えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

帝劇ミュージカル『1789』

朝夏まなと・神田沙也加のWイライザ! ミュージカル『マイ・フェア・レディ』来年9月にシアターオーブにて上演!

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イライザ/朝夏まなと
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イライザ/神田沙也加

ミュージカル史上に燦然と輝く不朽の名作『マイ・フェア・レディ』が、"新プリンセス"を得て、2018年9月に東京・東急シアターオーブにて上演されることが決まった。

新しいイライザ役には、11月に15年間の宝塚生活に別れを告げ、これが退団後初のミュージカル出演となる元宙組トップスター朝夏まなと、そして大作ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』や『1789』、ブロードウェイ・ミュージカル『キューティ・ブロンド』での好演も記憶に新しい神田沙也加、この2人の豪華Wキャストとなる。

ロンドンの下町の花売り娘イライザが、言語学者の特訓を受け、貴婦人に変貌を遂げる──。
名作『マイ・フェア・レディ』は、1956年、NYのマーク・ヘリンジャー劇場で初演。原作はジョージ・バーナード・ショウの戯曲「ピグマリオン」。『ブリガドーン』で注目を浴びたアラン・ジェイ・ラーナーとフレデリック・ロウのコンビが、イライザとヒギンズ教授のロマンスを中心に書き直して、ミュージカル『マイ・フェア・レディ』を作り上げた。このミュージカルは戦後のブロードウェイを代表する大傑作として、トニー賞のミュージカル部門の最優秀作品賞など6部門で受賞、2717回におよぶロングランを続けた。映画ではオードリー・へプバーン主演で大ヒット、アカデミー賞の最優秀作品賞など8部門で受賞している。

日本では1963年に初演、日本人が日本語で上演した初のミュージカルとして、大きな感動と興奮で迎えられ、日本のミュージカル史を語るうえで欠かせない最高傑作として今も燦然と輝いている。日本初演50周年を迎えた2013年にはG2によって演出を一新、クラシカルな英国の香りと華やかさはそのままに、個性豊かな登場人物たちの、生き生きした情感がより際立つ舞台となってリボーン(再誕生)した。
 
今回も演出はG2が担当。ヒギンズ教授役には前回もこの役を演じた寺脇康文と、幅広いジャンルで活躍する別所哲也のWキャスト。ヒギンズの友人ピッカリング大佐には相島一之、イライザの父ドゥーリトルには今井清隆、またイライザに恋する上流階級の青年フレディには平方元基、ヒギンズ教授宅の家政婦ピアス夫人には春風ひとみ、フレディの母に伊東弘美、ヒギンズの母には前田美波里など、人気と実力を兼ね備えたキャストたちでの上演となる。

〈公演情報〉
ミュージカル『マイ・フェア・レディ』
●201/9/16〜30◎東急シアターオーブ
チケット一般発売:2018年夏予定
〈お問い合わせ〉03-3213-7221 帝劇内『マイ・フェア・レディ』公演係
https://www.toho.co.jp/stage/ 




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龍 真咲がバースデーライブを開催!

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初のコンサート映像 DVD &Blu-ray「Ryu Masaki Concert【L.O.T.C 2017】」をリリース、幅広いジャンルで注目を浴びている元・宝塚歌劇団男役トップスター龍 真咲が、自身の誕生日である12月18日には東京で、20日には大阪で『龍 真咲 Birthday LIVE「Addict」』を開催した。

東京と大阪で各2公演、延べ1,200名限定で行われた特別なイベントとあって、普段以上の熱気に包まれた中、ライブ用のオープニング曲「Addict」の調べと共に、客席後方から黒い煌びやかな衣装で登場した龍 真咲。続いて新たなシンガーへの礎となったファーストアルバム「L.O.T.C 2017」から、お気に入りのナンバー「Silly game」「Get By Me」「Long Island Icetea」を、ジャズアレンジ等ピアニストと二人だけの新たなアプローチで披露。 

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龍「ピアニストとアイコンタクトしながら稽古をしていた宝塚の頃から、いつかピアノ1本で、お客様と近い所で息を感じあえるようなライブに挑戦したいと思っていました。私のステージと皆さんの想像力で完成する映画のような世界を、「Addict」の意味でもある中毒みたいに、これからも続けて行きたい。」

