えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

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大地真央と中村梅雀が演じる史上最強のおもろい夫婦の物語『夫婦漫才』開幕!

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“日本最高のコメディエンヌ”大地真央と、歌舞伎からコメディまで芸達者でドラマでも活躍中の中村梅雀。2人が史上最強のおもろい夫婦を演じる舞台『夫婦漫才』が、11月6日に福岡・博多座で開幕した。(18日まで。その後、大阪・新歌舞伎座、東京・シアター1010で上演)
この作品は俳優・豊川悦司が2001年に脚本・監督を務めたテレビドラマを原作に、ラサール石井が演出、脚本は俳優・池田鉄洋としても活躍する池田テツヒロが担当している。

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【あらすじ】
“あんたの横にはいつもうちがおる だから行こう、一緒に行こう”
大阪の長屋で、まるで兄妹のように育ってきた信子(大地真央)と伸郎(中村梅雀)。器量よしで美人な信子とぱっとしない伸郎の“のぶ”コンビは長屋の人気者だったが、ついに伸郎に赤紙が届く。
戦後、夫婦となり3人の子宝に恵まれたが、定職にもつかずふらふらしている伸郎に信子は腹を立て、毎晩長屋に響きわたる夫婦喧嘩の声。ところが、この喧嘩が掛け合い漫才のようで面白いと評判を呼び、プロの漫才師としてデビューすることになる。家族を、長屋の人々を、お客さんを笑顔にすることが皆を幸せにすることだと仕事に打ち込む二人だが、突然悲劇はやってきて…。

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戦争、貧困、高度成長、テレビ黄金期、漫才ブーム。激動の昭和から現代を、夫と家族を支えながら、前向きかつ豪快に突き進む信子。伸郎と共に二人手を取り、夫婦で歩む笑いと涙の珍道中の行く先は・・・。

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初日公演の終演後には、出演の大地真央・中村梅雀・川麻世・正司花江、そして演出のラサール石井が登壇し、囲み取材が行われた。

主演の大地真央は、ひょんなことから夫と夫婦漫才コンビを結成し、激動の昭和から現代を明るくたくましく生きた女性を演じている。「実は、現代を生きた普通の日本人女性の役を舞台で演じることも、関西弁をしゃべるのも宝塚のトップお披露目公演以来初めてだったので、とても新鮮でした。でもお客様の反応がとても温かくてホッとしています」と初日を迎えた感想を大地が語る。
その大地を「王女とかそういう役ばかり演じてきた真央さんが、ごく普通の庶民の役を演じるというのも見どころです」と演出のラサール石井。
また、大地の夫役を演じる中村梅雀が「関西弁の役は苦手でこれまで封印してきたのですが、真央さんのおかげでスッとその世界観に入ることができました」と安堵の表情を見せると、息もピッタリに大地から「せやろ!」と関西弁で相の手が。そんな二人に、川麻世が「何があっても支え合う、夫婦のあるべき姿を舞台で勉強させていただいています(笑)」と感想を語り、笑いを誘う一幕も。 
劇中では、戦争、貧困、高度成長、テレビ黄金期、漫才ブーム、オリンピックなど昭和を象徴する事柄が多く登場。ラサール石井は「真央さんの劇中でのファッションも、それぞれの時代にあったものを揃え、コートも含めると全部で20着、着てもらっています。それだけ見ても昭和女性ファッション史として楽しんでいただけると思います」と見どころを語る。 
音楽も「東京五輪音頭」「世界の国からこんにちは」など、昭和を彩った名曲が多数登場。なんと芸歴80年(!)を迎えるという正司も「共演したことのある方の曲も多く、本当に懐かしくて涙が出そうです。皆さんにも懐かしく観ていただけると思います」と語った。
最後に大地より「本当に笑いあり涙ありの面白いお芝居に仕上がったと思います。是非劇場お越しいただき、この時間と空間を共有していただけたらと思います。」と締めくくった。

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〈公演情報〉
『夫婦漫才』 
原作◇豊川悦司
脚本◇池田テツヒロ
演出◇ラサール石井
出演◇大地真央、中村梅雀
川麻世、村上ショージ、竹内都子、上杉祥三
朝倉伸二、福本伸一、弘中麻紀、未沙のえる、南翔太
吉沢京子、正司花江 ほか
●11/6〜18◎博多座
〈料金〉A席13,000円 特B席10,000円 B席7,000円 C席4,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉博多座電話予約センター 092−263−5555(10:00〜18:00)
●11/22・23◎新歌舞伎座 
〈料金〉1階席10,000円 2階席5,000円 3階席3,000円 特別席12,000円
(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉新歌舞伎座テレホン予約センター 06-7730-2222(10:00〜18:00) 
 http://www.shinkabukiza.co.jp
●11/29〜12/4◎シアター1010 
〈料金〉全席指定9,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉TEATRE1010 03-5244-1010







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「Discover Nelly Arcan」プロジェクトの掉尾を飾る舞台『この熱き私の激情〜それは誰も触れることができないほど激しく燃える。あるいは、失われた七つの歌』上演中。

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6人の女優と1人のダンサーが、1人の女性の人生を描く舞台『この熱き私の激情〜それは誰も触れることができないほど激しく燃える。あるいは、失われた七つの歌』が、天王洲銀河劇場で上演中だ(19日まで。そののち、広島、北九州、京都、豊橋で公演)

