えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

『HEADS UP!』

元宝塚雪組トップスター早霧せいな、退団後初ステージ『SECRET SPLENDOUR』開幕!

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宝塚雪組のトップスターとして活躍し、7月23日惜しまれつつ退団した早霧せいなの、宝塚退団後の初ステージ、〜Super StarsによるSpecial な Showtime〜『SECRET SPLENDOUR』が、東京・赤坂のTBS赤坂ACTシアターで開幕した(14日まで。のち、大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで17日〜19日まで上演)。

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『SECRET SPLENDOUR』は、その名の通り、絶大な人気を誇った男役早霧せいなが、宝塚卒業後、1人の表現者として見せる新たな顔、秘密の輝きをキーワードに繰り広げられるショーステージ。『SECRET SPLENDOUR』の頭文字「SS」と早霧せいなの頭文字「SS」とがかけられているタイトルでもあって、更に、早霧退団公演のショー『Dramatic“S”』で連呼された「SS」からもイメージが引き継がれた、退団から3ヶ月という今だからこその、粋なネーミングが心憎い。

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そのタイトルに込められたオシャレな感覚が、ステージにもそのまま表れている。こちらもやはり元宝塚の演出家であり、ミュージカルやストレートプレイだけでなく、こうしたショーの、特に様々な魅力をコラボレーションする力に、他の追随を許さないものがある作・演出の荻田浩一ならではの、ユニークな場面構成が際立つ。何よりも面白いのは、男役時代の早霧の代表作。ちょっとマニッシュな女性=「今」現在の早霧せいなの、等身大の魅力を表現したシーン。更にはゴージャスなドレス姿で、ミュージカルナンバーを歌い上げる早霧という、未来への期待が膨らむシーンが、くるくると回転しながら現れることだった。

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こうしたショー作品の場合、多くは回顧のコーナー、未来への夢のコーナーといった形で、それらは流れの中で固められて登場することが多いが、1つ1つがショー全体の中に散りばめられることによって、びっくり箱を開けていくような意外性が続く妙味がある。「あ、回顧にはこの有名シーンを使ったのか…」と、思う間もなく、艶やかな早霧が登場したかと思うと、また別の懐かしいシーンがはじまる、という形で、どこまでいっても驚きの連続なのが、客席にいてなんとも楽しい。

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中でも、同じ長崎県出身の、早霧にとって同郷の先輩トップスターである、安寿ミラが特別出演したことによって「今どう?どんな感じ?あぁ、そうね、わかるわ」と言った、シャンソンそのままのやりとりがあれば「そうか!二人共この作品で主演していた!」という共通点に改めて膝を打った、宝塚作品『哀しみのコルドバ』の闘牛士エリオ・サルバドールを、共に演じるというゴージャスなプレゼントもあって心躍る。安寿の自然体のしなやかな舞台姿は、早霧の今後にとっても何よりの指針ともなることだろう。

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また、早霧ならではの和物のシーンでは、寸劇的な要素もあり、鮮やかに殺陣を決めて魅せるのは現役時代そのままだ。一方、美しいドレス姿で、意外なミュージカルナンバーを歌い上げるシーンでは、むしろ現役時代よりも高めの音域の方が早霧の声質が活きることがわかり、来年主演することが発表されたミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』への期待も大いに高まった。

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だからと言って、決して早霧ワンマンショーではないのが、実力派が大挙して出演したこの作品の見どころの1つ。大野幸人、小野妃香里、海宝直人、JKim、丹澤誠二、原田薫等、ダンス界・ミュージカル界の代表的な顔が揃い、その豊かな実力を如何なく発揮してくれる。大野の舞台狭しと踊りまくるダンスの伸びやかさ、小野、JKimのオールマイティー何でもござれの振り幅の広さ、丹澤のサックス、原田の力強いダンスと歌などが随所で楽しめる。更に、ミュージカル界の若手筆頭として躍進している海宝が、端正な若き二枚目の現在では役柄として演じることはまだ先かも知れないが、楽曲として取り組むことで格段の新鮮味と魅力が迸ったミュージカルナンバーを披露。これは実に貴重な必聴ものとなっていて、早霧以外のメンバーを目当てに客席に座った観客も、等しく満足できるだろう構成が美しい。

