えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

『大人のけんかが終わるまで』

ファッション業界を舞台に檀れいと高橋惠子が女の闘いを繰り広げる!明治座5月公演『仮縫』上演中!

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昭和を代表する女流小説家であり劇作家としても活躍、日本の歴史から古典芸能、あるいは社会派の作品まで、その才能を多彩にきらめかせた有吉佐和子。舞台化された作品では『華岡清州の妻』がとくに知られているが、同じく女の闘いを描いた『仮縫』が、5月明治座公演として上演中だ。(28日まで)
 
華やかなファッションの世界を背景に描かれた小説『仮縫』は、1963年に発表され、69年には内藤洋子、岸惠子らの出演で『華麗なる闘い』というタイトルで映画化、「絢爛豪華な女性大作」として好評を博した。今回の明治座公演は、ヒロイン清家隆子(せいけりゅうこ)に檀れい、オートクチュール界の女王として君臨するデザイナー松平ユキに高橋惠子、そして2人をめぐる人物たちに古谷一行、山本陽子、葛山信吾という実力派俳優たちが顔を揃えている。

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【あらすじ】
洋裁学校で学んでいた清家隆子(檀れい)にとってオートクチュール「パルファン」は華やかな別世界であり、そこで働くことなど想像もしていなかった。しかも日本で唯一のオートクチュールの店を経営し、デザイナーとしても高名な松平ユキ(高橋惠子)にスカウトされるなんて――。
「パルファン」の顧客は裕福な家の婦人や有名女優、いわゆる上流階級の人達で占められ、この店でドレスをつくることが彼女たちのステイタスになっていた。ユキの自宅を兼ねている「パルファン」には、運転手兼ドアボーイでユキの弟と称する信彦(葛山信吾)と、謎めいた家政婦たつ(山本陽子)も暮らしていた。初々しいが凜とした美しい隆子は、長身で整った容姿の信彦に度々誘いをかけられるも興味を示さなかった。それよりも、ユキの恋人ではないかと思われる、銀座で画廊を経営する相島昌平(古谷一行)のどこか影のある大人の男に魅力を感じていた。
二年が経った。隆子はユキの経営術や上流階級の人達を引きつける技、オートクチュールの技量を吸収していた。自分に反旗を翻す弟子に対しての、残酷とも思われる仕打ち、ユキのそんな一面も隆子は知った。いつか自分もそんな目に遭うかもしれない。隆子の心の中には予感があった。そしてある時が来たら独立するかもしれない、いや、いつか自分の店を持ちたい。時々そんな夢をみるようになっていた。もともと隆子の才能を認めていたユキは隆子をチーフアシスタントに抜擢した。隆子の夢は一歩ずつ近づいてくる。
一方、ユキはデザイナーとしての才能の枯渇を感じ始めていた。幸いこの店を切り盛りできる隆子が育った。ユキはもう一度新しい感覚を求めてパリへいくことを決心した。日本を留守にしたユキの代行になった隆子の活躍は凄まじいものだった。これからはオートクチュールではない、プレタポルテが時代の先端を行く。そう信じた隆子は相島に相談をしながら着々と準備を進めてゆくうちに二人は愛し合うように──。
いよいよ隆子が企画・デザインしたプレタポルテのショーが三日後に迫った時、突然ユキが帰国し隆子の前にあらわれた。しかもショーはパリですべて準備しデザインした衣裳を持ってきたというのだ。唖然とする隆子にユキはさらなる追い打ちを掛ける。隆子の未来に待っているものは――。

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舞台上には貴族の館のサロンのようなゴージャスな応接間、そこがオートクチュール「パルファン」の仮縫室。「○○様、仮縫でございます」という声とともに、2階の縫製室から一斉に降りてくるグレーのユニフォームを着た縫い子たち。そこから始まる「仮縫」の作業や顧客とのやりとり、それ自体がワクワクするような眺めで、ファッション業界の裏側という非日常的な世界を覗き見る感覚があり、一気に惹きつけられる。

この豪華な邸宅の女主人である松平ユキは、戦後日本の新興成金や戦中を生き延びた上流階級の女性たち、また芸能人や文化人を相手に、オートクチュールつまり「高級注文服」を仕立てて名声を得ている。本名かどうかわからない「松平」という由緒ありげな名字も、彼女をカリスマ化するファクターの1つで、存在に謎めいた魅力を加えている。そんなユキを演じる高橋惠子が、気品としなやかな強さがあって適役だ。ユキは生きるうえで身に着けてきた非情さもあるのだが、それがただの冷酷ではなく、実業家としての判断力と行動力を感じさせてくれる。
 
そのユキの目にとまって縫い子として雇われ、やがて「パルファン」の経営者への野望を抱くデザイナー志望の清家隆子。素朴な洋裁学校の学生が、贅沢で洗練されたユキの世界に出会って、憧れ、染まっていく中で、彼女自身も気づいていなかった野心に目覚め、打算や裏切りを覚えながら、大胆にしたたかに生きていく。隆子という若い女性の成長と変化、その生命力の華やぎと若さゆえの脆さを、檀れいは瑞々しい演技で伝えてくる。