わずか8年間に、心の内側に秘めた怒りを爆発させ、熾烈で思わず目をそらしたくなるほどの作品を執筆し、36歳の若さで自ら命を絶ったカナダ・ケベック州生まれの女性作家ネリー・アルカン。
この作品は、彼女の世界を、本、映画、舞台で紹介するビッグプロジェクト「Discover Nelly Arcan」の最後を飾る一編で、ネリー・アルカンが残した4編の小説をコラージュし、カナダ人演出家マリー・ブラッサールが舞台化したもの。出演する松雪泰子、小島聖、初音映莉子、宮本裕子、芦那すみれ、霧矢大夢の女優6名が、それぞれガラスで閉じられたキューブ体の部屋に入り、お互いに顔も見えないまま、イヤーモニターから聞こえる音、共演者の台詞だけを頼りに、ネリーの孤独、慟哭、女性であることの苦悩を演じ、台詞のセッションを奏で、ダンサーの奥野美和が、象徴的に各部屋を行き交うという、非常に斬新で、官能的で、かつ難度の高い舞台となっている。

そんな作品の初日を前に、出演の松雪泰子、小島聖、初音映莉子、宮本裕子、芦那すみれ、奥野美和、霧矢大夢と、演出のマリー・ブラッサールが、開幕直前会見に臨み、娼館の飾り窓とも、ショーウィンドウとも取れる、舞台上に置かれた10個のキューブを前に、新たな挑戦となる公演への抱負を語った。
 
【登壇者挨拶】

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マリー・ブラッサール
 
皆様、本日はお集り頂きどうもありがとうございます。こうして素晴らしい皆様とご一緒に初日を迎えることができて、光栄に思っております。少し作品についてお話しさせてください。ネリー・アルカンはとても知性あふれる若い女性で、作家でした。彼女は自分の作品の中でも描いていますが、自分を生きているには相応しくない人間だと感じることがとても多かったんです。ネリー・アルカンは皆様ご存知の通り、36歳という若さで自殺をしてしまいました。私は今こうして日本の皆さんに、彼女の深み、また知性を共有できることを嬉しく思っておりますし、自分自身とても感動しています。こうして素晴らしい女優の皆さん、そしてダンサーの奥野美和さんと、ネリー・アルカンが表現してきた作品を皆様にお見せできる、彼女へのオマージュを皆様にお届けできることをとても嬉しく思います。
 
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松雪泰子
 
今日までマリーさんと稽古を重ねてきて、どこまでこの作品を表現できるのか、今、とても緊張感を持っておりますが、良い初日を迎えられるようにと思っております。

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小島聖 
ここにいる皆様とご一緒させて頂いているのですが、全く顔が見えず、声だけの交流しかないというのは、なかなかセクシーで良いものだなと思っております。マリーさんには言葉と身体がつながっているようにと言われているので、それを胸に今日の初日を迎えたいと思います。
 
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初音映莉子
 
ネリーの36年の人生がなかったら、今、自分はここにいないんだなと。ネリーの人生が私に与えてくれた、マリーや、日本人のスタッフ、素晴らしい共演者の方達との出会いに感謝しながら、ネリーの魂を自分の中にグッとこめて演じたいと思います。

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宮本裕子 
本当にあっという間の5週間で、稽古場を去りたくないという思いがとても強く、マリーをはじめスタッフ、キャストの方達とすごく楽しい、でも俳優としての自分としてはこんなに苦しく、久々にガツンときたネリーの人生でした。製作発表の時には「真綿で首を絞められるような感じだ」と言ったのですが、いざ稽古が進んでいくと真綿が水を含んでいた感じで、自分の役者人生を破壊されかねないと思うほど、衝撃的な稽古でした。ネリーを感じながら、本番をやっていきたいと思います。
 
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芦那すみれ
 
今回の舞台を通して、この素敵な先輩たちと一緒に、またマリーと海外のクルーと一緒に過ごした時間が、自分の中ですごく楽しかったです。でも楽しいだけで終わってはいけなくて、今日からが本番だという気持ちの中に、楽しい気持ちもちょっと忘れないでやっていけたらいいのではないか?と思っています。皆さんにも楽しんで頂けて、何かを感じて帰って頂けたら、それが一番いいなと思っています。
 
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奥野美和
 
私は失われた部屋の女というキャラクターを演じさせて頂くのですが、私にとって演劇作品に出演するのは初めてのことで、今日初日を迎えるまで皆さんにアドヴァイスを頂いて、出来立てほやほやの状態でもあります。ですから本番1回、1回を集中した濃い時間を過ごして、私にはとても難しいことだった演劇と、ダンスの身体表現をしっかり習得して、1日1日を過ごしたいと思います。
 
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霧矢大夢
 
ネリーの心の闇、怒りや苦しみ悲しみを表現するということは、自分自身の闇に向き合うことでした。稽古中苦しかったり、今、初日を迎える瞬間が怖い気も致しますけれども、皆様の前で、客席からの力をパワーに変えて、素晴らしいキャストの皆様とネリーを伝えていきたいと思います。

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【質疑応答】

──マリーさんはご自身も女優として活動されていますが、この1ヶ月間日本の女優たちとの仕事はいかがでしたか?
マリー 日本の女優の皆様とお仕事ができるということで、謙虚な気持ちで楽しくお稽古をさせて頂いてきました。皆様1人1人素晴らしい女優さんで、深い知性と才能をお持ちの方達とご一緒できて本当に嬉しかったです。今回演出をする上でわかったことは、演出家というのは台詞の話し方を1つ1つ指導する訳ではなくて、パフォーマーが言葉の真実により深く近づける為のお手伝いをする、そういう仕事なんだということを改めて実感致しました。そして私が気づいたのは、どこの国の人間であっても、知性的な意味で近づくことができれば、言語の違いは壁にはならないということを感じました。
──作品から感じ取って欲しいメッセージなどは?
マリー この作品は、正確なメッセージをお客様に届けたいという訳ではありませんが、この作品を観ることによって、ネリー・アルカンというアーティストの作品をまた深く見直し、現代の女性が置かれている状況、立場を皆で一緒に見直せればなと思っております。それとこの作品は現代社会におけるプレッシャーというものも提示しています。メディアから与えられるプレッシャー、また自分以上の何かにならなければならないという、概念によるプレッシャーが表されています。それは世界共通のものだと思いますし、男女共にあるプレッシャーだと思います。この作品を観た後で、ネリー・アルカンの詩的な言葉に感動すると共に、そういうことについても内省して頂き、お客様に考えて頂ければと思っています。なので、観て頂くお客様には是非感動して頂きたいです。それは詩的な表現であったり、インスピレーションであったり、是非、闇ではなく光を持ち帰って頂きたいと思います。

