えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

帝劇ミュージカル『1789』

The Musical 『AIDA アイーダ』レビュー


_MG_1


安蘭けいの歌声を久しぶりに堪能した。
高音部も男役だったとは思えないほどよく出ていて音域が広くなった。発声やセリフまわしの縛りから解放されたせいか、感情をたっぷり乗せて伸び伸びと歌っている。

_MG_5The Musical 『AIDA アイーダ』は、2003年に星組が上演した『王家に捧ぐ歌』を、ほとんどそのままのストーリーと音楽で外部上演、宝塚のオリジナル・ミュージカルがどこまで外で通用するか、その力を問う公演だといってもいいだろう。

そのチャレンジは、『王家に捧ぐ歌』のヒロインから『AIDA アイーダ』のヒロインへと、巧みにスライドしてみせた安蘭けいを得てみごとに成功した。この作品が現代日本のミュージカル界で、貴重なレパートリーとしてこれからも上演される可能性が大きくなったことを喜びたい。

 




もちろん成功のファクターに、演出の木村信司の力が大きいことはいうまでもない。『AIDA アイーダ』における彼の演出は、オペラのダイナミズムへの志向がより強まった気がする。この国際フォーラムCには盆がないため、場面転換はセットを割ることや、高さや向きに変化をつけることぐらいしかできないうえ、動けるエリアもあまり広くない。そのなかで精一杯ダンスや動きの迫力も見せているが、やはり歌の力と役者同士が生みだすドラマそのものが、見どころ聴きどころになってくる。その点ではスタンダードなオペラ的作りだといえよう。
_MG3jpg
音楽は甲斐正人で、アイーダ、ラダメスの新曲も含めて、彼の生み出すメロディの美しさはこの作品の土台だと改めて感じさせられる。アイーダ、ラダメス、アムネリスの3人の愛と葛藤、エジプトのファラオやエチオピア王、戦士や奴隷、女官たち、それぞれの立場や心の動きが、楽曲の力を借りて鮮明に伝わってくる。外部用のアレンジも適確で、星組版ではコメディソングだった「エジプトは強い」なども、民の驕りを象徴するナンバーとしてストレートに歌われる。

舞台美術は最近の木村作品をほとんど手がけている大田創で、ピラミッド型のセット数台をベースに、デフォルメした吊りものに象徴的な意味を持たせて、古代エジプトのイメージを伝えている。またセリがないこの劇場で地下牢への移動をどう見せるかに注目していたのだが、ピラミッドの高さを生かしたアイデアには刮目させられた。
_MG_2

 

出演者では、安蘭けいのアイーダが経験者のキャリアを発揮して役と物語をしっかり把握、ドラマを引っぱっている。衣装もヘアメイクもナチュラルになって、生身の女性を感じさせながらも、宝塚版では抑制気味だった王女の誇りも惜しみなく出して力強い。
_MG_4JPG歌唱も、テーマを伝える「私に見えたもの(アイーダの信念)」や「王家に捧げる歌(世界に求む)」、ラダメスとの愛のデュエット「月の満ちるころ」、そしてACT1の終わりの「アイーダの孤独」や、ACT2のエチオピアの惨状のなかで歌う「私は愛する」など、新曲も含めてどれも心に突き刺さる。ラダメスとの並びは、伊礼彼方の大きな体躯を前に華奢ではかなげに見える。恋人同士としては、ACT2になってから2人とも硬さがほぐれて切なさや愛が伝わってくる。

伊礼彼方は、まず身体のラインの美しさで目を奪われる。それがラダメスの内面に入り込ませにくいほどインパクトがあるのは贅沢な不満で、誠実さが根にある人なのでヒーロー役として不足はない。後半で見せるアイーダへのひたむきな愛や地下牢での再会の喜びで見せる激情は、伊礼の男性としての魅力が大きく出ているだけに、エジプトの軍人らしさがもっと加わればさらに大きさが出るだろう。歌唱も高音部の安定が課題だが、こなれてくれば低音部の響きは魅力的だけに表現が深まりそうだ。

アムネリスのANZAは、小柄なためにエジプトの王女としての威厳がやや不足して見えるのが残念だ。そのぶん王女よりも女の部分が前面に出る作りになって、ラダメスに拒まれる部分では哀れが深まる。セリフも歌唱も美しい声で魅力的だが、アイーダに対峙する歌やセリフに威圧するくらいの迫力が加わればなおいいだろう。

ファラオは光枝明彦、ラダメスを信頼し王女を慈しむ偉大なエジプト王としての懐の深さを感じさせる。エチオピア王のアモナスロは沢木順で、気がふれた様子の演技は不気味でまがまがしい。アイーダの兄のウバルドは宮川浩で、復讐と闘争心が全身からにじみ出る。この3人の底力のある歌声と神官役の林アキラのオペラティックな歌唱が、ミュージカルとしての厚みを出している。またアンサンブルでエジプト人、エチオピア人、女官、戦士など何役も演じる23人の活躍が、この舞台に迫力を加えている。とくにコーラス部分での彼らの働きは頼もしい。


