えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

宝塚ジャーナルは2019年2月20日に引っ越しました。
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リーディングドラマ『シスター』いよいよ開幕! 水夏希からコメント到着

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水夏希・マギー
桐山連・鈴木勝秀・水夏希


2017年3月にサンケイホールブリーゼで上演し、大反響を呼んだ『シスター』。6回目となる今回は、年末の上演にふさわしい豪華で個性的な出演者で、明日、12月17日から21日までよみうり大手町ホールにて上演する。

【出演者スケジュール】
12月17日(月) 19時:高垣彩陽 ・古屋敬多
12月18日(火) 14時:秋本奈緒美・伊藤裕一/19時:屋比久知奈・尾上松也
12月19日(水) 14時:草刈民代・田中哲司/19時:徳永えり・稲葉友
12月20日(木) 14時:黒川芽以・佐伯大地/19時:水夏希・マギー
 ※19時の回はトークショーあり(水夏希・マギー・鈴木勝秀)
12月21日(金) 14時:水夏希・桐山漣

この公演の「水夏希×マギー」「水夏希×桐山漣」のリハーサルが12月12日に行われ、初顔合わせとは思えないくらい熱のこもった稽古が2組続いた。リハーサルを終えた水夏希にコメントをもらった。

【水夏希コメント】
──たくさんの朗読劇にご出演されていますが、久々のスズカツ作品ということで、リハーサルを終えての意気込みをお聞かせ下さい。 
 お久しぶりにお会いしましたが、相変わらず淡々と、でも静かな思い入れの熱さとご自分の世界を楽しんでいらっしゃる感じが、スズカツさんだなぁと嬉しくなりました。1回限りのセッションを楽しんでくださいとのお言葉。楽しむためにしっかり準備して臨もうと思います。

──この作品は姉と弟の物語ですが、『姉』という役の印象はいかがですか?
 実際には三姉妹の真ん中なのですが、妹弟のような下級生が沢山いますし、双子ではありますが片割れは妹のようでもありますので、実人生での使える関係性を反映しつつ、弟がいる時間を楽しみたいと思います。

──公演を楽しみにされているみなさんへメッセージをお願いします。
 1回限りのセッション。本当に稽古場でも絶対に見られないようなスパークがあると思いますので、是非お見のがしなく!
 

【メッセージ動画(水夏希・鈴木勝秀)】
                                               
〈公演情報〉
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リーディングドラマ『シスター』
作・演出◇鈴木勝秀 
●12/17〜21◎よみうり大手町ホール
 
12月17日(月) 19時:高垣彩陽・古屋敬多
12月18日(火) 14時:秋本奈緒美・伊藤裕一/19時:屋比久知奈・尾上松也
12月19日(水) 14時:草刈民代・田中哲司/19時:徳永えり・稲葉友
12月20日(木) 14時:黒川芽以・佐伯大地/19時:水夏希・マギー(※トークショーあり)
12月21日(金) 14時:水夏希・桐山漣

〈料金〉6800円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉atlas 03-6279-0545(平日12:00〜18:00)

『暗くなるまで待って』


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朝夏まなとの魅力が弾ける!冬の熱いラテンミュージカル『オン・ユア・フィート!』上演中!

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80〜90年代のヒットチャートを席巻した、世界の歌姫グロリア・エステファンの、栄光と挫折、波乱万丈の半生を熱いラテンミュージック&ダンスに乗せて描くミュージカル『オン・ユア・フィート!』が、日比谷のシアタークリエで上演中だ(30日まで)。

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ミュージカル『オン・ユア・フィート!』は、全世界でのレコード売上1億枚以上、『CONGA!』『1-2-3』など数々のヒットソングを生み出し、80〜90年代のヒットチャートを席巻した「グロリア・エステファン&ザ・マイアミ・サウンド・マシーン」のヴォーカル、グロリア・エステファンの半生を、馴染深いラテンミュージック&ダンスに乗せて描くミュージカル。ブロードウェイで2015年11月に開幕するやいなや、幅広い世代の圧倒的支持を受け、780公演のロングランを続け、2017年8月に閉幕したのちも現在全米ツアー真っ最中だ。今回の上演はそんな作品の本邦初演であり、元・宝塚歌劇団宙組トップスター朝夏まなとが、『マイ・フェア・レディ』のヒロイン・イライザ役に続き、退団後2作目で初の単独主演となるグロリア・エステファンに扮し、グロリアの夫・エミリオにミュージカル界で進境著しい渡辺大輔、グロリアの母に元宝塚歌劇団雪組トップスターで、女優として数々の大作に主演してきた一路真輝が参加する等、豪華な顔ぶれによる舞台が展開されている。

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【STORY】
歌の大好きなグロリア(朝夏まなと)はキューバ移民の両親のもと、開放的なマイアミで暮らしていたが、戦争によって身体が不自由になった父・ホセ(栗原英雄)や、家族の世話に追われる日々を過ごしていた。だがある日、グロリアの歌の才能にいち早く気づいていた祖母・コンスエロ(久野綾希子)の計らいで、地元で名の知れたバンドのプロデューサー、エミリオ・エステファン(渡辺大輔)の前で歌を披露することになる。はじめは恐れをなしていたグロリアだったが、妹・レベッカ(青野紗穂)に励まされ、キーボードに向かって歌いはじめるうちに、歌う喜びを爆発させていく。そんなグロリアが自分たちバンドを地元の人気グループから全米のトップグループに押し上げる力を持っていると確信したエミリオは、彼女をバンドのボーカルとして活動を展開しようとする。仕事上のパートナーとしてだけでなく、人間同士としても次第に惹かれていくグロリアとエミリオ。だが、グロリアの活動が広がっていくに連れて、そもそもグロリアが歌手になることに、自身の苦い経験から反対していた母・グロリア・ファハルド(一路真輝)との亀裂は大きなものになっていき……

