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華やかに幕を開けた花組『虞美人』(舞台稽古&真飛・桜乃インタビュー)

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4月30日、東京宝塚劇場で花組公演、『虞美人ー新たなる伝説ー』の初日が開いた。

1951年に白井鐵造の作・演出で大ヒット、今もなお語り継がれる名作を、今回は木村信司が担当、脚本・演出・音楽・装置・衣装とすべて刷新し、ミュージカル宝塚ならでは大きな舞台の機構を生かした、ダイナミックなミュージカル『虞美人』として作り直した。

背景となるのは紀元前3世紀、絶大な力を誇った秦の始皇帝が亡くなり、再び戦乱の世となった時代。皇帝の座を争う武将たちの1人、楚の武将・項羽とその妻である美しい虞妃がたどった悲しい運命を、宿敵である漢の劉邦との覇権争いなどを絡めながら描き出している。

この日、朝早くからの舞台稽古では、中国の華麗な衣装をまとった花組生たちによって、熱の入った稽古が繰り広げられた。

真飛聖の項羽は、桜乃扮する虞妃をひたすら愛し抜く男性として愛の世界を築き上げつつ、覇王として天下をとるための戦いを激しさ見せながら演じる。彼と義兄弟の契りを交わしながら、のちにライバルとなる劉邦に扮するのは二番手男役スターの壮一帆。劉邦のしたたかな生き様を、時折り笑いを誘う演技を交えながら描き出す。
彼らを取り巻く武将の韓信・愛音羽麗や軍師の張良・未涼亜希といった男役スターたちの活躍も見どころの1つだし、若手たちにも数多く役が与えられていて、戦いと政略のドラマのなかで、それぞれ盛り上げる役割りを担っている。1本立てでショーがないかわりに、フィナーレは洋風に仕上げてあって、宝塚らしい華やかなダンスシーンも楽しめるという中身豊富な公演になっている。

また、この公演は花組トップ娘役として、さまざまな役柄で活躍してきた桜乃彩音の退団公演で、千秋楽には本公演に加えて「桜乃彩音サヨナラシヨー」が上演される。

その大作の舞台稽古を終えて、真飛聖と桜乃彩音が晴れやかな表情で記者団の前に登場した。

 

【真飛聖・桜乃彩音 挨拶と一問一答】

_MG_6960真飛「本日は朝早くからありがとうございます。千秋楽まで項羽と虞美人コンビで精一杯つとめて参りますので、よろしくお願いいたします」

桜乃「本日は本当にありがとうございます。この公演で宝塚を卒業させていただきます。長い間本当にお世話になりありがとうございました。最後まで精一杯頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします」

ーー桜乃さんが卒業されるというのでたいへん残念なのですが、今回とくに、お互いにこういうところが素敵だなと思うところがあれば。

真飛「すべて可愛いです。どれというのではなくて、もう集大成ということが彼女の中ではあるからかもしれないんですけど。今回は、初めて最初から夫婦という役で、今までは兄妹とかが多く、恋愛は少なかったので、久しぶりの2人の恋愛物というのでとても嬉しいんですけど。彼女の幸せオーラというのが、見ていてこちらに伝わってくるので、すべて愛しいと思いますし。でも、やはり最後に自害する前の剣舞の踊りなど、なんとも言えない彼女の表情とかに、あれはもうたまらない愛おしさを感じてます」_MG_6958

桜乃「ありがとうございます」

真飛「はは、のろけ対談みたいだね(笑)」

桜乃「本当に今まで強く私のことを引っ張ってきてくださって。芝居の中でも、ゆうさん(真飛)とご一緒してると安心感があって、すべてを預けていられます」

真飛「真似しないでよ(笑)」

桜乃「本当に最後の公演で、こうやって夫婦の役をさせていただけることが本当に幸せですので、最後までゆうさんのおそばでついていって、幸せでいられるように、心を込めて役を作っていけたらと思っております」