_MG_7JPG終幕の地下牢は、初演以来涙なくしては見られない名シーンだが、今回はとくに抱き合うように横たわる2人を見下ろすかのように、高い壁が非情にそびえ、戦いの犠牲になった恋人たちの愛の物語を、よりいっそう切なく浮かび上がらせていた。
 
 



これまで日本のミュージカルといえば、海外の翻訳ものがほとんどという現実のなかで、今回、宝塚から生まれ、外部で新しいキャストたちによって新鮮な命を吹き込まれた『AIDA アイーダ 』。
その成功に心から称賛を送るとともに、
当たり役アイーダで、ミュージカル・スターへの幸せな第一歩を歩み出した安蘭けいに、大きな祝福の拍手を送りたい。

_MG_6

 

The Musical 『AIDA アイーダ 』
ー宝塚歌劇『王家に捧ぐ歌』よりー

8/29〜9/13◎東京国際フォーラムC 

9/18〜10/4◎梅田芸術劇場メインホール

脚本・演出◇木村信司(宝塚歌劇団)

作曲・編曲・音楽監督◇甲斐正人

出演◇ 安蘭けい 伊礼彼方 ANZA 光枝明彦 沢木順 、宮川浩 林アキラ 他

 

<料金>

国際フォーラムC S席12000/A席8000/B席5000/(全席指定/税込)

梅田芸術劇場メインホール S席12000/A席8000/B席4000/(全席指定/税込)

<チケットに関するお問い合わせ>

梅田芸術劇場 06-6377-3800

<公演概要> http://www.umegei.com

           【取材・文/榊原和子 撮影/岩村美佳】

 

 

『AIDA アイーダ』安蘭けい最終舞台稽古/囲み取材(8月28日)

安蘭けいMG_9609
今年4月に宝塚を退団した元星組トップスターの安蘭けいが主演する『AIDA アイーダ』の最終舞台稽古が、東京の会場である東京国際フォーラムCで行われた。

 

この作品のもとになっているのは、2003年に宝塚歌劇団星組で上演された『王家に捧ぐ歌』。名作オペラ「アイーダ」をアレンジした木村信司の演出力と、甲斐正人の優れた音楽性で高い評価を得たミュージカルだが、その公演で安蘭けいはタイトルロールのアイーダ役に挑み、情感ある歌唱力と演技で大きな存在感を示したものだった。

安蘭は今回、その思い出の作品で外部へのデビューを飾ることになったわけだが、最終通し稽古の開始前に、集まった報道陣を迎えて質問に答えた。

ーーまもなく初日ですが、今の心境は?

「いつもと変わらない穏やかな気持ちですが、でも、とてもやる気に満ちています」

ーー宝塚時代との違いで感じることは?

「まず、キャストのかたが違うのでそれだけでもすごく新鮮な印象です。宝塚は夢の世界だったことを改めて実感しています。(具体的には)男性とのラブシーンで自分が構えるかなと思っていたら、意外と自然に寄り添えたり演技できているので、あ、思ってたより意外と抵抗なくできているなと。よけいな心配でした」

ーー久しぶりのアイーダ役で感じ方に変化は?

「初演から何年か経っていて私自身も大人になっているので、より深く捉えられるようになっています。愛するということはどういうことなんだろうとか、あの頃よりいろいろ考えられるようになりました」

ーー女優としての稽古場で宝塚時代と違うことは?

「宝塚はよく知ってる人たちの中で作っていましたが、新しい仲間と作っていかなくてはならない稽古場で、自分がどういうスタンスでいればいいいのかということで、最初の頃はとまどいがありました。それがいちばん感じたことです」

ーー国際フォーラムという会場はいかがですか。

「綺麗でいい劇場だし、やりやすそうな空間だなと感じています」

ーーアイーダのメイクや髪型が宝塚時代よりフェミニンになってる気がしますが。

「たぶん男性と一緒なので、よりリアルで自然でいいので、柔らかい感じになってるのではないかと。(右手のタトゥーは)私ではなくデザイナーさんのアイデアです。なぜつけてるのか自分ではわかってないんです(笑)」

ーー新曲はありますか?

「今までの曲の中にも、ちょっとずつ増えていたりするんですが、大きなナンバーでは、一幕の終わりでラダメスが歌う主題歌と一緒に私の新しいナンバーを歌います。それから二幕でエチオピアに帰って歌うソロ。どちらも綺麗なメロディです」

_安蘭けいMG_9637ーー女優さんと呼ばれることには慣れましたか?

「呼ばれても振り返らなかったりとか(笑)、そんなことはないですけど(笑)。まだどういうものが女優なのかちゃんとわかってないですね(笑)」

ーー私生活でこの作品のような激しい愛は?

「経験したいんですけどねー(笑)。求めてはいるんですけど。幕が開いて余裕が出てきたら考えます(笑)」

ーー宝塚時代の初日と今の気持ちは違いますか?

「違いますね、今の方が余裕がありますね。宝塚ではいつでも“もう初日?”状態でしたから。今回は自分が前にやっているということもあってか、早く幕が開いてほしいと思っていたので」

ーーこの作品の先に見えてきたものはありますか?