お馴染みのカバー曲など全12曲を熱唱、アンコールラストのクリスマスソング「すてきなホリデイ」では、「Happy birthday to you」のメロディーに乗ってバースデーケーキが登場し、祝福の大歓声に包まれて終了。まさに舞い降りた妖精と言うべき、艶やかなステージを展開した。

2018年4月からは、ミュージカル『1789 バスティーユの恋人たち』でマリー・アントワネット(Wキャスト)を演じることも決定。ヴォーカリスト、アーティストとして、マルチな才能を活かし、今後も音楽・舞台・ファッションなど精力的な活動を実施する。

現在、オフィシャルサイトでは【L.O.T.C 2017】コンサートの魅力をメドレーで届けるダイジェスト映像および、龍 真咲の貴重な写真満載の「RYU’S PORTRAIT」を好評公開中。

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コンサートダイジェスト映像 https://youtu.be/nbUucyT_NQs
龍 真咲オフィシャルサイト http://www.ryumasaki-scp.com/
ビクターエンタテインメント 龍 真咲HP  http://www.jvcmusic.co.jp/ryumasaki/



【資料提供/スペースクラフト】



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直木賞・本屋大賞受賞の恩田陸「蜜蜂と遠雷」リーディング・オーケストラコンサート上演!

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朗読と音楽で青春群像を描くリーディング・オーケストラコンサートが、来年、東京と大阪で上演される。作品は直木賞・本屋大賞受賞の恩田陸の「蜜蜂と遠雷」。千住明によるオリジナル楽曲で、橋本良亮(A.B.C-Z)、家入レオ、木村優一、湖月わたる、朴璐美が出演。また日替わりでビッケブランカ、中川晃教らが参加する。

このコンサートは若きソリスト(音楽家)たちが奏でる歌と音と、言葉をまるで旋律のように組み合わせた新しい形のシンフォニーによる音楽会。直木賞・本屋大賞を受賞した名作「蜜蜂と遠雷」が創りだした言葉の数々を歌と朗読で紹介表現しながら、千住明によるオリジナル楽曲の旋律や音楽をピアノやオーケストラによって表現しようというもの。 
「蜜蜂と遠雷」は、音楽のすばらしさ、音のすばらしさを言葉にした珠玉の名作。その言葉を朗読しながら、ある時は歌で、またある時はピアノと共に荘厳なオーケストラが一体となり、響き重なりあう音楽会となる。作品の中に出て来る曲や歌が語る言葉が、クライマックスに向けて進むにつれ、きらびやかなメロディーと共に、凄まじい和音の連打と加速、地響きにも似た音楽がその世界を拡げ、新しき道への扉となり、物語の中で紡がれた愛のコトダマ(言霊)と心に響く音楽を届ける。
 
出演は、テレビ・舞台・コンサートなど幅広く活躍する橋本良亮(A.B.C-Z)が風間塵役を、圧倒的な歌声で人気を誇るシンガーソングライター家入レオが栄伝亜夜役を、そしてクラシックの枠を超えた奇跡のソプラニスタ木村優一がマサル・カルロス・レヴィ・アナトール役を演じる。
さらに、高島明石役には、ビッケブランカ(1月6日/2公演、1月27日/2公演)、中川晃教(1月28日/1公演)ほかが日替わりで出演。また、ストーリーテラーとして、湖月わたる、朴璐美が登場する。
演奏は、日本屈指のオーケストラである東京フィルハーモニー交響楽団(東京公演)、大阪交響楽団(大阪公演)を澤村杏太朗が指揮。川田健太郎、西本夏生の両ピアニストも演奏を披露し、ステージに彩りを加える。

【橋本良亮 コメント】
朗読劇は、初めてのチャレンジです。そして、今回はオーケストラの演奏で、歌も歌います。新年早々に新しい企画に取り組むことになり、いい年を迎えられそうです!印象に残るリーディング・コンサートにしたいです。

【家入レオ  コメント】
私は歌を歌っていて、栄伝亜夜はピアノを弾いている。私は身体を鳴らしていて、栄伝亜夜はピアノという楽器を響かせている。違うようで同じ。音楽と共に呼吸してる。「蜜蜂と遠雷」を読んだ時、すぐに亜夜が大好きになりました。音楽を気取らずに楽しんでいるその姿こそ、音楽が望んだ音楽の姿だと思ったから。私もはじめての朗読劇ですが、思い切り楽しみたいです。
 