ーー今回は名作のタイトルを背負ってるわけですが、そのうえで役に取り組んだ工夫があれば。

真飛「そうですね、以前上演された作品とはいっても、曲も「赤いけしの花」とあと1曲以外は全部新曲ですので。昔ご覧になっていたかたも「赤いけしの花」は懐かしいと思われても、ほかはリメイクされているので、新作という思いで観てくださっていると思うんですが。でもやはり以前されていた方々が魂を込めて演じられていた、そして「あれは名作だったよね」と語り継がれている『虞美人』というものを、今回観ていただき、「こんなお話だったんだ」とか、新たなる伝説と今回は付いているんですけど、「こういう形で再演してるんだね」というふうに観ていただけたら嬉しいです。項羽に関しては本当に真っ直ぐでウソが無い人物ですので、やっていて心が洗われるほど真っ直すぎるので、(桜乃に)ごめんね、心配になっちゃうよね(笑)。誤解を招きかねないくらい真っ直ぐに生きてる人物なので、やっていて気持ちがいいです」

桜乃「私も、初演をご覧になっていたお客様もいらっしゃって、「観たんですよ」とかお話をうかがって、そういう方たちのためにも、美しい思い出を壊さないように演じたいと思っておりますので。あと虞妃に関しては、真っ直ぐすぎる項羽様を愛する虞妃も、清らかで、実在していた人物ですので、誠意を込めて心を込めて、素直な気持ちのまま、この役を演じることができたらと思っております」

_MG_6946時々顔を見合わせて、項羽と虞妃そのままに微笑み合いながら、記者たちの質問に答える真飛聖と桜乃彩音。最後に「皆様、どうぞよろしくお願いいたします」と真飛が挨拶、会見を終えて、大きな拍手に送られ楽屋に戻って行った。

 




花組東京宝塚劇場公演『虞美人ー新たなる伝説ー』

4/30〜5/30

当日券等の問い合わせ/東京宝塚劇場 03-5251-2001

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 【取材・文/榊原和子】

 

訃報「小林公平氏逝去」

阪急電鉄の社長、会長を歴任した元宝塚歌劇団理事長の小林公平(こばやし・こうへい)氏が、5月1日午前6時20分、肺炎のため池田市内の病院で死去した。82歳。東京都出身。

通夜は2日午後7時〜、葬儀は3日午前11時〜、エテルノ西宮(兵庫県西宮市高畑町2の25)にて、いずれも密葬で行ない、後日あらためて「お別れの会」を行う。
喪主は長男で阪急阪神ホールディングス取締役、宝塚歌劇団理事長、公一(こういち)氏。


【小林公平氏略歴】

1950年 慶應義塾大学経済学部を卒業。1951年 千代田銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入社。阪急電鉄の創業者、故小林一三氏の孫と結婚したのを機に、1959年に阪急不動産に入社。その後、京阪神急行電鉄(現阪急電鉄)に移り、副社長などを経て1987年から阪急電鉄社長、1993年から2002年まで会長を歴任したほか、阪急ブレーブス会長、阪急交通社会長、阪急百貨店会長、関西テレビ放送会長、阪急阪神ホテルズ会長などをつとめた。

宝塚歌劇団との関わりにおいては、1966年に理事に就任、1974年6月〜1980年6月、1984年1月〜1985年6月の2度、理事長をつとめる。1987年からは宝塚音楽学校の理事長、1996年からは校長も兼任するなど、宝塚歌劇団の発展に大いに寄与した。

理事長時代に『ベルサイユのばら』を大ヒットさせ、1994年にはフランス・パリ公演など日仏交流を進めた功績でフランス芸術文化勲章を受章した。国内では1990年に藍綬褒章、2002年に勲一等瑞宝章を受章している。

文化人としても文筆や絵画などに意欲的で、「公文健」というペンネームで作詞、また脚本を執筆、2002年『ON THE 5th』と2006年『愛するには短すぎる』の原案を、2009年『コインブラ物語』では原作を手がけた。
宝塚歌劇の機関誌「歌劇」には、その時々の宝塚歌劇や一般芸能についての随想を記した「花の道より」を1972年3月号から毎月掲載、通算450回分は計4冊の本にまとまっている。執筆は、最新の「歌劇」5月号で通算453回を数えた。





初日の客席に必ず座られて、観客とともに楽しまれる姿が目に残っています。
心より哀悼の意を表させていただきます。
【文・榊原和子】 

 