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何より、宝塚の男役を卒業して3ヶ月余り、早霧せいなの「今」が詰まったショー作品となっているのが嬉しく、日替わりゲストの平澤智と桜木涼介と早霧の掛け合いシーンも含め、今この時にしか味わえないスペシャルなショーとなっている。

【囲みインタビュー】 

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初日を控えた11月4日、マスコミ向けの公開ゲネプロを前に、早霧せいなが囲み取材に応えて公演への抱負を語った。

──『SECRET SPLENDOUR』がどのような作品になっているのか教えてください。
宝塚歌劇団を退団しまして、初めてのショー、外の舞台に立つ作品ということで、内容としては男役的な部分もありながら、1人の女性として、表現者としての変換期と言いますか、ちょうど今を切り取ったショーになっているんじゃないかな?と思います。でも私だけが出てくると言うよりも、他の出演者の皆さんとのコラボレーションや、歌ありダンスあり寸劇あり、その中でも和物もあったり、ボリューミーで盛りだくさんなショーになっています。
──『SECRET SPLENDOUR』という公演名の意味は?
「SECRET」は「秘密」で「SPLENDOUR」は「輝き」ということで、その名の通りです(笑)。特にそこまで深い意味はないんですけれども、自分の名前もSAGIRI SEINA でSSが入っていますし、『SECRET SPLENDOUR』もSSですので、そこにかけたというこもあり、観に来てくださる皆様に、観てのお楽しみ、観て頂ければその秘密がわかるよ!というような内容になっていると思います。
──宝塚歌劇団の公演と大きく違うところはどこでしょうか?
やはり宝塚の場合は「組」の中に存在していますので、組子の仲間たちとその作品が終わっても、また次の作品も共にあるという形なのですが、卒業しまして、今回は『SECRET SPLENDOUR』の為に集まった出演者、スタッフの方々と共に創り上げるということで、そこは大きな違いなのではないかと思います。一期一会ではないですが。
──男性が一緒の現場という点ではいかがてすか?
稽古当初は男性がいるということも含めて、知らない皆さんと振付を受けたり、お稽古をするということが、どの瞬間もそうですが、とても新鮮でした。
──苦戦したことなどは?
苦戦ですか?そうですね、リフトをする側からされる側になって、どうしていいか戸惑いました(笑)。今でも戸惑っております(笑)。

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──衣装も新しい挑戦が?
宝塚の時も女役をやったことがあったので、ドレスも着たことがあったのですが、その時は「男役だもん!」という気持ちが入っていて(笑)、ちょっと強すぎたり、違和感があったりしても「男役だから仕方がないよね」というところで許してもらっていたのですが、今はそういう訳にもいかないんじゃないかな…と、思っていたりもしているのですが、やっぱり「元男役だもん!」というのを(笑)、自分の中での言い訳にしながら、慣れないヒールと慣れないドレスシーンもやっています。でもそこで早霧せいなとしては、新しい挑戦をするんだという心意気でやっています。
──ドレスアップした衣装に抵抗があったりもしましたか?
抵抗と言うよりも、恥ずかしさの方がありました、慣れなくて。当初よりはだいぶ慣れましたが、やはり仕草ですとかドレスの裾裁きなどは、まだまだ自然には身についていなくて、1回1回考えながらやっているという感じです。
──楽曲にも早霧さんの代表曲と言うべきものが多く入っていますね。
やはり、今早霧せいなのショーを観に来てくださるお客様というのは、私の宝塚現役時代をたくさんご覧になった方々が多いのではないかなと思いましたので、その方々が入って来やすいように、(宝塚時代を)思い出して頂きながら、でも新しい部分も見せながら、というバランスを取りながらですね。でも、曲ってとても大切で、知っている曲が流れてくると人ってテンションが上がったり、聞きたくなったりするので、その辺の意味もあると思っています。
──公演以外のお話になりますが、退団されて3ヶ月、新しい生活で変わったことはありますか?
以前は本当に稽古場か劇場かと、自宅との往復だけで、どうしてもそこに集中するしかなかったのですが、退団して(この公演の稽古に入るまでの)2ヶ月間自由な時間が与えられて、視野が広がった気がしています。
──何か新たに始めたことなどは?
臆病者なので(笑)。特に何かを始めたということはありませんでした(笑)。その自由な時間そのものを楽しむと言いますか、味わう感じでしたね。まだまだ2ヶ月なので、何を始めるというところまでは行かず、この公演に臨むまでの覚悟の2ヶ月だったような気もします。
──来年、初ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で主演されることも発表されましたが、そちらへの抱負なども。
まだこのショーが始まっていないので、宝塚を卒業しての外の舞台というものをこれから感じていくと思うのですが、このショーとは別で、やっぱりお芝居、ミュージカルとなりますと、今までやってきたことプラス違うものが要求されるのではないかな?と思いますので、ますます早霧せいなという自分自身を磨いていかなければと思います。でもちょっと違和感が残るくらいが、男役から女役への変換期にはちょうど良いんじゃないかな?と思いますし、そこを作品に取り込んでお客様に楽しんで頂くのが1番ではないかと思っているので、ちょっと無理をしつつ、でも無理をし過ぎずに、自分らしさをちゃんと残しつつ作品の中で生きられたらと思っています。

