宝塚ジャーナル

えんぶ4月号

柚希礼音が挑む新たな世界! 柚希礼音ソロコンサート『REON JACK2』公開稽古レポート

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宝塚歌劇団100周年の華やぎを先頭に立って牽引し、惜しまれつつ退団後、1人の表現者として新たな歩みを続けている柚希礼音が開催する、柚希礼音ソロコンサート『REON JACK2』が3月23日〜26日梅田芸術劇場メインホール、3月30日〜31日パシフィコ横浜国立大ホール、4月19日〜20日福岡市民会館で開催される。

昨年春に大好評を博したコンサート『REON JACK』を、更にゴージャスに発展させた今回の『REON JACK2』は、進化し続ける柚希礼音に相応しく、スタッフ陣を一新。音楽プロデューサーに本間昭光を迎え、国内外の著名アーティストのライブを手掛ける面々が、新たな『REON』の魅力をステージに振りまくべく結集した。

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共演者には、モーリス・ベジャールに直接指導を受け『ボレロ』を踊ることを許された、世界でも数少ないダンサーの1人で、世界のトップターンサーたちとの数多の共演歴を誇る、東京バレエ団の上野水香が大阪・東京公演に参加するのにはじまって、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』の“死のダンサー”役で注目を集め、バレエ、ジャズ、コンテンポラリー、アクロバット等、ジャンルの壁を飛び越える活躍で、世界的にも高い評価を得、この夏『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー』でも柚希との共演が決まっているている大貫勇輔。更に、柚希の振付をこれまで多数手掛け、今回ステージング・ 振付も担当する大村俊介(SHUN)、前回の『REON JACK』で柚希とのタンゴ が絶賛された記憶も新しい、東京を拠点に世界各地で活躍するタンゴ・ダンサー・クリスティアン・ロペス。そして、福岡公演には、日本のみならず世界で注目を集めるストリートダンサーの YOSHIEが参加するなど、まさに様々なダンスのスペシャリストたちが一堂に会し、柚希との夢のコラボレーションを繰り広げる、贅沢なステージが繰り広げられる。

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そんな、いやが上にも期待が高まるステージの開幕を前に、3月2日公開稽古が行われ、スペシャルな内容の一部が公開された。

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1曲目は、発売されるやいなや、2月28日付オリコンデイリーアルバムチャートにて10位を記録した、柚希礼音1stミニアルバム『REONISM』から、恋愛のダークな部分を描いた歌「Two Snakes〜feat. NAOTO」が、柚希の歌、更に大村俊介(SHUN)とのダンスで披露される。柚希と大村が妖しく絡み合うようなダンスナンバーは、大村俊介(SHUN)自身の振付でもあり、柚希のハスキーボイスと相まって、新たな柚希礼音の表情を存分に見せてくれる。

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続いて、アストル・ピアソラ作曲のタンゴの楽曲として、ピアソラの代名詞的存在である「リベルタンゴ」が、柚希礼音と上野水香の共演で展開される。
 
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これまで数多のダンスシーンにおいて、幾つもの名場面を生み出してきた「リベルタンゴ」だが、宝塚とバレエという異なる世界で頂点を極めた者同士の、時に鋭く、時に誘い合うような、身体表現の交感から生まれる情熱には、また独特の妙味があり、場所がある意味無味乾燥な稽古場だということをしばし忘れさせるほど。柚希のリードは男役時代を彷彿とさせながらも、上野の自立した愛らしさが、やはり互いの呼吸、雰囲気を全く新たなものにしていて、この場面に衣装、照明などの効果が加わった本番のステージの熱量は如何ばかりかと、嬉しい想像が膨らんだ。

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その後、柚希と上野によるフォトセッションが行われ、引き続いて、柚希が単独フォトセッションのあと囲み取材に応えて、コンサートへの抱負を語った。

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【囲み取材】
 
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──今回のコンサートにかける意気込みをお願いします。
本日はお足もとの悪い中お越し頂きありがとうございます。次は『REON JACK2』ということで、1回目の『REON JACK』をして皆様がたくさん観にいらしてくださって本当に幸せだったので、『REON JACK2』が出来ることになりありがたいなと思っております。『REON JACK2』は前回とはガラリと変えて、スペシャルなダンサーの方々にもたくさん出て頂いて、多くの挑戦になるような「いいもの観たぞ〜!」と思って頂けるようなショーにしたいなと思っています!
──本当に豪華な共演者の方々ですね。
まず、今一緒に踊って頂いた上野水香さん。バレエを知っている人なら誰もが「上野水香さんと踊れるなんて信じられない」とお思いになると思いますが、私も信じられない一人です。こうして上野さんも挑戦、私も挑戦というような、2人で挑戦する場面を創って頂き、本番までたくさん稽古をして不思議な化学変化が出たらいいなと思っています。
──稽古場で刺激は受けますか?
すっごく刺激的で「こういうところはこうした方がいいんじゃない?」とか「もうちょっとこうしたらやりやすくなるよ」とか、バレエ的なことは教えて頂きますし、私もきっとこの方が素敵に見えるんじゃないかなと思うことは教え合ったりして、2人にとってとても刺激的な稽古場になっています。
──本番がだんだん近付いてきて、熱が入ってきている感じでしょうか?
そうですね。本番、お客様の前でするのは緊張しますが、益々稽古を重ねて挑みたいと思います。

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──前回は退団後初のソロ、今回は2回目ということで思いも変わってくると思いますが、その違いは?
前回はやはり、宝塚歌劇団を退団して初めてのコンサートだったので、お客様とたくさんコラボレーションをしたり、自分としても外に出て挑戦している部分も何ヶ所か創らせて頂きながら、アットホームな温かい雰囲気のコンサートにしたかったのですが、今回は2回目なので、思いっきり、しっかりと見応えのあるような中身の濃いショーをしてみたいなと思ったので、そのように創りました。でも最後の方では、お客様とのコラボもしたいなと思っています。
──この1年でご自身の中で変化はどういったところですか?
今まで宝塚時代に歌っていた自分の持ち歌も今回歌うのですが、あの時歌っていいたのとは、歌い方も心情もちょっと違うので、今の自分の歌う曲になっているのがすごく不思議です。やはり退団して2年弱、色々なミュージカルにも挑戦した今の柚希礼音がそのまま詰まっているものになっているんじゃないかなと思っています。
──今日公開された最初のナンバーでは、女性らしさも出ているなと思いました。
出ていましたか?(笑)出ていたかどうかは分からないのですが(笑)前回の時だったらちょっと挑戦出来なかったようなことにも、この1年で色々なことを経験して、変化していく自分を恐れず、思いきってやってみようというところに今はいるので、他の様々な曲も、素敵なんじゃないかと思うことには勇気を持って挑戦しようと思いながら創っています。
──色々な柚希さんの顔が見られるのですね?
はい、そうです!

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──今回、横浜で行なわれる公演では、ファンからのリクエストを募集したそうですが、結果をご覧になっていかがでしたか?
たくさんの方がリクエストしてくださって、すごく嬉しかったです。いっぱいあったので。そして自分としてももこの曲なんじゃないかな?と思うものが、上位3曲に入っていたので、「わ〜みなさんと心が通じているな〜」と思いました。またそれ以外は「この曲をリクエストなんだ」という驚きのものもたくさんあって、自分が思っていたものと、「これを選ぶなんて信じられない!」と思うものにも、結構数が集まっていて、そういうことを知ることが出来たのは面白かったです。コメントも色々書いてくださっていて嬉しかったです。是非楽しみにしていてください。
──今年の限らず、来年以降の参考にもなりますか?
はい。「これって結構前に歌った曲だ!」ということもあって、なるほどと思いました。
──宝塚音楽学校の卒業式がありましたが、音楽学校のころを思い出していかがですか?
宝塚音楽学校という制度もすごく好きだったので、毎日朝から晩まで授業で芸事を習えたので、それがなくなるのは寂しいなと思いましたが、いよいよ舞台に立てるという嬉しさもありました。初舞台生の公演を観に行くのが楽しみです。
──宝塚音楽学校卒業生にエールを。
そうですね。色々大変なこともあると思いますが、ライバルは自分なので自分とたたかって頑張ってください。
──同じ曲でも宝塚時代とは感覚が違うとおっしゃっていましたが、そのあたりもう少し詳しくお願いします。
今回の5曲入りのCDを出させて頂いたことで、自分の持ち歌が10曲になりました。その中には、宝塚の現役中に出したCD、去年の『REON JACK』のCDもありますが、去年のものもすでに今とは違うし、現役中に出していたものは自分で聞いても(声が)「低っ!」と思いました(笑)。 声を出す場所が違うのか、声のあたる場所も違うのか、あの頃とは違う声なので、どのように創っていくか悩んでいるところです。先程お聞き頂いた「Two Snakes」などは、今までだったらああいう表現にはしなかったかもしれないですね。そのあたりも含めて、かっこいいけどかっこいいだけではない、というところを目指してみたいと思います。