彩乃かなみインタビュー

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23日にミュージカル『ザ・ミュージックマン』の幕が開いた。
この東京芸術劇場での初日を皮切りに、65日まで東京、名古屋、大阪、札幌という4都市で上演が決まっている。

『ザ・ミュージックマン』の初演は1957年、ブロードウェイで大ヒット、1980年と2000年にリバイバル上演、2003年にはマシュー・ブロデリック主演で映画化もされたという人気ミュージカルだ。

作品の内容は、音楽教授といつわり楽器やバンド用の制服を売って歩く天才詐欺師のハロルドが、排他的なことで有名な町リバー・シティにやってきて、その町の人々を騙そうとするが、1人の女性との出会いをきっかけに正直な自分を取り戻し、同時に排他的だった町の人々も変化していくというもの。

主人公の詐欺師ハロルドには西川貴教、ハロルドを詐欺師と見抜くが心惹かれていくマリアンに彩乃かなみ、町の市長夫婦に佐渡稔とうつみ宮土理、その他に植木豪、竹内都子、今井ゆうぞうといった多彩な出演者で繰り広げる、明るく楽しく、そして感動的なミュージカル。

その『ザ・ミュージックマン』で、宝塚退団後3作目の舞台を踏む元月組トップ娘役の彩乃かなみに、稽古中のある日、インタビューした。

 

【真っ直ぐなヒロイン】

ーー西川さんのハロルドに恋をするマリアン役ですが、詐欺師と見破っているのに心惹かれるのは、どこか彼を信じているとか?

いえ、全然信じてないんです(笑)。2幕で関係性が変わってから好きになっていくんですが、1幕では「この人は詐欺師だから、早くみんなに知らせなきゃ」と使命感に燃えて、一生懸命正体を暴こうとしてます(笑)。正義感が強くてちょっと頑固なくらいに真っ直ぐな女性で。1900年代始めのアメリカで保守的な町ですから、26歳にもなって結婚してないこととか図書館の館長をしてるということで、周りからはちょっと変わった女性と思われているんです。

ーー演出は鈴木裕美さんですが、マリアンの役作りに関してはどんな要求をされていますか?DSCF2252

抜け感を要求されていると思います。マリアンは音楽とか本が好きなインテリ女性なんですが、どこか頭デッカチなところもあって、ぜんぜん完璧じゃなくて、結婚してないのも気にしてるし、1人になるととんでもなく夢々しいことを思ってたりしてる。そういうギャップがあるところが魅力で、そこが出せればいいかなと。狙わないコメディ部分を出したいですね。

ーー歌もたくさんあるそうですね。

ソロがたくさんあって、あとデュエットもちょっとあります。私のナンバーは、わりとファルセットで歌うものが多くて。今のミュージカルって感情表現などを地声で歌うものも多いんですが、そうじゃないタイプのクラシカルな曲です。その中で言葉の意味をちゃんと伝えられたらいいなと思っているんですが。

 

【宝塚とは真逆な演技を経験】

ーー08年に宝塚を退団して、093月に『Triangle〜ルームシェアのすすめ〜』で女優デビュー、昨年末に『グレイ・ガーデンズ』に出て、これが3作目ですね。

おかげさまで毎回まったく違うタイプの作品で、恵まれています。

ーー歌には定評のある彩乃さんですから、やはり歌は続けていこうと?

それはもちろん思ってました。CDなども発売させていただいたし、歌は私の活動のベースになっていますから。でも舞台も続けたいと思っていました。歌も好きですがお芝居もダンスも好きなので、どれか1つだけはなく全部できるのは、やはりミュージカルですから。

ーー1作目の『Triangle』は緊張しましたか?

してたと思うんですが、緊張が表に出ないタイプです。共演の井上(芳雄)さんと新納慎也さんには「宝塚っぽくない」と言われました(笑)。それはいつも言われるんです。どうも私は娘役らしいイメージとは違うらしいんです(笑)。

ーー娘役というより女優という感じがありましたからね。そういう点では外部は等身大でできる役が多いのでは?

