えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

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一層彩りを深めた迷宮への誘い『ダンスカンタービレ2018』上演中!

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DIAMOND☆DOGS(D☆D)のメンバーとして活躍するかたわら、優れたクリエーターとして構成・演出・振付のジャンルでも才能を発揮している森新吾が中心になって繰り広げる、ショーアクト『ダンスカンタービレ2018』Mori Shingo & 8 Foxy Girlsが銀座の博品館劇場で上演中だ(16日まで)

『ダンスカンタービレ』は、昨年5月に森新吾初の主演作品として発信したショーアクトで、19世紀末のロンドンを震撼させた「切り裂きジャック」をモチーフに、森と風花舞をはじめとした女性陣だけで紡がれた作品。そのダークでミステリアスな、感性を刺激するステージは大好評を博し、D☆D充電期間中の2018年、森はこの作品を核に「カンタービレシリーズ」と銘打った新プロジェクトを始動。11月にサイエンスホールで上演された男優だけのストーレートプレイ『アクトカンタービレscene1 〜 Smoky Dog 〜』が喝采を集めたのち、1年半ぶりの再演となる、今作品『ダンスカンタービレ2018』の幕が開いた。

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とは言っても『ダンスカンタービレ2018』は、昨年春の初演バージョンから更に深化を遂げ、作品の持つ物語性の骨子こそ変わらないものの、一層深い彩りと夢とうつつの狭間の迷宮を立ち上らせている。初演を観た方にも「そう来たか!」という驚きや発見があるだろうし、今回の上演で初めて作品に接する方、特に『アクトカンタービレscene1 〜 Smoky Dog 〜』から続いてこの作品の扉を開けた方には、森新吾というクリエーターの振り幅の広さが実感できるに違いない。

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実際、初演時はゲストだった町田慎吾が、森演じる男の良心とも、影とも、はたまた現実の姿とも見える役柄を演じることで、木野村温子と共に創り出す異空間の意図するところが明確になっていたり、そのゲストが日替わりで演じていた刑事役を、初参加の田野優花が女刑事として通して演じることで、更に大きな仕掛けが用意される等、作品の見え方がより鮮明になった部分は大きい。だがそれでいて、敢えて正解を求めようとしていない、理解するのではなく感じて欲しい、見た人の数だけ感じかたがあって良いという余白があるのもこのショーアクトの豊かさで、それが森新吾その人のものづくりに対する懐の深さを感じさせていた。

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何より構成・演出・振付・主演を務める森の、確実に増したセンターを務める力が作品に芯を通している。それは初主演の機会だったこの作品の初演時よりも、この2018年バージョンが深みを増した最も大きな理由のひとつで、物語の中心にいることに森自身が格段に馴染んできたのを感じる。やはりライトの中で、舞台の上でこそ表現者は育っていくのだなと深い感慨を覚えた。クリエーターの森が、表現者の森に求めるものも、この後もっと深くなっていくに違いない。そう実感できる主演ぶりに拍手を贈りたい。

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同じく初演からの続投組では、もはや別格の感さえある風花舞の表現力が更に凄味を増していて目が離せない。謂わば物語の円の最も外側から周り続けなから、やがて核心へと迫ってくる役柄だが、持ち前の男前なダンスの切れ味と、元宝塚月組トップ娘役という出自から放つ無垢なものが、並び立って作品を底支えした力は絶大だった。

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また、森を取り巻く女性たちの中でも大きなパートを担っている藤田奈那の表現力が格段の進歩を遂げているのも大きく、初演時に残っていた固さが完全に払拭され、しなやかに舞台に位置していたのが、役割りをより鮮やかにする効果になった長岡美紅、PSYCHE、橋本由希子もそれぞれの表現がより豊かになり、舞台上での個性が更に明確になって、持ち場を固めているのが頼もしい。

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他方、初参加のメンバーでは、舞羽美海の宝塚雪組でトップ娘役を務めていた当時から群を抜いていた愛らしさ、可憐さがジャンルの異なるダンサーの中でひと際輝いただけでなく、退団後育んできた妖艶さや女性美が相まって何とも蠱惑的。優れたダンサーでもある一面も存分に発揮されていて、舞台をより高みへ引き上げる一翼を担っている。

