渋みがあってセクシーで、いい男だと思います」


_MG_0282野々「イングリッド・バーグマンは、ある記事で読んだら“世界が選ぶ名女優ベスト4”に選ばれていて。本当に高い地位を持ち、自信に満ちあふれていて、『カサブランカ』を撮影したとき20代だということで、若く初々しいしい感じがありつつ、セリフがなくても醸し出す雰囲気はとても女性らしいかただと思うので、私も精一杯がんばりたいと思います」









ーーお互いの印象と宙組を率いていく抱負を。

大空「つい先日、博多座公演を終えまして、野々とは仕事するのは初めてではなかったのですが、今回は立場も違い責任も重くなったなかで、気負わずに自分たちの持ってるものを全てぶつけ合おうという目標で公演に挑んだんです。先ほど小池先生が言ってくださったことが全てだと思いますし、そこまで先生が見抜いてくださって嬉しいなと思ったんですけど、宝塚の大劇場はとても大きいんですが、そこで様式、姿の美しさを残しつつ、でもそこにリアルな感情を持ち合わせていたいというのが私のモットーなので。それに必ず反応してくれる、どんな球を投げてもそれに見合った球を打ち返してくれる、キャッチボールができる相手役に恵まれまして、これからが楽しみですし、博多座公演も充実したものとなりました。

_MG_0271宙組は全員揃ってというのは、今度の集合で初めてなのですが、今の段階では本当にパワフルな組ですし、5組のなかでいちばん新しい組なので、非常に伸びしろがあるというか、可能性は果てしないなというのを感じます。自分がどうやって率いていこうとかは、とくに思わないのですが、私と野々が加わったことで何か化学反応を起こして、宙組に新しい風が吹けばいいと思いますし、自分がどんなパフォーマンスをしていても、組子には見られてると思うので、それだけのものを稽古場から見せていけるような居方をして。私がなにか言ったことで、みんなの可能性が1つ開いたらいいんじゃないかと思います」

野々「博多座を無事に終えられたことで、何よりも安心しているんですけど、大空さんからの私の印象をうかがってたいへん恐縮でございます。小池先生からもそのような言葉をいただいて、もったいないようなお言葉で、ありがとうございます。私も、大空さんがどんなふうに舞台をもっていかれるか、それをいちばん身近で感じられる立場にいることは幸せなことだと思います。宙組に組替えというときは“私はどうなるのだろう”という思いでしたが、大空さんは言葉でなく宙組の組子全員を引っぱっていかれるすごく大きな力を持ってらっしゃるので、私もそれに付いていって宙組の皆さんと、新しい組が素敵な組になるようにがんばります」

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宝塚歌劇宙組公演
NTT東日本・NTT西日本フレッツシアター
ミュージカル『カサブランカ』

11/13〜12/11◎宝塚大劇場

2010/1/3〜2/7◎東京宝塚劇場

脚本・演出◇小池修一郎

出演◇ 大空祐飛 野々すみ花  他宙組/専科・萬あきら 磯野千尋

<料金>
宝塚大劇場 SS席11000/S席8000/A席5500/B席3500/(全席指定/税込)前売開始・10月10日
東京宝塚劇場 SS席11000/S席8500/A席5500/B席3500/(全席指定/税込)前売開始・12月6日

<チケットに関するお問い合わせ>

宝塚大劇場 0570-00-5100
東京宝塚劇場 03-5251-2001 

<公演概要> http://kageki.hankyu.co.jp/

               【取材・文/榊原和子 撮影/岩村美佳】