えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

『HEADS UP!』

重厚な文芸作品と煌めきのレビューで輝くトップスター朝夏まなとの集大成!宝塚宙組公演『神々の土地』『クラシカル ビジュー』

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宝塚歌劇団宙組を2年半に渡って牽引してきたトップスター朝夏まなとの退団公演である、ミュージカル・プレイ『神々の土地〜ロマノフたちの黄昏〜』レヴュー・ロマン『クラシカル ビジュー』が日比谷の東京宝塚劇場で上演中だ(19日まで)。

ミュージカル・プレイ『神々の土地〜ロマノフたちの黄昏〜』は、ロシア革命前夜のロマノフ王朝で、ロシア最後の皇帝ニコライ二世の従兄弟ドミトリー・パブロヴィチ・ロマノフを主人公に、作・演出の上田久美子が、滅びゆく帝国の黄昏にそれぞれの信念を貫いて生きた人々を描いた、文芸作品の香り高い一編となっている。

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【STORY】
1915年冬、ロシア。時の皇帝ニコライ二世(松風輝)の妻、アレクサンドラ皇后(凛城きら)は、皇太后マリア(寿つかさ)を始め、異国から嫁いだ自分を疎んじてきた貴族たちに心を閉ざしているばかりか、血友病を患っている皇太子アレクセイ(花菱りず)の、唯一治療できる祈祷師である怪僧ラスプーチン(愛月ひかる)に心酔し、政の全てを彼の祈祷によって司っていた。この為ロマノフ王朝は、皇帝一家とマリア皇太后を中心とする勢力に二分され、更に、重税と第一次世界大戦による疲弊にあえぐ民衆の不満が鬱積し、テロルが頻発するという一触即発の危機に瀕していた。
そんな祖国の状況を憂える1人の有能な軍人がいた。彼の名はドミトリー・パブロヴィチ・ロマノフ(朝夏まなと)。皇帝ニコライ二世の従兄弟であるドミトリーは、民衆の憤懣を鎮める為には、ロマノフの一族が身を挺して前線で戦うべきだと考えていたが、皇帝一家の身辺警護の任務のために、ペトログラードへの転任を命じられ、釈然としない思いを抱えたまま、自身の出立を祝う壮行会に顔を出さず、雪の平原で鹿撃ちをしていた。そこへドミトリーを探して故セルゲイ大公の妃イリナ(伶美うらら)がやってくる。皇帝を狙ったテロルで命を落としたセルゲイ大公の未亡人のイリナは、アレクサンドラ皇后の妹で、夫亡き後もロマノフの一員として、この国の為にできることはないか?を考えながら、ロシアに留まっていた。肉親のないドミトリーは、伯父であるセルゲイ大公の許に身を寄せていて、二人は義理の叔母と甥という立場で出会ったが、共に暮らす日々の中で、実は心の奥底に秘めた、互いへの想いを抱いていた。「皇帝の傍で、この国を守って欲しい」イリナの言葉に動かされ、ドミトリーはペトログラードへ赴く決意固め、イリナもまた従軍看護婦として戦地へと旅立っていく。
だがペトログラードでは、ラスプーチンに奪われた権勢を取り戻そうと、マリア皇太后の許、青年貴族フェリックス・ユスポフ(真風涼帆)ら、多くの要人が加担したクーデターの計画が進んでいた。ラスプーチンを暗殺し、ニコライ二世を退位させ、ドミトリーを新しい皇帝に仰ぐ。突然クーデターの首謀者として白羽の矢を立てられたドミトリーは、計画に加わることを断固拒否し、まず二分したロマノフ王朝を再び一枚岩として、平和的な解決方法で、この危機を乗り切る術を模索する。その想いの中で、ドミトリーは皇太子アレクセイや、皇女オリガ(星風まどか)に、民衆の声や外の世界を見せようと努力し、いつしかオリガはドミトリーに惹かれていき、二人の間には結婚話が持ちあがるまでになる。
イリナの面影が胸に去来するのを感じながらも、ロマノフ王朝の為にオリガとの縁談を受け入れようと決意したドミトリーだったが、婚約披露の席上でラスプーチンに「この男の心には別の女性の姿が見える。この男はオリガ様を愛していない」と詰めよられ、答えに窮する。折も折、ドミトリーの婚約披露パーティに出席する為、ペトログラードにやってきたイリナが、ゾバール(桜木みなと)ら革命家たちの襲撃にあったという急使がもたらされ、九死に一生を得たイリナが憔悴しきった姿で皇帝の前に現れる。ドミトリーはオリガや皇帝一家が見つめる前で、イリナを強く抱きしめて……