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既成のヒット曲を使用して紡がれるジュークボックス・ミュージカルには大きく分けて、このジャンルの勢いを世界的に拡大させる起爆剤ともなった『マンマ・ミーア!』をはじめ、来年3月日生劇場での再演が決まっている『プリシラ』等、既成の楽曲を新たに創作した物語に当てはめて構成されるものと、シアタークリエに熱狂を巻き起こした『ジャージー・ボーイズ』や、帝国劇場で上演され話題を集めた『ビューティフル』のように、楽曲を歌った歌手の伝記を本人の曲で紡いでいくスタイルとがある。いずれも、楽曲自体がすでに高い知名度を誇っていることが、作品の価値を音楽が左右するミュージカルにとってこの上ない利点であり、この系譜の作品が次々に世に出ているのも、当然だと言えるだろう。
その後者の系譜に属する『オン・ユア・フィート!』は、現在も活躍しているラテンミュージックの歌姫グロリア・エステファンの半生を、「エミリオ&グロリア・エステファン&ザ・マイアミ・サウンド・マシーン」制作のヒット曲、オリジナル楽曲を基に構成されている。その全編がラテンミュージックに溢れていることそのものが、同じ系譜の作品たちとこの作品を大きく色分けする個性になっていた。もちろんジュークボックス・ミュージカルのもうひとつの側面でもある、楽曲を物語に当てはめる為にSTORYがジャンプする傾向がこの作品にも大きく、キューバ革命やアメリカとの関係等の背景を理解していた方がよりグロリアの物語に入りやすい部分はあるのだが、そうした細部にあまりこだわらなかったとしても、作品のテンポの良さと熱気に浸ることができるのが、客席にいて心地良い。

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それは、プロのラテンダンサーを加えるなど、徹底的に熱いラテンの風にこだわった翻訳・訳詞・演出の上田一豪の、リズミックなサウンドで押してくるポップな作品運びのテンポの良さはもちろん、これがミュージカル単独主演デビューとなったヒロイン・グロリアを演じる朝夏まなとの個性に由来するところが大きい。宝塚歌劇宙組のトップスター時代から、太陽のスターとも称された朝夏の持ち前の明るさ、あくまでもポジティブな真っ直ぐさが、グロリア役の、引いては作品の根幹を見事に支えた効果は見逃せない。しかも、ある意味で神に選ばれた者の運命なのかも知れないが、グロリアがスターに上り詰めていく過程は、決して単純なサクセススト—リーとは言い難い。母親との確執、有名になっていくに連れて生じるプロデューサーでもある夫との方向性を巡る差異の果てに、更に大きな困難が彼女を襲う。それでも舞台に重苦しさがないのは、朝夏の持つ太陽のようなパワーと、ラテンミュージックの歌姫であるグロリアとが、見事にシンクロしたからに他ならない。長い手足のスラリとしたプロポーションで着こなすジャンプスーツも、なびかせるロングヘアも抜群に似合い、宝塚退団後わずか1年で、女優としてここまで個性を活かせる役どころに巡り会った朝夏の、やはり選ばれし人である力を感じさせた見事な主演ぶりだった。
 
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グロリアを見い出し、のちに人生のパートナーになるエミリオの渡辺大輔は、英語があまり上手くないという表現が訛りで再現されている難しい台詞もある中で、登場した瞬間から目を惹きつけるスター性と、何よりも常にこの人からこぼれ出る誠実な温かさとで、エミリオ像を構築している。夫であると同時に優れたプロデューサーでもあるエミリオが、要所要所で下していく決断がグロリアの運命を変えていくのだが、そこに計算高さや怜悧さといったものをほとんど感じさせず、熱い情熱と愛情をにじませるのが渡辺ならではで、グロリアが惹かれるのも最もだと思える魅力的なエミリオ像になった。非常に残念ながら休演となった相葉裕樹の不在を渡辺が埋めたことは、すべての救いにもなる頼もしさで、相葉の一日も早い回復を祈ると共に、渡辺の貢献に心からの拍手を贈りたい。

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また、グロリアの家族がスペシャルに豪華な歌い手揃いなのも今回の座組の特徴で、その中でもやはりグロリアと意見を異にする母・グロリア・ファハルドの一路真輝は、スペシャルゲストスターとも呼びたい存在。自身がスターダムに乗る可能性を父親に阻止され、家族の為に生きてきた過去があるという設定で、ともすれば娘の成功に嫉妬を抱いている母親という、非常に難しい母娘関係に見えかねない役柄だ。けれども一路が演じることによって、自分が選択せざるを得なかった人生を否定されることの焦燥と同時に、穏やかな暮らしの中に平凡な幸せを見出しているからこそ、娘を案じている母という色が出たのは、一路の穏やかで柔らかい持ち味あったればこそ。回想シーンのショーステージも鮮やかにキメて、宝塚の後輩である朝夏の主演デビューに大きな華を添えていた。

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娘が世に出るチャンスを摘んでしまったことを深く悔やんでいるからこそ、孫のデビューを後押ししようとする祖母コンスエロの久野綾希子、病床のシーンが大半の父ホセの栗原英雄というミュージカル界の重鎮が脇を固め、グロリアの妹レベッカにも歌唱力抜群の青野紗穂が揃い、それはこの家族の血を引けば歌姫も生まれるだろう…という説得力には絶大なものがある。