確かに1作目は普通の現代の女性という感じで、そんなに無理せずにやれました。でも『グレイ・ガーデンズ』のリトル・イディは普通の人ではなくて、精神が錯乱していく人でしたから。

ーーでもとても自然で。宝塚時代にもそういう役が多かったし。

本当にそういう役が多かったですね(笑)。私の中にそういうものがあると思われていたのかな(笑)。

ーーイディは、そういう役の経験を生かせたのでは?

いえ、宮本亜門さんに徹底的にしごかれました。DSCF2257わりと時代背景とかコスチュームが宝塚的というか、巻き髪でドレスで良家の子女という感じだったので、気づかないうちに私のスイッチが宝塚モードになってたみたいなんです。『Triangle』は、現代的で飲んべえな女性役でしたから新鮮でパッと変われたんでしょうね。でも『グレイ・ガーデンズ』では、亜門さんに最後まで「君だけこの作品の世界観と違う」と。なぜそう言われてしまうのかずっと悩んでて、初日の数時間前の舞台稽古で、やっとあることに気づいたんです。たとえば、イディが母親とのやりとりで言う「やめてって言ったでしょ」という一言でも、人を刺す言いかたは宝塚の娘役はしないんです。同じ言いかたでも懇願になる。そこに気づいたとき、やはり宝塚とは真逆な演技なんだなと納得しました。そういうことがわかったのも、大竹しのぶさんという女優さんとお芝居させていただけたからですし、亜門さんに徹底的に言っていただいたおかげで、そのことでは本当に亜門さんには感謝しかないです。

 

【芸達者な子役たちに負けないように】

ーー女優さんとしてスタートして、これからどんなふうになりたいですか?

いいものを丁寧にという気持ちがあります。場数も必要だとは思うんですが、できれば自分にとって刺激的なものに出会いたいと思ってて。『グレイ・ガーデンズ』ではっきり気づいたのは、私は宝塚に12年いて誇りを持って築き上げてきたものがあるけど、でもあの作品の中ではそれは一度捨てなければならなかった。真逆といっていいリアルな演技を求められていました。亜門さんに「180度変わって裸になること」とか「自分と向き合うことのみだよ」と言われたのがとても強く心に残ってて。宝塚を卒業して外の舞台をやるからには、どんどん変わっていきたいし、そのためにも1つ1つ納得のいくものに取り組んでいきたいと思っています。

ーーその点この『ザ・ミュージックマン』のマリアンでは、いい意味で宝塚的なものも生かせるのでは?

宝塚的な作品だと思うのですが、周りは外の世界で活躍している方たちなので浮かないように、でも宝塚で培ってきた技術は役に立つので、バランス良く取り入れたいですね。宝塚やミュージカル作品では、観客から自分がどう見えているかをいつも意識の中に入れている作品もありますが、逆に裸になって没頭する舞台もあります。そういう真逆な舞台を経験したことを役作りのベースにしながら、ミュージカルらしい見せ方も考えていこうと思ってます。

ーー西川さんも美意識が強いアーティストですし、刺激的な現場でしょうね。

すごくチャーミングなかたですね。稽古、本番とご一緒できることを楽しんでいきたいです。それから、この作品は子役さんたちが沢山出ていて、みんなすごく芸達者なんです。私も負けていられませんからがんばります。

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ブロードウェイミュージカル

『ザ・ミュージックマン』

●4/235/5◎東京芸術劇場 中ホール

●5/85/20◎新国立劇場 中劇場

●5/22◎愛知県芸術劇場  大ホール

●5/2530 森ノ宮ピロティホール

●6/5◎札幌市民ホール

 

脚本・作詞・作曲◇メルディス・ウィルソン

演出◇鈴木裕美

出演◇西川貴教 彩乃かなみ 植木豪 竹内都子 今井ゆうぞう 佐渡稔 うつみ宮土理

 

<料金>

東京/S@00 A8000 (平日 全席指定/税込)

SH00 A9000 (土、日、祝、初日、千秋楽 全席指定/税込)

3歳以下入場不可

 

<お問い合わせ>

東京公演/03-5500-3919 (24時間テープ案内)