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ロシアに起こった20世紀最大の人民革命、ロシア革命は、その革命によって成立した政権が、史上初めて社会主義の名のもとに新しい社会体制をつくり出し、反資本主義、反帝国主義の革命運動を全世界に拡大させる火元となり、世界史に革新的な作用を及ぼした変革として、歴史に大きな名を残している。だがその一方で、私有財産制による社会の不平等を批判し、生産手段の共有と共同管理による、平等な分配を目指した社会主義社会の思想と運動が、ロシア革命後この100年間でほぼ頓挫したのも、また歴史の事実に他ならない。端的に言って人類は「みんなの幸せは私の幸せ」という、性善説に基づく思想を共有するほどには、成熟していなかったのだ。
このことが、同じ革命を背景にしていながら、宝塚歌劇団が頻繁に取り上げてきたフランス革命ものと、この作品との色合いを決然と異にする源になっている。作品の最後にロマノフ王朝は滅びるが、王朝を倒した革命の思想もまた歴史の中に、ある意味で敗れ去っていくことを私たちは知ってしまっている。つまりここには本当の意味の勝者はいない。人類のどんな思想にも、支配にも、何者にも左右されず、ただ変わらずに残るのはロシアの大地のみ。それがタイトルの『神々の土地』であり、真の主人公はロシアの大地という作品の根幹となっている。
 
こう考えると、スターシステムを敷く宝塚歌劇で、このような作品が生まれ出たことには驚きを禁じえない。何しろ誰1人として勝利しない、カタルシスのない物語を、宝塚スターが演じるのだ。これが冒険でなくてなんだろうか。だが同時に、作・演出家の上田久美子の凄味をここまで感じさせた作品も、また初めてのことだ。
実際、舞台は非常に重厚で深みがあり、時にストレートプレイのような、更にはロシア文学そのままのような展開を見せ、観る側にも相当の体力を要求してくる。それでいて、場面、場面がまるで一幅の絵画のように美しく、その美しさにも壮絶な凄味があることによって、作品が宝塚世界の中に降り立つことを可能にしている。雪原で踊るドミトリーとイリナ。エルミタージュ宮殿の大広間。緋色の大階段でのドミトリーの任官式。ジプシー酒場の群衆の嵐のようなダンスと、その凄まじさに立ち尽くすドミトリー、オリガ、フェリックス。オケボックスから這い上がってくるラスプーチン。そのラスプーチンが、皇后アレクサンドラのマントを捧げ持ち銀橋を行き、やがて緋色の階段で繰り広げられるドミトリーとの死闘。すべての魂がロシアの大地に集う終幕。こうして思い返しても、まるで鮮明な絵柄がフラッシュバックするかのように、各場面が脳裏を駆け巡るのには恐れ入るしかない。上田の計算されつくした美意識と、強固な意志が、この格調高い文芸作品を骨太に描き出したのだ。相当な決意と自信がなければ、この作品を宝塚歌劇で創るのは難しかっただろう。作者の気概をもって瞑すべきだ。

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そんな作品が宝塚のトップスターとして、男役としての集大成となった朝夏まなとが、主人公、ドミトリー・パブロヴィチ・ロマノフを実に魅力的に活写している。懐も深く、社交的で、誰からも愛される軍人であり、皇族であり、深く国を憂いてもいる。この男性を担ぎ上げて、ロマノフ王朝を立て直そうとする人々がいること、この作品の中だけの創作の設定に素直に納得できるし、朝夏の持つ輝かしい明るさが、役柄を更に膨らませていて、ドミトリーという人物の陰影も深まった。何よりも、ドミトリーが完全無欠なヒーローではないこと。心に深く秘めた恋があり、その思いに足を掬われるが、決して後悔はしない主人公の、明るさの中にあるからこそ際立つ、陰りと純粋を表出し得たのは、朝夏という存在あったればこそだ。「ここに残す我が思いを」というドミトリーの歌う歌詞と、去りゆく朝夏その人とがオーバーラップする姿が、いつまでも目に残るラストパフォーマンスだった。

そのドミトリーの永遠の想い人、大公妃イリナには、やはりこの公演をもって退団する伶美うららが扮した。前任トップ娘役実咲凜音の退団後、宙組はトップ娘役を空位としていたので、パンフレットなどの扱いこそヒロイン格ではないが、作品を観ればイリナが揺るぎないヒロインであることは明白。宝塚歌劇団にどのような事情があって、こうした措置が取られたのかはわからないし、今この時それを詮索するのは無意味だと思うから、ドミトリーと、愛情と共に信念でも結ばれているイリナに、ヒーローの心に忘れ得ぬ楔を残している女性に、伶美の美しさこそが相応しかったこと、この舞台にとって、伶美が何者にも代えがたい存在だったことだけを記しておきたい。この人の美はただそれだけで、すでにして芸だった。記録以上に、記憶に深く残る美しき娘役が、相応しい役柄を得て花道を飾ったのを喜びたい。

ドミトリーの旧友フェリックス・ユスポフの真風涼帆は、名門貴族の嫡男で、芸術を愛する遊び人の表の顔の中に、深い思慮を秘めている人物の造形が巧み。この人の個性には常に悠揚迫らぬものがあって、それが母親を「ママ」と呼ぶ男性像に全く違和感を与えない上に、ポイント、ポイントの出番を印象的にしている。ドミトリーへの思いを、友情以上、愛情未満のラインでまとめていたのも効果的で、二番手スターとして朝夏時代を共に走った真風ここにありの好助演だった。