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それだけに、作品中はなんと贅沢な役者の使い方か…と思わせるが、だからこそラストシーンでそれぞれがナンバーを歌い継ぐ「MEGAMIX」で盛り上がれること請け合い。最大の困難にぶつかったグロリアにカンパニー全員が想いを送る「REACH」が心に染みるだけに、ラストのパワフルなテンションの最高潮ぶりがなんとも楽しい。それを支えるひのあらたをはじめとしたアンサンブルメンバーも実力派揃いで、クリスマスシーズンにやってきた本格的な冬の寒さを吹き飛ばす、劇場でしか体験できない熱気に満ちた舞台となっている。

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初日を控えた12月8日囲み取材が行われ、朝夏まなと、渡辺大輔、一路真輝が公演への抱負を語った。

【囲み取材】
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──遂に開幕する今のお気持ちを聞かせてください。
朝夏 皆様本日はお忙しい中ありがとうございます。グロリア・エステファン役の朝夏まなとです。いよいよ今日幕が開きますが、今日まで本当にあっという間に時間が過ぎていって、キャスト・スタッフの皆さんが一丸となって日本初演を熱く盛り上げようという気持ちが高まっているので、皆様に熱い舞台をお届けしたいと思いっております。よろしくお願いいたします。
渡辺 今まーちゃん(朝夏)がほとんど言ったのですけれども(笑)、本当に熱い舞台で2018年の締めくくりに相応しい舞台になっているので……(少し言い淀み、役柄のエミリオの台詞に訛りがあることを指して)最近は訛りが酷くなっているので、ちょっとおかしくなっているのですが(笑)、2018年に鬱憤がたまっているな!と思っていらっしゃる方は是非おこしください!発散できます!よろしくお願いします。
一路 暖冬と言われたこの2018年の冬、なんと今週末から冷え込むそうで(笑)。それとは反対にシアタークリエは熱く燃え上がっておりますので、是非皆様楽しみにして欲しいなと思っております。
──実在の人物を演じるに当たっての役作りはいかがでしたか?
朝夏 今現在も活躍されているグロリア・エステファンさんの半生を演じさせて頂くのですけれども、やはり歌手でいらして、私もこうして人前に立って表現する仕事をしていますので、すごく共感できると言いますか、わかる、理解できるというところがたくさんあって。挫折や色々な問題を抱えながらも、周りの人の助けがあってステージに立つグロリアの半生に、良い時も悪い時もあることが劇的に描かれている作品ですので、そのあたりを丁寧に繊細に演じたいと思ってやっていました。皆様に共感して頂けるような役作りができているといいなと思いますので、楽しみに観て頂きたいです。
──渡辺さんは、更に訛りがあるということでしたが。
渡辺 今も訛りを入れて話した方が良いですか?(爆笑) 
朝夏 なんで!(笑)
一路 そんなわけない!(笑)

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渡辺 そうですね(笑)。エミリオという方は、後に(グロリアの)旦那になり、グロリア・エステファン&マイアミ・サウンド・マシーンのプロデューサーでもあるのですが、とにかく明るいです。そして意志が本当に強くて目上の人に対しても折れない、周りに対する影響力があるという部分と、愛する人に対して、家族に対しての愛情は120%で、真正面からぶつかっていく形の、すごく熱い男性です。たぶんこの日本でも観に来てくださった男性の方に共感して頂ける人物だと思いますし、自分もエミリオに習ったことがたくさんあります。ですから男性のお客様にはエミリオという男に憧れてみても良いのでは?と思いますね。確かに訛りもあるのですが、そこはちょっと愛嬌、コメディタッチになっているので、おおいに笑って楽しんで頂きたいと思っています。
一路 私は世界の歌姫グロリア・エステファンの母親のグロリア・ファハルドをさせて頂きます。朝夏さんが演じているグロリアをずっと見ていて、この子が世に出て行くことを止めるべきか、押すべきかという悩みがすごくある母親です。お母さんも葛藤しながら、でも心の底では娘を温かく見守っている、ラテンのキューバ出身のお母さんの熱いものというのを、今までの私の役とはちょっと違うのですが、本当に朝夏さんのグロリアと渡辺君のエミリオが素敵なので、私もそれに乗っかってラテンの熱い血をお見せしたいと思います。

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──稽古を重ねていく中で発見した、お互いの魅力はどうですか?
朝夏 初共演の渡辺さん、大ちゃんはすごく真面目で(渡辺が笑うので)えっ?ダメ?(笑)エミリオのことをずっと考えていて、とても真面目な方だと思っていたら、エミリオになった時の素晴らしきコメディセンスと、パパ感がすごくて!
渡辺 ほぅ〜!
朝夏 こんなに大きい私をちゃんと包んでくれる包容力を持っていらして、素敵だなと思っております。
渡辺 ありがとうございます!(記者に)ここは絶対残してくださいね!(笑)。
朝夏 そして一路さん、私はいずみさんとお呼びしているのですが、お母さんとの場面はいつも対立していて、ケンカしているような間柄なんですが、普段はとても気さくで、ちょっと…いえ、ちょっとどころじゃない天然で!(爆笑)。
一路 すみません!(笑)
朝夏 数々の面白いエピソードがあるのですが、ここで話すとあと1時間くらいかかってしまうので(笑)、おいおいにまた話していきたいと思いますが(笑)、本当に素敵なお母さんで、宝塚を卒業してこうやってご一緒させて頂けて幸せだなと思っています。 
──渡辺さんから見た朝夏さんは?
渡辺 1番はじめにお会いしたのは『1789』の舞台を観に来てくださった時だったのですが、その時の印象とずっと変わらないのが常に笑顔で、太陽のような存在というのが変わらない。例えて言うと自分が花だとしたら、太陽の朝夏さんがずっと照らしてくれていて、その太陽がないと自分は咲けないという存在の方です。またグロリアになった時の自分を見つめる目が、本当に愛してくれている目で自分は幸せなんです!(笑)。ですから、それが皆様に伝わればなぁ…と思いますし、話が前後しますが、お二人のグロリア家の家族の物語というのがとても好きで、その中心にいるグロリアに紆余曲折ある、精神的にナイーブな部分をしっかりと演じられていて、エミリオを演じていない時にもフォローしてあげたくなります!