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この2人の女性の闘いが物語の核になっているが、周辺の人間たちにもそれぞれ背景があって、それがこの作品を単なる女の闘いのドラマに終わらせず、人間の生き様そのものを問うスケールまで引き上げている。
その代表的な1人が語り部も兼ねて登場する家政婦のたつ。ユキや信彦との関係は後半になって明かされるのだが、原作より大きく膨らんだという彼女の存在が、高度成長の掛け声にかき消され、忘れ去られようとするあの戦争の傷痕を突きつけてくる。そんなたつ役の陰影を、山本陽子が抑制のきいた存在感と台詞で見事に表現する。
信彦を演じる葛山信吾は、遊び人の青年として振る舞う中に、有名デザイナーを姉に持つことの屈折や、秘められた愛を切なく滲ませる。
ユキの恋人であり、隆子にも想いを寄せられる画廊のオーナー相島昌平は古谷一行。かつて画家を志し挫折した男の哀愁や諦観があり、2人の女性に愛されるに相応しい大人の男の色気を漂わせる。
そのほか、縫い子やドレスを誂えに来るセレブ役を演じる女優たちが、「パルファン」という店の格や優雅な雰囲気、また東京オリンピックに浮き立つ1960年代の日本の空気などを巧みに伝える。
ファッションが題材の舞台だけに、檀れいと高橋惠子が次々に着替える衣裳の豪華さ華やかさに加えて、ユキと隆子がそれぞれデザインした「オートクチュール」と「プレタポルテ」のファッションショーも楽しめる。さらにカーテンコールまで粋なドラマ仕立てになっているなど遊び心満載で、見どころも見応えも十分の娯楽大作に仕上がった。

〈公演情報〉
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明治座5月公演『仮縫』
原作◇有吉佐和子『仮縫』(集英社文庫) 
脚本◇堀越 真 
演出◇西川信廣
出演◇檀 れい 高橋惠子 葛山信吾 山本陽子 古谷一行 ほか
●5/6〜28◎明治座
〈料金〉S席(1階席・2階前方席)12,000円 A席(2階後方席)8,500円 B席(3階席)6,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター 03-3666-6666
〈チケット予約〉http://www.meijiza.co.jp/ticket/
〈HP〉http://www.meijiza.co.jp/lineup/2018/05/

 

【文/榊原和子 写真提供/明治座】



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早霧せいな宝塚退団後の初主演ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』公開稽古レポート

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元宝塚雪組トップスター早霧せいなの、宝塚退団後初主演ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』が、5月19日〜27日大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマ・シティで、6月1日〜10日東京・TBS赤坂ACTシアターで上演される。

『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』は『シカゴ』『キャバレー』等、数多くの傑作ミュージカルを手がけたジョン・カンダ—&フレッド・エッブの華やかな楽曲で綴られたミュージカル・コメディ—。人気ニュースキャスターのテス(早霧せいな)が、風刺漫画家のサム(相葉裕樹)と一目惚れによる電撃結婚をしたことから「仕事と家庭の両立」という問題に直面して、悩み、ぶつかりながら新たな人生を切り開いていく物語。1981年にブロードウェイで初演され、トニー賞4冠に輝いた作品だが、むしろ女性の社会進出が進んだ現代の方がよりリアルに、ヒロインの葛藤が理解できる今日性を持っている。

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そんな作品の公開稽古が、5月7日都内の稽古場で行われ、主演の早霧せいなをはじめとしたキャストが大集合。白熱した場面が披露され、公演の魅力の一端が浮かび上がった。
 
♪公開稽古1「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」

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まず演じられたのは作品の冒頭場面。その年最も輝いた女性に贈られる「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたテス(早霧)が授賞式を迎えている。だが、表向きは満面の笑顔のテスの心中は、ケンカしたばかりの夫のサム(相葉)への恨み節でいっぱい。私がどんな女なのかわかっていない!という怒りを込めて歌うテスを演じる早霧は、美しいフォルムのスタイルと、豊かな表情が魅力的で、早くも新たな顔を見せてくれる。

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♪公開稽古2「戻らない時間」

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続いて、家庭よりも仕事優先のテスとの結婚生活がすれ違うばかりで、互いの心が離れていってしまう。と嘆くサム(相葉裕樹)が切々と歌う「戻らない時間」が披露される。サムは自分の心情を、彼が描く漫画のキャラクターカッツに語りかけるのだが、この日はカッツがどう登場するのかはシークレット。こちらは本番の仕掛けに注目だが、相葉の優しく切ない歌声が、サムの心情を十分伝えてくれていて、その思いに胸が詰まった。

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♪公開稽古3「女だけど男」

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そして、実際の上演では時系列が異なるが、風刺漫画の題材にされてきたテスと、サムの仲間の漫画家たちが理解しあい、仲間として歌い踊る「女だけど男」のナンバーへ。「男なんかには負けない!私は女だけど男なの!」と歌うテスのガッツとハートが、早霧のキレの良い動きにピッタリ。やがて全員が登場する大ダンスナンバーに発展し、ラインダンスも含めた、弾ける楽しさに満ちたシーンが展開され、衣装とセットが揃った公演本番への期待が膨らんだ。

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続いて囲み取材が行われ、早霧せいな、相葉裕樹、宮尾俊太郎が公演への抱負を語った。

【囲み取材】

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宮尾俊太郎早霧せいな、相葉裕樹

早霧 今日はお忙しい中いらしてくださりありがとうございます。こういう場を設けて頂くと、いよいよはじまるんだなという実感を持ちました。宝塚を退団して初のミュージカルに挑戦ということで、自分が今持っているものをすべて出し切って、果敢に挑戦することがテス役につながると信じているので、その信念を失わず初日に向けてこれからもお稽古に励みたいと思います。
相葉 本日はお越しくださりありがとうございます。残りの稽古が1週間となりました。まだまだやらなければならないこともたくさんあるのですが、本当に普遍的なテーマで、皆さんに共感して頂ける作品になるのではないかな?と思っています。劇場に足を運んでくださる皆様に楽しんで頂けたらなと思いますので、ラスト1週間全力で稽古して、初日に臨みたいと思います。よろしくお願いします。
宮尾 今日はありがとうございます。僕は普段はバレエダンサーとしていっさい声帯を使っていないのですけれども、今回は台詞もあるし、歌もあるということで、そこは本当に皆様に一から助けて頂きながらやらせて頂いています。本当に現役のバレエダンサーがこうしたミュージカルの舞台に、バレエダンサー役で出るというのは、なかなか他にないと思いますので、是非その辺りも楽しみにして頂けたらと思っています。