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ドミトリーに恋する皇女オリガの星風まどかは、まるで絵に描いたような、宝塚の娘役らしいプリンセス像を愛らしく演じている。ドミトリーへの浮き立つような想いが、イリナの存在によって砕かれる。けれども、彼女の行動がただ嫉妬から発せられたものではなく、家族への思いとの狭間で悩み苦しんだことがわかる。皇后アレクサンドラとの芝居に深みが増し、成長を感じさせた。リリカルなソプラノも美しく、真風の相手役となる次公演への期待を高めた。

また非常に演じ甲斐のある役柄が多いのも、この作品の特徴。皇太后マリアに組長の寿つかさ、皇后アレクサンドラに凛城きらと、いずれも大役に敢えて男役を持ってきたのは、押し出しと同時に、宝塚の娘役という幻想世界を担っていない、生の女優に通じる実存感を求めたからだろう。その思惑は奏功していて、二人共に作品の重要なアクセントになっている。特に寿は、終幕この作品の真の主役である「ロシアの大地」に思いを馳せる台詞を明確に聞かせる役割を見事に果たした。

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ドミトリーの友人では、コンスタンチンの澄輝さやとが、高貴な身分の人間が示す全く悪気のない行為が、虐げられている側には嫌味にしか映らないという、大きなキーポイントをノーブルな二枚目像の中で体現していて美しい。ウラジミールの蒼羽りくの明るさ、ロマンの瑠風輝の弟分的な居ずまいと、互いにキャラクターをきちんと演じ分けていてそれぞれが引き立った。コンスタンチンに思われ、やがて彼を愛することで図らずも嵐を呼ぶジプシー酒場の歌姫ラッダの瀬音リサは、低音域から高音域までの難しいソロを見事に聞かせている。『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』の少女時代のアンネ・ローゼで聞かせた美しいソプラノの上に、この年月の進化が積み重ねられたこれも有終の美となった。ラッダの弟で、革命の活動家ゾバールの桜木みなとは、野性的なキャラクターに体当たりした迫力が際立った。これまで気品のある役柄での成果が目立った人だったが、こうした色の濃い役も手中に納めて、着々と役幅を広げているのが末頼もしい。同じ革命家のマキシムの和希そらの口跡の良さは群を抜いていて、踊りのキレも見事。エルモライの秋音光の、どこか破滅的な個性も役に生きている。

冒頭から、人物関係や舞台背景の説明役も担う、クセニヤの美風舞良、ジナイ—ダの純矢ちとせ、アリーナの彩花まりの貴婦人ぶりは見事で、特に純矢の一癖も二癖もある役柄の、適度なアクを交えた造形には惚れ惚れさせられる。ニコライ二世を徹底的に穏やかに演じた松風輝も、この温厚さが悲劇を生んでいく要因になっていることをきちんと示しているし、ロバト二コフの美月悠、ポポーヴィッチの星吹彩翔、イワンの風馬翔等、個性派がきちんと要所を固めているのも見逃せない。

そして、個性派とか、アクが強いとかいう言葉の中には納まらないのが、ラスプーチンの愛月ひかる。歴史に名を残す稀代の怪僧であり、創作世界の中でも度々取り上げられている人物を、禍々しく、おどろおどろしく演じきっていて、宝塚の二枚目男役の粋を完全に超えた、まさに怪演。ここまでやりきってしまうと、二枚目男役としてのアイデンティティに響かないかだけが心配になるのが、宝塚という世界の特殊な面でもあるが、愛月のラスプーチンが強烈であればあるだけ、朝夏のドミトリーの行動が正義に映る訳で、朝夏を美しく送り出す為の、影のMVPとも称せる存在だった。思えばこの人が突き抜けた役柄を演じたのは、朝夏のプレお披露目だった『TOP HAT』が最初だから、朝夏時代の集大成に、愛月のこうした異端な役柄の集大成が重なったとも言えるだろう。果敢な取り組みに拍手を贈り、次の時代での正統派二枚目にも期待している。
他に民衆の革命へのうねりを表現した群舞も素晴らしく、噛み応えのある重い作風に全力で取り組んだ宙組全員のパワーを強く感じさせる舞台だった。
 
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そんな作品の後に控えたのが、宝石の輝きをテーマに繰り広げられるレヴュー・ロマン『クラシカル ビジュー』で稲葉太地の作。冒頭から、ターコイズの真風、パールの伶美、翡翠の星風、ルビーの愛月、トパーズの桜木と、それぞれ宝石=ビジューを表した面々が踊ると、エルドラドの王・ダイヤモンドの朝夏が現われるという、贅沢な布陣。朝夏の太陽のような輝きを「太陽色のダイヤモンド」と表現したのがなんとも秀逸で、朝夏のキラキラと輝く笑顔が眩しい。

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そのまま、スーツにソフト帽、華やかな変わり燕尾、煌めく総スパンコールなど、様々な場面で、長い手足を駆使して、踊り続ける朝夏の姿が、「ダンサートップスター」の称号を手にしたこの人ならでは。なんの飾りもない正統派の黒燕尾で踊る終幕まで、朝夏の真骨頂が如何なく発揮されたレヴューになっていて、惜別の思いが募る。

