宝塚ジャーナル

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2012年04月22日10:00

彩吹真央が盲目の母親役に挑戦。『道化の瞳』レビュー

４月10日からシアタークリエでミュージカル『道化の瞳』が上演中である（24日まで）。

この作品は玉野和紀のショーステージ『CLUB SEVEN』シリーズの１コーナーとして、05年に上演されて好評だったシーンをベースに作られている。

主人公は白血病で余命わずかという少年健一、絵の好きな彼は目が見えない母親のために『道化の瞳』という絵本を描き上げる。その中身は１人の道化が愛する人のために我が身を捧げるという物語だ。

構成は２幕形式で、１幕は健一と病院の人々の心の触れ合いが笑いや涙とともに描かれる。２幕は健一が描いていた絵本の中のキャラクターたちが登場して、ダンスジャグリングや輪投げ、ブロック芸などを見せ場に、ファンタジックなショーが展開する。その中でテーマというべきエピソードが浮かび上がり、この作品のタイトルへと回帰していくことになる。

主役の健一には、ジャニーズ事務所のダンサーとして高い評価を受けている屋良朝幸が扮して、初主演を飾っている。ジャニーズのステージ、たとえば『PLAYZONE』シリーズなどでは大人っぽいダンスをセクシーに踊る屋良が、ここでは12歳の少年役を違和感なく演じていることに驚かされる。１幕では病気の少年のいじらしさを見せ、２幕では靴磨きの少年クーガンとなって生き生きとした動きを見せる。母親への深い愛や病気への不安なども繊細に表現して、観客の涙を誘う。

母親の明子には彩吹真央が扮し、白い杖を手に目の見えない役に挑んでいる。明るく柔らかな表情で、まるで健一に守られているような可愛い母親だが、芯にある激しさを表現する場面もあり、母子の絆の強さを感じさせる。２幕では華麗に変身、富豪の娘チェリルで青年紳士との恋に落ちる。母親ではドラマティックなソロも聞かせてくれる。

健一が慕う担当医の安藤は小堺一機、ヒューマンな温かさとコメディアンぶりを発揮して場を和ませ、２幕ではアドリブも豊かに道化芸の場面を引っ張る。

安藤と対立する厳しい五十嵐副院長には保坂知寿が扮して、全体の空気を引き締め、２幕ではショークラブのオーナーのローガンで、カリカチュアされたなかにも人生のアイロニーを感じさせる。

小西遼生はやや頼りなさのある院長の息子を誠実な持ち味で演じ、２幕ではチェリルの恋人になる貴族のハリーで正統派二枚目ぶりを見せ、ソロもある。
原田優一と佐々木喜英は、それぞれ１幕では若い医師、２幕では道化師役で、一緒に出て来るだけで楽しいコンビとして、芝居でショーで場面を賑わしている。
看護師役の桐生園加、美羽あさひ、佐藤洋介は、病気との闘いをショーアップして見せる場面で「善玉・悪玉・ナチュラルキラーマン」として活躍。また２幕ではショークラブで保坂・ローガンと歌い踊るなど、この舞台に華やかさを加えている。

作・演出の玉野和紀は健一の大事にしている人形、道化師チャーリーとして２幕から登場する。言葉を失っているのだが、さらに愛する者のために自分を犠牲にするという、テーマの核となる役割りを演じている。言葉を持たない彼の悲しみや喜びなどを感じさせるタップが見せ場だ。

結末はわかっていても悲しく、救いはあるものの重いテーマにいやでも泣かされるが、いわばファンタジーの世界なので、ストーリー性を楽しむというよりは、歌にダンスに優れた芸達者たちが、自分の役やパートにさまざまに肉付けする、その楽しさを見る作品だろう。そういう意味では、ジャグリングなどの道化芸の部分を少なめにしてでも、もっと屋良を中心にダンサーたちが踊りまくり、彩吹などシンガーたちが歌いまくるシーンがあればさらに盛り上がる舞台になったにちがいない。