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──ご自分の役柄について教えてください。
早霧 テス・ハーディングという、1度結婚して離婚していて、テレビのニュースキャスター、アンカーウーマンとして全米で大活躍中の彼女が、サム・クレッグという1人の男性に電撃的に出会い、そこから仕事と家庭との両立をはかりながら…というところがポイントとなる作品です。なのでそこを全部説明してしまうと、観に来て頂く楽しみがなくなりますから(笑)、そこは是非観劇して頂いて楽しみにして頂きたいのですが、そこでテスがどう変わっていくか?が自分にとっても大きな見せ場になるなと思っているので、その変化を是非見て下さい。
相葉 サム・クレッグという風刺漫画家です。はじめはテスをものすごく敵対視しているのですが、ひょんなことから一目惚れをしてしまいまして、そこからなんやかんやがあり、お付き合い、そして結婚という、そこまではよくあることなのですが、そこからがすごく大変で。お互いの育ちが違い、生活環境が違い、なかなかうまくいかないんですね。それに対してサムが抱く不満というのが、一般的な男性だったら誰しもが不満に思うだろうな、というラインなんですね。本当に庶民代表と言うか、一般的な感覚を持っている男性なんじゃないかな?と思うので、劇場に足を運んでくださるお客様も、きっとサムに共感して頂けるのではないかと。テスや、テスの周りの人間にとても振り回されるので、そこは「あぁ、わかる、わかる」という感じで観て頂けると思いますので、是非劇場で確認して頂けたらなと思います。
宮尾 僕はロシアから亡命したバレエダンサー・アレクセイ・ぺトルコフです。彼は亡命はしたのですけれども、結局ロシアに帰るんです。なぜならそこには愛する奥さんがいるから、ということをテスに伝えます。それにテスは衝撃を受けて、キャリアを全部捨てて、愛する人の為に国に帰るというところで、テスに影響を与える人物です。本当にアレクセイ・ぺトルコフはそういった意味では、愛したものに突き進んでいく、とてもハッピーな男です。僕自身も元々ハッピーな男なのですが、色々人生経験を積んでハッピーだけではなくなったところもあるのですが(笑)根っこはハッピーなので、そこがとても役とリンクしているところです。

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──早霧さんとご一緒されて、稽古場の雰囲気はいかがですか?
宮尾 早霧さんは飾らずに真っ直ぐに役に向き合っていて、良い意味でプライドを捨ててやっていらっしゃるので、とても清々しいです。
早霧 ありがとうございます。
相葉 早霧さんめちゃくちゃストイックですよね。
宮尾 あぁ、そうだね。
早霧 ストイック?
相葉 そう、アスリートなんじゃないか?と思うくらい。本当にガッとやっていく感じが男らしい。
早霧 それは褒め言葉?(笑)
相葉 褒め言葉です!ものすごい褒め言葉!ガッとなった時の集中力がすさまじいので、そこに僕たちも引っ張られてね。
宮尾 なのに酔っ払うシーンとか、すごく可愛いんですよね。
相葉 そう!そこも大きな見どころですよね!
早霧 私自身は男性の皆様とこうやってお芝居をするのが初めての経験なので。
相葉 そうか!
宮尾 どうですか?
早霧 やっぱり色々なこと、小さなことから大きなことまでドギマギします。手を取られて触れた感覚が違うとか。やっぱり女性と手をつなぐ感覚とは全然違うから。
相葉 違います?
宮尾 汚らわしいとか?(笑)
早霧 そこは言えない(笑)。
相葉 それショックですよ(笑)、手をつなぐから。
早霧 いやいや、全然そんなことないです!
相葉 それこそキスシーンもありますものね。
早霧 宝塚の時よりもリアル感をすごく感じます。
相葉 あー、男女だからね。 
早霧 そう、だからそのリアルな気持ちを、作品に詰め込みたいなと思います。そこが宝塚との大きな違いだなと思っていて、やっぱり当たり前だけれど本物の男性は力強いんです。聞こえてくる声の質感も違うし、私をリフトしてくださる方たちが力強いから、自然と女子になれてます(笑)。
宮尾 早霧さんもリフトされている上で力強いですよ!(笑)絶対に上でピシっとしているから。
相葉 体幹がものすごく強い。
早霧 そうやって日々、皆さんに助けられながらの稽古場です(笑)。
──作品の音楽的な魅力はどうですか?
早霧 楽しいナンバーがいっぱいあるので、自分が出ていない場面を見ているのもものすごく楽しいし、聞き応えもあるので、全部座ってゆっくり堪能できるお客様が羨ましいです。