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更にそれだけでなく、次世代の真風&星風はもちろん、愛月にも、更に桜木や和希にも大きな見せ場があるのが新鮮で、朝夏時代の集大成である作品から、次代の息吹も感じられるのは、これぞ宝塚歌劇のマジック。伶美をはじめとした、朝夏と同時退団の娘役たちにも餞があり、朝夏が築いた宙組の歴史と財産がキラキラと輝くレヴューとなっている。

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また、初日を前に囲み取材が行われ、宙組トップスター朝夏まなとが公演への抱負を語った。

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まず朝夏が「本日はお足元の悪い中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。千秋楽まで全身全霊で頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします」と挨拶。続いて記者の質問に答えた。

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その中で作品について、大劇場公演中は様々に悩みもあったが、今は自分の中に降りてきていて、ロシアのうねりを全員で表わす芝居なので、宙組全員で作っている。と語り、またショーについては、皆様に元気になっていただける作品だと思うので、それを感じていただけたらと、熱く語った。

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また、最後の初日前会見に黒燕尾服で臨んだ心境を問われて、男役として自覚が芽生えた、宝塚という伝統の中で、黒燕尾の踊りを継承していきたいという思いが強くあったことを挙げ、やはり最後はこの姿でと思った。全く飾りのない皆と同じ黒燕尾でも、何か発するものが違うスターになりたいという憧れがあったことを語り、その目標通りのスターとなった朝夏の清々しさがあふれる時間となっていた。
 
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尚、囲み取材の詳細は、舞台写真の別カットと共に、2018年1月9日発売の「えんぶ」2月号にも掲載致します。どうぞお楽しみに!

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〈公演情報〉
宝塚歌劇宙組公演
ミュージカル・プレイ『神々の土地〜ロマノフたちの黄昏〜』
脚本・演出◇上田久美子
レヴュー・ロマン『クラシカル ビジュー』
作・演出◇稲葉太地
出演◇朝夏まなと ほか宙組
●2017/10/13日〜11/19日◎東京宝塚劇場
〈料金〉SS席12,000円 S席8,800円  A席5,500円 B席3,500円 
〈お問い合わせ〉東京宝塚劇場 03-5251-2001




【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】


『えんぶ8号』
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浅丘ルリ子、香寿たつきの出演する話題作『プライムたちの夜』開幕!

s_1.(右から)浅丘ルリ子、香寿たつき

新国立劇場では、人工知能と人間の幸福をめぐる注目の舞台『プライムたちの夜』が、11月7日に開幕した。
 
この作品『プライムたちの夜』は、現代欧米戯曲を日本で初演する企画の第5弾で、アメリカの新進作家ジョーダン・ハリソンによる戯曲。2014年、ロサンゼルスでの初演直後から反響を巻き起こし、2015年にピュリッツァー賞の最終候補作品となり、オフ・ブロードウェイでの再演、さらには映画化され、2017年サンダンス映画祭でプルミエ公開され高い評価を得ている。
 
演出を手がけるのは、新国立劇場芸術監督の宮田慶子。出演は、宮田の熱望により新国立劇場初登場となる浅丘ルリ子、さらに香寿たつき、相島一之、佐川和正という演出家の信頼あついメンバーが顔を揃えている。

s_2.(右から)浅丘ルリ子、相島一之、香寿たつき

【ものがたり】
とある家の居間、85歳のマージョリー(浅丘ルリ子)が、30代のハンサムな男性(佐川和正)と会話している。だが、昔の二人の思い出に話が及ぶと、その内容に少しずつ齟齬が生まれる。戸惑うマージョリー。実はその話し相手は、亡き夫の若き日の姿に似せたアンドロイドだった。薄れゆくマージョリーの記憶を何とかとどめようとする娘夫婦(香寿たつき、相島一之)。愛する人を失いたくない家族の愛をテクノロジーはどこまで補えるのだろうか......。

愛した故人をアンドロイド ―プライム― としてもう一度蘇らせる。だが、「この人はこういう人だった」と、データをインプットするのはもちろん人間である。これは近未来を舞台に、人の記憶と永遠の愛をテーマにした、少し切なく、胸が暖かくなる物語。 
 

フォトコールと囲み取材映像はこちら

〈公演情報〉
開場20周年記念公演
『プライムたちの夜』
作◇ジョーダン・ハリソン 翻訳:常田景子
演出◇宮田慶子
出演◇浅丘ルリ子 香寿たつき 佐川和正 相島一之
●11/7〜26◎新国立劇場 小劇場
〈料金〉A席 6,480円円 B席 3,240円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999




【資料提供/新国立劇場 撮影/谷古宇正彦】



チケット全品最大で60%OFF!
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大地真央と中村梅雀が演じる史上最強のおもろい夫婦の物語『夫婦漫才』開幕!