「先ですか? 今、男性のかたたちの立ち回りを見てるとすごくやりたいなと。それって少し巻き戻ってますよね(笑)」

ーー完全に女性になった今、自分のなかに新たな女らしさは発見できましたか?

「甘えるというかゆだねやすくなりました。やはり男性は身体も大きいぶんゆだねられるので」

ーーこの作品のいちばんの魅力は?

「曲も素晴らしいしテーマ性もあるし、それからメインの人だけでなく周りの人たちも主役になれる。みんなで作り上げている作品だし、周りがいなければ成立しない作品です」

ÉAÉâÉì_9603

 最後に「本当に素晴らしい作品になっていると思います。私もそうですが、出演者のみんなで力を込めて作り上げた作品ですので、ぜひ期待して見にいらしてください。お待ちしています」と挨拶した安蘭けい。スレンダーでフェミニンなドレス姿には、数ヶ月前まで男役だった面影はほとんど残っていない。そしてこの作品のヒロインらしく、大きな瞳を情熱的に輝かせて、初日に挑む熱い心を感じさせてくれた会見だった。
(近日中に公演レビューも掲載予定)
 
 

The Musical 『AIDA アイーダ 』 宝塚歌劇『王家に捧ぐ歌』より

8/29〜9/13◎東京国際フォーラムC 

9/18〜10/4◎梅田芸術劇場メインホール

脚本・演出◇木村信司(宝塚歌劇団)

作曲・編曲・音楽監督◇甲斐正人

出演◇ 安蘭けい 伊礼彼方 ANZA 光枝明彦 沢木順  宮川浩 林アキラ 他

 

<料金>

国際フォーラムC S席12000/A席8000/B席5000/(全席指定/税込)

梅田芸術劇場メインホール S席12000/A席8000/B席4000/(全席指定/税込)

<チケットに関するお問い合わせ>

梅田芸術劇場 06-6377-3800

<公演概要> http://www.umegei.com

           【取材・文/榊原和子 撮影/岩村美佳】

星組『太王四神記verll』囲み会見(8月14日)

0817_01

星組の新トップコンビ、柚希礼音と夢咲ねねの東京でのお披露目公演が幕を開けた。
作品は『太王四神記verllー新たなる王の旅立ちー』で、花組が今年の1月に上演した『太王四神記』を、星組新コンビと2番手の凰稀かなめというメンバー用にアレンジしなおしたもの。
もとは韓国の人気連続ドラマを、脚色・演出の小池修一郎が2時間半に短縮、チュシンの王になる運命の星が輝くときに生まれた2人の王子の物語を、たくみなアレンジでダイナミックに展開している。
鮮やかな色彩と溢れる音楽のなかで繰り広げられる戦いのスペクタクルと恋物語、信念と愛のために生きる青年王の姿に、新生星組を背負う柚希礼音の姿が重なって、感動的な舞台に仕上がっている。
初日の14日の午前中には、通し舞台稽古が行われ、本番さながらに力の入った舞台が展開された。

その終了後に、新トップコンビ、柚希礼音と夢咲ねねが、報道陣の囲み取材に姿を見せてくれた。

0817_03

まずは柚希礼音から挨拶がある。 
柚希「皆様、今日は朝早くからお越しいただき、本当にありがとうございます。今日から初日が始まります。緊張しておりますが、どうぞよろしくお願いいたします」
夢咲「夢咲ねねでございます。この公演より柚希礼音さんの相手役を務めさせていただくことになりました。未熟者ではございますが、精一杯ついていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします」
ーーこの公演でトップになったわけですが抱負を。
柚希「タムドクから学ぶことが多くて、どんなトップになりたいか考えているときに、タムドクのような、みんなと一緒に笑って泣いて、一緒に喜びも悲しみも分かち合いつつ、みんなと作り上げる星組にしたいなと思っています」
夢咲「大劇場で一度経験したことを忘れないで東京でさらにいいものにしていきたいと思います」
ーーお互いの素敵なところを紹介してください。
柚希「ねねちゃんは華やかだなと再実感しました。本当に一生懸命で、毎日休憩にいろいろなことを話して、一生懸命ついてきてくれるので、2人でとてもふくらませていくことができるので楽しいです」
夢咲「昨年の『ブエノスアイレスの風』から本当にたくさんのことを教えてくださって、今もすべてにおいて頼りにさせていただいているんですけど、本当に頼もしいかたなので、毎日が幸せです」

若さあふれる2人は互いに顔を見合わせて明るく答える。写真撮影のあと、記者たちの拍手に笑顔を見せながら、初日を迎えるため楽屋に戻って行った。

0817_02星組公演『太王四神記verllー新たなる王の旅立ちー』は、8月14日から9月13日まで、東京宝塚劇場にて上演中。

当日券等の問い合わせ/東京宝塚劇場 03-5251-2001

 【取材・文/榊原和子 写真/岩村美佳】
記事検索
演劇キックラインナップ

演劇キック

観劇予報

宝塚ジャーナル

演劇人の活力源

日刊えんぶ

えんぶ情報館

えんぶショップ

えんぶミロクル

えんぶfacebook

広告について