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相葉 どれも素晴らしいのですが、僕が特に好きなのは「こりゃダメだ」というアップテンポのショーナンバーです。本当に言っている歌詞はネガティブなんですけれども、やたら明るい!そのギャップが面白くて素敵だなと思います。
宮尾 これが70年代、80年代のミュージカルの楽曲なんだと思うと、不思議な気持ちです。突然音楽に乗って情景が浮かんでくるので、感情移入しやすいですし、ラブコメの楽しさがあって。ただ、僕の曲は難しい!どう思います?僕はすごく難しいと感じるんですが。
相葉 難しいですね。正直どれも難しいんです。だから、ラスト1週間で追い上げていかないといけないなと思ってます。
宮尾 早霧さんも難しいと思います?
早霧 思います。
宮尾 特にどういったところが?
早霧 感情が爆発した時に、歌になったり踊りになったりするので、そこの気持ちからのナンバーの導入とか、ナンバーが終わったあとお芝居に戻る時の気持ちをちゃんと歌に乗せたいな、と思うと、楽曲の素晴らしさに自分の気持ちが追いついているのかな?という難しさがあります。
宮尾 つながりとか、離脱していくところですね。
相葉 そうそう、離脱!
宮尾 曲から離脱していくところが辛い?
早霧 あぁ、でもね、誰よりも、一番踊りながら歌っているのが宮尾君だと思う。
相葉 あれだけクルクル回りながらって、普通できないですものね!
宮尾 僕もこんなに踊るとは思っていなかった(笑)。ミュージカルってこんなに歌いながら踊るんだ!って。
相葉 必要以上に踊らされている感はありますよね(笑)。
宮尾 あぁ、やっぱり?(笑)
早霧 せっかくだから踊って欲しいって皆さん思ってるからね。これは見応えありですよね。

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──早霧さんはこれまで男性役がほとんどだったと思いますが、女性役の難しさはありますか?
早霧 元々男性を演じようが、女性を演じようが、自分とは別人格を演じるという時点でやっぱり私には簡単にできることではないんです。それは、毎回違う作品で違う役を演じる度に感じるところなので、それがやり慣れていない女性となると、勝手が違うことが多々ありまして(笑)。どうしてもスカートを履いて歩くとか、右肩にショルダーバッグをかけて歩くとかが板につかないんですよ!
相葉 そんなことないですよ!
宮尾 本当にそんなことない!
早霧 そう?(笑)
相葉 はい。
早霧 ありがとう!
──ヒールの靴はどうですか?
早霧 宝塚の時もヒールはついていましたが、男性用のブーツだったので、足の甲が見えるということはなかったので。そういう意味では露出も増えますし、無駄な動きがない方がよりエレガントに、より美しく見えるんだろうなと思うと、その辺りには気を遣いつつ、やはり役として呼吸していかないといけないので。頭で演じていてもダメなので、心から動けるエレガントな女性になれたらなと思います。
──男性お二人から見てその辺りは?
相葉 めちゃくちゃエレガントですね。エレガントの塊。
宮尾 そう、エレガンス。
早霧 そこまで言うとちょっと嘘っぽい(笑)。
相葉 いえ、やっぱり見せ方などを教えて頂くことが多くて。「この時はこっちの角度の方が良いよ」とか結構言ってくださるので「あぁ、そうなんですね」と(笑)。
宮尾 その様子を僕が遠くから見ていて、もうその様がすでにテスとサムになっているので、ピッタリだなと思います。
相葉 心強いし、エレガンスに関してはプロフェッショナルなので、頼ろうかなと思っています。
早霧 任せて!(笑)

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──早霧さんご本人とテスの共通点は?
早霧 たまに猪突猛進しちゃうところがあって、周囲の人たちを忘れて突っ走ちゃう時があるんです。でもそうしないように心がけているのですが、テスはそれが常になので、私が猪突猛進しているところをずっとやり続けたらテスになるのかな?(笑)とも思ったりしています。
──男性陣から見てはどうですか?
宮尾 宝塚でトップになって、ひとつの偉業を成し遂げているキャリアをお持ちの方が、新しい作品と出会い、新しい男性と出会うところはリンクしているかな?と思いますが、猪突猛進は全然思わないですね。いつも皆さんを気遣っていらっしゃるから。
早霧 ありがとうございます。いつもこうやって優しい言葉をかけてくださる方々がお二人だけでなく、皆さん多いので、裸の王様にならないようにしないと(笑)。
宮尾 裸のお姫様でしょう?
早霧 お姫様? ほら、こうやってね(笑)。
──早霧さん新たな現場で勝手が違うことや、とまどったことなどは?
早霧 実はこのミュージカルをやる前に『SECRET SPLENDOUR』というショーもやっていて、そこでもだったのですが、不思議と男性といる時の方がリラックスできるんです。舞台上ではなく、こういう稽古場などでの時に。なんでなのか?がその時も今もよくわからないのですが、もしかしたらまだ男役だった時の感覚が抜けないのかな?と思って、その辺りは自分でも分析しかねています。あとは、テスとサムの場面をやっている時に、演出家の板垣恭一さんから「テスは…」「サムは…」というアドヴァイスを頂いていて、どうしても男側で考えちゃう時があって。結構お稽古の前半の段階では「いけない!テス側なんだ!」と思った時がありました。それはちょっと自分でも無意識の行動だったので、もう解き放たれて良いのに、どうしても男性側の心情を考えたりしていました。
──今はその辺りは?
早霧 サムの心情を考えたりもしますが、それはテスから見たサムの心情なので、そこは捉え方が変わってきました。あとはやっぱりすごい高い位置のリフトの、その眺めたるや!スカイツリーもびっくりという!(笑)
宮尾 スカイツリーもびっくり?(笑)
早霧 新感覚でした!
宮尾 いつもリフトしてたからね(笑)。

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三人のトークの和やかさから、稽古場の雰囲気がよく伝わってきた公開稽古はこれで終了となり、まだまだ楽しいシーン、大爆笑のシーン満載のミュージカルで、観て頂きたいシーンはたくさんありますが、それは本番のお楽しみということで、是非劇場に足をお運びください!という締めくくりの言葉があり、公演への期待が膨らむ時間となっていた。
 