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“日本最高のコメディエンヌ”大地真央と、歌舞伎からコメディまで芸達者でドラマでも活躍中の中村梅雀。2人が史上最強のおもろい夫婦を演じる舞台『夫婦漫才』が、11月6日に福岡・博多座で開幕した。(18日まで。その後、大阪・新歌舞伎座、東京・シアター1010で上演)
この作品は俳優・豊川悦司が2001年に脚本・監督を務めたテレビドラマを原作に、ラサール石井が演出、脚本は俳優・池田鉄洋としても活躍する池田テツヒロが担当している。

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【あらすじ】
“あんたの横にはいつもうちがおる だから行こう、一緒に行こう”
大阪の長屋で、まるで兄妹のように育ってきた信子(大地真央)と伸郎(中村梅雀)。器量よしで美人な信子とぱっとしない伸郎の“のぶ”コンビは長屋の人気者だったが、ついに伸郎に赤紙が届く。
戦後、夫婦となり3人の子宝に恵まれたが、定職にもつかずふらふらしている伸郎に信子は腹を立て、毎晩長屋に響きわたる夫婦喧嘩の声。ところが、この喧嘩が掛け合い漫才のようで面白いと評判を呼び、プロの漫才師としてデビューすることになる。家族を、長屋の人々を、お客さんを笑顔にすることが皆を幸せにすることだと仕事に打ち込む二人だが、突然悲劇はやってきて…。

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戦争、貧困、高度成長、テレビ黄金期、漫才ブーム。激動の昭和から現代を、夫と家族を支えながら、前向きかつ豪快に突き進む信子。伸郎と共に二人手を取り、夫婦で歩む笑いと涙の珍道中の行く先は・・・。

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初日公演の終演後には、出演の大地真央・中村梅雀・川麻世・正司花江、そして演出のラサール石井が登壇し、囲み取材が行われた。

主演の大地真央は、ひょんなことから夫と夫婦漫才コンビを結成し、激動の昭和から現代を明るくたくましく生きた女性を演じている。「実は、現代を生きた普通の日本人女性の役を舞台で演じることも、関西弁をしゃべるのも宝塚のトップお披露目公演以来初めてだったので、とても新鮮でした。でもお客様の反応がとても温かくてホッとしています」と初日を迎えた感想を大地が語る。
その大地を「王女とかそういう役ばかり演じてきた真央さんが、ごく普通の庶民の役を演じるというのも見どころです」と演出のラサール石井。
また、大地の夫役を演じる中村梅雀が「関西弁の役は苦手でこれまで封印してきたのですが、真央さんのおかげでスッとその世界観に入ることができました」と安堵の表情を見せると、息もピッタリに大地から「せやろ!」と関西弁で相の手が。そんな二人に、川麻世が「何があっても支え合う、夫婦のあるべき姿を舞台で勉強させていただいています(笑)」と感想を語り、笑いを誘う一幕も。 
劇中では、戦争、貧困、高度成長、テレビ黄金期、漫才ブーム、オリンピックなど昭和を象徴する事柄が多く登場。ラサール石井は「真央さんの劇中でのファッションも、それぞれの時代にあったものを揃え、コートも含めると全部で20着、着てもらっています。それだけ見ても昭和女性ファッション史として楽しんでいただけると思います」と見どころを語る。 
音楽も「東京五輪音頭」「世界の国からこんにちは」など、昭和を彩った名曲が多数登場。なんと芸歴80年(!)を迎えるという正司も「共演したことのある方の曲も多く、本当に懐かしくて涙が出そうです。皆さんにも懐かしく観ていただけると思います」と語った。
最後に大地より「本当に笑いあり涙ありの面白いお芝居に仕上がったと思います。是非劇場お越しいただき、この時間と空間を共有していただけたらと思います。」と締めくくった。

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〈公演情報〉
『夫婦漫才』 
原作◇豊川悦司
脚本◇池田テツヒロ
演出◇ラサール石井
出演◇大地真央、中村梅雀
川麻世、村上ショージ、竹内都子、上杉祥三
朝倉伸二、福本伸一、弘中麻紀、未沙のえる、南翔太
吉沢京子、正司花江 ほか
●11/6〜18◎博多座
〈料金〉A席13,000円 特B席10,000円 B席7,000円 C席4,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉博多座電話予約センター 092−263−5555(10:00〜18:00)
●11/22・23◎新歌舞伎座 
〈料金〉1階席10,000円 2階席5,000円 3階席3,000円 特別席12,000円
(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉新歌舞伎座テレホン予約センター 06-7730-2222(10:00〜18:00) 
 http://www.shinkabukiza.co.jp
●11/29〜12/4◎シアター1010 
〈料金〉全席指定9,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉TEATRE1010 03-5244-1010







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「Discover Nelly Arcan」プロジェクトの掉尾を飾る舞台『この熱き私の激情〜それは誰も触れることができないほど激しく燃える。あるいは、失われた七つの歌』上演中。

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6人の女優と1人のダンサーが、1人の女性の人生を描く舞台『この熱き私の激情〜それは誰も触れることができないほど激しく燃える。あるいは、失われた七つの歌』が、天王洲銀河劇場で上演中だ(19日まで。そののち、広島、北九州、京都、豊橋で公演)