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──上野さんとのタンゴは柚希さんがリードするところも多かったですね。
そうなんです!
──憧れの方をリードしてみていかがですか?
上野さんは私がバレエコンクールに出ている頃に、いつも1位を獲られていた素晴らしい方で、自分が一緒に踊ることでさえすごいことだと思うのに、リードするなんて!バレエの「リベルタンゴ」にはもともとああいうリードする振りがあったようで、そこからアレンジを加えているのですが、こういう風に組んで踊るのも久しぶりで、どうやるんだっけ?と思った自分もいます(笑)。こういう振りになると思わなかったのですごく新鮮ですし、でも相手が上野水香さんというすごさに感激しております。
──男役の血が騒ぎますか?
(囁くように)そうですね、ちょっと(笑)。
──思い出しますか?
こういう振りがせっかく入ったので、どっちもやるぞ!と思います。
──お客様にメッセージを。
本当にお稽古して場面が付くごとに感動で、このようにすごいメンバーの方々とご一緒出来ることが凄いなと毎日思っています。公演期間としてはそんなに長くないので、是非楽しみに、たくさん観て頂けるといいなと思っています。頑張りますのでよろしくお願いします。

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コンサート本番では、柚希礼音×大貫勇輔×クリスティアン・ロペスの3人がアクロバティックに魅せるタンゴナンバーや、柚希の持ち歌全曲、さらにはカバー曲も披露される予定。また、この日は非公開だった、柚希が披露する東京公演でのリクエスト曲も発表され、3月30日14時の部は平井堅の「even if」。同日19時の部は『ロミオとジュリエット』の「僕は怖い」で、宝塚でロミオ役を演じた柚希と、同作品の一般公演で死のダンサーを演じた大貫勇輔とのスペシャルコラボが実現する。更に31日14時の部では、柚希の宝塚時代の愛らしい作品『めぐり会いは再び…』で歌われた平井堅の「LIFE is…」が披露されるなど、各日程スペシャル感満載。柚希が新たなパフォーマンスを繰り広げるコンサートに、更に大きな期待と注目が集まりそうだ。

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〈公演情報〉
柚希礼音ソロコンサート 『REON JACK2』
音楽プロデューサー◇本間昭光
ステージング◇大村俊介(SHUN)
振付◇大村俊介(SHUN)/YOSHIE 他
出演◇柚希礼音
上野水香 [大阪・東京公演]
大貫勇輔、大村俊介(SHUN)、YOSHIE [福岡公演] 
クリスティアン・ロペス
●3/23〜26◎梅田芸術劇場メインホール
〈料金〉S 席 10,000円、 A 席 7,500円、B 席 5,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーション 0570-200-888(全日10時〜18時)
●3月30〜31◎パシフィコ横浜国立大ホール
〈料金〉S 席 10,000円、A 席 6,500円、B 席 4,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットスペース 03-3234-9999
●4/19〜20◎福岡市民会館
〈料金〉S 席 10,000円、A 席 7,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉キョードー西日本 092-714-0159(平日10時〜19時/土曜10時〜17時)
〈公式ホームページ〉http://www.reonjack2.com/




【取材・文・撮影/橘涼香】



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北翔海莉女優デビュー作品 ミュージカル『パジャマゲーム』制作発表会レポート

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元宝塚星組トップスター北翔海莉が『タイタニック』『グランドホテル』などの新演出で、今熱い注目を集めている英国気鋭の若手演出家トム・サザーランドとタッグを組んで女優デビューを果たす、ブロードウェイミュージカル『パジャマゲーム』が、9月25日〜10月15日東京・日本青年館ホール、10月19日〜29日大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演される。

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リチャード・ビッセルのベストセラー小説「7セント半」を元に、7セント半の賃上げを望むパジャマ工場の労働者と雇用者の闘いをコミカルに、そして中心人物となる若き工場長と組合員の恋をロマンチックに描いたこの作品が、ブロードウェイで初演されたのは1954年のこと。如何にもブロードウェイミュージカルらしい美しいナンバーの数々に彩られた舞台は、たちまち大評判となり、トニー賞最優秀作品賞などを受賞。分けても、『CHICAGO』でその名を轟かせている稀代の名振付師ボブ・フォッシーが、初めて振付を行った作品としてもよく知られている。
その後、作品は1957年にジョン・レイドとドリス・デイ主演で映画化されただけでなく、ミュージカル映画黄金期時代の傑作としてブロードウェイをはじめ、英国ウエストエンドでも度々再演されている。2006年にはキャサリン・マーシャル演出振付でブロードウェイにてリバイバルし、トニー賞のリバイバル賞を獲得した。 

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そんな傑作ミュージカルが、トム・サザーランド演出×北翔海莉主演という、豪華な組み合わせによって、日本で上演されることになり、2月都内で制作発表会見が行われ、演出のトム・サザーランド、出演者を代表して主演の北翔海莉、ロマンスの相手役新納慎也をはじめ、共演の大塚千弘、上口耕平、広瀬友祐、栗原英雄が登壇。公演への意気込みを語った。 

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会見は、ピアノ、バイオリン、ドラム、ベースの生演奏による豪華なパフォーマンスからスタート。まず、コート姿の北翔海莉が登場して、ヒロイン・べイブが新しく工場長として赴任してきたハンサムなシドが気になるものの、自分の気持ちを素直に認められない、男勝りな心情を歌ったナンバー。「I’m not at all in love」を歌う。2016年11月まで男役を演じてきた人とは思えない、柔らかな伸びのある歌唱が印象的だ。

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そこへ、やはりコート姿の新納慎也が登場すると、音楽はパジャマゲームを代表するラブ・バラード「 Hey There」へ。互いに恋心を抱く2人だが管理職の工場長と、賃上げ闘争中の労働組合女性リーダーという仕事の立場が、2人の愛の行く手を阻む切ない思いが、しっとりとしたメロディーに乗せて歌われる。

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一転して曲調が明るくなり、客席通路から大塚千弘、上口耕平、広瀬友祐、栗原英雄が登場。北翔も新納もコートを脱ぎ、全員蝶ネクタイに黒のタキシードという出で立ちで「Once a year day」を賑やかに。年に1度、管理職から従業員まで全員が参加するピクニックの日の華やぎを歌ったナンバーで、仕事を離れ、みんなが心から楽しむこの日をきっかけに、シドとベイブも急接近する賑やかなナンバーで場は大いに盛り上がり、早くも公演への期待をかきたてた。

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そんなパフォーマンスに続いて、トム・サザーランドを含めた出席者全員が改めて舞台に揃い、それぞれの挨拶から質疑応答へと引き継がれた。

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【出席者挨拶】

トム 皆様こんにちは。この度日本に戻ってこられて非常に光栄に思っております。ありがとうございます。『タイタニック』や『グランドホテル』を日本で演出しまして、とても素晴らしい体験をしました。『パジャマゲーム』というのは有名なだけではなくて、とても貴重な作品で、そんな作品にに関わることが出来るのはとても素晴らしい機会だと思っております。音楽・振付全てにおいて素晴らしい作品です。60年前からアメリカ、イギリスのミュージカルシーンにおいてとても影響を与えた作品で、ボブ・フォッシーが振付を手掛けたものとしても有名だと思います。なので、この作品においては特に振付はとても重要に感じていますので、ニック・ウィンストンという振付家に関わって頂くことになっております。現在、ニックは英国でも5本の指に入る振付家でございます。ウエストエンドで1番最初に『フォッシー』が上演された時のキャストメンバーでもありました。『パジャマゲーム』で「スチームヒート」という曲がありますが、そのダンサーでした。なので、彼もこのアイコニックなショーに関わることが出来ることを大変光栄に思っております。そして、彼の振付はフォッシーのオマージュですが、新しい振付も加えます。もちろんフォッシーのアイコニックなイメージは残したまま、と言いますのも、フォッシー抜きでは『パジャマゲーム』という作品は考えられないのです。そして、以前に『タイタニック』や『グランドホテル』でご一緒したみなさんとはまたお会い出来て嬉しいです。
 