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〈公演情報〉
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ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』
作曲◇ジョン・カンダ—
作詞◇フレッド・エッブ
上演台本・演出・訳詞◇板垣恭一
キャスト◇早霧せいな、相葉裕樹、今井朋彦、春風ひとみ、原田優一、樹里咲穂、宮尾俊太郎(Kバレエ カンパニー) ほか
●5/19〜27◎大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
〈料金〉12.500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 06-6377-3888(10時〜18時)
●6/1〜10◎東京・TBS赤坂ACTシアター
〈料金〉S席12.500円 A席8.500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 0570-077-039(10時〜18時)
〈公式ホームページ〉 http://www.umegei.com/womanoftheyear/



【取材・文・撮影/橘涼香】




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イプセンの名作『人形の家』東京公演まもなく開幕! 北乃きいインタビュー

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北乃きいが主人公ノラに扮し、佐藤アツヒロや大空ゆうひが共演するヘンリック・イプセンの名作『人形の家』が、りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館 劇場で、5月10日に幕を開けた。続いて5月14日から東京芸術劇場シアターウエストで東京公演を行う。(20日まで。5月23日・24日は兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールで上演)

【あらすじ】
弁護士ヘルメル(佐藤アツヒロ)の妻ノラ(北乃きい)は、純粋で無垢な女性だった。若くして結婚し三人の子供も授かり、夫に守られ生きている。
ある日、リンデ夫人(大空ゆうひ)が訪れるところから幸せだったはずの生活に歪みが生じ始める。ヘルメルの部下クロクスタ(松田賢二)との秘め事や、ヘルメルの友人であり医師であるランク(淵上泰史)のノラへの純粋な恋も、それと同時に思わぬ方向へと動き始める…。決断を迫られたノラが最後に選んだものとは。

ノラ役で、本格的セリフ劇に初めて挑戦するのは、女優のみならず幅広いフィールドで活躍する北乃きい。夫役には近年舞台で圧倒的存在感をみせる佐藤アツヒロ。夫婦を取り巻く人々には、宝塚退団後も演技派女優として輝きを放ち続ける大空ゆうひ、実力派俳優の松田賢二、若手注目株の淵上泰史、大浦千佳といった個性的なキャストばかり。演出は、16年にストリンドベリの「令嬢ジュリー」を『令嬢と召使』として再構築した気鋭の一色隆司が手がける。
そんな新たな『人形の家』で、ノラ役に挑む北乃きいに、舞台にかける想いや本作への抱負を聞いた「えんぶ6月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。
 
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この『人形の家』を観たら、
たぶん1つ扉が開きます

──出演するにあたって原作も読まれたそうですね。
ふだんは原作は一切読まないんです。脚本と違うと混乱するので。でもこれは読みたかったんです。読んだらさらに強く強くノラを感じました。あと、演出の一色さんが映画の『風と共に去りぬ』を観ておいてほしいとおっしゃったので、それも観ました。ノラにはあの強さが必要なのかなと、呑み込みやすかったです。
 
──ノラは夫に愛されていますが、どこかで人形のようだと感じていますね。そういうノラの立場や心理はわかりますか?
私は祖父母の家で育ったのですが、祖父母にもちょっとそういう感じがあったので、遠くは感じませんでした。古い男女関係のようにも思えますが、今の日本にも、「自分の立場ってなんなのだろう」と考えている女性は沢山いると思うんです。そういう女性の方々にぜひ観ていただきたいなと。観たら、たぶん1つ扉が開く気がします。
 
──舞台に出演するのは『サイケデリック・ペイン』(12年)に次いで2度目ですね。前回はいかがでした?
とにかく恐かったです。初舞台でしたから何もかもわからないうえに、もともと気軽に人にものを聞けないほうなので、みんながどこで着替えているかもわからなくて、着替えなくていいようにジャージを着たまま電車に乗ってました(笑)。稽古場でも出来ないどころではなくて、残って1人でやって、それでも出来なくて、毎日泣きながら帰っていました。 
 
──そうは思えないくらい舞台では生き生きしていました。舞台そのものは楽しかったのでは?
達成感がすごかったですね。それと生の凄さが少しわかりました。私が沢山の敵と戦うシーンがあったのですが、剣が客席に飛んでしまったんです。でも素手で戦う稽古なんてしていないし、エアーでやろうかなと思っていたら、右近(健一)さんが敵方なのに自分の剣をさっと投げてくれて。それに、お客様もハラハラしながら見守ってくれて。そのとき「なんだろこれ、凄い!」と。出ている人たちだけでなく、お客様も協力している。それは生の舞台だからで。続ける凄さ、それが舞台なんだと。衝撃でした。

私をこのチームに
キャスティングしてよかったと

──この作品で6年ぶりに舞台に挑むわけですが、女優としての今後にどう役立てたいですか?
私は映像では学生の役が多かったんです。その後、社会人の役もやっているのに、なぜか学生役のイメージが強いと言われるので、そろそろ年相応の役をやっていきたいなと思っていたんです。この作品のノラはそういう意味では年相応で、子供や夫もいるという演じたことのないような役ですから、この役を演じきれたら、周りの見方も変わるかもしれないと期待しているんです。
 
──意外と北乃さんの等身大でやれそうな気もします。
緊張しないでやりたいですね。緊張したことで無駄になることって沢山あると思うので。この『人形の家』ってすごく有名ですよね。でも意外と上演される機会は少なくて。ですから初めて観る方のためにも、いい舞台にしたいし、私をこのチームにキャスティングしてよかったと思われるような作品にしたいです。
 