愛知/サンデーフォークプロモーション 052-320-9100(全日10:0018:00

大阪公演/キョードーチケットセンター 06-7732-8888 10:0019:00

札幌/UHB事業部 011-214-5261(平日9:3017:30

 

      【取材・文/榊原和子】

 


安寿ミラ インタビュー

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ダンス、ミュージカル、ストレートプレイの女優として、また振付家ANJUとしても活躍する元花組トップスター安寿ミラ。

彼女が97年から行なっているダンスコンサート「FEMALE」シリーズの10回目、『FEMALE vol.10』が、4月15日から幕を開けた。
この公演は安寿にとって、宝塚歌劇団で初舞台を踏んでからちょうど30周年となる記念の公演で、会場も宝塚時代に公演したことのある草月ホール、そして古巣の宝塚バウホールという懐かしい場での公演である。

今もクラシックバレエのレッスンを続けている安寿だけに、このシリーズでの見どころはなんといってもクオリティの高いダンスシーン。
今回もバレエ界の新星として注目の若手ダンサー大貫勇輔、そしてミュージカルで活躍する宮内良、元宝塚歌劇団雪組の天勢いづるの3人を迎えて、三部構成で安寿の30年の軌跡を表現するステージとなっている。
その初日を直前に控えた稽古場で、安寿ミラに公演の内容と近況を聞いた。

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【在団15年、退団後15年】

ーー初舞台からもう30年ですか。

気がついたら30年で(笑)。宝塚に15年、退団してから15年。入団が1980年で退団が1995年。節目になる年が5とか10で割りきれて、数えやすいし覚えやすいんです(笑)。

ーーこの30年を、振り返っていかがですか?

優しさの中に厳しさがあった15年と、厳しいだけの15年?なんて(笑)。もちろん喜びとか優しさもあるんですけど、やはりいろいろな意味で厳しい時間を生きてきたと思います。

ーー今回は、「FEMALE」シリーズのvol.10ということで、10回まできましたね。

よく続いたなと思ってるんです。こういうショーを作るのが今の日本って本当に難しいんですよ。だから10回を一区切りにして、こういう形は一度終わりにしようかなと思ってて。

ーー何がいちばんネックなんですか?

ショーってあまり上演されないでしょう。だから作るノウハウを持ってる人が少ないんです。むかし一緒に作ってたスタッフは売れっ子になって、ミュージカルや商業演劇で忙しくなってしまう。若いスタッフさんは、ショーの作り方がちゃんとわかってないし、結局自分で考えたほうが早いということになって。

ーーでも、今回もスタッフ、キャストとも楽しみなメンバーが揃いましたね。音楽の笠松泰洋さんは、蜷川作品はじめいろいろな舞台音楽で知られるかたですし。

ありがたいことにずっと付き合ってくれてるんです。バンドメンバーもすごく良いですよ。

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【30年の集大成と軌跡を】

ーーキャストで加わる天勢いづるさんは、宝塚退団後の初舞台ですね。

そうなんです。彼女は宝塚に入る前から、お母さんと一緒に私の舞台を観にきてて。いつのまにか「宝塚に受かりました、男役やります」って言ってきてビックリして。それから女役になったと思ったら、退団することになりましたって。「ずっとヤンさん(安寿)と一緒の舞台に立ちたかった」と言ってくれたので、じゃあ今回は出てもらおうと。バレエも歌もうまいし、さすが一番で入団した優等生で、ほっといても出来る子だからほんとに安心なんです。

ーーそして、大貫勇輔さんという若手ダンサーさん、ヤンさんはいつも才能ある人をいち早く見つけますね。

去年の舞踊劇『プシケとゼウス』で共演したときにいいなと思って「出てくれる?」とダメもとで言ったら「いいですよ」ってことになって。彼はこれからどんどん出てくる人だと思います。まだ21歳なんですよ。でも身体も大きいし頼りにしてるんです。

ーー今回、構成はどんなふうに?