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──この5ヶ月間、心を引き裂かれるようなテキストと向き合い、テクニカルを含めて大変な稽古だったと思いますが、この稽古中に最も苦労した点や、また新しい発見などありましたら教えてください。
霧矢 この部屋の中から出ないで皆様の呼吸を感じながら、それぞれが個々のようでいて、同じ空気を感じなければいけない、という演劇手法がまず初めてで難しくて、それは未だに課題でもあります。先ほども言いましたように、ネリーの闇を深く深く探求していくと、本当に自分もズンと落ちそうになるところを、今マリーがおっしゃったように光に変える、そのパワーに持っていくことが難しくもあり楽しくもあります。
奥野 さっき言ったことと重複してしまうかも知れませんが、私は演劇作品が初めて、デビューの作品だということでした。でも私も演技の手法が初めてでしたが、今回の作品では皆様にも演技だけではなく、身体表現もあったり、後はこの美術と、歌もあり、色々なジャンルが混ざったような作品ですので、自分がどのように作品の一部として溶け込めるか?というのが、わかっているつもりでやはり理解に時間がかかります。これは公演中もずっと考えてパフォーマンスをしないと、なかなか身体に入っていかないと思うので、そこを頑張っていきたいと思っています。
芦那 ネリーは大人の女性なので、大人の女性であって欲しいというところが、自分にとって一番ネックでした。
宮本 私がいるのが死の部屋で、ネリーが死んだあとの部屋なんですけれども、死というものとすごく向き合わなければいけないので、ここに今ネリーがいるのかも知れない、天国にも地獄にもまだ行っていないのでは?ネリーってまだいるのかな?と思ったり、自分が死んだらどこに行くのだろう?と思ったり、死をすごく考えさせられています。これは本番が終わるまでずっと向き合うことなので、体力がいるなと思っています。
初音 台本を読んでいて、ネリーの言葉がグサッと刺さってきて泣いてしまったりもしました。彼女の思いと対峙することが最初はすごく辛かったです。あとは、部屋に入っているので、皆の声を聞きながら芝居をしたり、実際に舞台に来て照明が入って初めてわかることもあって。部屋の前にあるガラスなんですが、中に入るとまるで鏡のように見えて、客席はいっさい見えない状態なんです。鏡に対峙して話している感覚なので、ネリーもこういう経験をしたんだろうな、と感じています。
小島 言葉を単純に覚えた方が楽なのですが、シンプルに捉えてそれをしないということが、とても大変でした…いえ、大変です(笑)。

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松雪 私もまず「ピュタン」という小説を読みまして、あまりにもネリーの痛みが深すぎて。とにかく死に向かっていく彼女の精神状態を考察し、読み進めていくと、自分の中にある潜在的な痛みが、彼女の持っている痛みとフィットする瞬間がありまして、その度にかなり苦しくて身動きが取れなくなる時間が相当ありました。本当に怖くて、死に向かっていく精神状態を捕まえるのが、とても困難でしたし、自分が台詞を通して体現していくという段階になってからは、苦労の連続でした。でも言葉自体というものはとても美しいので、それをまず皆様にしっかりお伝えしたいなということのみで、稽古場でやっておりました。あとはマリーさんと皆さんと稽古をしていく中で、本当にこの劇自体が全体で1つなんだということがハッキリとわかりますし、私達はイヤーモニターを通してしかお互いの言葉が聞こえないのですけれども、そこからエネルギーが積み重なってすべて、最後の私の死に至るまでの時間が、個々でありながら全体として1つだということがすごく大事だと思いました。美術、照明、マリーさんの演出を含めて、すべて計算されているこの劇構造に圧倒されつつも、皆様にお伝えできたらという思いでいます。
──それぞれ、ズバリ見どころを一言でお願いします。
松雪 この劇全体を通して、見事に調和が取れた瞬間だと思っているので、見どころはすべてという感じです。
小島 女性っていいなと思います。
初音 自分の人生を振り返ることができるところだと思います。
宮本 日本で観たことのない手法、演劇表現が見られることだと思います。
奥野 美術と演出と身体表現すべてが融合した、コンセプトに沿ったジャンルが、融合された瞬間が見どころだと思います。
芦那 私は稽古場で皆様のお芝居を観させて頂いて感じていたことなのですが、松雪さんが演じられる、自殺するところに向けて皆のお芝居が少しずつ重ねられていくので、影の女のところが見どころだと思いますし、そこから死んだ女の(宮本)裕子さんが出てくる、2人が変わる瞬間が曲もおどろおどろしくて、是非注目して観て頂きたいです。
霧矢 女はしなやかで、美しくて、強いというところを感じて頂きたいです。
──代表して松雪さんにお伺いします。女性の心情を描いた作品ですが、男性が観る上で何かアドヴァイスはありますか?
松雪 霧矢さんがおっしゃったように女性は強く、美しいと感じて頂ければと思います。

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続いて、舞台上で3つの場面が公開され、それぞれ、演出のマリー・ブラッサールからシーンの説明があり、この斬新な舞台の一端が立ち現れた。