わずか8年間に、心の内側に秘めた怒りを爆発させ、熾烈で思わず目をそらしたくなるほどの作品を執筆し、36歳の若さで自ら命を絶ったカナダ・ケベック州生まれの女性作家ネリー・アルカン。
この作品は、彼女の世界を、本、映画、舞台で紹介するビッグプロジェクト「Discover Nelly Arcan」の最後を飾る一編で、ネリー・アルカンが残した4編の小説をコラージュし、カナダ人演出家マリー・ブラッサールが舞台化したもの。出演する松雪泰子、小島聖、初音映莉子、宮本裕子、芦那すみれ、霧矢大夢の女優6名が、それぞれガラスで閉じられたキューブ体の部屋に入り、お互いに顔も見えないまま、イヤーモニターから聞こえる音、共演者の台詞だけを頼りに、ネリーの孤独、慟哭、女性であることの苦悩を演じ、台詞のセッションを奏で、ダンサーの奥野美和が、象徴的に各部屋を行き交うという、非常に斬新で、官能的で、かつ難度の高い舞台となっている。

そんな作品の初日を前に、出演の松雪泰子、小島聖、初音映莉子、宮本裕子、芦那すみれ、奥野美和、霧矢大夢と、演出のマリー・ブラッサールが、開幕直前会見に臨み、娼館の飾り窓とも、ショーウィンドウとも取れる、舞台上に置かれた10個のキューブを前に、新たな挑戦となる公演への抱負を語った。
 
【登壇者挨拶】

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マリー・ブラッサール
 
皆様、本日はお集り頂きどうもありがとうございます。こうして素晴らしい皆様とご一緒に初日を迎えることができて、光栄に思っております。少し作品についてお話しさせてください。ネリー・アルカンはとても知性あふれる若い女性で、作家でした。彼女は自分の作品の中でも描いていますが、自分を生きているには相応しくない人間だと感じることがとても多かったんです。ネリー・アルカンは皆様ご存知の通り、36歳という若さで自殺をしてしまいました。私は今こうして日本の皆さんに、彼女の深み、また知性を共有できることを嬉しく思っておりますし、自分自身とても感動しています。こうして素晴らしい女優の皆さん、そしてダンサーの奥野美和さんと、ネリー・アルカンが表現してきた作品を皆様にお見せできる、彼女へのオマージュを皆様にお届けできることをとても嬉しく思います。
 
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松雪泰子
 
今日までマリーさんと稽古を重ねてきて、どこまでこの作品を表現できるのか、今、とても緊張感を持っておりますが、良い初日を迎えられるようにと思っております。

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小島聖 
ここにいる皆様とご一緒させて頂いているのですが、全く顔が見えず、声だけの交流しかないというのは、なかなかセクシーで良いものだなと思っております。マリーさんには言葉と身体がつながっているようにと言われているので、それを胸に今日の初日を迎えたいと思います。
 
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初音映莉子
 
ネリーの36年の人生がなかったら、今、自分はここにいないんだなと。ネリーの人生が私に与えてくれた、マリーや、日本人のスタッフ、素晴らしい共演者の方達との出会いに感謝しながら、ネリーの魂を自分の中にグッとこめて演じたいと思います。

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宮本裕子 
本当にあっという間の5週間で、稽古場を去りたくないという思いがとても強く、マリーをはじめスタッフ、キャストの方達とすごく楽しい、でも俳優としての自分としてはこんなに苦しく、久々にガツンときたネリーの人生でした。製作発表の時には「真綿で首を絞められるような感じだ」と言ったのですが、いざ稽古が進んでいくと真綿が水を含んでいた感じで、自分の役者人生を破壊されかねないと思うほど、衝撃的な稽古でした。ネリーを感じながら、本番をやっていきたいと思います。
 
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芦那すみれ
 
今回の舞台を通して、この素敵な先輩たちと一緒に、またマリーと海外のクルーと一緒に過ごした時間が、自分の中ですごく楽しかったです。でも楽しいだけで終わってはいけなくて、今日からが本番だという気持ちの中に、楽しい気持ちもちょっと忘れないでやっていけたらいいのではないか?と思っています。皆さんにも楽しんで頂けて、何かを感じて帰って頂けたら、それが一番いいなと思っています。
 
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奥野美和
 
私は失われた部屋の女というキャラクターを演じさせて頂くのですが、私にとって演劇作品に出演するのは初めてのことで、今日初日を迎えるまで皆さんにアドヴァイスを頂いて、出来立てほやほやの状態でもあります。ですから本番1回、1回を集中した濃い時間を過ごして、私にはとても難しいことだった演劇と、ダンスの身体表現をしっかり習得して、1日1日を過ごしたいと思います。
 
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霧矢大夢
 
ネリーの心の闇、怒りや苦しみ悲しみを表現するということは、自分自身の闇に向き合うことでした。稽古中苦しかったり、今、初日を迎える瞬間が怖い気も致しますけれども、皆様の前で、客席からの力をパワーに変えて、素晴らしいキャストの皆様とネリーを伝えていきたいと思います。