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女性刑事役も務める田野優花は、『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』のサリー役が打ってつけだった姿を思うと、同じ女性かと見まごうほどのシャープな表現で魅了する。この人が新たに刑事役に扮したことが作中大きな意味を持つが、その展開を唐突に感じさせない存在感が際立った。伊藤佳耶芽もこの個性溢れる陣容の中で、きちんと自分自身を魅せているのが才能を感じさせた。

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そして町田慎吾が加わったことが前述したように、作品の骨格をより鮮明にしていて、元々憑依型の表現者である町田の、突き詰めた役柄の造形が強烈なインパクトを放っている。時にただ通り過ぎるだけという出番もある中にも、必然と意味を感じさせるのは流石の一言。ダンスと表現が全く浮かずに融合しているのも素晴らしい。この町田が対照にいることによって、木野村温子が誘う背徳の香りもよりくっきりと立ちあがる効果になっていて、初演時に比して一層役柄の必要性が高まり、木野村の身体表現はもちろん、怖さのある笑顔が印象的だった。

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これら新しい組み立て方によって日替わりゲストの出番が集約されたからこそ、その日替わり感が強まっていて、「悪の華」を思わせた初日の東山義久がもたらした残像がなんとも強烈。 中塚皓平、植木豪、長澤風海が刻むアクセントも、それぞれに鋭いものがあるだろう。
 
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総じて、クリエーターとしてはもちろん表現者としての森新吾の確かな進化が感じられる舞台になったことが嬉しく、「カンタービレシリーズ」の発展に更なる期待の高まる舞台となっている。 

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〈公演情報〉
『ダンスカンタービレ2018』Mori Shingo & 8 Foxy Girls
構成・演出・振付◇森新吾  
出演◇森新吾/風花舞 舞羽美海 藤田奈那/長岡美紅 PSYCHE 伊藤佳耶芽 橋本由希子 木野村温子/田野優花  町田慎吾 
日替りゲスト◇東山義久(12日) 中塚皓平(13日) 植木豪(13日夜・15日夜・16日) 長澤風海(13日夜・14日・15日昼) 
●12/12〜16◎博品館劇場 
〈お問い合わせ〉博品館劇場 03-3571-1003



【取材・文・撮影/橘涼香】



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ブロードウェイ・ミュージカル『サムシング・ロッテン!』間もなく開幕! 瀬奈じゅん インタビュー

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福田雄一の最新作ブロードウェイ・ミュージカル『サムシング・ロッテン!』が、12月17日から30日まで東京国際フォーラム ホールC で上演される。(そののち2019年1月11日〜14日◎大阪 オリックス劇場で上演)
 
本作は、1990年代にケイリーとウェインのカークパトリック兄弟のアイデアから始まり、2015年にブロードウェイで上演。アメリカの演劇・ミュージカル界で最も権威ある賞であるトニー賞で9部門ノミネート、1部門受賞という快挙を成しとげた。タイトルの「Something Rotten!(サムシング・ロッテン!)」とは、「何かが、腐っている!」という意味。ハムレットの一節からの引用で、こんなふうに複数の戯曲、ミュージカル作品へのオマージュが散りばめられたコメディミュージカルだ。
物語の背景は16世紀末。絶大な人気を誇るウィリアム・シェイクスピアを相手に、ニックとナイジェルのボトム兄弟が競いながら、舞台芸術業界で成功を目指す。『コーラスライン』、『アニー』、『レ・ミゼラブル』などの人気ミュージカル作品や、シェイクスピア作品を彷彿とさせるシーンの数々が、舞台・ミュージカルファンの心をくすぐる作品となっている。
 
初の日本語版上演では、演出・上演台本を現代のヒットメーカーであり、「笑い」と「ミュージカル」をこよなく愛する福田雄一が手がけ、劇作家ニック役に中川晃教、シェイクスピア役に西川貴教、ニックの妻ビー役に瀬奈じゅん、預言者ノストラダムスには橋本さとし、ニックの弟ナイジェルに平方元基、清教徒の娘ポーシャには清水くるみと豪華なキャストが揃った。 
この舞台で劇作家ニックを献身的に支える頼もしい妻ビーに扮する瀬奈じゅんに、稽古もたけなわという時期に話を聞いた。