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──一路さんとは役柄としては対立してしまうとのことですが。
渡辺 そうなんですけど、本当に優しいんですよ一路さん!気配りが皆に対してあります。前にコンサートでご一緒させて頂いていて、役を演じるという意味では初めてなのですが、自分としてはあの対立するシーンもすごく楽しみにしていて、あそこはコミカルにお母さんとのコミュニケーションをとりたいですし、その後に、お母さんとなかなか分かち合えないという部分があるのですが、その関係性も自分としては興奮材料のひとつで。やっと分かち合えた!という時に、本当に目頭が熱くなるというか、稽古場から涙を流してしまっていました。すべてを包み込む愛という、母親ここにあり、母親というのはこういうものというね。このくらい情熱ある母親を日本の皆さん目指しましょう!と言いたいくらいの、温かさで。娘が見ていないところでスッとフォローを入れる、本当に一路さんありきのグロリア家だと思っているので、そこをお楽しみになさってください。
──一路さんはどうですか?
一路 本当に上げられたり、下げられたりしていますが(爆笑)。今回私は宝塚の後輩の朝夏さん、20年離れているのですが、その朝夏さんを母親目線、元上級生目線で見ているのですが、本当にこの格好を見て頂ければわかるように「朝夏まなとここにあり!グロリア・エステファンここにあり!」という舞台なので、宝塚ファンの方にも、ミュージカルファンの方にも喜んで観て頂けると思います。もうそのまま稽古場でも皆の太陽であり、それをフォローしている大ちゃんが、ちょっと(朝夏の)喉がガラっとしたら、すぐに水を持って行っちゃう(笑)、というすべてが微笑ましくて。その中で私がいつも怒っているお母さんというのがちょっと辛いのですが、そんなことは通り越して、二人が素敵だからこのカンパニーもすごく温かいので良いと思います。「若者たち頑張れ!」みたいな。
朝夏 カッコいい!

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──グロリア・エステファンの曲の中で、特にお好きなものは?
朝夏 ええ〜?
渡辺 難しいね!
朝夏 全部良い曲なんです!バラードもノリノリの曲も全て良い曲で。
一路 選べないね!
朝夏 選べないですね。どうしましょうか(笑)。
──ではこの作品の中での見どころは?
朝夏 他のキャストの皆さんも素晴らしい迫力ある熱いダンス、今回本格的にラテンダンスをやられているペアの方も出演されるのですが、本当にキレッキレで。
一路 ラテンの世界にどうぞお越し下さい!というね。
朝夏 更にグロリア・エステファンの名曲が詰まった「MEGAMIX」というシーンがカーテンコールについていますので!
一路 各キャストがそれぞれ歌い継いでいくメドレーがあるのでね。
朝夏 そこは特に見どころですね。
渡辺 あと個人的にはアンサンブルの皆さんが色々な役を演じられている中で、本当に終盤に出てくる「REACH」、皆の想いがグロリアに届けというところが、色々な人たちへの想い、家族への想いに全部当てはめられる曲になっているので、そこが素晴らしいと思うので全員に注目して欲しいです。

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──では最後に朝夏さんからメッセージをお願いします。
朝夏 今三人の話しを聞いて頂いてもおわかり頂けたと思いますが、楽しい楽しい舞台になっています。キャストの皆が和気藹々と助けてくれますし、この日本初演の『オン・ユア・フィート!』が、1人でも多くの皆様に観て頂けて、平成最後の冬を皆で盛り上がりたいと思いますので、どうぞ千秋楽までよろしくお願い致します!シアタークリエで千秋楽を終えたあとには、博多、愛知、大阪・梅田へと参りますので、そちらの方もどうぞよろしくお願い致します。

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〈公演情報〉
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ミュージカル
『オン・ユア・フィート!』
脚本◇アレクサンダー・ディネラリス
音楽・歌詞・編曲◇グロリア・エステファン/エミリオ・エステファン(エミリオ&グロリア・エステファン&マイアミ・サウンド・マシーン制作のオリジナル楽曲より) 
翻訳・訳詞・演出◇上田一豪 
振付◇TAKAHIRO/藤林美沙/金光進陪 
出演◇朝夏まなと 渡辺大輔(Wキャスト) 青野紗穂 栗原英雄 久野綾希子 一路真輝 ほか 
●12/8〜30◎シアタークリエ 
〈料金〉11,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777(9時半〜17時半)
 https://www.tohostage.com/onyourfeet/

〈全国ツアー公演〉
●2019/1/4〜6◎福岡・博多座
〈お問い合わせ〉博多座電話予約センター 092-263-5555
●1/9〜10◎愛知・刈谷市総合文化センターアイリス大ホール
〈お問い合わせ〉キョードー東海 052-972-7466
●1/17〜20◎大阪・梅田芸術劇場シアタードラマシティ
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 06-6377-3888



【取材・文・撮影/橘涼香】 

 


『暗くなるまで待って』


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一層彩りを深めた迷宮への誘い『ダンスカンタービレ2018』上演中!