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──今回のショーは元宝塚の荻田浩一先生の作品ですが、ご一緒されていかがでしたか?
宝塚のことはもちろん、宝塚以外の舞台のこともよくご存じですし、男役さんから1人の女性として演技者になられた方とお仕事をなさった経験もすごく豊富でいらしたので、私よりも先に今の私の気持ちをわかってくださって。相談してもすぐ答えが返って来ますし、この時期をすごく大切にしてくださっているので、決して押し付けではなく、基本的には1番私の気持ちを優先してくださるのが、とてもありがたかったです。
──ショーの中で早霧さんが発信されたアイディアや要望はあったのでしょうか?
特にはないですが、早霧せいなのショーとはなっていますが、決して私だけのものではなくて、お客様に楽しんで頂ける作品にすることが1番大切だと常に思っているので、その辺りはお願いしました。だからと言って具体的にこれがやりたい、というものは特になく、演出の荻田先生や制作の皆さんにお任せしました。
──では、改めて『SECRET SPLENDOUR』に向かう意気込みと、ファンの皆様にメッセージを。
自分でも初日が開けてお客様がどう楽しんでくださり、どう反応してくださるのかがとても楽しみになっております。宝塚の公演ももちろん緊張したり、ワクワクしたり、また不安だったりと色々な思いの中で歩んできたのですが、今回はそれとはまた違う、言葉にできない不思議な気持ち、未知の世界が待っているという感覚が大きくあるので、1回1回の公演を大切にしながら、出演者の皆さんとお客様とその瞬間を感じとって、自分の中でも吸収して楽しんでいきたいと思いますので、千秋楽までどうぞ応援よろしくお願い致します。

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〈公演情報〉
『SECRET SPLENDOUR(シークレット スプレンダー)』
〜Super StarsによるSpecial な Showtime〜
構成・演出◇荻田浩一
CAST◇早霧せいな
大野幸人 小野妃香里 海宝直人 JKim 丹澤誠二 原田薫/安寿ミラ(特別出演)
Dancer◇笹岡征矢 鮫島拓馬 花岡麻里名 吉田繭
Guest◇平澤智 桜木涼介(日替わり)
●11/5〜14◎東京・TBS赤坂ACTシアター
●11/17〜19◎大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
〈料金〉東京・S席10,800円/A席8,800円
    大阪・10,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 (10:00-18:00) 東京・0570-077-039/大阪・06-6377-3888?



【取材・文・撮影/橘涼香】



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ブラッシュアップされた作品と深みを増した役者陣の好演で輝くミュージカル『レディ・ベス』上演中!

一幕ラスト

約半世紀に渡り、英国に繁栄をもたらした女王エリザベス1世。彼女が女王になるまでの苦難の道程と、あったかも知れない恋を描き出した、ミュージカル『レディ・ベス』が有楽町の帝国劇場で上演中だ(18日まで。のち、大阪梅田芸術劇場メインホールにて11月28日〜12月10日まで上演)。