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あなたは基本コメディの人
という誉め言葉を

──まずこの作品と初めて出会ったときの印象は?
私は出演のお話をいただいてからYou Tubeで拝見しました。色々知っているミュージカルの楽曲などもパロディで登場しますし、背景がシェイクスピアの生きていた16世紀という、かなり昔のお話なのですが、全然古い感じがしなくて、とても面白かったです。
──今回は、共演の方々も豪華です。中川晃教さんと西川貴教さんは初共演ですね。
中川さんとは以前『クリエ・ミュージカル・コレクション』と『岩谷時子メモリアルコンサート』で一緒に歌わせていただいたり、私の主人(千田真司)も共演していたり、色々ご縁はあるのですが、こうしてお芝居をさせていただくのは初めてです。西川さんとは「はじめまして」ですが、お芝居の表現力も素晴らしい方で、お二人とも舞台センスがあるので、稽古場で拝見していてもとても勉強になります。
──瀬奈さんが演じるのは、中川さん扮するニックの妻のビー。男装して物を売ったり家計を支えるなど、すごくパワフルで素敵な女性ですね。
献身的で逞しいんです。どうしても男勝りな部分がクローズアップされがちですが、本当に健気な女性だなと思いました。
──どう演じてほしいなど、演出の福田さんからの指示は?
福田さんは「こうしてください、ああしてください」は、あまりおっしゃらないんです。それは私だけでなく皆さんにそうで、ポイントでこうしてほしいという要望はあっても、この役はこう演じてほしいという指示はされない方で、たぶん演者を信頼してくれているのかなと思っています。ただ、「こういう面白いことを言ってほしい」とか「ここは○○さんで」とか(笑)、今回はまだないですけど、そういう細かい部分での笑いの演出はよくされます。
──コメディを演じるうえでとくに必要なことは?
笑いのための計算はもちろんありますが、とにかく役として生きることしかないと思っています。宝塚時代からそれは同じで、コメディもシリアスも、台本を読んで役をふくらませていくという点ではまったく変わりないんです。
──瀬奈さんは宝塚時代からコメディセンスは抜群で、しかも品は落とさずに客席を巻き込んでいって見事でした。
私は12年目くらいに『二都物語』という、ディケンズの悲劇に主演させていただいたのですが、そのとき演出の太田(哲則)先生に「あなたは基本コメディの人ですから」と言われたんです。超シリアスな悲劇を真面目に突き詰めていたときだけに、ちょっとショックで(笑)、でも今考えると、あれはすごい誉め言葉だったなと思うんです。コメディは間とか動きとか、相手との掛け合いとか、どれもセンスがないと笑えないわけで、それを誉めていただけたわけで、その言葉を頼りに今も生きてます(笑)。
──太田先生のコメディはお洒落で面白かったですね。瀬奈さんは『二都物語』もそうですが、悲劇と喜劇の両極を生きられる役者だと思います。
シリアスもコメディも、大切にするのはやはり役のリアリティですから。自分の発想だけでなく、周りの役者さんたちのやっていること、演出家の求めているものを探りながら、その人間がどう動くかを考え、何をチョイスするか、そこにセンスが求められているのだと思います。