〈公演情報〉
直木賞・本屋大賞受賞  恩田陸「蜜蜂と遠雷」より
『蜜蜂と遠雷』リーディング・オーケストラコンサート〜コトダマの音楽会〜
原作◇恩田陸 (直木賞・本屋大賞受賞「蜜蜂と遠雷」)
音楽監督◇千住明
構成台本◇モトイキシゲキ
演出・振付◇藤林美沙/元生茂樹
出演◇橋本良亮(A.B.C-Z)、家入レオ、木村優一、ビッケブランカ/中川晃教(日替わり)湖月わたる、朴璐美 ほか
管弦楽◇東京フィルハーモニー交響楽団(東京公演)、大阪交響楽団(大阪公演)
指揮者◇澤村杏太朗
ピアノ◇川田健太郎/西本夏生
●1/5・6◎Bunkamuraオーチャードホール
〈料金〉S席8,500円 A席5,000円(全席指定・税込)
●1/27・28◎ 森ノ宮ピロティホール
〈料金〉8,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉
東京/サンライズプロモーション東京  0570-00-3337(全日10:00〜18:00)
大阪/キョードーインフォメーション  0570-200-888(全日10:00〜18:00)
〈公式ホームページ〉http://reading-mitsubachitoenrai.com/




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紅ゆずる&綺咲愛里コンビ初のオリジナル作品二本立てで華やぐ 宝塚星組公演『ベルリン、わが愛』『Bouquet de TAKARAZUKA』

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組トップコンビ紅ゆずる&綺咲愛里コンビによる、初めてのオリジナル作品の二本立てである宝塚歌劇星組公演ミュージカル『ベルリン、わが愛』タカラヅカレビュー90周年『Bouquet de TAKARAZUKA』が日比谷の東京宝塚劇場で上演中だ(24日まで)。

ミュージカル『ベルリン、わが愛』は、1920年〜30年代にハリウッドと並び称される映画の都として発展したドイツ・ベルリンを舞台に、「映画」を愛した人々がナチス台頭の暗雲の中、信念を貫き通す姿が描かれている。

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【STORY】
1927年、ドイツ・ベルリン。ハリウッドと並ぶ映画の都にあって、ドイツ随一の映画会社であるUniversum Film AG(UFA)は、映画を芸術だと考える監督たちの意向を汲んだ作品作りを続けていたことから、大衆の支持が離れ、いつしか巨額の負債を抱えるに至っていた。倒産の危機を回避する為、重役たちはドイツで勢力を拡大していた国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)の支持者であり、大実業家アルフレート・フーゲンベルク(壱城あずさ)に事業を譲渡するべきだと主張する。だが、社長のルードヴィヒ・クリッチュ(美稀千種)は作り手の表現が制限されることだけは避けるべきだと、譲渡を断固拒否。社長と志を同じくするプロデューサーのニコラス・カウフマン(七海ひろき)は、低予算で大衆を喜ばせる娯楽映画を必ず作り、起死回生のヒット作にしてみせると宣言し、不満を抱えた重役たちをどうにか押しとどめることに成功する。だが、そんな映画をいったい誰が創れるというのか。その時、1人の青年が「自分にやらせてくれ」と名乗りをあげる。彼の名はテオ・ヴェーグマン(紅ゆずる)。幼い頃から映画を心から愛し、今助監督としてUFAに勤める彼は、ハリウッドではすでにはじまっている、トーキーにこそ映画の未来があると考え、ヨーロッパ初の歌入りトーキー映画を定められた僅かな予算の中で、必ず創り上げると誓い、晴れて新作映画の監督を任されることになった。
早速、スタッフ、キャストの人選に入ったテオは、まず親友であり絵本作家であるエーリッヒ・ケストナー(礼真琴)に脚本を依頼。更に、ベルリンに興業に来ていた「黒いビーナス」と謳われるレビュースター、ジョセフィン・ベーカー(夏樹れい)に映画のヒロインを務めてもらおうと、彼女が出演している劇場に直談判に赴く。だが、肌の色による人種差別と闘うジョセフィンは、自分が出演することは貴方の輝かしい監督デビューに悪影響を与えてしまう、と出演を固辞。キャスト探しは振り出しに戻ったかに見えたが、ジョセフィンのバックで踊っていたレビューガール、レーニ・リーフェンシュタール(音波みのり)の自薦による猛アプローチに根負けしたテオは、カメラテストをすると約束。銀幕デビューができる!と有頂天になったレーニは、レビューガール仲間のジル・クライン(綺咲愛里)も、一緒に映画に出して欲しいとテオに声をかける。ジルを一目見た時から何かを感じたテオは、レーニと共にジルにも撮影所にくるようにと促すのだった。
テオが監督する初のトーキー映画は「忘れじの恋」とタイトルが決まり、サイレントこそ映画の神髄と信じる大俳優ヴィクトール・ライマン(天寿光希)の協力が得られないなど、困難もありながらテオの前向きな努力で進展。大部屋俳優だったロルフ・シェレンベルク(瀬央ゆりあ)と、レーニが主演カップルに、ジルも花売り娘の役柄で出演が決まる。恋人ルイーゼロッテ(有沙瞳)への想いを託したエーリッヒの脚本も仕上がり、ヨーロッパ初のトーキー映画は美しいメロドラマとして完成。観客の絶賛を集める大ヒット作となった。
だが、主役のレーニではなく、脇役のジルの清楚な魅力に評価が集まったことに、レーニの不満が爆発し、ジルの出自が密かに内通されてしまう。更に「忘れじの恋」1本のヒットでは、会社を立て直すことは難しいと重役たちから攻め立てられた社長のクリッチュは、遂にフーゲンベルクにUFAを売却。それはすなわち、大衆の為の映画創りを目指すテオの前に、ナチス宣伝全国指導者ヨーゼフ・ゲッベルス(凪七瑠海)が立ちはだかることを意味していて……