ミュージカル『レディ・ベス』は、『エリザベート』『モーツァルト!』で日本にウィーンミュージカルブームを巻き起こした、ミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイと、いずれの作品でも日本版潤色・演出を務めた日本ミュージカル界のヒットメーカー小池修一郎がタッグを組み、2014年に世界初演の幕を開けた作品。
ヘンリー8世の娘として生まれながら、母アン・ブーリンは処刑され、異母姉メアリー・チューダーとの相克の中、女王として即位するまでに、波乱の日々を過ごした若き日のエリザベス女王“レディ・ベス”を主人公に、彼女の人生を取り巻いた人々を個性豊かなミュージカルナンバーで描き出した一編として、高い関心を集めた。
今回はそんな作品の3年ぶりとなる再演で、メインキャストは初演オリジナルキャストが続投。ブラッシュアップされた演出とストーリー展開に新曲も加えた、より完成度の高い作品となっている。

花總・山崎

【STORY】
16世紀イギリス。
ヘンリー8世の王女として生まれたレディ・ベス(花總まり、平野綾・Wキャスト) は、母親のアン・ブーリン(和音美桜)が反逆罪で処刑された為、家庭教師ロジャー・アスカム(山口祐一郎)、養育係キャット・アシュリー(涼風真世)ら、数少ない味方となる人々と共に、ハートフォードシャーで暮らしていた。
ある日、時の英国女王であり、ベスの異母姉であるメアリー・チューダー(未来優希、吉沢梨絵・Wキャスト)の側近、大司教スティーブン・ガーディナー(石川禅)が、家宅捜索と称して押し入ってくる。熱心なカトリック信者であるメアリーの即位を快く思わない人々は、プロテスタントを信仰しているベスこそ真の女王に相応しいと考えていて、ガーディナーはカトリックにとって脅威となる可能性のあるベスを排除する機会を狙っていたのだ。
ガーディナーはベスが父王ヘンリーから受け継いだ、今は禁書となっているプロテスタントの聖書を所持しているのを発見。女王への反逆の明確な証拠品として押収して去っていく。王女を王女とも思わない振る舞いに憤慨したベスは、ガーディナーから父の形見を取り戻そうと、森の近道に馬車を走らせて後を追う。
だが、難路に馬車が脱輪。立ち往生したベスは、若き吟遊詩人ロビン・ブレイク(山崎育三郎、加藤和樹・Wキャスト)と出会う。自分とは全く異なる世界に住んでいるロビンの自由闊達さに、ベスは反発しながらも惹かれていき、ロビンも身分の違う王女という垣根を越えて、ベスを思うようになる。

平野・加藤

だが、星の動きを読むロジャー・アスカムは「貴女はこの国を統べる運命の元に生まれている」と預言し、1人の女性として生きることを考えてはいけないとベスを諭す。
一方、メアリー女王がスペイン大使シモン・ルナール(吉野圭吾)を通じて、スペイン王子フェリペ(平方元基、 古川雄大・Wキャスト)との結婚を進めていることが広まると、英国民の反メアリーの気運は一層高まり、ベスを王位に就けるべく反乱を起こす者たちが現われる。すぐさま鎮圧されたこの反乱にベスは全く無関係だったが、ガーディナーはこの機を逃さず、ベスを反乱の首謀者として捕らえ、ロンドン塔に送る。
この門をくぐれば、生きて外に出ることはないと言われるロンドン塔で、ベスは悪夢にうなされながら、これまで自分を日陰者の境遇に落とした憎い母親と思い込んでいたアン・ブーリンも、自分と同じように無実の罪を着せられたのではないかと考えはじめ、そんなベスをアンの霊がただ静かに見守っていた。
ところが、絶対絶命と思われたベスに、思いがけない救いの手が伸びる。それはメアリー女王との婚礼の為にイギリスへとやってきたスペイン王子フェリペだった。政略結婚の為に英国入りしたフェリペ王子は、この婚礼に英国民がどの程度理解を示しているかを探ろうと、王子随行の貴族を名乗り市民に接触。情報を集めた相手が偶然にもロビンとその仲間たちだったのだ。ベスが国民に熱い支持を得ていることを知ったフェリペは、メアリー女王との婚姻の条件として、ベスをロンドン塔から出すことを要求。これによってロンドン郊外のウッドストックへ移されたベスを追ったロビンは、遂にベスと再会、二人だけの時間を持つ。だが、あと一歩で公にベスを処刑できる機会を失したガーディナーが、今度こそベスを抹殺せんともくろみウッドストックに現れて……