『道化の瞳』

作・演出・振付・出演◇玉野和紀

出演◇屋良朝幸、彩吹真央、保坂知寿、小堺一機、小西遼生、原田優一、佐々木喜英、桐生園加、美羽あさひ、佐藤洋介

●4/10～24◎シアタークリエ

〈料金〉S席9500円　A席8000円

〈問合せ〉東宝テレザーブ　03-3201-7777

公式HP http://www.tohostage.com/douke/

●4/26◎名古屋・愛知芸術劇場大ホール

〈問合せ〉キョードー東海052-972-7466

●4/28◎金沢・金沢劇座

〈問合せ〉北國新聞社事業局　076-260-3581

●4/30～5/1◎大阪・サンケイホールプリーゼ

〈問合せ〉プリーゼチケットセンター　06-6341-8888

【文／榊原和子　撮影／冨田実布】

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2012年04月20日22:00

WOWOW『宝塚プルミエール』真飛聖が初収録

元花組トップスターの真飛聖が、WOWOWが制作する宝塚歌劇団の情報番組『宝塚プルミエール』の新ナビゲーターに就任した。

4/21放送回から、そのナビゲーターを元花組男役トップスターで女優の真飛聖が務めることになり、初めての収録が、4/19東京都内のスタジオで行なわれた。
連続ドラマにも出演中で女優活動を本格的に展開している真飛だが、ナレーションには初挑戦、その感想を語ってくれた。

「ナレーションのお仕事は新鮮な体験で面白いです。でもまだ初めてなので戸惑うこともあって、伝えるべき情報が決まっている中で話す難しさというのを感じました。発音としても、例えば、宝塚大劇場はタタタという音が続くので難しい。現役時代の舞台あいさつで慣れてはいたんですが、『そうそう。ここは言いにくかった』と改めて思いだしながら、収録しました」

宝塚の舞台を降りてから１年。番組内で最新公演のハイライト映像を紹介するのは、どんな気持ちなのだろうか。
「ナレーションをつけていても、現役スターの皆さんが美しすぎてつい見入っちゃうんですよ。いけない！と収録中に我に返ってしまうような状態で（笑）。もう、１年前まで自分がそこに立っていたということが信じられないぐらい」

4/21放送の回では、花組時代に共演した大空祐飛（現・宙組男役トップ）のサヨナラ公演を紹介することになり、また番組内でも大空と相手役の野々すみ花が対談していて、それを見ると感慨深いものがあったという。

「大空祐飛さんとは花組で一緒になってから、『太王四神記』などで演じる役柄を通して親しくなりました。祐飛さんは真飛聖という存在を大きな懐で包み込んでくれましたね。退団というのは１年前に自分も通った道なので想像できるんですが、祐飛さんは今、きっと最高に充実して幸せな時間を過ごしていると思います」

元トップスターだからこそ理解できる現役生たちの心境、そして舞台の魅力。ナビゲーターとしてその強みを出していければと、今後の抱負を語った。

「一度ステージを見てみれば、そこには想像以上の世界が広がっている。そんな宝塚の魅力をわかりやすく伝えていけたらと思います」

「宝塚プルミエール」はWOWOWライブにて4/21（土）夜6：20放送。
続けて、各組選りすぐりの公演を放送する「宝塚への招待」では『タカラヅカスペシャル2010～FOREVER TAKARAZUKA～』を夜6:45から放送する。

【宝塚オンライン】

http://www.wowow.co.jp/stage/takarazuka/

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2012年04月17日22:00

坂東玉三郎・檀れいで『ふるあめりかに袖はぬらさじ』

歌舞伎界を背負って立つ女形の坂東玉三郎と、元娘役トップで現在は映像中心に活躍する女優、檀れいが、名作舞台で初共演する。

２人が出演するのは、有吉佐和子の最高傑作と言われる『ふるあめりかに袖はぬらさじ』で、坂東玉三郎にとっては記念すべき10回目の上演となる。

初演は1972年、杉村春子の名演技で作品は大ヒット。芸者お園は杉村の当たり役となり、その後、1988年に歌舞伎界の至宝・坂東玉三郎に受け継がれた。

【物語】
時は幕末、開港まもない横浜の遊郭「岩亀楼（がんきろう）」で、若い遊女・亀遊が自ら命を絶つ。恋する男の目の前でアメリカ人に見染められ、その相手をさせられる苦しさからだった。おりから吹き荒れる尊王攘夷の嵐の中、「攘夷女郎」という伝説が膨らんでいく。亡き亀遊のため、いやおうなく一役買っていくお園･･････。