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福田雄一と小川絵梨子
2人の演出家との出会い

──この物語にはシェイクスピアをはじめ作家たちが出てきます。その創作の苦悩とか葛藤なども描かれていますが、それをドタバタ喜劇的な展開で繰り広げていくところが面白いなと。
シェイクスピアの作品についていつも思うのですが、人を殺したり人を騙したりしても喜劇だったりしますよね。それはどういうことなんだろうと。たぶんそういうことをしてしまう人間というものの滑稽さを、喜劇つまり悲喜劇として描いているのかなと。今回の稽古場でシェイクスピアを演じている西川さんを見ていると、「あ、こういうことなのかも」と思ったんです。たとえばアイデアがどうにも浮かばないときに、これ真似しちゃおうとか、そうまでする自分を笑いながら、生きていくエネルギーにしている。自分たちに置き換えてみると、たとえば仕事に真剣に向き合ってる姿でも、角度を変えて見ると滑稽だったり面白かったりするじゃないですか。そう思うとシェイクスピアの喜劇って、すごく腑に落ちるんです。
──そう考えると、これはすごく懐の深いミュージカルですね。
そういう生みの苦しみさえも面白くしてしまえる器の大きい作品で、ほかにも発見が沢山あります。さとしさんの「ミュージカル(A Musical)」というナンバーの中に、「なんでここで歌い出すんだろう、でもこれがミュージカル♪」という歌詞があるんです。私は4月に『FUN HOME』というミュージカルに出たのですが、小川絵梨子さんがミュージカルを初めて演出されていて、立ち稽古になって歌の場面になったとき、「なぜここで歌い出すの?」「なぜ正面を向いて歌うの?」というところから始まったんです。それによってこちらも、ミュージカルについて改めて考えさせられて。そして自分の曲ではない歌詞もみんなで理解し合って、人の役のことも話し合って作り上げました。その経験はすごく大きかったです。そういう意味ではこの作品の「ミュージカル(A Musical)」という曲は、ミュージカルの楽しみ方がこの1曲に詰まっている気がします。
──『FUN HOME』は心情をリアルにストレートに伝えてくる現代的なミュージカルでした。
小川さんはたぶんリアルなお芝居の中に歌が入ってくることで、そこだけリアルではなくなるのが嫌だったのではないかと思います。セリフって今こうして会話しているように、思いついたことをそのまま喋るものなんですよね。それと一緒でその場で考えたことを歌ってほしいと。でも本番になると音譜の音や歌詞をどうしても追ってしまいたくなる。それをしないことはすごく怖いんですけど、初めてこの言葉を発しますというふうに歌おうと。ちゃんと出るかなと思いながら本番で思いきってやって、すごく勉強になりました。
──その役のその時の切実な言葉が歌になって出てくるわけですね。
本当はそれが基本なんですよね。公演中もどこかでやっぱり綺麗に歌おうとか、声が出しにくいなとかそういうことがよぎることもありましたけど、とにかく喋るみたいに歌おうと。たとえば私のアリソンの「電話線」という歌は、車で走っている時、目に入る電話線の1本1本が通りすぎていく光景をそのまま口に出しながら、その合間に「父に何か言わなきゃ、言わなきゃ」と考えている歌なんです。そういうリアリティの表現というのはお芝居ではいつもやってるし、当たり前のことなんですけど、歌稽古を先にすることで、前後の感情とかけ離れてしまいがちになるんです。そこを埋めることが大事で、今回もそれをできればいいなと思っているのですが。そんなふうにミュージカルは初めてという小川さんの作品に出たことで、ミュージカルの原点というものを考えるきっかけになりました。

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──福田さんとの出会いも大きいと思いますが、『ヤングフランケンシュタイン』が初めての出会いですね。  
そこから続けて今回で3本目で、ドラマにまで出させていただいてます(笑)。福田さんは「ミュージカル大好き!」という方で、出演するたびにミュージカルの楽しみ方とかエンターテイメントの作り方を学ばせてもらっています。小川さんとはある意味真逆なのですが、でもこのお二人のおかげで、ミュージカルの根本、基本みたいなものを改めて考えさせていただくことになりました。
──小川さんが演じる基本を追求しているとしたら、福田さんは観客の目線を追求する演出家ですね。
お客様に絶対に楽しんで帰ってもらうということを大事にしていらっしゃるし、楽しませることにすごく情熱を注がれる方なんです。
──そこは宝塚時代のショーでの瀬奈さんを思い出します。お客様を楽しませることには徹底していましたね。
宝塚は二本立ての場合は必ずショーがついてますよね。お芝居では役で出てきますが、ショーでは瀬奈じゅんでお客様を楽しませなくてはいけない。役名のところに「踊る男」とか書いてあるのですが(笑)、「踊る男」の瀬奈じゅんとしてお客様に楽しんでいただく、そのために命を注いでいたんです。ただそういう「瀬奈じゅんはこうでなくてはならない」という意識が退団してからもしばらくは抜けなくて、苦しんだこともあります。
──退団してもう10年になりますね。すっかり女優が身についてきました。
男役10年と言いますけど、女優も10年かなと(笑)。でもまだまだわからないことが多いですし、それこそゴールのない世界ですし。
──50歳、60歳の瀬奈じゅんも楽しみです。
年相応の役者になりたいですね。息切れしないように地道に長く続けていきたいと思っています。