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すべてが星の定める運命のもとに動いていることを現す、回転する天文時計の上で繰り広げられる物語は、大筋では変わらないものの、初演の流れが細かく整理されている。最も大きな変化としては、語り部でもあるロジャー・アスカムが冒頭に歌うこの物語の人物関係を、子役が演じるリトル・ベスと、リトルメアリーを含めて視覚的に提示した点だった。特にカトリックとプロテスタントの根深い宗教対立は、もちろん詳しい方も多いだろうが、一般的には日本人にとって難しい部分が多く、これを「離婚が許されないカトリック」「離婚、再婚が許されるプロテスタント」という、非常に簡潔な一面のみをクローズアップして見せたのは、演出の小池修一郎の英断だったと思う。これによって、父王が自分の母親からベスの母親に心を移し、母と離婚する為にプロテスタントに改宗し母と自分を捨てた、というメアリー女王から見たことの成り行きが視覚的に示され、こんないきさつがあったのなら、確かにメアリーはプロテスタントも異母妹のベスも許しがたいだろう、とすんなり思えるのはやはり大きなことだった。細かく言えば、同じ年ごろの子役が演じる為に、リトル・メアリーとリトル・ベスの年齢差がわからない、などの意見もあるとは思うが、エリザベス1世が英国で最も偉大な女王と呼ばれる名君であることは周知のこととしても、異母姉メアリーとの確執には、どうしてもそこまで馴染みがない観客も一定数いるだろうから、ある意味の単純化はミュージカル作品にとって効果的だった。

更に、全体の主人公をタイトルロールの「レディ・ベス」に集約する脚本・演出・音楽の改変がなされていて、劇場が帝国劇場であるだけに、女優芝居華やかなりし頃を彷彿とさせるような流れになったことで、物語が格段に観易くなっている。やや過剰かな?と思えた初演のコメディタッチも品良く後退して、偉大な女王が生まれるまでの、若き日のレディ・ベスの人生にストーリーがスッキリとまとまっていて好感を持った。特に、終幕のベスとロビンのデュエット曲が改変されたことで、ロビンがベスの背負っている運命、ノブレス・オブリージュ(高貴な身は義務を伴う)を理解し、この恋は互いの胸の中に永遠に消えないと歌い上げながら、女王に敬意を払うに至る心情の変化がわかりやすくなり、ロビンからある種の駄々っ子めいた面が取り払われたことは大きかった。この再演でベスが揺るぎない主人公になって尚、ロビンがむしろ初演よりも良い男として作中に立って見えるのは、偉大なエリザベス女王の人生に「あったかも知れない秘めたる恋」の、美しさにつながっていた。

そうした、作品の細かい変化に、初演からの3年間で役者たちが経て来た蓄積が、濃い陰影と深みを与えている。

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タイトルロールのレディ・ベスは、花總まりが、宝塚時代から変わらない「当代の姫役者」としての力量を発揮している。本来の持ち味が気品高い人なだけでなく、一挙手一投足にまで徹底的に創り込まれたプリンセスとしての風格があり、『エリザベート』などの主演経験も大きく作用し、可憐で美しい生まれながらの王女を体現していた。

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一方の平野綾は、ある意味王位から遠ざけられていたが故に自由に生きいきと生きていた王女が、真のプリンセスとしての自覚に目覚め、遂にクイーンとなるまでの変化が巧み。この3年間で舞台女優としての蓄積と研鑽を重ねたことがよくわかる、初演時とは格段に進歩した舞台ぶりを披露していて目を瞠る。二人のアプローチが異なるだけに、これは実に見応えのあるWキャストとなった。

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そんなベスと恋に落ちる吟遊詩人ロビン・ブレイクは、山崎育三郎が華やかなルックスと、甘い雰囲気を活かして実に軽やか。元々ミュージカル界のプリンスの1人だが、初演からの3年間で一般知名度が飛躍的に高まっただけに、多彩な魅せ方も会得していて、なんともチャーミング。「自由」を体現する役柄にますます相応しくなった。

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もう1人のロビン、加藤和樹は、無頼の流れ者を気取っていても、根が真っ直ぐで誠実な人物であることがよく伝わる演じぶりで目を引く。この期間に彼も『1789〜バスティーユの恋人たち』での帝国劇場主演をはじめ、大きな作品を次々に経験してきた力が、ロビンを懐深い人物に見せる効果になった。この二人のWキャストも全く色合いが違い、ベス二人とのそれぞれの組み合わせでまた見え方が異なるので、ついつい様々な組み合わせで再見したくなる魅力を生んでいた。