【公開場面1】

マリー まず皆さんにお見せするのが「悲しみの仮面」というシーンです。このテキストの中で、ネリー・アルカンは「自分は美しくもなく、醜くもない」という言葉を繰り返し言っています。自分は生きるに値しない人間だという思いが籠められています。なので、結論として自分で自分の人生を終わらせるという方向に向かっていきます。これは作品の中で「失われた女、失われた歌」という場面ですね。

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前衛的な音楽が流れ出し、それぞれの部屋に入った女たちが台詞のセッションを奏ではじめる。「私は美しくない、醜くもない」「どっちつかずで上手くいかない」「身体」「まなざし」「時と共に私は醜くなる。事態は好転しない」「悲しみに飲みこまれていく私の顔」等々の言葉が、連なり、重なって発せられる。各部屋が完全に仕切られている為に、徐々に誰が今言葉を発しているのかも、定かではなくなる眩惑感がなんとも独特だ。

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【公開場面2&3】

マリー 次に皆様にお見せ致しますのは「娼婦たちは自殺を宣告される」という歌です。この歌の中でネリー・アルカンが話しているのは「娼婦というのは消えた後、長い間消えたことを周りに気づいてもらえない。それはまるで消滅した星のようだ」という言葉です。そこに続いて「影の部屋」のシーンの「影の歌」に今日は続けます。これは「影の部屋の女」を演じている松雪泰子さんが歌います。この歌の中では、ネリー・アルカンが死について語り、やがて首つりについて歌います。一部を抜粋してお見せします。

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リズムが強く響き、各部屋の女たちは「娼婦は自ら命を絶つと宣告されている」「自分を殺す!」「死んだ星が光る」「娼婦たちは死んだ星の光」などと、ある者は語り、ある者は叫びながら、激しく動く。「天文学者は言う、死んだ星の光はどんなに遠くても1番眩しい」「1番眩しいのは死ぬ時」「自分の1番いいものを手放すのは死ぬ時」女たちの動きはますます激しくなり、天空の部屋ではこの部屋の女小島聖と、現実的には部屋にいない「失われた女」の奥野美和が絡み合う。やがて言葉をリズムがかき消していき、部屋の灯りが1つ1つ消えていく。

闇の中から「影の部屋の女」松雪泰子が浮かび上がる。幼少時に言い含められた父からの警句、それに応えて「私がお父さんに愛される、良い子でいますように」という祈りのような台詞が消えると、影の部屋の女は首つりについての歌を語るように、つぶやくように歌い、それがいつか祈りの言葉となっていく。
 
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ステージが闇に包まれて、約15分弱の場面公開が終了。ただ、実際に舞台を目にしている時間は、もっと極端に短いように感じられ、このあまりにも刺激的な舞台の世界観の鋭さが伝わってくるようだった。この作品は、2017年の演劇界にとって、1つの「事件」ともなりうる舞台と言えそうだ。


〈公演情報〉
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PARCO Production
『この熱き私の激情〜それは誰も触れることができないほど激しく燃える。あるいは、失われた七つの歌』
原作◇ネリー・アルカン 
翻案・演出◇マリー・ブラッサール    
翻訳◇岩切正一郎
出演◇松雪泰子 小島聖 初音映莉子 宮本裕子 芦那すみれ 奥野美和 霧矢大夢
●11/4〜19◎天王洲 銀河劇場
他、広島、北九州、京都、愛知にて上演
〈お問い合わせ〉パルコステージ 03-3477-5858 
                



【取材・文・撮影/橘涼香】




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元宝塚雪組トップスター早霧せいな、退団後初ステージ『SECRET SPLENDOUR』開幕!

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宝塚雪組のトップスターとして活躍し、7月23日惜しまれつつ退団した早霧せいなの、宝塚退団後の初ステージ、〜Super StarsによるSpecial な Showtime〜『SECRET SPLENDOUR』が、東京・赤坂のTBS赤坂ACTシアターで開幕した(14日まで。のち、大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで17日〜19日まで上演)。

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『SECRET SPLENDOUR』は、その名の通り、絶大な人気を誇った男役早霧せいなが、宝塚卒業後、1人の表現者として見せる新たな顔、秘密の輝きをキーワードに繰り広げられるショーステージ。『SECRET SPLENDOUR』の頭文字「SS」と早霧せいなの頭文字「SS」とがかけられているタイトルでもあって、更に、早霧退団公演のショー『Dramatic“S”』で連呼された「SS」からもイメージが引き継がれた、退団から3ヶ月という今だからこその、粋なネーミングが心憎い。

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そのタイトルに込められたオシャレな感覚が、ステージにもそのまま表れている。こちらもやはり元宝塚の演出家であり、ミュージカルやストレートプレイだけでなく、こうしたショーの、特に様々な魅力をコラボレーションする力に、他の追随を許さないものがある作・演出の荻田浩一ならではの、ユニークな場面構成が際立つ。何よりも面白いのは、男役時代の早霧の代表作。ちょっとマニッシュな女性=「今」現在の早霧せいなの、等身大の魅力を表現したシーン。更にはゴージャスなドレス姿で、ミュージカルナンバーを歌い上げる早霧という、未来への期待が膨らむシーンが、くるくると回転しながら現れることだった。

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こうしたショー作品の場合、多くは回顧のコーナー、未来への夢のコーナーといった形で、それらは流れの中で固められて登場することが多いが、1つ1つがショー全体の中に散りばめられることによって、びっくり箱を開けていくような意外性が続く妙味がある。「あ、回顧にはこの有名シーンを使ったのか…」と、思う間もなく、艶やかな早霧が登場したかと思うと、また別の懐かしいシーンがはじまる、という形で、どこまでいっても驚きの連続なのが、客席にいてなんとも楽しい。