三部構成で、第一部は上田遥さんの振付けで、私がサロメでヨカナーンを大貫くん、ヘロデ王を宮内良さん、サロメの侍女を天勢さんでドラマティックになると思います。

第二部が宝塚コーナーで、天勢と2人で歌いまくります(笑)。曲目は本公演ではなくバウ公演のものだけなんです。あまり歌う機会のなかったものまで網羅して。

第三部がいつもの「FEMALE 」の形になって、今までの「FEMALE 」で使った曲に新しい振付けで、4人の個性を生かせるような、ちょっとしたストーリーの入ってるダンスです。ソロもあるし、デュエットダンスもあるし、そこは港ゆりかさんとSHUNさんの振付けです。

ーーまさに安寿ミラ集大成ですね。

自分でも楽しみなんです。バウホールも久しぶりで、03年の『FEMALE vol.6』以来かもしれない。いい劇場で大好きです。草月ホールも06年に『薔薇と棺桶』で出てるんですが、むかし宝塚の若手の頃、『グッバイ・ペパーミントナイト』(87年)で出たことがあるんです。その『グッバイ〜』も歌いますからね(笑)。映像も流しますし、楽しみにしててください。

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【苦しいけど心洗われるタン・ビエット】

ーー女優さんとしても、昨年はミュージカルの『スペリング・ビー』やシェイクスピア劇の『アントニーとクレオパトラ』に出演するなど、着実にキャリアを積まれて、このあとは8月に謝珠栄さん演出の『タン・ビエットの唄』が再々演されますね。当たり役ですから楽しみです。

再演は嬉しいんですけど、いろんな意味できつい芝居です。悲劇ですし私のフェイは辛抱役で、最後は救われるけど、そこまでの2時間はみんなから罵られっぱなしで(笑)。でも裕子ネェ(土井裕子)と出会えたのが何よりもよかったなと。共演したいとずっと願ってた人なので。だから話の筋も知らないで受けてしまって(笑)。初演でフェイを演じたタモ(愛華みれ)にも言われましたから。「やっててきつかった」って。

ーーベトナム戦争が背景にありますからね。しかも謝珠栄さんはそのテーマを前面に押し出してますからね。

あのエネルギーはすごいですよね。でも男性陣がみんな実力者揃いだし、自分の受け持ってる役をちゃんと生きてていいんです。5人の男性が子供を育てようとする場面は、稽古場でいつも涙を流してました。

ーー何度観ても泣けるし訴えかけてくるものがあります。

心洗われますよね。また裕子ネェと会えるのが嬉しい(笑)。謝先生の稽古場はいつも楽しいし、今回旅があるので、それもいいなと。全国のお客様がきっと涙されると思うし、心に訴えかける作品だと思います。

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【ピエトラガラを追いかけてナントへ】

ーー振付家ANJUさんも大活躍ですよね。

それほどでもないですよ。ほとんど古巣の宝塚の振付けですから。ただ、このあと瀬奈じゅんさんのコンサートがあって、あと昨年の紫苑ゆうさんとかが、一応外部の仕事かな。瀬奈さんからはご指名で頼まれて、私でいいの?みたいな感じなんですけど。わかってるから安心なのかもしれない

ーーANJU振付には独特のニュアンスがありますからね。

私の振りって、本当にすぐわかるらしいですね(笑)。

ーー相変わらず外国に勉強に飛んでいるんですか?

勉強というんじゃなく、好きで観まくってます(笑)。ちょっとでも時間があると飛んでっちゃう。この間はフランスに『ロミオとジュリエット』を観に行って、小池(修一郎)先生とばったり(笑)。『ロミ・ジュリ』は2回観たのですが今回はその曲も使わせてもらってます。その前はピエトラガラを追っかけてナントまで行ったんです。それですごいことに直接会えたんですよ。夜中の1時半まで待って(笑)。

ーー楽屋口とかで出待ちですか?