──ノラを演じた女優の1人として足跡を残すということですね。
『人形の家』という作品のファンの方もいらっしゃるので、正直恐いですけれど(笑)。でも初主演舞台は一度しかないので、ぜひ沢山の方に観ていただきたいです。私も年齢を重ねて仕事への気持ちも変わってきた中で、ここでこの素敵な作品と出会えたことを大事に、きっと新しい北乃きいを観られると思いますので、ぜひ観にいらしてください。

本誌8423
きたのきい○神奈川県出身。05年「ミスマガジン05」グランプリを受賞後、映画、ドラマ、CMなど多方面で活躍中。日本テレビ『ZIP!』の司会を14年から2年間務めた。近年の主な出演作に、映画『爆心 長崎の空』『上京ものがたり』『ヨコハマ物語』『僕は友達が少ない』『TAP THE LAST SHOW』、ドラマ『クロスロード』『社長室の冬』『橋ものがたり-小ぬか雨-』『銀魂-ミツバ篇-』、舞台『サイケデリック・ペイン』。第31回日本アカデミー賞新人俳優賞・第29回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。

〈公演情報〉
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りゅーとぴあプロデュース『人形の家』
作◇ヘンリック・イプセン 
訳◇楠山正雄訳『人形の家』より 
上演台本◇笹部博司 
演出◇一色隆司 
出演◇北乃きい 大空ゆうひ  松田賢二 淵上泰史 大浦千佳 佐藤アツヒロ 
●5/14〜20◎東京芸術劇場シアターウエスト
〈料金〉7,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉エムティーピー 03-6380-6299 
●5/23・24◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
〈料金〉A 7,000円 B 5,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255(10:00〜17:00/月曜休 祝日の場合翌日)
〈公演HP〉https://www.ryutopia.or.jp/performance/event/6022/






【取材・文/宮田華子 撮影/友澤綾乃】



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痛快娯楽時代劇『蘭〜緒方洪庵 浪華の事件帳〜』開幕! 舞台写真&北翔海莉インタビュー 

左より藤山扇治郎、北翔海莉

「誰にでも、守りたいものがある!」 
若き日の緒方洪庵と在天の姫・東儀左近。別世界に生きる二人は「天然痘を無くしたい」という同じ思いを持ち、ともに大坂(当時の表記)の闇を切り裂いていく──。
医術の道に希望を抱く若き日の緒方洪庵と、大坂の町を陰で守る闇の組織「在天」の姫・東儀左近が活躍する痛快娯楽時代劇、『蘭〜緒方洪庵 浪華の事件帳〜』。この舞台が、5月6日、大阪松竹座で幕を開けた。(13日まで。そののち、5月16日から20日まで新橋演舞場で上演)
「昭和の喜劇王」と称され、松竹新喜劇を牽引した藤山寛美の孫・藤山扇治郎が主演、元宝塚トップスターの北翔海莉が共演、さらに久本雅美や石倉三郎も出演するという豪華な顔ぶれの舞台だ。
その作品で男装も見せて大活躍する北翔に、この公演への取り組みと宝塚退団後の活動などを話してもらったインタビューを、上演中の大阪松竹座の舞台写真とともにお届けする。

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勇ましい姿と本来の女性の顔と

──宝塚退団から
もう1年半近く経ちました。退団1作目のミュージカル『パジャマゲーム』では、女性らしい姿も見せてくれました。
そう見えていたら嬉しいです(笑)。今回は男装の麗人役で、一見するとまた後戻りですが(笑)、素敵な作品で、大好きな立ち廻りもありますし(笑)、お話をいただいたときは大喜びしました。
──剣道はずっと続けていたそうですね。
退団公演の『桜華に舞え−SAMURAI The FINAL−』のために自顕流を習い始めたのですが、ずっと続けたいなと思ったので、時間を見つけて鹿児島まで通って稽古していたんです。流派の違いがありますので、同じように刀を持っての立ち廻りですが、奥深さを感じています。でも、午前中に立ち廻りの稽古に行ってから稽古場に向かう日々は、とても充実してました!(笑)
──原作もお読みになったそうですね。
原作も読ませていただきましたし、ドラマも拝見しました。作者の築山桂先生にもお会いしましたが、東儀左近という役は、昼は饅頭屋の娘で、夜になると大坂の地を守る闇の組織「在天別流」の姫という2つの顔を持っていて、そこがまず魅力的だなと思いました。舞台となる場所は大坂ですが、私は宝塚時代、意外と大阪の話というのに縁がなかったので、そこも新鮮でした。大坂の地を守るという役柄は、とても気に入っています(笑)。
──女性でありながら男装するという役柄も、宝塚の男役と重なります。
とくに私は、オフでは本来の女性の自分で生きてきましたし、そのままの感覚でファンの方々とも接していたんです。ですから舞台で男を演じる北翔海莉と、ふだんの女性の北翔海莉と2つの顔があったのですが、それがそのまま東儀左近という役に重なって、左近の勇ましい姿と本来の女性という部分の、どちらも楽しんでいただけるのではないかと思っています。
──左近の女性である部分は、緒方章(洪庵)さんとの関係に出てくるのかなと。
そうですね。原作では洪庵さんが左近に心惹かれるという設定になっていますが、二人の仲がどうなるかは、観るまでのお楽しみにしていてください(笑)。
──この作品は青春群像劇のような部分もありますね。
謎解きのサスペンス要素だけでなく、恋のときめきとか甘さもありますし、それぞれが進まなければいけない道、守らなければいけないもの、それに宿命とか、そういう切ない部分もあります。左近がなぜ男装の麗人として生きていかなくてはいけないのか、そこにこの作品のもう1つのドラマがあると思いますし、そこを感じていただけるような役作りが必要だと思っています。
──北翔さんは宝塚時代から演技派で知られていましたが、役へのアプローチはどんなふうに?
今回もそうですが、自分の中でイメージがしっかりできていれば、あとは演出家の方の方向性を理解して付いていくだけなので。今回も演出の錦織(一清)さんとしっかりコミュニケーションを取ることが一番大事だと思ってきました。
──錦織さんの演出はいかがですか?
普通のお芝居だけでなくショーやミュージカルも作られていて、すごくアイデア豊かな方ですよね。稽古場でも実践しながら、次から次にどんどん新しいセリフも出てきて。その人に合ったセリフや動きをつけてくださるので、毎日が新鮮な稽古で、稽古場に寝泊まりしたかったくらいです(笑)。カンパニーがひとつになって、笑いが絶えない稽古でした。
──今回は歌もあると伺いました。
扇治郎さんと二人で録音までさせていただいて、CDを出す話にまでなりました!  幕開きの扇治郎さんと歌う「名所案内大坂ラプソディー」は、この舞台を象徴するような明るく楽しい歌で、時代劇ですが、ロック調なんです(笑)。
──ソロでも歌われる場面があるとか?
ソロでは「東儀左近のテーマ」を歌わせていただきます。サンスクリット語で始まる低音部分から、盛り上がりのソプラノまで音域広く情感豊かなメロディで、歌詞にもテーマ性が込められている素敵な歌です。女でありながら、男の姿をしている男装の麗人・左近という、役柄ならではの歌になっています。退団してからこうしてまた、私の演じる役のために新曲を用意していただけるということが、とてもうれしいです。