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中でも、同じ長崎県出身の、早霧にとって同郷の先輩トップスターである、安寿ミラが特別出演したことによって「今どう?どんな感じ?あぁ、そうね、わかるわ」と言った、シャンソンそのままのやりとりがあれば「そうか!二人共この作品で主演していた!」という共通点に改めて膝を打った、宝塚作品『哀しみのコルドバ』の闘牛士エリオ・サルバドールを、共に演じるというゴージャスなプレゼントもあって心躍る。安寿の自然体のしなやかな舞台姿は、早霧の今後にとっても何よりの指針ともなることだろう。

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また、早霧ならではの和物のシーンでは、寸劇的な要素もあり、鮮やかに殺陣を決めて魅せるのは現役時代そのままだ。一方、美しいドレス姿で、意外なミュージカルナンバーを歌い上げるシーンでは、むしろ現役時代よりも高めの音域の方が早霧の声質が活きることがわかり、来年主演することが発表されたミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』への期待も大いに高まった。

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だからと言って、決して早霧ワンマンショーではないのが、実力派が大挙して出演したこの作品の見どころの1つ。大野幸人、小野妃香里、海宝直人、JKim、丹澤誠二、原田薫等、ダンス界・ミュージカル界の代表的な顔が揃い、その豊かな実力を如何なく発揮してくれる。大野の舞台狭しと踊りまくるダンスの伸びやかさ、小野、JKimのオールマイティー何でもござれの振り幅の広さ、丹澤のサックス、原田の力強いダンスと歌などが随所で楽しめる。更に、ミュージカル界の若手筆頭として躍進している海宝が、端正な若き二枚目の現在では役柄として演じることはまだ先かも知れないが、楽曲として取り組むことで格段の新鮮味と魅力が迸ったミュージカルナンバーを披露。これは実に貴重な必聴ものとなっていて、早霧以外のメンバーを目当てに客席に座った観客も、等しく満足できるだろう構成が美しい。

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何より、宝塚の男役を卒業して3ヶ月余り、早霧せいなの「今」が詰まったショー作品となっているのが嬉しく、日替わりゲストの平澤智と桜木涼介と早霧の掛け合いシーンも含め、今この時にしか味わえないスペシャルなショーとなっている。

【囲みインタビュー】 

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初日を控えた11月4日、マスコミ向けの公開ゲネプロを前に、早霧せいなが囲み取材に応えて公演への抱負を語った。

──『SECRET SPLENDOUR』がどのような作品になっているのか教えてください。
宝塚歌劇団を退団しまして、初めてのショー、外の舞台に立つ作品ということで、内容としては男役的な部分もありながら、1人の女性として、表現者としての変換期と言いますか、ちょうど今を切り取ったショーになっているんじゃないかな?と思います。でも私だけが出てくると言うよりも、他の出演者の皆さんとのコラボレーションや、歌ありダンスあり寸劇あり、その中でも和物もあったり、ボリューミーで盛りだくさんなショーになっています。
──『SECRET SPLENDOUR』という公演名の意味は?
「SECRET」は「秘密」で「SPLENDOUR」は「輝き」ということで、その名の通りです(笑)。特にそこまで深い意味はないんですけれども、自分の名前もSAGIRI SEINA でSSが入っていますし、『SECRET SPLENDOUR』もSSですので、そこにかけたというこもあり、観に来てくださる皆様に、観てのお楽しみ、観て頂ければその秘密がわかるよ!というような内容になっていると思います。
──宝塚歌劇団の公演と大きく違うところはどこでしょうか?
やはり宝塚の場合は「組」の中に存在していますので、組子の仲間たちとその作品が終わっても、また次の作品も共にあるという形なのですが、卒業しまして、今回は『SECRET SPLENDOUR』の為に集まった出演者、スタッフの方々と共に創り上げるということで、そこは大きな違いなのではないかと思います。一期一会ではないですが。
──男性が一緒の現場という点ではいかがてすか?
稽古当初は男性がいるということも含めて、知らない皆さんと振付を受けたり、お稽古をするということが、どの瞬間もそうですが、とても新鮮でした。
──苦戦したことなどは?
苦戦ですか?そうですね、リフトをする側からされる側になって、どうしていいか戸惑いました(笑)。今でも戸惑っております(笑)。