横浜の遊郭を舞台に繰り広げられるこの物語は、現代にも通じる情報の１人歩きとそれに翻弄される人々、それを逆手にとる１人の芸者の心意気を描いている。

作品誕生から40年を迎え、坂東玉三郎にとって記念すべき10回目の上演となる今回は、恋に殉じて命を絶つ若い花魁の亀遊役に宝塚歌劇団を退団後、実力派女優として多方面で活躍中の檀れいを迎え、その他にも豪華キャストを予定、長い間、評判を博した名作が新しい形で進化を遂げる。

また、赤坂ACTシアターのためだけに坂東玉三郎が舞台セットや照明、衣裳にいたるまで細部に渡り、監修し、2012年のACTシアターの目玉公演となる。

『ふるあめりかに袖はぬらさじ』

作◇有吉佐和子

演出◇齋藤雅文

出演◇坂東玉三郎檀れい／松田悟志　他

●9/28～10/21◎赤坂ACTシアター

〈料金〉S席13000円　A席9000円
チケット発売開始／6月2日（土）10:00～

http://www.tbs.co.jp/act/event/furuamerica/

【文／榊原和子】　（宣伝写真／篠山紀信、岡本隆史）

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2012年04月14日07:00

音楽の力で見せるミュージカル『カルテット！』レビュー

崩壊寸前の家族が音楽によって再生するという内容で人気の鬼塚忠原作の小説『カルテット！』。この物語を舞台化したミュージカルが12日に初日を迎えたが、公開舞台稽古が初日の昼間に行なわれた。この舞台には音楽教師の役で元花組トップ娘役の桜乃彩音も出演、ピアノの腕前を披露している。

作品の主人公はバイオリニストをめざす永江開。だがそんな才能あふれる弟に、姉はコンプレックスを抱いて両親に反抗、父親は最近リストラされて失業保険をもらいながら就活中。代わりに働きに出ている母親は夫が不満で離婚を考えている。そんな崩壊寸前の家族を再生しようと、開は家族でカルテットを結成して演奏会を開くことを提案する。

音楽による家族再生がテーマであるだけに、みどころは一家４人のカルテット。それぞれが楽器を弾けるという設定になっているので、そこをどうクリアするかに注目が集まったが、演出の菅野こうめいは思いきった手法をとっている。
舞台上に本物のカルテットがつねにいてBGMを演奏するとともに、楽器を弾く場面になると家族４人の代わりに、その役になって美しい音色を聴かせるのだ。つまり２人で１役という形をとっていて、その違和感をなくすために、たとえば開の法月康平をフォローするバイオリン奏者の對馬哲男は、髪型や衣裳も近づけてイメージを統一してある。
最初はその入れ替わりに戸惑うが、次第に慣れると、ふんだんに出て来るクラシックの名曲を、プロの演奏家によって聴かせてもらえる楽しさに引き込まれる。ただ、ミュージカルとはいっても、それぞれの思いはすべてクラシックの名曲に乗せて歌うので、キャストたちはクラシックメロディとの闘いとなっている。

開に扮する法月康平は、真っ直ぐに音楽と家族への愛を表現して爽やかでパワフル。姉の美咲は歌手で女優のキタキマユ、反抗的だが中身はかわいい女子高校生になっている。母のひろみは秋本奈緒美で、開の才能にかけるあまり夫や娘に厳しくなる姿がリアル。父の直樹にはベテランの榎木孝明で元音楽家らしい知的なおっとり感がある。
桜乃彩音は開を指導する教師で、ピアノ伴奏と歌唱があるが、いちばんの見せ場はヘルメット姿も凛々しく本物のオートバイで開を演奏会に送り届ける場面だろう。もう１人、家族以外の登場人物として舞台を賑わしているのはお笑いのエハラマサヒロで、クラシックを聴かせるレストランのオーナーとして開を応援するのだが、アドリブふうに自前の芸を織り込んで場面を盛り上げている。桜乃とエハラはそれぞれもう１役演じていて、その変身でも楽しませてくれる。