左より北翔海莉、藤山扇治郎

出会わなければいけない人とは、きちんと出会っている

──先ほど『パジャマゲーム』の話も出ましたが、宝塚を退団してから、コンサートやディナーショーだけでなく、新作能『マリー・アントワネット』や、藤間勘十郎さんの文芸シリーズなど、バリエーション豊かに活動していますね。
なんでも挑戦してみようと思っているんです。宝塚歌劇を卒業した今、自分にどんな引き出しがあるかまだわからないので、まずはやってみようと。自分には無理だと思ってやらないでいたら、一生できないままで終わってしまいますから。まずは逃げないこと、それが大事だと思っています。 
──新作能では間狂言という形で、先輩の未沙のえるさんとの問答や舞踊が楽しかったです。
本当に良い経験をさせていただきました。国立能楽堂に立たせていただくことなど滅多にないことですし、さらに人間国宝の梅若玄洋先生と同じ板の上に立たせていただき、稽古場から拝見させていただくなど、すべて貴重な機会で有り難かったです。
──藤間勘十郎さんの文芸シリーズでは、芝居と日本舞踊で登場しましたが、長く続けている日本舞踊も北翔海莉の魅力の1つですね。
日本舞踊も立ち廻りも、宝塚歌劇団で教えていただいて、せっかく修業してきたものなので、卒業と同時にそれをなくしてしまったらもったいないですから。まだまだわかっていない所作などもありますし、その世界の一流の方々から教えていただける現場は本当に有り難いです。この『蘭』もそうですが、昨年の12月あたりから和物の作品で皆さんの前に登場することが続いていて、もちろんブロードウェイミュージカルもまた挑戦していきたいと思っていますが、和物の舞台というのは上演されること自体少なくなっていますから、和物の舞台が出来る機会は大切にしていきたいと思っています。
──女性役を演じるようになって感じた男役との違いは?
意外と違わない気がします。自分ではすごく大変かなと思っていたのですが、役を作っていくのは、男性でも女性でも一緒ですし、歌とかダンスも基本的には大きな違いはないなと。あまり大きな壁とかハードルは感じないでやっています。
──ソプラノが無理なく出せることに驚きました。
宝塚在団中から出ていたんです。もちろん男役では低い声を出していましたけど。私はジャズを歌うので好きで、ジャズのスキャットって3オクターブくらい出ないと、遊びが全然できないんですね。そのために歌える音域の訓練はいつもしていたんです。そのおかげで、ミュージカルで女性のキーに変わっても、まったくしんどさもなく挑戦できたことはよかったなと思っています。
──自顕流もですが、次々に技術を習得して磨いていく、その熱意はどこからきているのでしょうね?
趣味なんです(笑)。というより、ステージに立つからにはできるだけ良いものをお見せしたいし、その道のプロにはなれないですけど、本物を理解した上でそのとき出来る環境の中で限界まではやってみたいなと思うんです。
──つまり努力ということなのでしょうが、努力し続けるモチベーションはどこにあるのかなと。できない自分を許せないとか?
それもありますけど、教えてくださる方々と相性が合うのが一番大きいと思います。私はすごく恵まれていて、お師匠さんにあたるそれぞれのジャンルの先生が、本当に教え方が上手で、相性が合うんです。そういう意味では雅楽の龍笛も、フラメンコもタップも社交ダンスも、すべて先生に恵まれているなと。
──その1つ1つを糧にして役者北翔海莉が育ってきたわけですね。
下級生の頃に、龍笛を習っていた先生が「四天王寺で僕が踊るから観においで」と言ってくださって、私はたまたま休みだったので観に伺ったんです。そしたらその笛の先生が4人で踊っていらして、「雅楽の演奏者なのに舞いもするんだ!!」とびっくりしたんです。今回、『蘭』のお話をいただいてドラマ版を観たときに、同じようなシーンが出てきて、「ああ、あのとき観たのはこれだったんだ!左近はこういうことをする人なんだ」と。今まで色々な方々が私に見せてくださっていたものは、自分の人生において必ず必要になってくるものばかりで。ひと場面ひと場面、あ、あのシーンだということが、よくあるんです。
──それは北翔さん自身が呼び寄せているのだと思います。
やはり出会いなんですよね。そのときに出会わなければいけない人ときちんと出会っているなと思います。今回も初めましての方々が多いのですが、卒業してから巡り会う方々によって、新しい北翔海莉を作っていただこうと思っています。