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──衣装も新しい挑戦が?
宝塚の時も女役をやったことがあったので、ドレスも着たことがあったのですが、その時は「男役だもん!」という気持ちが入っていて(笑)、ちょっと強すぎたり、違和感があったりしても「男役だから仕方がないよね」というところで許してもらっていたのですが、今はそういう訳にもいかないんじゃないかな…と、思っていたりもしているのですが、やっぱり「元男役だもん!」というのを(笑)、自分の中での言い訳にしながら、慣れないヒールと慣れないドレスシーンもやっています。でもそこで早霧せいなとしては、新しい挑戦をするんだという心意気でやっています。
──ドレスアップした衣装に抵抗があったりもしましたか?
抵抗と言うよりも、恥ずかしさの方がありました、慣れなくて。当初よりはだいぶ慣れましたが、やはり仕草ですとかドレスの裾裁きなどは、まだまだ自然には身についていなくて、1回1回考えながらやっているという感じです。
──楽曲にも早霧さんの代表曲と言うべきものが多く入っていますね。
やはり、今早霧せいなのショーを観に来てくださるお客様というのは、私の宝塚現役時代をたくさんご覧になった方々が多いのではないかなと思いましたので、その方々が入って来やすいように、(宝塚時代を)思い出して頂きながら、でも新しい部分も見せながら、というバランスを取りながらですね。でも、曲ってとても大切で、知っている曲が流れてくると人ってテンションが上がったり、聞きたくなったりするので、その辺の意味もあると思っています。
──公演以外のお話になりますが、退団されて3ヶ月、新しい生活で変わったことはありますか?
以前は本当に稽古場か劇場かと、自宅との往復だけで、どうしてもそこに集中するしかなかったのですが、退団して(この公演の稽古に入るまでの)2ヶ月間自由な時間が与えられて、視野が広がった気がしています。
──何か新たに始めたことなどは?
臆病者なので(笑)。特に何かを始めたということはありませんでした(笑)。その自由な時間そのものを楽しむと言いますか、味わう感じでしたね。まだまだ2ヶ月なので、何を始めるというところまでは行かず、この公演に臨むまでの覚悟の2ヶ月だったような気もします。
──来年、初ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演されることも発表されましたが、そちらへの抱負なども。
まだこのショーが始まっていないので、宝塚を卒業しての外の舞台というものをこれから感じていくと思うのですが、このショーとは別で、やっぱりお芝居、ミュージカルとなりますと、今までやってきたことプラス違うものが要求されるのではないかな?と思いますので、ますます早霧せいなという自分自身を磨いていかなければと思います。でもちょっと違和感が残るくらいが、男役から女役への変換期にはちょうど良いんじゃないかな?と思いますし、そこを作品に取り込んでお客様に楽しんで頂くのが1番ではないかと思っているので、ちょっと無理をしつつ、でも無理をし過ぎずに、自分らしさをちゃんと残しつつ作品の中で生きられたらと思っています。

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──今回のショーは元宝塚の荻田浩一先生の作品ですが、ご一緒されていかがでしたか?
宝塚のことはもちろん、宝塚以外の舞台のこともよくご存じですし、男役さんから1人の女性として演技者になられた方とお仕事をなさった経験もすごく豊富でいらしたので、私よりも先に今の私の気持ちをわかってくださって。相談してもすぐ答えが返って来ますし、この時期をすごく大切にしてくださっているので、決して押し付けではなく、基本的には1番私の気持ちを優先してくださるのが、とてもありがたかったです。
──ショーの中で早霧さんが発信されたアイディアや要望はあったのでしょうか?
特にはないですが、早霧せいなのショーとはなっていますが、決して私だけのものではなくて、お客様に楽しんで頂ける作品にすることが1番大切だと常に思っているので、その辺りはお願いしました。だからと言って具体的にこれがやりたい、というものは特になく、演出の荻田先生や制作の皆さんにお任せしました。
──では、改めて『SECRET SPLENDOUR』に向かう意気込みと、ファンの皆様にメッセージを。
自分でも初日が開けてお客様がどう楽しんでくださり、どう反応してくださるのかがとても楽しみになっております。宝塚の公演ももちろん緊張したり、ワクワクしたり、また不安だったりと色々な思いの中で歩んできたのですが、今回はそれとはまた違う、言葉にできない不思議な気持ち、未知の世界が待っているという感覚が大きくあるので、1回1回の公演を大切にしながら、出演者の皆さんとお客様とその瞬間を感じとって、自分の中でも吸収して楽しんでいきたいと思いますので、千秋楽までどうぞ応援よろしくお願い致します。

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〈公演情報〉
『SECRET SPLENDOUR(シークレット スプレンダー)』
〜Super StarsによるSpecial な Showtime〜
構成・演出◇荻田浩一
CAST◇早霧せいな
大野幸人 小野妃香里 海宝直人 JKim 丹澤誠二 原田薫/安寿ミラ(特別出演)
Dancer◇笹岡征矢 鮫島拓馬 花岡麻里名 吉田繭
Guest◇平澤智 桜木涼介(日替わり)
●11/5〜14◎東京・TBS赤坂ACTシアター
●11/17〜19◎大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
〈料金〉東京・S席10,800円/A席8,800円
    大阪・10,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 (10:00-18:00) 東京・0570-077-039/大阪・06-6377-3888?



【取材・文・撮影/橘涼香】



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ブラッシュアップされた作品と深みを増した役者陣の好演で輝くミュージカル『レディ・ベス』上演中!

一幕ラスト

約半世紀に渡り、英国に繁栄をもたらした女王エリザベス1世。彼女が女王になるまでの苦難の道程と、あったかも知れない恋を描き出した、ミュージカル『レディ・ベス』が有楽町の帝国劇場で上演中だ(18日まで。のち、大阪梅田芸術劇場メインホールにて11月28日〜12月10日まで上演)。

ミュージカル『レディ・ベス』は、『エリザベート』『モーツァルト!』で日本にウィーンミュージカルブームを巻き起こした、ミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイと、いずれの作品でも日本版潤色・演出を務めた日本ミュージカル界のヒットメーカー小池修一郎がタッグを組み、2014年に世界初演の幕を開けた作品。
ヘンリー8世の娘として生まれながら、母アン・ブーリンは処刑され、異母姉メアリー・チューダーとの相克の中、女王として即位するまでに、波乱の日々を過ごした若き日のエリザベス女王“レディ・ベス”を主人公に、彼女の人生を取り巻いた人々を個性豊かなミュージカルナンバーで描き出した一編として、高い関心を集めた。
今回はそんな作品の3年ぶりとなる再演で、メインキャストは初演オリジナルキャストが続投。ブラッシュアップされた演出とストーリー展開に新曲も加えた、より完成度の高い作品となっている。