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今回、北翔さんを始め、新しい才能ある皆さんにお会いできることも嬉しいです。日本の才能というのは本当に素晴らしいので再び一緒に作品を創ることが出来て光栄です。もちろん北翔海莉さんには大変に期待しています。というのも、私は日本に来ると必ず宝塚歌劇を拝見していて、宝塚は数あるレビューの中でもとても、とても素晴らしいものだと思います。北翔さんは宝塚退団後初めてのミュージカル、女性役ということで、その演出をするのが楽しみで、エキサイティングです。今、私はロンドンでチャリングクロスシアターの芸術監督に就任しておりますので、リバイバル、そして新しい作品に取り組んでおります。ロンドンにお越しの際は私のホームへお越しください。今後とも皆さんと長いお付き合いをしたいです。日本のプロデューサーの方達とこちらでお仕事をさせて頂いておりますが、今後はロンドン、日本で素晴らしいスキルをあわせたものを創っていきたいと思っております。ありがとうございます。

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北翔
 皆様本日はお忙しい中お集りくださいまして、誠にありがとうございます。この度の『パジャマゲーム』でベイブ役をさせて頂くことになりました北翔海莉でございます。21年間在籍しておりました宝塚歌劇団を卒業致しまして、今年初めて女優としての初舞台を踏ませて頂くということで、たくさんの不安がありますけれども、トムさんを始め共演者の方々、スタッフの方々からたくさんのことを学ばせて頂きたいなと思っております。今回『パジャマゲーム』をさせて頂くというお話を伺った時に、この作品はブロードウェイミュージカルのファンだったら誰もが憧れる作品の1つで、名曲の数々、ダンスナンバーの数々、たまらない作品をさせて頂けるのだなということを、大変光栄に思っております。私が演じますベイブ役は、仕事に命を掛けていて、会社の仲間を守る正義感溢れる女性です。それでいて恋に不器用なところもあって、今の自分にぴったりかなと思っております。なかなか大塚さんのように、可愛い女性の雰囲気の引き出しがないので全然出せないのですが(笑)、逆にこのベイブは、なんとも言えない男から女に変わる状況の今の私にぴったりかなと思うので、新納さんにくっついて、色々教えて頂きたいなと思います。どうぞよろしくお願い致します。

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新納
 ハンサムな工場長、新納慎也です。この役はですね、ハンサムなんです(笑)。まず、皆さんそこを太字で書いてください(笑)。実は僕、見た目はハンサムなのですけれども、なぜか日本のミュージカル界は僕のハンサムに気付かず、今まであまり、こういう二枚目をやらせて頂いたことがないんです(笑)。だいたい女装家、ちょっとあたまが弱いとか、ゲイとか、総じてキャラクターと呼ばれるような部分を演じることが多いです。何十年かに1回、二枚目が回って来るので、その貴重な1回をやらせて頂きます。「やらせてくれるならなんぼでも二枚目出来るんだけどな」と思っていたのですが(笑)、やっと念願叶いました。これを機に、新納慎也はこういう面も持っているんだよということを、アピールさせて頂きたいと思います。北翔さんは初の女性役ということですが、おそらく僕の方が女性役をよくやっています(場内爆笑)。
北翔 そうなんですね!
新納 そう、僕が演じて来た半分位は女性役なんです。
北翔 それはすごいですね!
新納 いつもストッキングを履いています。僕がドレスさばきとか教えますので。
北翔 色々教えてください!
新納 二枚目な感じはちょっと教えて頂けますか?
北翔 あぁ、それならいくらでも!
新納 じゃあ教えあいっこしましょう。
北翔 そうですね。
新納 それで、水曜日の昼間は入れ替えてね。
北翔 役替わり公演にしちゃいましょうか!(笑いと拍手)。
新納 二枚目として観客の女性たちに求婚されるぐらい頑張りたいと思います。よろしくお願いします。

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大塚 新納さんがハンサムな役のところ恐縮なのですが…(声を大きくして)美人秘書役の大塚千弘です。
新納 恐縮感ないね(笑)。
大塚 あ、ホントですか?(笑)、是非私も太字で美人秘書役と書いてください。私はミュージカルは2年ぶり位で、久しぶりなので、すごく緊張しています。美人秘書は栗原(英雄)さん演じるハインズの妻なのですが、やきもちをやいてもらえるぐらいコケティッシュにやりたいなと思っております。私は、結婚後の初のミュージカルなので、夫にもやきもちを焼かれるくらい可愛らしく演じられたらいいなと思っています。そして、トムさんがおっしゃっていた「スチームヒート」を踊らせて頂くんですね。これまで、踊るミュージカルにはそんなに出演してこなかったので、今回特訓して頑張りたいと思います。皆さんとトムさんと一緒に、素敵なミュージカルになるように頑張りますのでよろしくお願いします。

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上口 プレッツ役を演じます上口耕平です。今回テーマが二枚目ということで僕も意識しています(笑)。僕が演じる労働組合委員長はものすごく自分に自信があって、自分を二枚目と思いこんでいる人いなので、気持ちはシドを演じる新納さんに負けないよう二枚目を追求して、自分なりに演じられたらと思います。ダンスをずっとやっていた僕としては、憧れのボブ・フォッシーが振付した作品に出られるというだけで胸がときめいております。ですので、本当に楽しみにして頂けたらと思います。よろしくお願いします。

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広瀬
 チャーリー役をやらせて頂きます広瀬友祐です。本日はありがとうございます。二枚目がテーマということを今初めて知ったのですけれども(笑)、昨日トムさんと初めてお会いして役のことなどお話させて頂きました。もう、そのひとことふたこと交わしただけで心を掴まれました。早く稽古がしたいなという気持ちでいっぱいです。チャーリーはシドの友達でもあるんですが、昨日トムさんとお話した感じではとても魅力的な男性になりそうだなと思っております。精一杯体当たりで挑みたいと思います。よろしくお願いします。

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栗原
 皆さんこんにちは。栗原英雄です。私はハインズという生真面目な役、例えて言うなら自分でアイロンをきっちりかけるような、同じコスチュームを自分のオーソドックスとして、いつも着て毎日会社に行くような感じです。そして妻を嫉妬するほど愛している人です。『パジャマゲーム』はグランドミュージカルで、歌と踊りと芝居、三拍子がそろっているなと思います。最近そういうミュージカルも少なくなってきているので、これは楽しみにして頂いていいんじゃないかと思います。トムさんが斬新な演出をなさると思いますのでそこも見所ですし、振付の方も凄い方なので見所はたくさんあります。僕もミュージカルは2年ぶりで、前回はトムさん演出の『タイタニック』です。
新納 僕も2年半ぶり位のミュージカルです。
上口 すごいですね!皆がこんなに何年ぶりのミュージカルって!
栗原 斬新じゃないですかね。そこで初女性役というね。
北翔 はい!
栗原 フレッシュなメンバーということで、出演者、みんなで楽しんで創っていきたいと思います。三枚目を演じます、栗原英雄でした(笑)。