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家族がいるほうが
頑張れるんです

──その女優である瀬奈さんが、母親にもなったわけですが、やはり仕事も子供も両方とも瀬奈さんには必要だった?
私にとっては仕事をするうえでも家庭というものがすごく大事で、家族がいるほうが頑張れるんです。今回のミュージカルも、家族のために闘うとか、家族のために懸命になる人たちなので、共感できるところがいっぱいあります。
──お子さんを持ってからの1年半の仕事はすごく充実していて、モチベーションが上がっているのだろうなと拝見していました。
子供は特別養子縁組というかたちで授ったわけですが、その前の2年間は子作りのためにお休みをいただいてたんです。その時、この仕事は舞台に出続けていないと難しいだろうなと思ったし、他にも沢山できる方はいる、復帰しても需要はないかもしれないと覚悟しながら休みました。でもその2年間にさまざまな経験をしたことで、今、色々なジャンルのお仕事をいただけるようになりました。1回休んで自分をリセットしたから、今の自分があるのかなと思っているんです。
──その期間はたぶん落ち込んだり悩んだりしたと思いますが、そのことが女性として人として膨らみになっていると思います。
ただその期間はつらすぎてあまり記憶がないんです。今は自分の子供に出会えて幸せだし充実しているので、そんなことは吹っ飛んでしまいましたけれど。会う人にもハッピーオーラがすごいねとか言われて「え?子育てで疲れてるんだけど」って(笑)。思い通りに時間が使えないとか、熱があるから迎えに来てくださいとか、予定通りいかないことばかりで。でもそれが面白いと思えるようになりました。今、2年間を思い出すとき、やっぱり自分の子供が欲しかったとはこれっぽっちも思わないんです。ただ、この子は私が生んであげたかったなと、そのくらい可愛くてしかたないです。
──瀬奈さんとお子さんが出会うための2年間だったのでしょうね。そういう人生のひだを経験したことで、女優としても肩の力が抜けてさらに素敵になりました。宝塚ではトップスターで、退団してからは帝劇の真ん中をつとめて、もともと繊細な方でしたからプレッシャーも人一倍だっただろうなと。
たえずアンテナを張っていました。組のためにこうあらねばならないとか、周りは楽しんでくれているかな?とか。その経験から、主演のたいへんさにはつい敏感になってしまうので、どの作品に出ても主演の方が気持ち良くできるようにしたいなと思うんです。自分がそうしていただいてましたから。
──今は子育てとの両立も慣れましたか?
『ヤングフランケンシュタイン』の時がちょうど子育てのスタートで、育てながらの稽古とか本番に、ちょっとテンパっていました。初めての福田作品にも戸惑いながら(笑)。そこから1年経って、ペースも掴めてきましたし、主人も一緒に子育てしてくれるので心強いです。それに福田さんも家族をとても大事にされる方なので、今回もご一緒できてとても嬉しいです。
──そんな福田さんとともに作っている『サムシング・ロッテン!』への意気込みを、改めてぜひ。
どの方も才能あふれる魅力的な方々ばかりで、物語もとてもよくできていて、有名なミュージカルのナンバーもいっぱい出てきます。とても楽しい作品です。ミュージカルを大好きな方も、ミュージカルを知らない方も、絶対に楽しめると思います。ぜひ観にいらしてください。

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せなじゅん○東京都出身。1992年宝塚歌劇団に入団。05年から月組トップスターをつとめ09年退団。以後、女優として『エリザベート』『アンナ・カレーニナ』をはじめとするミュージカルやストレートプレイの主役をつとめ、また映像でも活躍中。2012年に菊田一夫演劇賞演劇賞、岩谷時子賞を受賞。近年の出演昨品は、舞台『エジソン最後の発明』『JunSena25th Anniversary concert』『ヤングフランケンシュタイン』『FUN HOME』『シティ・オブ・エンジェルズ』など。4月にはコンサート『トロワ・バイオレット』(宝塚バウホール)に出演する。またドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ)に出演中。