花總・山崎

【STORY】
16世紀イギリス。
ヘンリー8世の王女として生まれたレディ・ベス(花總まり、平野綾・Wキャスト) は、母親のアン・ブーリン(和音美桜)が反逆罪で処刑された為、家庭教師ロジャー・アスカム(山口祐一郎)、養育係キャット・アシュリー(涼風真世)ら、数少ない味方となる人々と共に、ハートフォードシャーで暮らしていた。
ある日、時の英国女王であり、ベスの異母姉であるメアリー・チューダー(未来優希、吉沢梨絵・Wキャスト)の側近、大司教スティーブン・ガーディナー(石川禅)が、家宅捜索と称して押し入ってくる。熱心なカトリック信者であるメアリーの即位を快く思わない人々は、プロテスタントを信仰しているベスこそ真の女王に相応しいと考えていて、ガーディナーはカトリックにとって脅威となる可能性のあるベスを排除する機会を狙っていたのだ。
ガーディナーはベスが父王ヘンリーから受け継いだ、今は禁書となっているプロテスタントの聖書を所持しているのを発見。女王への反逆の明確な証拠品として押収して去っていく。王女を王女とも思わない振る舞いに憤慨したベスは、ガーディナーから父の形見を取り戻そうと、森の近道に馬車を走らせて後を追う。
だが、難路に馬車が脱輪。立ち往生したベスは、若き吟遊詩人ロビン・ブレイク(山崎育三郎、加藤和樹・Wキャスト)と出会う。自分とは全く異なる世界に住んでいるロビンの自由闊達さに、ベスは反発しながらも惹かれていき、ロビンも身分の違う王女という垣根を越えて、ベスを思うようになる。

平野・加藤

だが、星の動きを読むロジャー・アスカムは「貴女はこの国を統べる運命の元に生まれている」と預言し、1人の女性として生きることを考えてはいけないとベスを諭す。
一方、メアリー女王がスペイン大使シモン・ルナール(吉野圭吾)を通じて、スペイン王子フェリペ(平方元基、 古川雄大・Wキャスト)との結婚を進めていることが広まると、英国民の反メアリーの気運は一層高まり、ベスを王位に就けるべく反乱を起こす者たちが現われる。すぐさま鎮圧されたこの反乱にベスは全く無関係だったが、ガーディナーはこの機を逃さず、ベスを反乱の首謀者として捕らえ、ロンドン塔に送る。
この門をくぐれば、生きて外に出ることはないと言われるロンドン塔で、ベスは悪夢にうなされながら、これまで自分を日陰者の境遇に落とした憎い母親と思い込んでいたアン・ブーリンも、自分と同じように無実の罪を着せられたのではないかと考えはじめ、そんなベスをアンの霊がただ静かに見守っていた。
ところが、絶対絶命と思われたベスに、思いがけない救いの手が伸びる。それはメアリー女王との婚礼の為にイギリスへとやってきたスペイン王子フェリペだった。政略結婚の為に英国入りしたフェリペ王子は、この婚礼に英国民がどの程度理解を示しているかを探ろうと、王子随行の貴族を名乗り市民に接触。情報を集めた相手が偶然にもロビンとその仲間たちだったのだ。ベスが国民に熱い支持を得ていることを知ったフェリペは、メアリー女王との婚姻の条件として、ベスをロンドン塔から出すことを要求。これによってロンドン郊外のウッドストックへ移されたベスを追ったロビンは、遂にベスと再会、二人だけの時間を持つ。だが、あと一歩で公にベスを処刑できる機会を失したガーディナーが、今度こそベスを抹殺せんともくろみウッドストックに現れて……

 平野・加藤b

すべてが星の定める運命のもとに動いていることを現す、回転する天文時計の上で繰り広げられる物語は、大筋では変わらないものの、初演の流れが細かく整理されている。最も大きな変化としては、語り部でもあるロジャー・アスカムが冒頭に歌うこの物語の人物関係を、子役が演じるリトル・ベスと、リトルメアリーを含めて視覚的に提示した点だった。特にカトリックとプロテスタントの根深い宗教対立は、もちろん詳しい方も多いだろうが、一般的には日本人にとって難しい部分が多く、これを「離婚が許されないカトリック」「離婚、再婚が許されるプロテスタント」という、非常に簡潔な一面のみをクローズアップして見せたのは、演出の小池修一郎の英断だったと思う。これによって、父王が自分の母親からベスの母親に心を移し、母と離婚する為にプロテスタントに改宗し母と自分を捨てた、というメアリー女王から見たことの成り行きが視覚的に示され、こんないきさつがあったのなら、確かにメアリーはプロテスタントも異母妹のベスも許しがたいだろう、とすんなり思えるのはやはり大きなことだった。細かく言えば、同じ年ごろの子役が演じる為に、リトル・メアリーとリトル・ベスの年齢差がわからない、などの意見もあるとは思うが、エリザベス1世が英国で最も偉大な女王と呼ばれる名君であることは周知のこととしても、異母姉メアリーとの確執には、どうしてもそこまで馴染みがない観客も一定数いるだろうから、ある意味の単純化はミュージカル作品にとって効果的だった。

更に、全体の主人公をタイトルロールの「レディ・ベス」に集約する脚本・演出・音楽の改変がなされていて、劇場が帝国劇場であるだけに、女優芝居華やかなりし頃を彷彿とさせるような流れになったことで、物語が格段に観易くなっている。やや過剰かな?と思えた初演のコメディタッチも品良く後退して、偉大な女王が生まれるまでの、若き日のレディ・ベスの人生にストーリーがスッキリとまとまっていて好感を持った。特に、終幕のベスとロビンのデュエット曲が改変されたことで、ロビンがベスの背負っている運命、ノブレス・オブリージュ(高貴な身は義務を伴う)を理解し、この恋は互いの胸の中に永遠に消えないと歌い上げながら、女王に敬意を払うに至る心情の変化がわかりやすくなり、ロビンからある種の駄々っ子めいた面が取り払われたことは大きかった。この再演でベスが揺るぎない主人公になって尚、ロビンがむしろ初演よりも良い男として作中に立って見えるのは、偉大なエリザベス女王の人生に「あったかも知れない秘めたる恋」の、美しさにつながっていた。