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DIAMOND☆DOGS(D☆D)のメンバーとして活躍するかたわら、優れたクリエーターとして構成・演出・振付のジャンルでも才能を発揮している森新吾が中心になって繰り広げる、ショーアクト『ダンスカンタービレ2018』Mori Shingo & 8 Foxy Girlsが銀座の博品館劇場で上演中だ(16日まで)

『ダンスカンタービレ』は、昨年5月に森新吾初の主演作品として発信したショーアクトで、19世紀末のロンドンを震撼させた「切り裂きジャック」をモチーフに、森と風花舞をはじめとした女性陣だけで紡がれた作品。そのダークでミステリアスな、感性を刺激するステージは大好評を博し、D☆D充電期間中の2018年、森はこの作品を核に「カンタービレシリーズ」と銘打った新プロジェクトを始動。11月にサイエンスホールで上演された男優だけのストーレートプレイ『アクトカンタービレscene1 〜 Smoky Dog 〜』が喝采を集めたのち、1年半ぶりの再演となる、今作品『ダンスカンタービレ2018』の幕が開いた。

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とは言っても『ダンスカンタービレ2018』は、昨年春の初演バージョンから更に深化を遂げ、作品の持つ物語性の骨子こそ変わらないものの、一層深い彩りと夢とうつつの狭間の迷宮を立ち上らせている。初演を観た方にも「そう来たか!」という驚きや発見があるだろうし、今回の上演で初めて作品に接する方、特に『アクトカンタービレscene1 〜 Smoky Dog 〜』から続いてこの作品の扉を開けた方には、森新吾というクリエーターの振り幅の広さが実感できるに違いない。

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実際、初演時はゲストだった町田慎吾が、森演じる男の良心とも、影とも、はたまた現実の姿とも見える役柄を演じることで、木野村温子と共に創り出す異空間の意図するところが明確になっていたり、そのゲストが日替わりで演じていた刑事役を、初参加の田野優花が女刑事として通して演じることで、更に大きな仕掛けが用意される等、作品の見え方がより鮮明になった部分は大きい。だがそれでいて、敢えて正解を求めようとしていない、理解するのではなく感じて欲しい、見た人の数だけ感じかたがあって良いという余白があるのもこのショーアクトの豊かさで、それが森新吾その人のものづくりに対する懐の深さを感じさせていた。

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何より構成・演出・振付・主演を務める森の、確実に増したセンターを務める力が作品に芯を通している。それは初主演の機会だったこの作品の初演時よりも、この2018年バージョンが深みを増した最も大きな理由のひとつで、物語の中心にいることに森自身が格段に馴染んできたのを感じる。やはりライトの中で、舞台の上でこそ表現者は育っていくのだなと深い感慨を覚えた。クリエーターの森が、表現者の森に求めるものも、この後もっと深くなっていくに違いない。そう実感できる主演ぶりに拍手を贈りたい。

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同じく初演からの続投組では、もはや別格の感さえある風花舞の表現力が更に凄味を増していて目が離せない。謂わば物語の円の最も外側から周り続けなから、やがて核心へと迫ってくる役柄だが、持ち前の男前なダンスの切れ味と、元宝塚月組トップ娘役という出自から放つ無垢なものが、並び立って作品を底支えした力は絶大だった。

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また、森を取り巻く女性たちの中でも大きなパートを担っている藤田奈那の表現力が格段の進歩を遂げているのも大きく、初演時に残っていた固さが完全に払拭され、しなやかに舞台に位置していたのが、役割りをより鮮やかにする効果になった長岡美紅、PSYCHE、橋本由希子もそれぞれの表現がより豊かになり、舞台上での個性が更に明確になって、持ち場を固めているのが頼もしい。

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他方、初参加のメンバーでは、舞羽美海の宝塚雪組でトップ娘役を務めていた当時から群を抜いていた愛らしさ、可憐さがジャンルの異なるダンサーの中でひと際輝いただけでなく、退団後育んできた妖艶さや女性美が相まって何とも蠱惑的。優れたダンサーでもある一面も存分に発揮されていて、舞台をより高みへ引き上げる一翼を担っている。

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女性刑事役も務める田野優花は、『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』のサリー役が打ってつけだった姿を思うと、同じ女性かと見まごうほどのシャープな表現で魅了する。この人が新たに刑事役に扮したことが作中大きな意味を持つが、その展開を唐突に感じさせない存在感が際立った。伊藤佳耶芽もこの個性溢れる陣容の中で、きちんと自分自身を魅せているのが才能を感じさせた。

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そして町田慎吾が加わったことが前述したように、作品の骨格をより鮮明にしていて、元々憑依型の表現者である町田の、突き詰めた役柄の造形が強烈なインパクトを放っている。時にただ通り過ぎるだけという出番もある中にも、必然と意味を感じさせるのは流石の一言。ダンスと表現が全く浮かずに融合しているのも素晴らしい。この町田が対照にいることによって、木野村温子が誘う背徳の香りもよりくっきりと立ちあがる効果になっていて、初演時に比して一層役柄の必要性が高まり、木野村の身体表現はもちろん、怖さのある笑顔が印象的だった。