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映画がサイレントからトーキーへと移り変わった時代は、「映画」というジャンルが最も大きな転換点を迎えた時代でもあって、この過渡期の混乱を描いた作品はこれまでにも様々な形で作られている。ルドルフ・ヴァレンチノに代表される、声を必要とされていなかった時代のスターたちは撤退を余儀なくされ、一方美しい容姿と共に美しい声を持ったスターたちが、続々と現われ、映画の新たな黄金期を築き上げていく。これは宝塚が頻繁に取り上げている激動の時代「革命」を扱った題材と、ある意味で非常に近いものがあって、トーキーの出現は技術の進歩による、映画という創造の世界に起きた大革命だったと言えるだろう。
こうした変革の時代には、当然ながら多くのドラマが生まれるのは必定で、ここに目線を定めた作・演出の原田諒の着想は決して悪いものではなかった。実際、冒頭の場面で舞台いっぱいに観客席を作り、サイレント映画「メトロボリス」(※注・莫大な製作費が回収できず、UFA社の洛陽を招いた作品であるのは事実だが、映画そのものはSF映画黎明期の傑作とも、SF映画の原点とも呼ばれる名作サイレント映画なので、『ベルリン、わが愛』の描き方から「メトロポリス」=失敗作、と認識してしまうのは危険なことを記しておきたい)を鑑賞している登場人物たちの歌い継ぎから、映画会社の危機、テオのトーキー映画への挑戦の流れは、実にテンポの良い描き方で、物語が快調に転がり、続くドラマに期待を抱かせる。テオがジルにモノクロ映画ならではのメイク方法を伝授する場面、貧しい育ちをしたテオが映画だけが心の慰めだったとジルに語る場面、サイレントの名優が、対立していたテオの心意気に時代の趨勢を悟る場面、等々、「映画」への愛と変革期の悲喜こもごもを描いたシーンは、いずれも非常に美しく、印象に残るものばかりだ。