〈公演情報〉
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ミュージカル『サムシング・ロッテン!』
作詞・作曲◇ウェイン・カークパトリック、ケイリー・カークパトリック
脚本◇ケイリー・カークパトリック、ジョン・オファレル
演出・上演台本◇福田雄一
出演◇中川晃教 西川貴教 瀬奈じゅん
平方元基 清水くるみ/橋本さとし ほか
●2018/12/17〜30◎東京 東京国際フォーラム ホールC
〈料金〉S席12,500円 A席9,500円 B席7,000円(全席指定・税込)    
●2019/1/11〜14◎大阪 オリックス劇場
〈料金〉平日:S席11,000円  A席8,000円  B席6,000円
    土日祝:S席11,500円  A席8,500円  B席6,500円
〈お問い合わせ〉キョードー東京 0570-550-799 (オペレーター平日11:00〜18:00、土日祝10:00〜18:00)

【取材・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃】


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美しすぎる武将を描く宝塚ならではの物語世界!宝塚花組公演『蘭陵王』

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宝塚歌劇団専科の凪七瑠海を主演に迎え、類い稀なる美しさで中国の歴史に名を残す皇族・高長恭の数奇な人生を描いた宝塚歌劇花組公演ロマンス『蘭陵王─美しすぎる武将─』がKAAT神奈川芸術劇場で上演中だ(10日まで)。

ロマンス『蘭陵王─美しすぎる武将─』は、6世紀の中国にそのあまりの美貌故に、戦場で兵士たちの士気が下がることを恐れ、仮面をつけて戦ったという伝説で知られ、京劇はもちろん、日本では雅楽の演目としても親しまれている。その蘭陵王の謎多い人生に想像の翼を広げた木村信司の作品だ。フィナーレナンバーの作曲、また本編の楽曲演奏録音に雅楽師の東儀秀樹が参加し、「昔語り」とも呼びたい作品世界が展開されている。

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【物語】
今から1500年前の中国、斉と周が争っていた頃。身寄りも行くあてもない美貌の少年(凪七瑠海)は、繰り返される戦いの中で常に勝った者から類稀なる美しさを愛でられ、命の保証と引き換えに我がものにされるという運命に甘んじて生きていた。幼い彼にはこれが自分だけに起こっていることなのか、誰にでも起こっていることなのかさえはっきりとはしていなかったのだ。そんなある日、北斉軍に捕らえられた少年は、行方知れずになっていた高家の王子・高長恭であることがわかる。この日を境に激変した生活の中で、強い者だけが生き残るという現実を知る高長恭は武術の鍛錬に励み、彼を見つけ出した将軍・斛律光(悠真倫)や、段韶(舞月なぎさ)が一目も二目も置く武術を身につけていく。
そんな最中再び戦乱が始まり、皇太子・高緯(瀬戸かずや)率いる軍の一員として初陣を果たした高長恭は、彼の美しさを見た途端に一瞬ひるみを見せる敵兵を次々に倒して軍を大勝利に導く。その功により皇帝から蘭陵の領地を与えられ「蘭陵王」となった彼は、同時に国中から集められた二十人の美女を下賜されるものの、ただひとり洛妃(音くり寿)のみを賜る。洛妃の振る舞いから彼女が周の間者であることを見破っていた蘭陵王は、正体を言い当てられ自害しようとした洛妃に生きろと命じる。
その後も武勲を立て続ける蘭陵王のずば抜けた強さ、兵士はおろか馬までもが彼の美貌に見惚れ、戦いを忘れてしまうことから、面で顔を覆って戦う将軍として、民の間でも伝説が語り継がれる存在になっていく。他でもない皇太子・高緯すらも蘭陵王に夢中になるが、その人気ぶりがいつか皇太子の立場を危うくすることを恐れた、重臣・逍遥君(帆純まひろ)ら、皇太子の取り巻きたちは蘭陵王を排除すべく画策をはじめる。だがその企みにいち早く気づいたのは、自身も蘭陵王の命を狙った過去を持ちながら、自分と同じように陰惨な幼少時代を過ごしていた彼に、いつしか惹かれていた洛妃で……