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これら新しい組み立て方によって日替わりゲストの出番が集約されたからこそ、その日替わり感が強まっていて、「悪の華」を思わせた初日の東山義久がもたらした残像がなんとも強烈。 中塚皓平、植木豪、長澤風海が刻むアクセントも、それぞれに鋭いものがあるだろう。
 
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総じて、クリエーターとしてはもちろん表現者としての森新吾の確かな進化が感じられる舞台になったことが嬉しく、「カンタービレシリーズ」の発展に更なる期待の高まる舞台となっている。 

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〈公演情報〉
『ダンスカンタービレ2018』Mori Shingo & 8 Foxy Girls
構成・演出・振付◇森新吾  
出演◇森新吾/風花舞 舞羽美海 藤田奈那/長岡美紅 PSYCHE 伊藤佳耶芽 橋本由希子 木野村温子/田野優花  町田慎吾 
日替りゲスト◇東山義久(12日) 中塚皓平(13日) 植木豪(13日夜・15日夜・16日) 長澤風海(13日夜・14日・15日昼) 
●12/12〜16◎博品館劇場 
〈お問い合わせ〉博品館劇場 03-3571-1003



【取材・文・撮影/橘涼香】



『暗くなるまで待って』


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ブロードウェイ・ミュージカル『サムシング・ロッテン!』間もなく開幕! 瀬奈じゅん インタビュー

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福田雄一の最新作ブロードウェイ・ミュージカル『サムシング・ロッテン!』が、12月17日から30日まで東京国際フォーラム ホールC で上演される。(そののち2019年1月11日〜14日◎大阪 オリックス劇場で上演)
 
本作は、1990年代にケイリーとウェインのカークパトリック兄弟のアイデアから始まり、2015年にブロードウェイで上演。アメリカの演劇・ミュージカル界で最も権威ある賞であるトニー賞で9部門ノミネート、1部門受賞という快挙を成しとげた。タイトルの「Something Rotten!(サムシング・ロッテン!)」とは、「何かが、腐っている!」という意味。ハムレットの一節からの引用で、こんなふうに複数の戯曲、ミュージカル作品へのオマージュが散りばめられたコメディミュージカルだ。
物語の背景は16世紀末。絶大な人気を誇るウィリアム・シェイクスピアを相手に、ニックとナイジェルのボトム兄弟が競いながら、舞台芸術業界で成功を目指す。『コーラスライン』、『アニー』、『レ・ミゼラブル』などの人気ミュージカル作品や、シェイクスピア作品を彷彿とさせるシーンの数々が、舞台・ミュージカルファンの心をくすぐる作品となっている。
 
初の日本語版上演では、演出・上演台本を現代のヒットメーカーであり、「笑い」と「ミュージカル」をこよなく愛する福田雄一が手がけ、劇作家ニック役に中川晃教、シェイクスピア役に西川貴教、ニックの妻ビー役に瀬奈じゅん、預言者ノストラダムスには橋本さとし、ニックの弟ナイジェルに平方元基、清教徒の娘ポーシャには清水くるみと豪華なキャストが揃った。 
この舞台で劇作家ニックを献身的に支える頼もしい妻ビーに扮する瀬奈じゅんに、稽古もたけなわという時期に話を聞いた。

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あなたは基本コメディの人
という誉め言葉を

──まずこの作品と初めて出会ったときの印象は?
私は出演のお話をいただいてからYou Tubeで拝見しました。色々知っているミュージカルの楽曲などもパロディで登場しますし、背景がシェイクスピアの生きていた16世紀という、かなり昔のお話なのですが、全然古い感じがしなくて、とても面白かったです。
──今回は、共演の方々も豪華です。中川晃教さんと西川貴教さんは初共演ですね。
中川さんとは以前『クリエ・ミュージカル・コレクション』と『岩谷時子メモリアルコンサート』で一緒に歌わせていただいたり、私の主人(千田真司)も共演していたり、色々ご縁はあるのですが、こうしてお芝居をさせていただくのは初めてです。西川さんとは「はじめまして」ですが、お芝居の表現力も素晴らしい方で、お二人とも舞台センスがあるので、稽古場で拝見していてもとても勉強になります。
──瀬奈さんが演じるのは、中川さん扮するニックの妻のビー。男装して物を売ったり家計を支えるなど、すごくパワフルで素敵な女性ですね。
献身的で逞しいんです。どうしても男勝りな部分がクローズアップされがちですが、本当に健気な女性だなと思いました。
──どう演じてほしいなど、演出の福田さんからの指示は?
福田さんは「こうしてください、ああしてください」は、あまりおっしゃらないんです。それは私だけでなく皆さんにそうで、ポイントでこうしてほしいという要望はあっても、この役はこう演じてほしいという指示はされない方で、たぶん演者を信頼してくれているのかなと思っています。ただ、「こういう面白いことを言ってほしい」とか「ここは○○さんで」とか(笑)、今回はまだないですけど、そういう細かい部分での笑いの演出はよくされます。
──コメディを演じるうえでとくに必要なことは?
笑いのための計算はもちろんありますが、とにかく役として生きることしかないと思っています。宝塚時代からそれは同じで、コメディもシリアスも、台本を読んで役をふくらませていくという点ではまったく変わりないんです。
──瀬奈さんは宝塚時代からコメディセンスは抜群で、しかも品は落とさずに客席を巻き込んでいって見事でした。
私は12年目くらいに『二都物語』という、ディケンズの悲劇に主演させていただいたのですが、そのとき演出の太田(哲則)先生に「あなたは基本コメディの人ですから」と言われたんです。超シリアスな悲劇を真面目に突き詰めていたときだけに、ちょっとショックで(笑)、でも今考えると、あれはすごい誉め言葉だったなと思うんです。コメディは間とか動きとか、相手との掛け合いとか、どれもセンスがないと笑えないわけで、それを誉めていただけたわけで、その言葉を頼りに今も生きてます(笑)。
──太田先生のコメディはお洒落で面白かったですね。瀬奈さんは『二都物語』もそうですが、悲劇と喜劇の両極を生きられる役者だと思います。
シリアスもコメディも、大切にするのはやはり役のリアリティですから。自分の発想だけでなく、周りの役者さんたちのやっていること、演出家の求めているものを探りながら、その人間がどう動くかを考え、何をチョイスするか、そこにセンスが求められているのだと思います。