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【質疑応答】

──キャストの皆様、改めて『パジャマゲーム』という作品への出演が決まった時の心境と、この作品に感じている魅力を教えてください。
北翔 本当に今皆さんのお話にもたくさん出て来ましたが、ナンバーがたくさんあって、とにかく歌って、とにかく踊って、体力が持つんだろうかというような作品の内容になっていますので、今まで自分が培ってきたものを、今度は女優として表現するので、精一杯表現したいなと思っています。今日の制作発表もそうだったのですが、男性の方と歌うのが私は初めてで、最初に譜面を頂いた時にはシドのパートをずっと読んでいて(笑)、ベイブのところになってから「あ、私こっちなんだ」と気づいたような状態でした。しかも、私が歌いたいなと思うような歌は、男性が歌われますので、やっぱりこれは役替わり公演をしないともったいないなと思っているのですが(笑)。歌、そしてフォッシーの踊り、「ピクニック」という場面などはどのくらい踊るのか想像がつかないのですが、1幕から色々と繰り出されるので、2幕はどうなるんだろう?とお客様のワクワクが止まらないような作品になっていると思うので、2幕のラストまでお客様の心を鷲掴みにできるように頑張りたいなと思います。

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新納 決まった時は、先ほども言いましたけれども「よし来た!2枚目!」という感じでしたけれども(笑)、その後英語を観させて頂いたり、台本や譜面を読ませて頂いて感じたのは、先ほど栗原さんもおっしゃっていましたが、最近日本のミュージカル界が、歌がメインの、大悲劇なものがわりと多いと思うんです。でも僕が若い頃ミュージカルを観て楽しいなと思っていたものは、お話はわかりやすくて、歌とダンスが満載で、わーっと終わって「あぁ面白かった!さあ、何を食べようかな?」とパッと思えるような作品だったんです。最近そういった作品が本当に少ないので、この作品は「ザッツ・ミュージカル!」な楽しみ方を日本でもできるよ!という作品だと思います。貴重な作品ができることをとても嬉しく思っていますので、そういう風にお客様にも観て頂けたらと思っています。
大塚 私も新納さんがおっしゃった歌主体のミュージカルの方が結構経験があって「スチームヒート」を踊るグラディス役というのが頂けたので、本当に頑張りたいなと。あと、グラディスの曲でもう1つ「Hernandos Hideway」という曲があるのですが、それは新納さんに歌うんですよね?
新納 そうですね。
大塚 私はどちらかと言うと新納さんが二枚目をやっているのを観たことがなくて。
新納 皆観たことないです(笑)。
大塚 ストッキングを履いているイメージが強いので(笑)、そこを変換させて。
新納 頑張ってください(笑)。
大塚 素敵なシーンになるようにしましょうね。
新納 僕もめっちゃ二枚目になります!
大塚 私もコケティッシュに!
新納 頑張りましょう!
大塚 良いシーンにしましょうね!そんな感じです。

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上口 さっき新納さんがおっしゃったように、僕も小さい頃からテーマパークとかが好きで、そのエンターテイメントな世界がすごく好きだったので、この1950年代のミュージカルは憧れの時代なので、そんな時代に作られたものに参加できるということだけでも、嬉しくてしょうがないです。ワクワクしています。作品の魅力は、古き良きという言葉がよく使われると思うのですが、僕が今観て感じる印象としてはすごく斬新なんですね。当時の作品って人の力の温かさや、人間の愛がいっぱい詰まっている、そしてイマジネーションを沸き立たせてくれるんです。さっきも話に出たピクニックのシーンでも、バク転して、踊りまくって、というミュージカルを観たことがなくて。でもそれでハッピーだということを表現していて、それがやはり今、とても斬新です。そういう作品を改めてやるということで、きっとお客様も懐かしい、温かいという気持ちと同時に、新しい世界を観ている感覚になるんじゃないかな?と思っています。
広瀬 僕は『パジャマゲーム』の魅力を語るにはまだまだ勉強が足りないのですが、僕自身が今まで観て来た作品の中で、すごくわかりやすくてシンプルな作品で、皆さんがおっしゃっているような、歌って、踊って、芝居してというストレートにど真ん中のエンターテイメントだなと思っています。この作品への出演が決まった時に、ミュージカル・コメディだと伺って、はじめてコメディだ!と。僕最近愛人のいる役ばかりだったので(出演者からへ〜!という驚きの声があがる)「やった!」と思いました。本当に楽しみにしていますし、トムさんと役について話した時に「とてもピュアな役だ」ということで、愛人もいないし(笑)、すごく誠実に楽しみながらやりたいなと思っています。
栗原 お話を頂いた時には率直に言って緊張しました。ハインズ役は、狂言回し的に物語を進めていく役なので、その責任が大変だなと思いました。作品の魅力は、皆さんからほとんど出ましたけれども、ずいぶん前の時代の話なのですが、人にはそれぞれの立場があって、色々な立場の人間を描いているものなので、今の時代にもすべての方に色々なポイントで共感して頂けると思います。それで、最後には新納君が言ったように「楽しかった!」で終われるミュージカルなので、楽しめればと思います。

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──トムさん、日本で上演された前2作『タイタニック』『グランドホテル』は大変な評判でしたが、日本で日本語で上演される作品の演出と、イギリスで英語で演出される作品とに違いがあるかどうかを教えてください。
トム 難しい質問ですが、母国語以外の言葉のものを演出をする瞬間というのは、結構解き放たれるものがあります。なぜなら、感情というのはキャッチだからです。言語がわからない状態で演出をすると、感情が直結してつながる感覚があります。言葉はわからなくても、伝わったり、感動したりする。というのが「人間」というものは万国共通だからで、感情が伝わります。でも日本語も覚えたいと思って頑張っています。まだまだですけれども(笑)。
──では北翔さん、最後にご挨拶をお願い致します。
北翔 皆さん本日は本当にありがとうございました。この『パジャマゲーム』は海外でも何度も上演されている作品で、皆様のイメージというものがあるかと思いますが、今回の2017年日本版、ここにいる皆さんと、今日は来ていない共演者の方方と、このメンバーでしか出せないカラーの『パジャマゲーム』を皆様にお届けしたいなと思っております。またミュージカルコメディということで、歌って踊ってハッピーエンドの作品を皆様に観て頂いて、明日からも頑張ろうと思って頂けるエネルギーや、勇気みたいなものをステージの上からお届けできたら、それが私達の仕事にとって1番嬉しいことかなと思っておりますので、共演者、そしてスタッフ一同力を合わせて一生懸命精進して参りたいと思います。本日は本当にありがとうございました。


【囲み取材】

和やかな会見で温かい雰囲気が続く中、北翔海莉と新納慎也による囲み取材が行われた。
 
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──パフォーマンスを終えての感想を改めて教えてください。
北翔 ステージの上に男性の方がいるっていうのが本当に初めてのことでしたので、大変緊張致しましたが、でもどこかで安心する、あぁこういうものなのか、というのを初めて気づかされたものもあり、今日制作発表のステージに皆さんと一緒に立つことができて、またユニークな方々なので早く稽古場に行って、皆で作品作りがしたいなと思いました。
新納 僕ら舞台の場合は1ヶ月くらい稽古をしてからステージで歌うんですけど、今回2、3回しかやっていないんですよね?
北翔 はい。
新納 だから今日は大目に見てください、ということで(笑)、本番にはこの100倍くらい上手いものを観せられると思うので、今日はこんな曲もありますよ、というレベルで聞いて頂ければと思います。でもそうは言いますが、北翔さん、僕は宝塚退団したばっかりという方と何度か共演させて頂いていますけれど、性転換上手く行っているほうですよ!
北翔 えっ?本当ですか?
新納 ええ、もう少しゆっくり性転換される方もいらっしゃるので、早いほうです(笑)。
──お2人がチャンジする公演も面白いんじゃないか?というお話でしたが。
北翔 ねぇ、今から企画し直しても良いんじゃないかと思うくらいです。
新納 チケット代がちょっと35.000円くらいになりますけれど(笑)。
──相当人が集まりそうですね!
新納 集まりそうですよね!
──北翔さんは男役時代とはずいぶん歌のキーが違われたかと思いますが、いかがでしたか?
北翔 今まで21年間歌ってきたところと、1オクターブ上なので結構大変だなと思ったのですが、これからもっと本番に向けて強化して、素敵な曲ばかりですので、ちゃんとお客様を魅了できるような、癒やせるような歌にしていきたいなと思います。
──新納さんはデュエットされてどうでしたか?
新納 先ほども言いましたけれど、それは宝塚の男役の方って何十年も男性役を研究されてきて、男としてしか舞台に立ったことのない人達が、外に出ていきなり女性のキーで歌わされるってやっぱり大変そうなんですが。北翔さんはちゃんと女性らしく高いキーもスコーンと出るし、違和感なく歌わせて頂きました。「この人男だったんだな!」みたいな感覚は全くないですね。騙される感じです(笑)。
北翔 騙していきたいと思います(笑)。