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大阪松竹座と新橋演舞場、歴史ある劇場に立つ光栄と緊張

──私生活も伺おうと思ったのですが、宝塚時代より逆に仕事に追われているそうですね。
去年1年は本当に忙しくて、歌劇団での生活のほうがラクだったなと(笑)。宝塚では1つの作品に3ヶ月間没頭できますけれど、外ではいくつかの作品を同時並行して進めて、しかも私は企画・構成から手がけるので。自分で作ることが好きなので仕方ないのですが、結局、自分で忙しくしているんです(笑)。
──宝塚ではスターであることが一番大きな仕事で、周りがすべて用意してくれますね。そういう意味では花園だったのでは?
本当に恵まれていましたし、その良さも十分味合わせていただきました。でも私にとってトップ時代が一番華やかだったかというとそんなことはなくて、あくまでも自分の人生という階段の途中の一段でしかないんです。今はそこからさらにまた上に行くところなので。
──さらに先へ、上へということですね。今、抱いている夢はありますか?
やりたいことは沢山あるのですが、今回共演する藤山扇治郎さんが会見のときに「お客様の心の薬になるようなステージを」とおっしゃっていたのですが、私も同じで、歌1つでもダンス1つでも、沢山の方々に少しでもエネルギーを届けることができたらいいなと。どんな場でもその気持ちを忘れないで、舞台に立ちたいです。
──話は逸れますが、扇治郎さんの伯母にあたる藤山直美さんは、北翔さんにとって憧れの役者さんだそうですね。
自分がお芝居に迷っていたときに、直美さんのお芝居を観て感動して、そこから大阪松竹座に通うようになったんです。その松竹座の売店で藤山寛美さんのDVDセットを見つけて全部買って、片っ端から観ました。お芝居の間(マ)というのはこういうものなんだと思いましたし、寛美さんは喜劇の方なのに二枚目をされると格好よくて、すごく勉強させていただきました。
──色気のある方でしたね。北翔さんのコメディセンスは寛美さんや直美さんから学んだわけですね。
足元にも及びませんが(笑)。マをここまでためてからだと効果的なんだとか。DVDなのですり切れることはないので(笑)、何回も何回も巻き戻して見ていました。
──扇治郎さんはその寛美さんのお孫さんですから、待望の共演ということですね。
マニアックなお話ができるのが嬉しいです(笑)。「寛美さんのこの作品のこの引っ込みの面白さ、わかりますか?」とか聞くと「わかります!」と返してくださるので、それだけで感動します(笑)。
──そんなお二人が中心となっているこの『蘭』、観る方へのメッセージを改めてぜひ!
大阪松竹座と新橋演舞場に立たせていただけることは、私にとって夢でしたので、本当に光栄です。そして、これだけ歴史ある劇場に立つ以上、失敗するわけにはいかないのでプレッシャーもありますが、皆さまに納得していただけるような舞台にしたいと思っています。何よりも「もう一回観たい」と思っていただけるような舞台を作ること。それが私たちの仕事ですから、共演者の方々とそれを目指して一生懸命に稽古してきました。ぜひ、大阪松竹座と新橋演舞場へお運びください。

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ほくしょうかいり○千葉県出身。1998年宝塚歌劇団に入団、『シトラスの風』で初舞台。翌99年月組に配属。03年『シニョール ドン・ファン』で新人公演初主演、06年『想夫恋』でバウホール公演単独初主演。同年、宙組へ組替え。12年に専科へ異動後は、各組の公演に出演し、主要な役を次々と務めた。15年星組へ異動、全国ツアー公演『大海賊』『Amour それは…』でトップに就任。16年11月『桜華に舞え』『ロマンス!!(Romance)』で惜しまれつつ退団。17年9月のミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』で女優活動をスタート。「〜薔薇に魅せられた王妃〜 新作能『マリー・アントワネット』〜薔薇に魅せられた王妃〜」、「藤間勘十郎文芸シリーズ其ノ参『恐怖時代』『多神教』」などに出演。

左より荒木宏文、北翔海莉
左より久本雅美、石倉三郎、藤山扇治郎、北翔海莉

〈公演情報〉
#08
 
『蘭 〜緒方洪庵 浪華の事件帳〜』
原作◇築山桂「禁書売り」「北前船始末」(双葉文庫)より
脚本◇松田健次
演出◇錦織一清
音楽◇岸田敏志
出演◇藤山扇治郎 北翔海莉
荒木宏文 佐藤永典 上田堪大
宮嶋麻衣 高倉百合子 ゆーとぴあ・ピース
渋谷天笑 丹羽貞仁 笠原章 
神保悟志 久本雅美 石倉三郎
●5/6〜13◎大阪松竹座
〈料金〉1等席:11,500円 2等席:7,000円 3等席:4,000円(全席指定・税込)
●5/16〜20◎新橋演舞場
〈料金〉1等席11,500円 2等席7,000円 3階A席4,500円 3階B席3,000円 桟敷席12,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹(10:00〜18:00)0570-000-489または 東京 03-6745-0888 大阪 06-6530-0333)




【取材・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃 舞台写真提供/大阪松竹座】



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