にもかかわらず、ドラマがサラサラと流れ、多分に淡々として見えるのは何故だろうか…と考えた時に、やはりナチス・ドイツの描き方が淡泊なことが関連しているのではと思えてならない。前述した冒頭の「メトロポリス」を鑑賞する客の中にも入ってはいるものの、ナチス宣伝全国指導者ゲッベルスが、劇中に本格的に登場するまでに開演から45分が経過している。しかも例えば三谷幸喜の「国民の映画」などに代表されるように、映画を愛し、ナチスの宣伝に活用したゲッベルスは、後にアドルフ・ヒトラーと、ナチスプロパガンダを語るに欠かせない人物として、あらゆるメディアで取り上げられてきた歴史上の重要人物だ。その人物が、映画を愛する人々を描く作品の中に登場すると聞けば、当然、主人公に立ちはだかる強大な敵として描かれるのだろうと、どうしても予想してしまう。それが、この作品では単純にヒロインのジルに横恋慕しただけの、有り体に言えば卑小な権力者にしか見えないのが、ドラマ全体の起伏までも小さくしてしまったのがあまりにももったいない。
作品の冒頭が1927年で、ゲッペルスがドイツの図書館からユダヤ人著作の書物を押収し、広場に集めさせて焼き払ったのが1933年だから、この時点ですでに劇中で6年の歳月が経っていることになるが、これも作品を観ているだけではそれほどの月日を経ているとはは感じられないのも響いている。この時点でジルはナチスプロパガンダ映画に必要不可欠な、大人気女優になっているという設定なのかもしれないが、作品を見ているだけでは、「忘れじの恋」で注目を集めた新進女優としか受け取れない為、余計にゲッベルスのジルへの執着が、単に個人の嗜好に見えてしまうのが痛かった。
やはりエンターテインメントの世界で、ナチスを描くというのは非常に重いものがあるし、作家自身にもそれ相当の覚悟が必要になる。そういう意味で『ベルリン、わが愛』は「映画愛」を描いた部分と、ナチス台頭の暗雲の部分とが、乖離してしまった面が大きく、サイレントからトーキーへの、映画大革命期に奮闘した若き映画監督の物語が、演じる紅ゆずるの個性も相まって、それこそ青春映画のような爽やかさを醸し出しているだけに、この分断が惜しまれた。テオの監督デビューを祝ってエーリッヒが乾杯するシーン、前述のテオがジルに映画愛を語るシーンなど、当然歌になり、ダンスになるだろとう思われた、ミュージカルならではの展開のチャンスを原田が見過ごしているのも気がかり。外部の評価も高い、宝塚期待の若手作家だけに、より一層丁寧な作品創りを目指して欲しい。次作を期待して待ちたいと思う。

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ただその中で、テオを演じた紅ゆずるの一直線に突き進む熱量の高さから、爽やかさを引き出したのは原田の功績と言える。実際、サービス精神に長け、二番手時代までに定着していた「ちょっとユニークなタカラジェンヌ」という紅の表看板に全く頓着せず、宝塚の二枚目として、主演男役として相応しい「映画は大衆が辛い現実をひと時忘れて、夢の世界に浸れる娯楽であるべきだ」との信念を貫くテオ・ヴェーグマンという役柄を用意したのは、これから続いていく紅のトップ時代にとって、非常に大きなポイントになるに違いない。それほど、テオを一途に演じる紅から立ち上った甘い二枚目男役の香りと、青春の輝きは素晴らしいものだった。テオが信じる映画のあるべき姿が、そのまま宝塚歌劇のあるべき姿に直結している効果もあり、紅が星組トップになって初のオリジナル作品が、紅の美点を存分に表出したことを喜びたい。

ヒロイン・ジルの綺咲愛里は、レビューガールの謂わばアンサンブルとして登場する初登場シーンが、本当にアンサンブルの扱いのままだったことにかなり驚いたし(設定からして至極正しいのだが、やはり宝塚の常連ファンでなければ、この人が作品のヒロインだとわからない初登場というのはやや不親切かもしれない。非常にベタだし、それが良いと言っている訳ではないが、やはりベテラン作家なら、ここでジルがジョセフィン・ベーカーにぶつかって転ぶ…くらいの展開は用意すると思う)、上演時間残り15分になってやっと、テオを名前で呼ぶに至る展開なので、恋愛要素はかなり低めなはずなのだが、それでもきちんと紅の相手役に見えるのが宝塚マジックの妙。テオに口紅をひいてもらうシーン、満天の星空を眺めるシーンが、ラブシーン以上にロマンチックで、紅&綺咲の相性の良さを改めて感じさせた。テオへの尊敬が愛に変わっていく描写も自然で美しい。

テオの親友のエーリッヒ・ケストナーも実在の著名な作家で、礼真琴が扮した。ナチスに抵抗を続けながら亡命せず、ドイツで執筆を続けたケストナーを、あまりにも国民の人気が高かった為にナチスがおおっぴらに迫害できなかった、というエピソードが知られているが、今回の作中ではテオの良き友、良き理解者、協力者という形での登場。その為、礼にもシニカルな表現はほとんどなく、友人を想い、恋人を愛する溌剌とした青年として演じていて、その明るさが礼の個性によく合っている。歌声も伸びやかで、今の礼に無理がない役柄なのは嬉しい限りで、これもオリジナルの良さだろう。