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──新納さん、女性役としてのアドヴァイスは?
新納 今僕が、女性に向かって言うんですか?(笑)、どういうことをしちゃうんですか?宝塚の男役の方は。
北翔 どうしても足を開いて立ってしまうんです。寄せるということがなかったので。
新納 僕ら女性役をやる時には、稽古場から短いスカートを穿いてヒールも履きますね、ずっと。そうすることによって、足を開いて立ったり座ったりするのが、男でも恥ずかしくなるので、だんだん寄せるようになりますから、是非稽古初日からミニスカートで。
北翔 まだスカートを買ってないんです!
新納 さっき裏で訊いたんですよ。「スカート買ったんですか?」ってね。
北翔 まず私服のスカートを買うところから徐々に(笑)。
──お互いの印象や魅力を語ってください。
新納 まだ付き合いも浅いので(笑)。
北翔 でも、本当にこの作品にピッタリの方だなと。
新納 本当でしょう?(笑)。
北翔 スラッとされていますし、まず私より身長が高いということで安心しました。
新納 そこは、そういう人を探したんだと思う(笑)。
北翔 でも本当に恋に落ちて行く内容なので、恋愛に不器用な役柄でもありますから、私自身がどうやってやっていけば良いのかわからない部分を上手く使って、新納さんの懐の中におさまっていけるようにお芝居作っていきたいなと思います。
新納 ベイブっていう女性が元々強い女性で、それでもやっぱり中身は女性で、少しずつ少しずつ女性らしい部分が見えてくるというチャーミングさがあるんですけれども、そういう部分はピッタリですよね。強い女性はやったことがあるでしょう?宝塚で。
北翔 はい。
新納 更に男役をやられていた強みと、稽古場で見せる可愛らしさを舞台上でも是非見せて欲しい。でも急に女性らしくなるとファンの方はびっくりされちゃうのかな?
北翔 どうなんでしょうか。そこは皆さんどうなのかな?
新納 むしろ小出しにしない方が良いですよね。バーンって見せて、びっくりさせた方がファンの人も割り切れるんじゃないですかね?
北翔 ショックを受けないでしょうか。
新納 魅力的なら良いんじゃないですか?いつまでも男役らしいのも、かえって心配させちゃうかも知れないから。
北翔 はい、頑張ります。

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──では意気込みをお願いします。
北翔 今回本当にミュージカル界の素晴らしい役者さんが揃ってくださって、すごく豪華なキャストだなと第一印象で思いましたので、本当に皆様とご一緒にステージを作れるのを幸せに思いますし、たくさんのことを勉強させて頂きたいなと思っております。何よりもこの作品を通して皆様にミュージカルの本来持っている力、エネルギーをお客様にお伝えできればと。やはり海外に比べて日本はミュージカルへの意識が少しだけ薄いのかな?と思う部分もあるので、もっと日本中の人が、そして世界中からも日本のミュージカルが注目して頂けるような作品になるように、頑張りたいなと思います。
新納 色々なミュージカルのパターンがあって、さっきも言った歌が中心のミュージカルや、最近では「2.5次元」というものもあるのですけれども、最近この種類のミュージカルが少ないので、トム・サザーランドが演出で、しかもフォッシーのDNAを持った人が振付に来てくれる。まさにミュージカルのベースを珍しく日本でやれるということなので、最近ミュージカルを観初めて、あまりミュージカルは詳しくないわ、という方ですとか、2.5次元や、暗いミュージカルを多く観て来たという方にも、本来のミュージカルの魅力はこういうものなのだとわかって頂けるような作品になればと思っています。

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〈公演情報〉
ミュージカル・コメディ『パジャマゲーム』
原作◇リチャード・ビッセル 
脚本◇ジョージ・アボット、リチャード・ビッセル
作詞・作曲◇リチャード・アドラー、ジュリー・ロス
翻訳・訳詞◇高橋知伽江 
演出◇トム・サザーランド
出演◇北翔海莉、新納慎也、大塚千弘、上口耕平、広瀬友祐、栗原英雄 ほか 
●9/25〜10/15◎東京・日本青年館ホール
〈料金〉S席 11.500円 A席 8.500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉0570-077-039
●10/19〜29◎大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
〈料金〉11.500円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉06-6377-3888
公式ホームページ http://pajama-game.jp/



【取材・文・撮影/橘涼香】



えんぶ4月号 




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賀来千香子・水野真紀・紫吹淳・壮一帆 新たな四姉妹であでやかに開幕!明治座3月公演『細雪』

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新しい四姉妹による『細雪』が、日本橋浜町の明治座で3月4日開幕した!
昭和十年代の大阪船場を舞台に、戦争に向けて大きく変わろうとしている時代の中にあって、それぞれの矜持を貫く四姉妹の姿を描いた不朽の名作である。(4月2日まで)

谷崎潤一郎原作、菊田一夫脚本により、1966年に初演の幕を開けた『細雪』は、以来50有余年、数々の名女優たちが、華を競い受け継がれ、女優芝居の金字塔として輝き続けている。
今回の上演はその38演目にあたり、2009年の公演から次女・幸子役を演じてきた賀来千香子が長女・鶴子役に、2011年の公演から三女・雪子役を演じてきた水野真紀が次女・幸子役に、そして初役として元宝塚トップスターの2人、紫吹淳が三女・雪子役、壮一帆が四女・妙子役を演じる、新たな四姉妹が揃った、新生『細雪』の誕生であると同時に、初日に上演回数1500回に達した記念の公演ともなっている。

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【物語】 
昭和十年代の大阪船場。徳川の時代から続く木綿問屋・蒔岡商店には、美しい4人の姉妹がいた。先代の父から譲り受けた家業の暖簾を守り、格式を重んじる長女・鶴子(賀来千香子)。分家して神戸・芦屋に住まいを構え、妹たちを優しく見守る次女・幸子(水野真紀)。数多の縁談を断り続け、婚期が遠のいていく三女・雪子(紫吹淳)。ハイカラで活発、人形作家としての自立の道を切り拓いて行こうとしている四女・妙子(壮一帆)。時代が戦争に向けて大きく動き出している中でも、優雅さと誇りを忘れない美しき四姉妹は、それぞれの思いでそれぞれの人生を歩んでいた。
だが、ついに日中戦争が勃発。時代の流れに乗り遅れた蒔岡商店も、取引先の倒産と共倒れになる形で倒産してしまう。それでも本家の威厳を捨てきれない鶴子。待望の2人目の子供を流産した悲しみの淵にいる幸子。度重なる見合いの破談に傷付きながら、尚運命の人にめぐり会えることを待ち続ける雪子。芦屋が見舞われた例を見ない大水害の折、自分を助け出してくれた時の傷が元で亡くなった恋人を思い、悲嘆にくれる妙子。姉妹たちは自分たちのいる世界が古き良き時代が、すでに過去のものになりつつあることを感じ初めていた。それでも姉妹たちは美しくあることを貫く。その姿は散るからこそ美しい、満開の紅枝垂桜のようだった…。

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三幕からなる舞台は、大阪上本町の蒔岡家の本家、神戸芦屋の蒔岡家の分家に、ほぼ集約されて進んでいく。唯一の外の世界は四女・妙子が個展を開いた神戸・鯉川筋の画廊がただ一度登場するのみで、昭和十二年の春から、十四年の春までの二年間に、四姉妹に降りかかった様々な困難、大きな時代のうねりが二つの家の中に限定された描写だけで、全く無理なく進んでいくことに、改めて感心させられる。
純日本家屋の本家と、洋館作りの分家、それぞれがきちんと2階にも上がることのできるしっかりとした作りで、蒔岡家の格式を感じさせてくれる。姉妹たちの衣装をところ狭しと虫干しする華やかな場面、水害に見舞われる嵐の夜の抑制の効いた描写、そしてすべてを見守る桜。隅々までに贅を尽くされた舞台から、静かに、だからこそ確かに立ち上る高貴な香りは圧巻で、今後これだけの舞台を新たに作ることができるのだろうか、と思わされるほどだ。ここには、芝居見物が特別なハレの日のものだった時代の、美しさが隅々にまで詰まっている。