いえ(笑)、同じホテルだったんです。小さな町ですから会場のそばに1つしかホテルがなくて。たまたま泊まったらカンパニーも泊まってることがわかって。公演のあとロビーでシャンパン飲みながらじっと待ってたんです。そしたら夜中の1時半にホテルに帰ってきたんですよ、ピエトラガラが。そこでプログラムをさっと出して(笑)、サインしてもらって写真も一緒に撮らせてもらって(笑)。「私は日本から来て、あなたのあれも観てる、これも観てる」って話したら喜んでくれました。それで、もう私の運は使い果たしたなと思ってたら、ロンドンの『リトル・ナイト・ミュージック』の初日が観られて、なんとレスリー・キャロンが出てたんです。99年に私が出演したとき東恵美子さんが演じた役をやってて、作曲のソンドハイムさんも舞台に呼ばれて出てくるし、ほんとうに幸せでした。

ーーヤンさんは好きなものへのアンテナとか行動力がすごいんですね。

最初ナントは予定に入ってなかったんですけど、ピエトラガラが公演してるってわかって、車で3時間だから行こうって出かけたんです。行ってよかった、!世界で一番好きなダンサーだから。生き方がカッコいいんですよ。踊りが媚びてないし、観客に媚びない。みんなスタンディングオベーションして騒いでるのに媚びた顔を全くしない。そこが本当に素敵なんですよ。

ーーそういう憧れの対象がいるとエネルギーをもらえますね。

足元にも及ばないけど、ああいう生き方したいなって思います。

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【なつめさんが見ててくれるから】

ーー同じように素敵に生きていた大浦みずきさんの死についても、少しだけ語ってもらいたいのですが。花組時代いちばん近くにいたかただけに、ショックも大きかったでしょうね。

実はこの稽古中にすごいツライことがあって、「もう私、ダメだ、初日開けらんない」っていうくらい落ち込んだんです。帰り道、車を運転しながらずーっと涙を我慢してて。そしたら家に帰ったら、ちょうどこの十字架のペンダントが届いてて、大浦さんのお姉さんからで。お手紙に「大浦がずっと身につけてたもので、ちょっと汚れてるけど、もしよかったら持っててください」って書いてあって。その瞬間、一気に張りつめたてたものが溢れてきちゃって。

ーーそういう日に届くんですね。すごいですね。

ああ、なつめさんが上から見ててくれるんだ、なつめさんが守ってくれてるからがんばろうって。これ、つけて踊りますから。

ーーなつめさんも自分のダンスコンサートの「GIGEI-TEN」シリーズを10回までやるのを、楽しみにしてらしたんですよね。

この「FEMALE」が ちょうどvol.10なのも、なんか不思議ですよね。なつめさんが1人でこういうダンスショーをがんばってらしたから、私もがんばれたところがありましたから。その道しるべが無くなってしまって、どうしたらいいんだろうと途方に暮れてる部分もあるんですけど。

ーーでもなつめさんがやり残した「GIGEI-TEN」も続いて欲しいし、ヤンさんにも託された思いは沢山あると思います。

もうこんなに大きなキャパでのショーは、おそらくこれが最後でしょうけど。でも、なつめさんがやろうとしていたものを残していくためにも、形を変えてショーの上演は続けていきたいと思っているんです。

ーーぜひ踊り続けてください。まずは30周年の集大成、『FEMALEvol.10』を楽しみにしています。

これを終えたら、ゆっくり、次にやりたいショーを考えていこうと思ってます。

 

 

安寿ミラ ダンスコンサート

『FEMALE vol.10』

構成・演出・作詞◇安寿ミラ

音楽◇笠松泰洋

振付◇上田遥、港ゆりか、SHUN

出演◇安寿ミラ、大貫勇輔、宮内良、天勢いづる

●4/15〜18◎赤坂 草月ホール

●4/23〜25◎宝塚 バウホール

〈料金〉

草月ホール \6500(全席指定/税込)

バウホール \7500(全席指定/税込)
(ともに当日券あり) 

〈問合せ〉03-5961-4577  オフィスサラ  

 東京/キョードー東京 03-3498-9999
 大阪/ キョードーチケットセンター 06-7732-8888

 

 

TSミュージカルファンデーション

『タン・ビエットの唄』

演出・振付◇謝珠栄

脚本◇大谷美智浩

音楽◇玉麻尚一

出演◇安寿ミラ、土井裕子、畠中洋、吉野圭吾、宮川浩、駒田一、戸井勝海、他

●8/13〜15◎東京芸術劇場 中ホール

〈料金〉

S席\9000 A席\6000(全席指定/税込)

〈問合せ〉03-5738-3567  TSミュージカルファンデーション

 

【取材・文/榊原和子】

 

 

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