礼の恋人のルイーゼロッテは、やはり実在のケストナーの内縁の妻。劇団四季でミュージカル作品にもなっているケストナーの代表作のひとつ「ふたりのロッテ」の主人公である双子の姉妹ルイーゼとロッテは、彼女の名前からとられたことで有名だ。それだけに、劇中で礼が「ルイーゼロッテ」と呼ぶ度に、愛らしい双子の物語が思い出され、演じる有沙瞳もこの作品から求められた「ひたすらな愛らしさ」をきっちりと体現している。作品を大きく動かすのは絵に描いたような敵役である、音波みのりが演じたレーニの方で、役の比重としては確実にレーニが高いが、ここは有沙に宝塚の娘役らしさを求めたということだろう。その宝塚の娘役らしさ、という意味において、「娘役の良心」とも思えるほどの存在である音波が、本来の個性とは異なるアクの強い役柄を、大胆に演じて新境地を拓いたことも喜ばしく、双方面白い配置だった。

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また、テオに新作映画の命運を託すプロデューサーのカウフマンの七海ひろきは、映画が政治利用されることを阻止しようとする、気骨ある人物を丁寧に描いている。テオにとって、つまりはテオを応援している観客にとっても「理想の上司」の役柄で、こういう温かい人物の造形は、七海の独壇場。もう少しカウフマン自身のドラマを描かれていたら、と惜しまれるが、紅との信頼関係をきちんと感じさせて、役柄を膨らませて魅せた七海の力量を評価したい。

他にも、星組には強力な上級生男役が揃っているのも魅力の1つで、クリッチェの美稀千種は沈みゆく船の船長にも似た役柄を、強さと脆さを併せ持って演じているし、フーゲンベルクの壱城あずさは、ナチスに与する大実業家の海千山千感を、いやらしくならない寸前で留めて演じていて目を瞠る。どちらかと言うと猪突猛進的な演技者だった時期もあるが、これだけ押し引きが自在にできる優れた役者となった今、退団してしまうのは宝塚の宿命とは言え、惜しみても余りある。そんな壱城の穴を埋める存在になるだろう天寿光希が、サイレントの名優が張る意地と懐の深さを十二分に見せている。組長の万里柚美演じるカフェの女将と、過去に浅からぬ関係だったという役柄に、違和感を感じさせなかったのも天晴れで、ラストシーンへの重要な伏線もさり気なく示した好演だった。そのカフェの女将ゲルダの万里も、持ち前の美貌がこうした訳ありの役柄にピッタリで、場を引き締めた。

若手に目を移すと、歌が上手いことがサイレント映画では役に立たず、大部屋俳優に甘んじているロルフに扮した瀬央ゆりあが、歌入りトーキー映画で主役に躍り出る、という設定に相応しい美しい声を聞かせたし、テオをスタッフとして盛り上げるクリストフの紫藤りゅうが、甘い優しい雰囲気を人の好い役柄に投影させていて、この人もずいぶん大きなスターになってきたと頼もしい。そのスターとしての押し出し十分なエルマーの天華えまの個性が濃い目なことも、二人の役どころを際立たせる効果になっている。彼女たちと、ベテラン勢との間に十碧れいや、麻央侑希がいることも星組の豊かさで、「メトロポリス」のラング監督で芸術家肌の気難しさを演じた十碧が、後半ナチス親衛隊の軍服姿で魅了すれば、UFAの重役陣の1人シュナイダーとして、抜群のプロポーションを誇っていた麻央が、終幕近くベルリンの男という、言わばモブの役柄で新聞を手に銀橋を渡る。その姿の良さがあまりにも目立っていて、この人はラストシーンに何か関りが?と注目させられたほどなのは、作品としては誤算かも知れないが、スターとしてはまさしく嬉しい誤算。ますますの活躍に期待したい。もう1人、この作品で退団する夏樹れいが、ジョセフィン・ベーカーとしてレビューシーンのセンターを取り、堂々の舞台姿を披露したのが嬉しく、ラストシーンに本来の男役姿で、車掌として登場するのも心憎い配慮だった。貴重な歌い手の退団が惜しまれる。