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しかも、そこで艶やかに、あたかも華やかさを競うかのように生きていく四姉妹のそれぞれが、どんなに時代が移り変わろうとも、誇りを貫き、美しく在ることをやめない姿に、今、滅びようとしている、人が本来在るべき姿への憧憬が満ちていて、胸を衝かれずにはいられない。この四姉妹の凛とした矜持には、将来への不安や、不穏な空気が充満していることを感じる今の時代に、忘れてはならないものを思い出させてくれる力がある。本音をさらけ出すことは決して美徳ではない。誇り高く、在るべき姿の為に張る意地こそが、人が人である為に必要な美徳だ。そう教えてくれる『細雪』が、いつまでも上演を重ねていく、人々に常に求められる作品である理由はそこにある。逆に言えば、この作品が求め続けられている間は、まだ日本も捨てたものではない。そんな希望がこの作品には確かに備わっている。

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そうした作品のすべてを体現している四姉妹、代々の名女優たちの歴史にまた新たな名を刻んだ4人が、それぞれに素晴らしい演じぶりで、作品世界に位置している。
 
長女・鶴子役を今回から担った賀来千香子は、いつまでも若く美しく、現代的な役柄も多彩にこなす才気煥発ぶりを、名家に生まれた誇りと、老舗の暖簾を守り抜こうとする鶴子の中に、どっしりと落とし込んだ様が見事だ。さすがに長年『細雪』の世界に身を置いてきた人ならではの格の高さがあり、1500回から更に次の記録へと向かう新生『細雪』を牽引していく力強さと共に、ふと見せる脆さの表現も魅力的だった。

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同じことがやはり今回から次女・幸子に扮した水野真紀にも言えて、『細雪』の世界観に馴染んでいる人ならではの、雅な在り様がなんとも美しい。そもそもの持ち味が和の美人画を連想させる人であることも強みで、姉や妹たちに常に気を配り、優しさに満ちているが故に、時に楯ともなる幸子の気丈さの表現も卓越していた。

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三女・雪子で『細雪』デビューを果たした紫吹淳は、宝塚の男役時代の気障を極めたが故に自由だった姿と、女優としての現在、特にテレビの世界で親しまれている、どこか浮世離れしたキャラクターの双方が、このどんなに傷付いても白馬の王子様を、運命の人を待ち続ける雪子の表現に生きている。いつもどこか夢の中にいるようでいて、決して己を曲げない。儚げに見えて実は4姉妹の中で最も芯の強い女性である雪子を、しっかりと自分のものにした実に鮮やかな好演だった。

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四女・妙子の壮一帆は、姉妹の中で唯一洋装もし、思い切った行動も取る役柄が、女優としての歩みを進める壮の現在と上手くリンクした効果があった。宝塚時代から竹を割ったような爽やかな表現に特段の魅力があった人だが、その勢いが妙子のまっすぐ己の信じるところに向かって行く生き様によく合っていて、妙子が劇中に経験する様々な出来事を経たからこその、終幕の登場もすっきりと決まり、壮ならではの妙子像が構築されているのが頼もしい。
 
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この新たな四姉妹をめぐる男優陣も充実していて、長女・鶴子の夫辰夫は磯部勉のベテランらしい豪快さと滋味深さ。次女・幸子の夫貞之助を演じる葛山信吾の真摯で温かな立ち居振る舞い。

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三女・雪子の"運命の人”である御牧の橋爪淳は、少ない出番で「この人が雪子の王子様だ!」と思わせる気品ある紳士ぶり。四女・妙子をめぐる男たち、啓三郎の太川陽介には、お坊ちゃん育ちらしい役柄の勝手気ままに憎めない愛嬌を加味するスター性があり、カメラマン板倉の川崎麻世は、主要な登場人物の中で1人出自が違うことを的確に表した物腰で、いずれも十二分に役割を果たしている。また脇の役者たちそれぞれの行儀の良い芝居も見逃せない。

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枝垂桜の下に四姉妹が揃う圧巻のラストシーンまで、これまで受け継がれ、そしてこれからも上演が続いていって欲しい、続いていかせなくてはならない、演劇の美学に満ちた舞台となっている。

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【囲み取材】

初日を翌日に控えた3月3日、通し舞台稽古が行われ、四姉妹を演じる賀来千香子、水野真紀、紫吹淳、壮一帆が囲み取材に応えて、作品への抱負を語った。

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壮一帆、水野真紀、賀来千香子、紫吹淳

──いよいよ明日から初日ということで今の意気込みをお願いします。
賀来 新しい四姉妹になりまして1ヵ月ちょっとお稽古をさせて頂いて、良いお稽古ができましたし、4人の親睦も深まりましたので、いよいよだなという気持ちで心をこめて頑張りたいと思います。
水野 初日が1500回上演の日なので、その舞台に立たせて頂くということを非常に光栄に思っております。新生『細雪』ということで、今回お着物もすべて新調しております。ピカピカの着物を見て頂けることもウリでございます(笑)。
紫吹 歴史ある『細雪』に初めて出させて頂くので光栄であると同時に、背筋が伸びる気持ちで、ひと足早く明治座の方で桜を見に来て頂けますので、そして桜のように咲いている私たちも見て頂けたらなと思います。
 珍しくと言いますか、とても緊張しています。色々勝手が違うところがあったので。でも客席で舞台稽古を拝見していた時に、賀来さんと水野さんが醸し出される『細雪』の世界観というものを、オーラをすごく感じたので、私も頼もしいお姉様方についていって、『細雪』の姉妹の1人としてこの公演に花を添えられるように、集中して頑張っていきたいと思いました。
──4人で親睦を深めたとのことですが、どんなことをなさったのですか?
賀来 プロデューサーさんとか、演出家の方とご一緒にご飯を食べたりですとか、あと稽古場でも4人が近くに座っていましたので、それぞれのキャラクターでよくね(4人で頷きあう)、皆面白いんです。
紫吹 お姉ちゃんが一番面白いわ。
賀来 あなたに言われたくないわ(笑)。でも本当に姉妹のように仲が良いのですが、良い緊張感もあって、やはり作品が良いと皆モチベーション高く、真摯な形でお稽古に望んでいました。
──賀来さんは前回まで高橋惠子さんが演じていた長女役ということで、プレッシャーなどはありましたか?
賀来 それはありますね。どうしても高橋さんの鶴子が自分の中に残像として残っていたり、高橋さんの台詞が音として残っていますので、そのありがたみやら、寂しさは置きながら、自分の鶴子を作るようにと、演出家の方やプロデューサーの方が言ってくださいましたので、皆そのようにしたと思います。

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──水野さんは賀来さんの次女役を引き継ぐという形になりましたが。
水野 はい、私は四半世紀以上前からこの『細雪』は観続けて来たんですね。20歳の頃から。女優さんが変わる度に観ておりまして、最初は新珠三千代さん、あと、古手川祐子さんだった時もありますし、そして賀来さんと観ておりましたので、もちろんプレッシャーもあるのですが、ちょっと自分にわくわくしてしまうというか、どんな幸子になっていくんだろうか?という楽しさがありました。
──紫吹さんが今度は水野さんがなさっていた三女役を今回新しくということですが、いかがですか?
紫吹 世の中では、私結構「お嬢キャラ」とか言われていますけれど(笑)、本当のお嬢様になった気持ちで、本当のお嬢様だな、お嬢様って大変ねと。
賀来 そうなんだ(笑)。
──どんなところが大変なのですか?
紫吹 すべてです。4人の中でも特におとなしいという役なので、かなり頑張ってます(笑)。
賀来 おとなしくするのに頑張っているの?
紫吹 おとなしくするのと、あとは品格を持って、その中でも芯を持ってというところで、歴代たくさんの女優さんが演じられていますけれども、私なりの雪子を苦労しながら作っていますので、是非観にいらしてください。
──壮さんは一番下の四女ということでいかがですか?
 活発な役ということなんですけれども、どうしても活発過ぎてしまうところがあって、今日の舞台稽古も大変なことになったんですけど(笑)。振り袖でお芝居をしたことがなくて、立ち座りの時に踏んでしまったりですとか、慣れない草履で滑ったりですとか、スタッフさんを含めて大騒ぎになってしまいました。
水野 振り袖を着る前から「男」だったのよね(笑)。
 はい(笑)。
紫吹 振り袖を着る機会がなかなかないのよね。私は20歳になる前から宝塚に入っていて男役だったので、振り袖を着る機会がなくて…(壮に)着たことある?
 撮影ではあるんですけど。
紫吹 私撮影でもないから、今こうやって綺麗なお着物を着させて頂いて20歳の気持ち(笑)。
賀来 (笑って)可笑しいでしょう? この4人を仕切るので、良い感じの笑いがね。