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物語は京三紗が語る、のちの蘭陵王=高長恭の幼少時代からはじまる。名も、身よりもない美しい少年だった高長恭が見舞われる過酷な運命は、宝塚歌劇での表現としてはかなり珍しいと思えるほどストレートに描かれているが、状況や本人の感情が直接交わされる台詞以上に、京の「語り」と歌で説明されることがひとつのクッションになっていて、目を覆うという陰惨さを巧みに回避している。その後、少年が実は高貴な身分の生まれであることが判明し、斉の国で立身出世を遂げていく過程や、その絶大な人気故に巻き込まれる陰謀術数の過程でも、常にこの「語り」が舞台を運んでいく為に、作品自体に「日本昔ばなし」ならぬ「中国昔ばなし」と表現したくなる、絵巻物的な物語性が保たれる独特な質感を与えていた。これによってあまりの美しさ故に敵兵ばかりでなく、味方の兵士や馬までもが戦意を喪失する、という主人公の伝説や、皇太子の立場に生まれながら性自認は完全に乙女という、これも宝塚の二枚目男役が演じるにはかなり難しい設定の登場人物が歌う、ある意味ぶっ飛んだ歌詞も「物語」の中に収斂されていくのが興味深い。可能な限りそぎ落とした現実感の薄い装置も、所謂「白髪三千丈」に通じる中国独特の誇張表現の壮大さを、限られた舞台空間に出現させる効果になっていて、何よりそこから最後の最後に「人が嫌がることをしてはいけません」という現代につながるテーマが、ポンと投げ渡されたのには、虚を突かれたような想いがした。
誰もが自由に意見を発することができ、しかも事件性と認められない範囲では匿名性も保たれるネット社会が、あまりにも急速な広がりを見せたが故に、個々の良心や倫理観だけが頼みでは様々に起こる問題に制御が効かなくなっている現代で、最も大切なことは、「自分がされて嫌なことはしない」「面と向かって言えないことは書き込まない」「自分と同じではない他者の感性を認める」等を一人ひとりが心に置くことだと思う。けれどもこうした正論というのは、実は正論であるが故に声をあげにくい面を確かに有している。それを正面から言い切れるのが、『王家に捧ぐ歌』の「世界に求む」から連綿と続いている、木村信司という劇作家の稀有な個性であることが、今回の作品で改めて浮き彫りになった。作品の展開にある種の強引さや、つじつまの合わなさがないではないが、そうした細部を超えた真っ直ぐさがそれらを覆う様はなんとも清らかだ。

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そんな作品の色合いを決定的にしたのが、主演の凪七瑠海の清廉な個性なのは論を待たない。こういった物語の場合、少年時代は小柄な娘役が演じるというのが宝塚歌劇の定石だが、凪七は冒頭から自身で主人公の幼少時代を演じていて、しかもあれだけ長身の人でありながらまるで違和感がなく、澄んだ歌声を聞かせるのに驚かされる。しかも美しすぎるが故に怒涛の人生を送るという、非常に高いハードルの役柄を、感情の起伏を最低限に抑え、透明感のある美しさを保って演じてのけたのは、蘭陵王ここにあり!=凪七ここにあり!に他ならないベストパフォーマンスだった。タイトルロールを演じた『エリザベート』は言うまでもなく、これまでむしろ女役にヒットの多かった凪七が、専科に移籍後決して多いとは言えなかった出演機会の中で地力を蓄え、男役スターとしての代表作を勝ち得たのが喜ばしい。

蘭陵王と深く結びついていく洛妃の音くり寿も、単純な恋愛関係ではないだけに宝塚の娘役としては難しい役柄を巧みに演じている。武器である美声だけでなく、複雑な感情表現にも長足の進歩を見せていて、新進娘役の台頭が著しい花組の中で、子役が最も似合う娘役から、大人の女性が演じられる存在へと見事に脱皮した音の力量が確かに示されたことも、この作品の大きな収穫だった。

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皇太子・高緯の瀬戸かずやは、性自認は女性と言うよりも、やはり乙女と言いたい難役中の難役に体当たりで取り組んだ様に目を奪われる。元々明日海りお率いる花組で、ダンディーで大人な役柄が似合う男役として重用されてきた人だけに、面食らったに近い感覚に陥ったが、だからこそのインパクトは絶大。高緯の抱える悲しみもきちんと表現し、ラストシーンにつなげる役割も果たしていて、実はあとから振り返るとさほど出番が多くないことに再び驚かされる存在感だった。