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【質疑応答】

──マリーさんはご自身も女優として活動されていますが、この1ヶ月間日本の女優たちとの仕事はいかがでしたか?
マリー 日本の女優の皆様とお仕事ができるということで、謙虚な気持ちで楽しくお稽古をさせて頂いてきました。皆様1人1人素晴らしい女優さんで、深い知性と才能をお持ちの方達とご一緒できて本当に嬉しかったです。今回演出をする上でわかったことは、演出家というのは台詞の話し方を1つ1つ指導する訳ではなくて、パフォーマーが言葉の真実により深く近づける為のお手伝いをする、そういう仕事なんだということを改めて実感致しました。そして私が気づいたのは、どこの国の人間であっても、知性的な意味で近づくことができれば、言語の違いは壁にはならないということを感じました。
──作品から感じ取って欲しいメッセージなどは?
マリー この作品は、正確なメッセージをお客様に届けたいという訳ではありませんが、この作品を観ることによって、ネリー・アルカンというアーティストの作品をまた深く見直し、現代の女性が置かれている状況、立場を皆で一緒に見直せればなと思っております。それとこの作品は現代社会におけるプレッシャーというものも提示しています。メディアから与えられるプレッシャー、また自分以上の何かにならなければならないという、概念によるプレッシャーが表されています。それは世界共通のものだと思いますし、男女共にあるプレッシャーだと思います。この作品を観た後で、ネリー・アルカンの詩的な言葉に感動すると共に、そういうことについても内省して頂き、お客様に考えて頂ければと思っています。なので、観て頂くお客様には是非感動して頂きたいです。それは詩的な表現であったり、インスピレーションであったり、是非、闇ではなく光を持ち帰って頂きたいと思います。

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──この5ヶ月間、心を引き裂かれるようなテキストと向き合い、テクニカルを含めて大変な稽古だったと思いますが、この稽古中に最も苦労した点や、また新しい発見などありましたら教えてください。
霧矢 この部屋の中から出ないで皆様の呼吸を感じながら、それぞれが個々のようでいて、同じ空気を感じなければいけない、という演劇手法がまず初めてで難しくて、それは未だに課題でもあります。先ほども言いましたように、ネリーの闇を深く深く探求していくと、本当に自分もズンと落ちそうになるところを、今マリーがおっしゃったように光に変える、そのパワーに持っていくことが難しくもあり楽しくもあります。
奥野 さっき言ったことと重複してしまうかも知れませんが、私は演劇作品が初めて、デビューの作品だということでした。でも私も演技の手法が初めてでしたが、今回の作品では皆様にも演技だけではなく、身体表現もあったり、後はこの美術と、歌もあり、色々なジャンルが混ざったような作品ですので、自分がどのように作品の一部として溶け込めるか?というのが、わかっているつもりでやはり理解に時間がかかります。これは公演中もずっと考えてパフォーマンスをしないと、なかなか身体に入っていかないと思うので、そこを頑張っていきたいと思っています。
芦那 ネリーは大人の女性なので、大人の女性であって欲しいというところが、自分にとって一番ネックでした。
宮本 私がいるのが死の部屋で、ネリーが死んだあとの部屋なんですけれども、死というものとすごく向き合わなければいけないので、ここに今ネリーがいるのかも知れない、天国にも地獄にもまだ行っていないのでは?ネリーってまだいるのかな?と思ったり、自分が死んだらどこに行くのだろう?と思ったり、死をすごく考えさせられています。これは本番が終わるまでずっと向き合うことなので、体力がいるなと思っています。
初音 台本を読んでいて、ネリーの言葉がグサッと刺さってきて泣いてしまったりもしました。彼女の思いと対峙することが最初はすごく辛かったです。あとは、部屋に入っているので、皆の声を聞きながら芝居をしたり、実際に舞台に来て照明が入って初めてわかることもあって。部屋の前にあるガラスなんですが、中に入るとまるで鏡のように見えて、客席はいっさい見えない状態なんです。鏡に対峙して話している感覚なので、ネリーもこういう経験をしたんだろうな、と感じています。
小島 言葉を単純に覚えた方が楽なのですが、シンプルに捉えてそれをしないということが、とても大変でした…いえ、大変です(笑)。