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──賀来さんはやはり座長としてまとめないといけないと思うのですが。
賀来 いえ、もうこれは4人が座長ですし、ただ自分が一番年上だということと鶴子役ということが重なっておりまして、高橋さんが「鶴子は大変なのよ。蒔岡家を守るから」とおっしゃっていたのがよくわかります。良い意味でピンと背筋が伸びております。
──今回新キャストに元宝塚トップスターの方をお2人迎えての『細雪』なので、新しく踊ったりするシーンが入るのかな?と。
賀来 踊って頂きましょうか(笑)、ねぇ?
 そうしたらもれなく、お姉ちゃんたちが相手役をしてくださることに(笑)。
紫吹 そうです、もちろん(笑)。
水野 でも最後の方にちょっと「あ、宝塚」ってね。
賀来 そうなのよ!
水野 感じさせる場面もあるので、そのあたりも。
紫吹 でもそれはずっと幸子お姉ちゃんがやってきたことで(笑)。
水野 響きが違う!(笑)
賀来 そう、響きがね。
 そうなんですか?
賀来 来た、来た、来た!とね(笑)。
紫吹 声大きいですか?
水野 「あ、宝塚」って思うわよね。
賀来 (手を羽のようにひらひらさせて)こうしようかと思った。(笑って壮に)いいのよ、出て来ても!一緒に(笑)。
 はい!(笑)
紫吹 ハモって(笑)。
──見どころいっぱいのようですね。 
賀来 本当に見どころいっぱいです。1500回代々皆様に受け継がれて、お客様もリピーターの多い『細雪』ですので、ひと足早く桜を皆様と共有させて頂きたいと思います。

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──この枝垂桜のセットがとても特徴的ですが、どんなシーンで使われるのですか?
紫吹 それは見てのお楽しみです。
賀来 クライマックスね。
水野 20歳の時にこれを見て「あ」と胸をドキュンと衝かれて、リピーターになりました。
──それくらい印象的なシーンなのですね。
賀来 私も今日、舞台稽古の途中、客席で拝見していて、自分が出させて頂くのですけれど、綺麗だな〜と思って、動画を撮ったほどでした。
──明日の初日で1500回ということで、改めてそこまで上演が続く『細雪』の魅力とは?
賀来 やはりお着物だったり、桜だったり、大阪の船場の言葉だったり、これだけ華やかなものがなかったことと、今、日本らしい舞台が少なくなって来ましたよね。皆さんがお好きな、残しておきたい、忘れたくないものが凝縮されているような、綺麗なことも大事な舞台が、皆さんを引きつけているのではないかと私は思っています。
──今日は3月3日のひなまつりですが、楽屋で何かなさいましたか?桜餅とかは?
賀来 誰か差し入れしてくださらないかしら(笑)。
 待ってます!
紫吹 今日はそれどころではなかったので。
水野 本当に大変な1日でね。
賀来 そうですね。でもおひな様は出しました。どうぞ皆様、明日の初日からよろしくお願い致します。
3人 よろしくお願い致します。

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〈公演情報〉
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『細雪』
原作◇谷崎潤一郎
脚本◇菊田一夫
潤色◇堀越真
演出◇水谷幹夫
出演◇賀来千香子 水野真紀  紫吹淳 壮一帆 他
●3/4〜4/2◎明治座
〈料金〉S席(1階席・2階前方席)13,000円 A席(2階後方席)9,000円 B席(3階2階前方席)席)6,500円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター 03-3666-6666(10時〜17時)



【取材・文・撮影/橘涼香】


『細雪』 




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新しく生まれ変わった傑作ミュージカル『アルジャーノンに花束を』開幕!矢田悠祐、水夏希囲みインタビュー  

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日本でも発行部数300万部を超える巨匠ダニエル・キイスの名作『アルジャーノンに花束を』(早川書房刊)のミュージカルが、キャストを一新し、2017年に装いも新たに蘇った。
 
原作が発表されたのは1959年。以後、小説を元にアメリカ、カナダ、フランスで映画化され、日本でも02年、15年にテレビドラマ化されている。そんな作品群の中でも、荻田浩一演出による9人の出演者だけで紡がれるミュージカルは、06年の初演時からの美しい音楽と、幻想性も加えた演出があいまって大評判となり、14年にも再演。傑作ミュージカルとして人々の心に深く刻まれている。
初演の06年、再演の14年と浦井健治が挑んだ主人公のチャーリィ・ゴードンには、ミュージカル初主演の矢田悠祐、そんな彼を見守り続けるヒロイン、アリス・キニアンには、元宝塚雪組トップスターで女優の水夏希を迎えて、演出は今回も荻田浩一が、この新メンバーでの再々演に挑んでいる。

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【あらすじ】
32歳で6歳の知能のパン屋の店員チャーリィ・ゴードン。そんな彼に、夢のような誘いがあった。とある大学の偉い教授が頭を良くしてくれるというのだ。この申し出を受けたチャーリィは、先に脳手術を受けて天才的な知能を得たハツカネズミのアルジャーノンを見て、自分も脳の手術を受けることを決心する。そしてチャーリィは天才に変貌していくのだが…。

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まず初めにスポットライトが当たる舞台に登場するのは、女性教師アリス・キニアン。シックな紅色のシルキーな服装の佇まいが美しくエレガント。そして、そっと慈しみ溢れる微笑みで手を差し伸べ、チャーリィを研究所に案内する。
チャーリィは脳の手術を受けて、6歳児の知能の人間がわずか数週間の間に60歳以上の知能へと変化していく。だが知能の爆発的な発達と、感情、つまり内面の成長がバランスが取れないことも、この作品の大きなテーマでもあるのだが、舞台の序盤では、彼の知能の発達ぶり、目に見える変化に注目が集まっていく。動きは子供特有の激しく体当たり的な状態から、大人びてシックになり、着る服は子供のような服装から、ジャケットを羽織るなどダンディな様子へと変わっていく。
知能が発達していくチャーリィに芽生えていくのは、自我であり、エゴであり、そして自分が他人とは違うという「自分は誰か」という問いだ。それらが数週間という短い時間に詰め込まれるために、感情と答えが追いついていかない。なぜ、人は人を傷つけるのか? そしてどうして自分は他人を見下したりするのか? 自分とは何か? そんな思いに悩み始めてしまうチャーリイ。

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矢田悠祐は、そんなチャーリィの知能の発達の喜びと混乱を演技と歌で見事に伝えてくる。もともと歌唱力では定評がある矢田だけに、チャーリィの内面の変化をその時々で歌い分けて圧巻だ。美しいバリトンボイスで朗々と歌う箇所、また感情を込めて歌う場面では喉をめいっぱいしならせ、場面によっては伸びやかに優しく、そして悲しく、やるせなく、歌声を響かせる。ピュアな顔、高慢な顔、そして絶望、浄化、チャーリィの様々な顔がその歌声から見えてくる。

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水夏希のアリスは、チャーリィの成長を微笑ましく見守りながらも、同時に彼に芽生えたエゴや自我、あるいは自分に向けられた愛に戸惑う姿を、人間的に表現する。苦悩、煩悶、幸せ、愛、慈しみなどの感情の表出を、めまぐるしく展開していく音楽に合わせて変化させる。声質や感情の込め方なども含め、その転換が鮮やか。年上の女性が持つ包容力を感じさせながらも、どこか少女のような繊細さもあって、魅力的なアリス像だ。