その高緯を常に庇護している重臣・逍遥君の帆純まひろが、蘭陵王への複雑な感情をにじませ、学年差のある凪七、瀬戸と互角に渡り合って見応えがある。煌びやかなこの時代の装束もよく似合い、凪七とはタイプの異なる美しさが舞台に際立った。将軍・斛律光の悠真倫の、人に心を閉ざして生きてきた蘭陵王が信頼を寄せるのもうなづける、温かな舞台ぶりは貴重だし、武術の師となる段韶の舞月なぎさが、専科勢に位負けしなかったのも作品を支える力になった。蘭陵王に下賜される美女たちの美花梨乃、若草萌香、桜月のあ、詩希すみれ、美里玲菜、の娘役陣は男性役の兵士も務めるし、人の好い皇帝の航流ひびき、皇太子の取り巻きとして陰謀を巡らす澄月菜音、和礼彩、翼杏寿、南音あきら、颯美汐紗、珀斗星来、刺客の青騎司、礼哉りおんをはじめ、それぞれ何役も演じる男役陣が、最下級生に至るまで働き場を得ているのは、こうした少人数の公演ならではの妙。様々な経験がのちに活かされることだろう。

分けても「語り部」としてこの作品を静かに牽引した京三紗の滋味深い語り口と、広寧王の妻という役柄ではあるが、実質的にはもう1人の語り部である花野じゅりあの、目に見えない戦闘と大軍勢を確かに舞台上に具現させた迫力の語りとの対比も効果的だった。もちろんフィナーレナンバーを含めた、東儀秀樹の音楽と演奏も作品に雅さと共に異空間を演出する材料となっていて、「美しかったが、悪いか」とさらりと言ってのけた凪七と、言わせた木村双方に感嘆する作品となっている。


〈公演情報〉
宝塚歌劇花組公演
ロマンス『蘭陵王─美しすぎる武将─』
作・演出◇木村信司
出演◇(専科)凪七瑠海、ほか花組
●12/4〜12/10◎KAAT神奈川芸術劇場
〈料金〉S席 7,800円 A席 5,000円
〈お問い合わせ〉宝塚歌劇インフォシメーションセンター[東京宝塚劇場]0570-00-5100
公式ホームページ http://kageki.hankyu.co.jp/



【取材・文・撮影/橘涼香】


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伝説のリーディングドラマ『シスター』2018年ラスト公演!

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姉弟が繰り広げる会話から、生み出されるのは絶望なのか、希望なのか−。
実力派の二人が編み出す、あなたの日常。
二人で贈る、静かな会話劇、今はじまる。 

2017年3月にサンケイホールブリーゼで上演し、大反響を呼んだ『シスター』。
その6回目となる今回は、劇場をよみうり大手町ホールにて上演。
年末の上演にふさわしい、非常に豪華で個性的な出演者が揃った。

出演者2名のみならず、観ている側もじわじわと徐々に沸き起こる感情。出演者2人のセッション。
静寂でも心に深く深く刻まれる独特な世界。
伝説のリーディングドラマが2018年のラストを彩る!

今回はシリーズはじめてのアフタートークも実施される(12月20日(木)19時回のみ)。
 
〈公演情報〉
リーディングドラマ『シスター』
●2018/12/17〜21◎よみうり大手町ホール
作・演出◇鈴木勝秀 
出演◇
12月17日(月) 19時:高垣彩陽・古屋敬多
12月18日(火) 14時:秋本奈緒美・伊藤裕一/19時:屋比久知奈・尾上松也
12月19日(水) 14時:草刈民代・田中哲司/19時:徳永えり・稲葉友
12月20日(木) 14時:黒川芽以 / 佐伯大地/19時:水夏希・マギー(※トークショーあり)
12月21日(金) 14時:水夏希・桐山漣 
※20日(木)19時回のみ終演後に水夏希・マギー・鈴木勝秀によるトークショーを行います。
〈料金〉前売6800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉atlas 03-6279-0545(平日12:00〜18:00)
〈公演HP〉http://reading-sister.com






『暗くなるまで待って』


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