そうした、作品の細かい変化に、初演からの3年間で役者たちが経て来た蓄積が、濃い陰影と深みを与えている。

花總ソロb

タイトルロールのレディ・ベスは、花總まりが、宝塚時代から変わらない「当代の姫役者」としての力量を発揮している。本来の持ち味が気品高い人なだけでなく、一挙手一投足にまで徹底的に創り込まれたプリンセスとしての風格があり、『エリザベート』などの主演経験も大きく作用し、可憐で美しい生まれながらの王女を体現していた。

平野ソロb

一方の平野綾は、ある意味王位から遠ざけられていたが故に自由に生きいきと生きていた王女が、真のプリンセスとしての自覚に目覚め、遂にクイーンとなるまでの変化が巧み。この3年間で舞台女優としての蓄積と研鑽を重ねたことがよくわかる、初演時とは格段に進歩した舞台ぶりを披露していて目を瞠る。二人のアプローチが異なるだけに、これは実に見応えのあるWキャストとなった。

山崎ソロb

そんなベスと恋に落ちる吟遊詩人ロビン・ブレイクは、山崎育三郎が華やかなルックスと、甘い雰囲気を活かして実に軽やか。元々ミュージカル界のプリンスの1人だが、初演からの3年間で一般知名度が飛躍的に高まっただけに、多彩な魅せ方も会得していて、なんともチャーミング。「自由」を体現する役柄にますます相応しくなった。

加藤ソロ
 
もう1人のロビン、加藤和樹は、無頼の流れ者を気取っていても、根が真っ直ぐで誠実な人物であることがよく伝わる演じぶりで目を引く。この期間に彼も『1789〜バスティーユの恋人たち』での帝国劇場主演をはじめ、大きな作品を次々に経験してきた力が、ロビンを懐深い人物に見せる効果になった。この二人のWキャストも全く色合いが違い、ベス二人とのそれぞれの組み合わせでまた見え方が異なるので、ついつい様々な組み合わせで再見したくなる魅力を生んでいた。

花總・石川・涼風・山口

ベスの教育係のキャット・アシュリーの涼風真世は、ソロナンバーの「大人になるまでに」を実に巧みにたっぷりと歌っていて、曲の難度があたかも高くないかのように聞かせる力量が相変わらず素晴らしい。温かな雰囲気もよく出ている。また、ストーリーテラーも担う家庭教師ロジャー・アスカムの山口祐一郎は、もうその存在だけで作品が豊かになるほどの、何か「山口祐一郎」というひとつのキャラクターであり、ジャンルとなっている存在感を放っていて、いてくれるだけで安心な気持ちになる。作品の中で虐げられているはずのベスの方が、メアリーより環境が豊かに見えるのは、この二人の存在故だろう。

未来・平方
平野・吉沢

その対比として、孤独を抱えていることが感じられるメアリー女王は、未来優希が迫力の歌唱と貫禄で、吉沢梨絵が美しさの中にある憎しみの表出で、やはりそれぞれのメアリーを活写。「悪魔と踊らないで」の歌い方もそれぞれ個性的で、こちらのWキャストも実に面白い。

古川・吉野

もう一組のWキャストフェリペ王子は、平方元基の押し出しが格段に良くなり、初演から変わらぬ古川雄大の圧倒的な美しさと、全く甲乙つけ難い王子像で、やはり是非双方を観て欲しいWキャスト。再演の改変で持ちナンバーが一部カットになったが、二人共に出番の多寡に左右されない本人たちのスター性で役を膨らませているのが頼もしい。フェリペの衣装は相当に難易度が高いものだが、二人共に見事に着こなしているのもあっぱれだ。

花總・和音

他にアン・ブーリンの和音美桜の歌唱力はやはり絶大だし、シモン・ルナールの吉野圭吾の良い意味のアクとワイルドさ、ガーディナー大司教の石川禅の食わせ者感が、いずれもベスに立ちはだかる敵として効果的で、再演版の改変で骨太な雰囲気が増したのによく合っている。さらに、ロビンの仲間たち加藤潤一、寺元健一郎、石川新太をはじめ、大谷美智浩、中山昇、秋園美緒、真記子等々、日本のミュージカル界を支える面々がコーラスに厚みを与え、「秘めた想い」「神よ祝福を与えん」「晴れやかな日」など、作品を盛り立てる大ナンバーを聞かせ、世界初演から3年、格段に進歩した2017年版の『レディ・ベス』に寄与していた。 

山崎・アンサンブル

〈公演情報〉
L109641-0001-001-0621
ミュージカル『レディ・ベス』
劇作・脚本・作詞◇ミヒャエル・クンツェ
音楽◇シルヴェスター・リーヴァイ
演出・翻訳・修辞◇小池修一郎
出演◇花總まり、平野綾(Wキャスト) / 山崎育三郎、加藤和樹(Wキャスト) / 未来優希、吉沢梨絵(Wキャスト) /平方元基、 古川雄大(Wキャスト) / 和音美桜 / 吉野圭吾 / 石川禅 / 涼風真世 / 山口祐一郎 / 他 
●10/8〜11/18◎帝国劇場 
〈料金〉S席 13500円 A席 9000円 B席 4000円 
〈お問い合わせ〉帝国劇場:03-3213-7221 
●11/28〜12/10◎梅田芸術劇場メインホール
〈料金〉S席 13500円 A席 9000円 B席 5000円 
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 06-6377-3800 
http://www.tohostage.com/ladybess/
 


【取材・文/橘涼香】



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