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このミュージカルはチャーリィの知能の発達が早いので、場面展開もそれに合わせたスピーディになっているのだが、それを語りで伝えるだけではなく、シーンごとに異なった曲調の歌で構成することで、違った表情の場面を見せて、観客を置いてけぼりにしない萩田浩一の演出が素晴らしい。そして、そんなジェットコースターのようなシーンを1つ1つ確実に生きていく9人の役者たち。
役柄は、矢田のチャーリィと水のアリス、そしてアルジャーノンの長澤風海だけがほぼ固定されて、他の6人は何役も演じながらストーリーが展開していくのだが、なんといっても歌のアンサンブルの統一感が見事。激しい稽古の果てに得たチームワークで出来上がったカンパニーの結束力を感じる。

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チャーリィの妹・ノーマ役は過去と現在を2人の女優が演じている。現在のノーマ・皆本麻帆は、母親役も同時に演じていて、知能が遅れている我が子への焦りで苛立つ母と、ノーマ役ではそんな母を今は介護しながら、過去のチャーリィへの仕打ちに苦しむ姿を表現する。
過去のノーマ・吉田萌美は、チャーリィに自分の立場で立ち向かって忌み嫌う。彼女が求めているのは、自分が注目されていたい、愛されたいという渇望でもある。そんな内面を演技と歌で伝えてくる。

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チャーリィの脳手術の責任者であるニーマー教授の小林遼介は見事な歌唱力。教授ではチャーリィの成長ぶりに驚きながらも、彼を実験対象としかみない科学者のエゴイズムを表現する。小林のもう1つの役のチャーリィの解雇のきっかけを作るパン屋の店員では、知能が発達したチャーリィを疎ましく思う人間像を演じている。
ニーマー教授の右腕であるストラウス博士役の戸井勝海は、チャーリィの苦悩を理解してくれる存在だ。ストラウス以外にも、チャーリィを雇ったパン屋の主人、床屋を営む父親役など、一貫して父性を感じさせる役柄で温かみを感じさせる。それだけに成長したチャーリィと父のすれ違う思いが切ない。二幕ラストのソロではその歌唱力の素晴らしさを感じさせる。

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研究員のバート・セルマン役は和田泰右で、チャーリィとアルジャーノンの良き理解者として常に彼らを守ろうとする。ニーマー教授から身を呈してチャーリィを守り、彼を解放しろと歌うさまがかっこいい。ほかにもパン屋の店員やニューヨークの若者など、さまざまな場面で存在感を示す。
 
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天才となったチャーリィが自我に目覚め、アルジャーノンと単身ニューヨークに渡り放蕩生活を送るとき、隣の部屋の住人で束の間の恋人となるのが、絵を描く女性フェイ・リルマン。奔放でキッチュでモダンな女性を、蒼乃夕妃がチャーミングに演じている。 

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そしてアルジャーノン役の長澤風海。まるで身体の重さがないようなその動きはなんと魅力的なことだろう。チャーリィとアルジャーノンはいわば映し鏡であり、アルジャーノンはチャーリィの心象風景、混乱、喜び、期待、失望そのものだ。その揺らぎや波を、長澤は美しい照明や音楽の中で豊かな身体表現で見せてくれる。そう、長澤アルジャーノンの動きは、感情は生き物だということを教えてくれるのだ。
 
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音楽を手がけているのは斉藤恒芳で、葉加瀬太郎や竹下欣伸と共に「クライズラー&カンパニー」で活躍。クライズラー&カンパニーは、1曲の中でクラシックをポップスにアレンジしたり、ジャズをファンクにしたりと、ポリリズムや転調で激しく曲調を変えるダイナミックなバンドだ。そんな斉藤が、まだ宝塚の演出家だった時代の荻田浩一と積み重ねてきた共同作業が、1つの大きな成果として結実したのが、この『アルジャーノンに花束を』で、だからこそこのミュージカルの音楽が素晴らしいのだと、改めて頷くのだ。

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この作品は知能を人工的に発達させた時、人は本当に幸福になり得るのか?という重いテーマを突きつける。同時に、「自己承認の物語」であるとも言えるのだ。チャーリィが手術をしてまで自分の存在を認めてもらいたいのは、「愛」を求めているからだ。幼い時に親や妹の不理解によって得られなかった家族からの「愛」、そしてアリスの「愛」。そして、ひたすら愛を求めた彼が最後に自らの「愛」を差し出す。
そんなチャーリィの願いが届いたかのように歌われるラストの合唱。すべての感情が瓦解して、喜びの歌となって、聴くものの心に深く静かに沁み入ってくる。

【囲みインタビュー】

この『アルジャーノンに花束を』の公開舞台稽古と囲みインタビューが、初日前に行われ、矢田悠祐と水夏希が登壇した。
 
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矢田悠祐(チャーリィ・ゴードン役)
初めての主演という立場ですが、意識しないようにしているのですが、どうしても意識してしまって、ようやくなんとか初日を迎えるという感じです。これまでとの違いは、自分から変えようとしなくても、演出の荻田さんが役者それぞれの個性に合わせた舞台作りをしてくださいますし、演じる人間が違うので自然と違うものになっているのかなと。今は、まだ初日前なので、とにかく無事にということだけです。稽古中から周りの皆さんが気づかってくださって、水さんは、いつもご飯のタイミングを測っててくださったり、有り難かったです。
原作は、役が決まった時に読みました。すごく面白くてSF的な要素があるし、登場人物の心の動きが面白かったんです。そこに美しい音楽やダンスなどがついて、それを荻田さんがうまくまとめてくださっています。苦労したのはチャーリィはすごいスピードで階段を登っていくので、その成長や心の動きに追いつかない時があって、それに食らいついていくのが、すごく大変で、今も大変です。演出家の萩田さんから言われたのは「1人の人間の知能が良くなっていくというより、子供から老人になるまでと思ってくれればいい」と言われて、わかりやすくなりました。
座長としては、体調に気を付けたいです。やれることは全部やったと思うし、長い期間の稽古を経て、徐々に積み重ねてきて、ようやく初日を迎えられたので、自信を持って臨んでいきたいと思います。素敵な作品に仕上がってます。

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水夏希(アリス・キニアン役)
矢田くんは、主演で出番も歌もたくさんあるのにいつも和やかでした。すごいなと。私は自分が初主演をさせて頂いた時が、ちょうど彼ぐらいの年齢で、宝塚の新人公演やバウホールに主演させて頂いて、主演になると急に出番が増えて、自分の椅子に座る暇もなくて、いつも誰かに呼ばれて衣装合わせやセリフや歌とか、水すら飲めないという状況でした。矢田くんもそういう状態で、ヘトヘトなのに笑って帰っていくんです(笑)。素晴らしいなと。私と戸井勝海さんとで初主演の矢田くんを盛り立てていこうと思っていたのに、むしろ矢田くんに引っ張られて、重荷ですみません、みたいな(笑)。
役については、原作ではチャーリィより年下なのですが、このミュージカルでは年上で、チャーリィを包み込んで支えていく役だと思っていたんですけど、チャーリィと一緒にすべてが初めての経験で、不安や、自己嫌悪に陥ったり、不安定なものが欲しいと荻田さんに言われました。原作はSFですが人間ドラマなので、どの瞬間も、どの関係も、誰もが体験したことがあるようなリアリティが詰まっていて、身につまされたり、嬉しかったり、悲しかったり、励まされたり、その瞬間瞬間が、お客様1人1人の心を揺さぶる作品だと思います。素晴らしいストーリーと素晴らしい楽曲、そして爽やかで可愛くてかっこいい矢田くんを見に来てください。
 
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〈公演情報〉
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ミュージカル『アルジャーノンに花束を』
原作◇ダニエル・キイス 
脚本・作詞・演出◇荻田浩一 
出演◇矢田悠祐 蒼乃夕妃 皆本麻帆 吉田萌美 小林遼介 和田泰右 長澤風海 戸井勝海 水夏希
3/2〜12◎天王洲 銀河劇場 
〈お問い合わせ〉銀河劇場チケットセンター 03-5769-0011(平日10時〜18時) 
3/16◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
〈お問い合わせ〉芸術文化センターチケットオフィス:0798-68-0255(10時〜17時)



【取材・文・撮影:竹下力】




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