花總・石川・涼風・山口

ベスの教育係のキャット・アシュリーの涼風真世は、ソロナンバーの「大人になるまでに」を実に巧みにたっぷりと歌っていて、曲の難度があたかも高くないかのように聞かせる力量が相変わらず素晴らしい。温かな雰囲気もよく出ている。また、ストーリーテラーも担う家庭教師ロジャー・アスカムの山口祐一郎は、もうその存在だけで作品が豊かになるほどの、何か「山口祐一郎」というひとつのキャラクターであり、ジャンルとなっている存在感を放っていて、いてくれるだけで安心な気持ちになる。作品の中で虐げられているはずのベスの方が、メアリーより環境が豊かに見えるのは、この二人の存在故だろう。

未来・平方
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その対比として、孤独を抱えていることが感じられるメアリー女王は、未来優希が迫力の歌唱と貫禄で、吉沢梨絵が美しさの中にある憎しみの表出で、やはりそれぞれのメアリーを活写。「悪魔と踊らないで」の歌い方もそれぞれ個性的で、こちらのWキャストも実に面白い。

古川・吉野

もう一組のWキャストフェリペ王子は、平方元基の押し出しが格段に良くなり、初演から変わらぬ古川雄大の圧倒的な美しさと、全く甲乙つけ難い王子像で、やはり是非双方を観て欲しいWキャスト。再演の改変で持ちナンバーが一部カットになったが、二人共に出番の多寡に左右されない本人たちのスター性で役を膨らませているのが頼もしい。フェリペの衣装は相当に難易度が高いものだが、二人共に見事に着こなしているのもあっぱれだ。

花總・和音

他にアン・ブーリンの和音美桜の歌唱力はやはり絶大だし、シモン・ルナールの吉野圭吾の良い意味のアクとワイルドさ、ガーディナー大司教の石川禅の食わせ者感が、いずれもベスに立ちはだかる敵として効果的で、再演版の改変で骨太な雰囲気が増したのによく合っている。さらに、ロビンの仲間たち加藤潤一、寺元健一郎、石川新太をはじめ、大谷美智浩、中山昇、秋園美緒、真記子等々、日本のミュージカル界を支える面々がコーラスに厚みを与え、「秘めた想い」「神よ祝福を与えん」「晴れやかな日」など、作品を盛り立てる大ナンバーを聞かせ、世界初演から3年、格段に進歩した2017年版の『レディ・ベス』に寄与していた。 

山崎・アンサンブル

〈公演情報〉
L109641-0001-001-0621
ミュージカル『レディ・ベス』
劇作・脚本・作詞◇ミヒャエル・クンツェ
音楽◇シルヴェスター・リーヴァイ
演出・翻訳・修辞◇小池修一郎
出演◇花總まり、平野綾(Wキャスト) / 山崎育三郎、加藤和樹(Wキャスト) / 未来優希、吉沢梨絵(Wキャスト) /平方元基、 古川雄大(Wキャスト) / 和音美桜 / 吉野圭吾 / 石川禅 / 涼風真世 / 山口祐一郎 / 他 
●10/8〜11/18◎帝国劇場 
〈料金〉S席 13500円 A席 9000円 B席 4000円 
〈お問い合わせ〉帝国劇場:03-3213-7221 
●11/28〜12/10◎梅田芸術劇場メインホール
〈料金〉S席 13500円 A席 9000円 B席 5000円 
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 06-6377-3800 
http://www.tohostage.com/ladybess/
 


【取材・文/橘涼香】



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凰稀かなめ 主演×ラサール石井 演出・出演! リーディングアクト『愛にまつわる、いくつかの…』来年2月に開催!

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元宙組トップスターで女優として活躍中の凰稀かなめが、2018年2月、初めて朗読劇に出演する。また、これまで数多くのミュージカルの主演を経験して来た凰稀かなめだが、ストレートプレイとしてはこれが初の挑戦となる!