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松雪 私もまず「ピュタン」という小説を読みまして、あまりにもネリーの痛みが深すぎて。とにかく死に向かっていく彼女の精神状態を考察し、読み進めていくと、自分の中にある潜在的な痛みが、彼女の持っている痛みとフィットする瞬間がありまして、その度にかなり苦しくて身動きが取れなくなる時間が相当ありました。本当に怖くて、死に向かっていく精神状態を捕まえるのが、とても困難でしたし、自分が台詞を通して体現していくという段階になってからは、苦労の連続でした。でも言葉自体というものはとても美しいので、それをまず皆様にしっかりお伝えしたいなということのみで、稽古場でやっておりました。あとはマリーさんと皆さんと稽古をしていく中で、本当にこの劇自体が全体で1つなんだということがハッキリとわかりますし、私達はイヤーモニターを通してしかお互いの言葉が聞こえないのですけれども、そこからエネルギーが積み重なってすべて、最後の私の死に至るまでの時間が、個々でありながら全体として1つだということがすごく大事だと思いました。美術、照明、マリーさんの演出を含めて、すべて計算されているこの劇構造に圧倒されつつも、皆様にお伝えできたらという思いでいます。
──それぞれ、ズバリ見どころを一言でお願いします。
松雪 この劇全体を通して、見事に調和が取れた瞬間だと思っているので、見どころはすべてという感じです。
小島 女性っていいなと思います。
初音 自分の人生を振り返ることができるところだと思います。
宮本 日本で観たことのない手法、演劇表現が見られることだと思います。
奥野 美術と演出と身体表現すべてが融合した、コンセプトに沿ったジャンルが、融合された瞬間が見どころだと思います。
芦那 私は稽古場で皆様のお芝居を観させて頂いて感じていたことなのですが、松雪さんが演じられる、自殺するところに向けて皆のお芝居が少しずつ重ねられていくので、影の女のところが見どころだと思いますし、そこから死んだ女の(宮本)裕子さんが出てくる、2人が変わる瞬間が曲もおどろおどろしくて、是非注目して観て頂きたいです。
霧矢 女はしなやかで、美しくて、強いというところを感じて頂きたいです。
──代表して松雪さんにお伺いします。女性の心情を描いた作品ですが、男性が観る上で何かアドヴァイスはありますか?
松雪 霧矢さんがおっしゃったように女性は強く、美しいと感じて頂ければと思います。

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続いて、舞台上で3つの場面が公開され、それぞれ、演出のマリー・ブラッサールからシーンの説明があり、この斬新な舞台の一端が立ち現れた。

【公開場面1】

マリー まず皆さんにお見せするのが「悲しみの仮面」というシーンです。このテキストの中で、ネリー・アルカンは「自分は美しくもなく、醜くもない」という言葉を繰り返し言っています。自分は生きるに値しない人間だという思いが籠められています。なので、結論として自分で自分の人生を終わらせるという方向に向かっていきます。これは作品の中で「失われた女、失われた歌」という場面ですね。

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前衛的な音楽が流れ出し、それぞれの部屋に入った女たちが台詞のセッションを奏ではじめる。「私は美しくない、醜くもない」「どっちつかずで上手くいかない」「身体」「まなざし」「時と共に私は醜くなる。事態は好転しない」「悲しみに飲みこまれていく私の顔」等々の言葉が、連なり、重なって発せられる。各部屋が完全に仕切られている為に、徐々に誰が今言葉を発しているのかも、定かではなくなる眩惑感がなんとも独特だ。

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【公開場面2&3】

マリー 次に皆様にお見せ致しますのは「娼婦たちは自殺を宣告される」という歌です。この歌の中でネリー・アルカンが話しているのは「娼婦というのは消えた後、長い間消えたことを周りに気づいてもらえない。それはまるで消滅した星のようだ」という言葉です。そこに続いて「影の部屋」のシーンの「影の歌」に今日は続けます。これは「影の部屋の女」を演じている松雪泰子さんが歌います。この歌の中では、ネリー・アルカンが死について語り、やがて首つりについて歌います。一部を抜粋してお見せします。

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リズムが強く響き、各部屋の女たちは「娼婦は自ら命を絶つと宣告されている」「自分を殺す!」「死んだ星が光る」「娼婦たちは死んだ星の光」などと、ある者は語り、ある者は叫びながら、激しく動く。「天文学者は言う、死んだ星の光はどんなに遠くても1番眩しい」「1番眩しいのは死ぬ時」「自分の1番いいものを手放すのは死ぬ時」女たちの動きはますます激しくなり、天空の部屋ではこの部屋の女小島聖と、現実的には部屋にいない「失われた女」の奥野美和が絡み合う。やがて言葉をリズムがかき消していき、部屋の灯りが1つ1つ消えていく。

闇の中から「影の部屋の女」松雪泰子が浮かび上がる。幼少時に言い含められた父からの警句、それに応えて「私がお父さんに愛される、良い子でいますように」という祈りのような台詞が消えると、影の部屋の女は首つりについての歌を語るように、つぶやくように歌い、それがいつか祈りの言葉となっていく。
 
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ステージが闇に包まれて、約15分弱の場面公開が終了。ただ、実際に舞台を目にしている時間は、もっと極端に短いように感じられ、このあまりにも刺激的な舞台の世界観の鋭さが伝わってくるようだった。この作品は、2017年の演劇界にとって、1つの「事件」ともなりうる舞台と言えそうだ。


〈公演情報〉
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PARCO Production
『この熱き私の激情〜それは誰も触れることができないほど激しく燃える。あるいは、失われた七つの歌』
原作◇ネリー・アルカン 
翻案・演出◇マリー・ブラッサール    
翻訳◇岩切正一郎
出演◇松雪泰子 小島聖 初音映莉子 宮本裕子 芦那すみれ 奥野美和 霧矢大夢
●11/4〜19◎天王洲 銀河劇場
他、広島、北九州、京都、愛知にて上演
〈お問い合わせ〉パルコステージ 03-3477-5858 
                



【取材・文・撮影/橘涼香】




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