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福田雄一と小川絵梨子
2人の演出家との出会い

──この物語にはシェイクスピアをはじめ作家たちが出てきます。その創作の苦悩とか葛藤なども描かれていますが、それをドタバタ喜劇的な展開で繰り広げていくところが面白いなと。
シェイクスピアの作品についていつも思うのですが、人を殺したり人を騙したりしても喜劇だったりしますよね。それはどういうことなんだろうと。たぶんそういうことをしてしまう人間というものの滑稽さを、喜劇つまり悲喜劇として描いているのかなと。今回の稽古場でシェイクスピアを演じている西川さんを見ていると、「あ、こういうことなのかも」と思ったんです。たとえばアイデアがどうにも浮かばないときに、これ真似しちゃおうとか、そうまでする自分を笑いながら、生きていくエネルギーにしている。自分たちに置き換えてみると、たとえば仕事に真剣に向き合ってる姿でも、角度を変えて見ると滑稽だったり面白かったりするじゃないですか。そう思うとシェイクスピアの喜劇って、すごく腑に落ちるんです。
──そう考えると、これはすごく懐の深いミュージカルですね。
そういう生みの苦しみさえも面白くしてしまえる器の大きい作品で、ほかにも発見が沢山あります。さとしさんの「ミュージカル(A Musical)」というナンバーの中に、「なんでここで歌い出すんだろう、でもこれがミュージカル♪」という歌詞があるんです。私は4月に『FUN HOME』というミュージカルに出たのですが、小川絵梨子さんがミュージカルを初めて演出されていて、立ち稽古になって歌の場面になったとき、「なぜここで歌い出すの?」「なぜ正面を向いて歌うの?」というところから始まったんです。それによってこちらも、ミュージカルについて改めて考えさせられて。そして自分の曲ではない歌詞もみんなで理解し合って、人の役のことも話し合って作り上げました。その経験はすごく大きかったです。そういう意味ではこの作品の「ミュージカル(A Musical)」という曲は、ミュージカルの楽しみ方がこの1曲に詰まっている気がします。
──『FUN HOME』は心情をリアルにストレートに伝えてくる現代的なミュージカルでした。
小川さんはたぶんリアルなお芝居の中に歌が入ってくることで、そこだけリアルではなくなるのが嫌だったのではないかと思います。セリフって今こうして会話しているように、思いついたことをそのまま喋るものなんですよね。それと一緒でその場で考えたことを歌ってほしいと。でも本番になると音譜の音や歌詞をどうしても追ってしまいたくなる。それをしないことはすごく怖いんですけど、初めてこの言葉を発しますというふうに歌おうと。ちゃんと出るかなと思いながら本番で思いきってやって、すごく勉強になりました。
──その役のその時の切実な言葉が歌になって出てくるわけですね。
本当はそれが基本なんですよね。公演中もどこかでやっぱり綺麗に歌おうとか、声が出しにくいなとかそういうことがよぎることもありましたけど、とにかく喋るみたいに歌おうと。たとえば私のアリソンの「電話線」という歌は、車で走っている時、目に入る電話線の1本1本が通りすぎていく光景をそのまま口に出しながら、その合間に「父に何か言わなきゃ、言わなきゃ」と考えている歌なんです。そういうリアリティの表現というのはお芝居ではいつもやってるし、当たり前のことなんですけど、歌稽古を先にすることで、前後の感情とかけ離れてしまいがちになるんです。そこを埋めることが大事で、今回もそれをできればいいなと思っているのですが。そんなふうにミュージカルは初めてという小川さんの作品に出たことで、ミュージカルの原点というものを考えるきっかけになりました。

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──福田さんとの出会いも大きいと思いますが、『ヤングフランケンシュタイン』が初めての出会いですね。  
そこから続けて今回で3本目で、ドラマにまで出させていただいてます(笑)。福田さんは「ミュージカル大好き!」という方で、出演するたびにミュージカルの楽しみ方とかエンターテイメントの作り方を学ばせてもらっています。小川さんとはある意味真逆なのですが、でもこのお二人のおかげで、ミュージカルの根本、基本みたいなものを改めて考えさせていただくことになりました。
──小川さんが演じる基本を追求しているとしたら、福田さんは観客の目線を追求する演出家ですね。
お客様に絶対に楽しんで帰ってもらうということを大事にしていらっしゃるし、楽しませることにすごく情熱を注がれる方なんです。
──そこは宝塚時代のショーでの瀬奈さんを思い出します。お客様を楽しませることには徹底していましたね。
宝塚は二本立ての場合は必ずショーがついてますよね。お芝居では役で出てきますが、ショーでは瀬奈じゅんでお客様を楽しませなくてはいけない。役名のところに「踊る男」とか書いてあるのですが(笑)、「踊る男」の瀬奈じゅんとしてお客様に楽しんでいただく、そのために命を注いでいたんです。ただそういう「瀬奈じゅんはこうでなくてはならない」という意識が退団してからもしばらくは抜けなくて、苦しんだこともあります。
──退団してもう10年になりますね。すっかり女優が身についてきました。
男役10年と言いますけど、女優も10年かなと(笑)。でもまだまだわからないことが多いですし、それこそゴールのない世界ですし。
──50歳、60歳の瀬奈じゅんも楽しみです。
年相応の役者になりたいですね。息切れしないように地道に長く続けていきたいと思っています。