演出を担当するのは、昨年『第23回読売演劇大賞』の優秀演出家賞を受賞、演出家としてもノリに乗っているラサール石井。今回は役者として舞台にも立つ。宝塚歌劇団にも造詣が深いラサール石井と、どんな舞台にも人一倍こだわりのある凰稀かなめが、愛にまつわる「いくつかの」作品をもとに、どの様な化学反応を起こすのか期待が広がる。

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【凰稀かなめコメント】
豪華なセットや歌の無い額の中を限られた役者のセリフや動きだけで作り上げる舞台・・・
そんなストレートプレイにいつか挑戦してみたい…その思いが叶い、この度ラサール石井さんと共に舞台に立たせて頂くこととなりました。
ラサール石井さんの作り上げる世界に飛び込み、ただ本を読む朗読ではなく役者ならではのお芝居で皆様にすてきな舞台をお送りできればと今からワクワクしております!!
今回、初めてご一緒させて頂く役者の先輩方が沢山いらっしゃるので新しい物を学び新しい私を沢山の方にみて頂けたら幸せです。
 

〈公演情報〉
リーディングアクト『愛にまつわる、いくつかの…』
演出◇ラサール石井
出演◇凰稀かなめ、ラサール石井、他 
●2018/2/9〜18◎紀尾井小ホール  
〈チケット一般発売〉12月16日(土)





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早霧せいな、退団後初となる主演ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』上演決定!


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今年7月に宝塚を惜しまれて退団した元雪組トップスターの早霧せいな。その退団後初となる舞台、ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』の上演が決定した。

この作品は、『シカゴ』『キャバレー』『蜘蛛女のキス』など数多くのミュージカルを手掛けたジョン・カンダー&フレッド・エッブの華やかな楽曲と、笑いにあふれるラブロマンスで、トニー賞最優秀スコア賞、脚本賞、主演女優賞、助演女優賞の4冠に輝いたコメディミュージカル。
2018年5〜6月に大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティと、東京・TBS赤坂ACTシアターにて上演され、早霧せいなは、バリバリのキャリアウーマンを演じる。

【STORY】
その年の最も輝いた女性に贈られる賞“ウーマン・オブ・ザ・イヤー”の授賞式を控えた人気ニュースキャスターのテス・ハーディング(早霧せいな)。お互い一目惚れでスピード結婚した風刺漫画作家サム・クレイブ(相葉裕樹)との新婚生活をスタートさせ、公私共に順風満帆の筈だったが・・・!?
バリバリのキャリアウーマン<バリキャリ>道まっしぐらのテスは、何よりも仕事が最優先。気付けばサムとの関係には亀裂が生じ、早くも離婚危機に陥ってしまう。愛するサムの事は大切にしたい、でも今まで築き上げてきたキャリアは絶対的なもの。そんな時、テスが取材をした亡命中の有名バレエダンサーの思いがけない決断が、彼女の心を大きく突き動かす。家庭と仕事、女性の本当の幸せは、果たしてどちらにあるのか?
キレっ切れのテス・ハーディングが目指すパーフェクトな人生とは・・・

【早霧せいなコメント】
宝塚歌劇退団後、一人の役として舞台に立つ事はこれが初めての挑戦になります。今まで男性のキャラクターを演じてきた経験の方が圧倒的に多いので、これから乗り越えなくてはならない色々な苦労が待っていますが、演じる性別が違っても、作品の中で役を生きる過程は、宝塚歌劇の現役時代と変わらず今まで通りやっていきたいと思います。いち演技者として、この作品の中で自分が何を感じ取っていくのかを楽しみにしています。まだまだ未知の世界ですが、今しか出せないぎこちなさも良い形となって、お客様に楽しんで頂ければと思います。

〈公演情報〉
ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』 
作詞◇ジョン・カンダ―
作曲◇フレッド・エッブ
上演台本・演出・訳詞◇板垣恭一
出演◇早霧せいな/相葉裕樹  今井朋彦 春風ひとみ  原田優一  樹里咲穂/宮尾俊太郎(Kバレエ   カンパニー)  他
●〔大阪〕2018/5/19〜27◎梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
●〔東京〕2018/6/1〜10◎TBS赤坂ACTシアター
〈チケット発売開始〉2018年2月17日(土)
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場(10:00〜18:00)〔大阪〕06-6377-3888  〔東京〕0570-077-039




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