そして、ゲッベルスに扮した専科から特出の凪七瑠海は、専科転出後久々となった東京宝塚劇場への登場で、男役としてぐっと骨太になった居住まいが経て来た時間を感じさせた。前述したように、役柄の描き方に難しさがある中で、後半に集中した出番で、ナチスの影を精一杯体現している。特にセンターを割って、親衛隊を率いて登場する場面に、目を引きつける華があるのは凪七ならでは。本格的な登場が遅いだけに、組の一員ではない凪七が出演することに意義を感じる、カラーの違いが効果的だった。

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装置は原田作品お馴染みの松井るみが担当。冒頭の観客席、また映画フィルムを使った象徴的なセットなど、いつもながらの面白い装置に度々見入ったが、全体に色調が暗いのが、この時代のドイツ・ベルリンには相応しいものの、紅の創り上げた作品の爽やかさとはやや異質に映り、スターが創る宝塚歌劇ならではのこととして興味深かった。

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そんな作品の後に控えたのが、宝塚レビュー90周年を記念した『Bouquet de TAKARAZUKA』でベテランの酒井澄夫の作。岸田達彌演出のレビュー『モン・パリ』が初演された1927年、宝塚レビューの、つまり日本のレビューが誕生してから90周年を迎えたことを寿ぐレビューで、その後レビューの王様と称された白井鐵造、更に高木史朗、内海重典、といった歴史に残るレビューの大作家の作品を、その目で見て、聞いて、更に助手をしていたという酒井が、記念の年にこの作品を残したことに、まず大きな意義がある。

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特に、今の宝塚のショーの畳みかけるテンポとリズムの洪水に馴染んだ目には、この旧き良き時代を彷彿とさせるレビューの展開が、むしろ新鮮に映るのも発見で、星組にとってだけでなく、宝塚にとって貴重な作品となっていた。懐かしい名曲も多く、偉大な定番のもたらす安心感がある。
その中でも、ゴンドラに乗って登場する紅の華やかさだけでなく、紅&綺咲、礼&有沙、七海&音波、3組のこれぞ眼福なデュエットダンスに、凪七の歌という贅沢なフィナーレナンバーで、トップコンビが黒薔薇=黒の衣装という、定番の中の冒険とも言える、攻めの姿勢が感じられたのも面白く、2017年の掉尾を飾るに相応しい王道のレビュー作品となっている。

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また、初日の前に囲み取材が行われ、星組トップコンビ紅ゆずると綺咲愛里が公演への抱負を語った。

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まず紅が「お忙しい中お集まり頂きましてありがとうございます。星組の紅ゆずるでございます。初日に向けて今、星組メンバーは燃えております!」
と、紅らしいパッショネイトな挨拶を。

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続いて綺咲が「星組の綺咲愛里でございます。本日はお集まり頂きありがとうございます」とにこやかに語り、続いて記者の質問に答えた。

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その中で、初のオリジナル作品であることを問われると、紅が、再演物とは違い、自分達の色が出せる分、どの方向にも行くことができる難しさがある、とオリジナル作品ならではの良さと、だからこその難しさを語ると、綺咲も役を一から作っていくということの難しさをたくさん学んだ、と語り、前例がない作品への取り組み方を考えさせられた。

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また、レビュー90周年に際して、宝塚レビューの魅力は?との問いに、紅が「宝塚おとめ」という本も出ているように、と、宝塚の生徒名鑑の存在を例に出し、1人1人の生徒の名前、好きなものなど、個々の情報が発信されている、個々の魅力があることが、宝塚レビューの何よりの魅力なのではないか?と、持論を展開。組子1人1人に、個性を発揮して欲しい、とトップスター就任時の制作発表会見で語っていた通りの、トップとしての紅の目線が感じられる時間となっていた。

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尚、囲みインタビューの詳細は、舞台写真の別カットと共に、2018年1月9日発売の「えんぶ」2月号にも掲載致します。どうぞお楽しみに!

〈公演情報〉
宝塚歌劇星組公演
ミュージカル『ベルリン、わが愛』
脚本・演出◇原田諒
タカラヅカレビュー90周年 『Bouquet de TAKARAZUKA』
作・演出◇酒井澄夫
出演◇紅ゆずる、綺咲愛里 ほか星組
●2017/11/24日〜12/24日◎東京宝塚劇場
〈料金〉SS席12,000円 S席8,800円  A席5,500円 B席3,500円 
〈お問い合わせ〉東京宝塚劇場 03-5251-2001




【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】




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