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家族がいるほうが
頑張れるんです

──その女優である瀬奈さんが、母親にもなったわけですが、やはり仕事も子供も両方とも瀬奈さんには必要だった?
私にとっては仕事をするうえでも家庭というものがすごく大事で、家族がいるほうが頑張れるんです。今回のミュージカルも、家族のために闘うとか、家族のために懸命になる人たちなので、共感できるところがいっぱいあります。
──お子さんを持ってからの1年半の仕事はすごく充実していて、モチベーションが上がっているのだろうなと拝見していました。
子供は特別養子縁組というかたちで授ったわけですが、その前の2年間は子作りのためにお休みをいただいてたんです。その時、この仕事は舞台に出続けていないと難しいだろうなと思ったし、他にも沢山できる方はいる、復帰しても需要はないかもしれないと覚悟しながら休みました。でもその2年間にさまざまな経験をしたことで、今、色々なジャンルのお仕事をいただけるようになりました。1回休んで自分をリセットしたから、今の自分があるのかなと思っているんです。
──その期間はたぶん落ち込んだり悩んだりしたと思いますが、そのことが女性として人として膨らみになっていると思います。
ただその期間はつらすぎてあまり記憶がないんです。今は自分の子供に出会えて幸せだし充実しているので、そんなことは吹っ飛んでしまいましたけれど。会う人にもハッピーオーラがすごいねとか言われて「え?子育てで疲れてるんだけど」って(笑)。思い通りに時間が使えないとか、熱があるから迎えに来てくださいとか、予定通りいかないことばかりで。でもそれが面白いと思えるようになりました。今、2年間を思い出すとき、やっぱり自分の子供が欲しかったとはこれっぽっちも思わないんです。ただ、この子は私が生んであげたかったなと、そのくらい可愛くてしかたないです。
──瀬奈さんとお子さんが出会うための2年間だったのでしょうね。そういう人生のひだを経験したことで、女優としても肩の力が抜けてさらに素敵になりました。宝塚ではトップスターで、退団してからは帝劇の真ん中をつとめて、もともと繊細な方でしたからプレッシャーも人一倍だっただろうなと。
たえずアンテナを張っていました。組のためにこうあらねばならないとか、周りは楽しんでくれているかな?とか。その経験から、主演のたいへんさにはつい敏感になってしまうので、どの作品に出ても主演の方が気持ち良くできるようにしたいなと思うんです。自分がそうしていただいてましたから。
──今は子育てとの両立も慣れましたか?
『ヤングフランケンシュタイン』の時がちょうど子育てのスタートで、育てながらの稽古とか本番に、ちょっとテンパっていました。初めての福田作品にも戸惑いながら(笑)。そこから1年経って、ペースも掴めてきましたし、主人も一緒に子育てしてくれるので心強いです。それに福田さんも家族をとても大事にされる方なので、今回もご一緒できてとても嬉しいです。
──そんな福田さんとともに作っている『サムシング・ロッテン!』への意気込みを、改めてぜひ。
どの方も才能あふれる魅力的な方々ばかりで、物語もとてもよくできていて、有名なミュージカルのナンバーもいっぱい出てきます。とても楽しい作品です。ミュージカルを大好きな方も、ミュージカルを知らない方も、絶対に楽しめると思います。ぜひ観にいらしてください。

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せなじゅん○東京都出身。1992年宝塚歌劇団に入団。05年から月組トップスターをつとめ09年退団。以後、女優として『エリザベート』『アンナ・カレーニナ』をはじめとするミュージカルやストレートプレイの主役をつとめ、また映像でも活躍中。2012年に菊田一夫演劇賞演劇賞、岩谷時子賞を受賞。近年の出演昨品は、舞台『エジソン最後の発明』『JunSena25th Anniversary concert』『ヤングフランケンシュタイン』『FUN HOME』『シティ・オブ・エンジェルズ』など。4月にはコンサート『トロワ・バイオレット』(宝塚バウホール)に出演する。またドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ)に出演中。

〈公演情報〉
CNI27265
 
ミュージカル『サムシング・ロッテン!』
作詞・作曲◇ウェイン・カークパトリック、ケイリー・カークパトリック
脚本◇ケイリー・カークパトリック、ジョン・オファレル
演出・上演台本◇福田雄一
出演◇中川晃教 西川貴教 瀬奈じゅん
平方元基 清水くるみ/橋本さとし ほか
●2018/12/17〜30◎東京 東京国際フォーラム ホールC
〈料金〉S席12,500円 A席9,500円 B席7,000円(全席指定・税込)    
●2019/1/11〜14◎大阪 オリックス劇場
〈料金〉平日:S席11,000円  A席8,000円  B席6,000円
    土日祝:S席11,500円  A席8,500円  B席6,500円
〈お問い合わせ〉キョードー東京 0570-550-799 (オペレーター平日11:00〜18:00、土日祝10:00〜18:00)

【取材・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃】


『暗くなるまで待って』


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