えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

黒木瞳主演舞台『京の蛍火』

『シェルブールの雨傘』制作発表(9月9日)VOL.2

_MG_0108【一問一答】

ーー井上さんと白羽さん、先ほど歌われた感想とお互いの舞台について。

井上「聞いていただいた通り、ものすごく恋愛が盛り上がっているときの歌なので、いきなりこのまま出て歌えというのは、まるで拷問のような辛さがありましたが(笑)、2人で励まし合って、ここはシェルブールだと言い聞かせながら歌いました(笑)。できれば会場の明かりを落としてもらいたかったけど、撮影のかたがフラッシュ禁止と聞いて、それも出来ないなと(笑)。歌ってみて感じたのは、やはり名曲が持つ力は強いですね。役者はその気になりやすいので、もうここはシェルブールだなと思えました(笑)。白羽さんの印象は、とにかくお綺麗で、カトリーヌ・ドヌーブにも負けないくらいで。でも、どんな楚々とした女性かと思っていたらよく喋るかたでした(笑)。でもそこもまた素敵な二面性ですね」

_MG_0054白羽「この曲は宝塚時代の課題曲だったので、もともと歌ってはいたのですが、やはり難しくて。緊張もしましたが改めて素敵な曲だなと思いました。井上さんは客席からは何度も拝見させていただいてましたが、この間お稽古場で、初めて発声の練習をさせていただいたときに、あまりの声の心地よさに、ずっと聞いてたいなと思ったくらいです。すごく包容力のある声の持ち主だなと。
それに気さくにいろいろ教えてくださって、今日ももっと緊張するかなと思っていたんですが、すごく励ましてくださったおかげです。ありがとうございます」

ーー謝先生、作品の新しいコンセプトを。

謝「この作品に改めて思ったことは、女性は現実的で、男性はすごくロマンを持っているなと。シェルブールという町で若い2人が恋に落ちる、でも人生は巡り巡ってみんな変わっていく。その変わっていく中にさまざまな人生ドラマがあるということを、いろいろな形で見せたいなと思ってます」


ーーぞれぞれどんなふうに自分の役を見せたいかを。

井上「それが今話せればどんなにいいかと思うんですが(笑)。印象としては全て音楽で進行してるというのではオペラと同じなんですが、オペラはセリフ的なレチタティーボと歌い上げるアリアがあるんですが、これは、そういう変化がないままどんどん曲が変わっていく。それにフランス語なので、歌ってるような話しているような感じが心地いいんですが、それを日本語でしかもお芝居としてやるには、どういう方法論があるのかなと。これまで自分がやってきたものが生かせるかもしれないし、この作品独自の方法論が必要なのかもしれない。そこを考えながらという感じですね」 

_MG_0106白羽「まだお稽古が始まっていないので、今は映画を観たりしていろいろ研究しているのですが、なによりもドヌーブさんの美しさが際立ってますので、ビジュアルは大事にしたいと思っています。それからジュヌヴィエーヴは16歳なのですが、私も宝塚を卒業して初めての舞台で、男性のかたと組ませていただくことも初めて、そういう新鮮な気持ちが役につながればと。またフランスの音楽は、曲想が深いだけでなく甘く切ない感じがあるので、そういうところも歌のなかで出せればいいなと思ってます」

出雲「私の役はギイとマドレーヌしかほとんど絡んでないんです。そのなかでフランスの日常の家庭的な雰囲気が出せたらいいなと。それから歌ってますというのではなくて、井上さんの言われたように、セリフに自然にメロディがついている感じなので、セリフのように歌えたらと思ってます。そして伯母さんとはいっても、キーが低いわけではなく高い声のきれいな歌なので、そういう雰囲気を出したいです」

岸田「映画のカサールも宝石商らしい上品な雰囲気があって、ヒゲを生やしてますが、気品のあるヒゲをつけたいなと。僕の宝石商は、あまり映画とズレないでやればいいかなと思っています」

_MG_0131香寿「私は何も考えてないのですが(笑)、いつも台本をいただいて、そのファーストインプレッションを大事にしていくので白紙の状態です。まず映画のイメージをなるべく崩さないようにということ、白羽さんのお母さんとして舞台の上でちゃんと成立するようにしたい。何度か母親役をしてますが、フランスのお母さんのお洒落だったり現実的で強かったりというところを、自分なりに工夫していきたいなと思ってます」

ーー謝先生がこのカップルに期待するものは?

謝「井上くんとはこれが初めてですが舞台は何度か観ていて、白羽さんは宝塚で何度も仕事してます。この作品はずっと歌いながら表現していかなくてはいけないのですが、白羽さんは演技力がある人だし、井上さんもミュージカル以外のお芝居にも出ている人なので、歌唱力と演技力で安心な2人です。ビジュアルもハンサムボーイと美女なので心配ないですし。この『シェルブール』に出たことで、またさらに素敵な2人になっていくと思ってます」

ーー演出上でフランスの雨をどう表現されるのか? また2人にはフランス人という役作りは?

謝「雨のことに関しては特別兵器をご用意してますので、お楽しみに(笑)」


井上「僕はミュージカルでいろんな国の人になっててというか、いろんな国の人しかやってないんですけど(笑)、フランス人は初めてなんです。フランスの話でも僕はスウェーデン人だったし(笑)、初めてフランス人がきたぞという気持ちもありますが、どこの国でも人間は一緒だという気持ちもあって。ただ、フランス人だからこその愛情表現というのもあると思うんです。たぶん日本人とは違うし、たとえばイタリア人の愛情表現とも違う、そこが研究のしどころかなと(笑)」

_MG_0160白羽「私は宝塚の現役時代、フランス人が多かったのでフランスは大好きです。フランス人というとどこかストレートではない感じもあるんですが、このジュヌヴィエーヴという役でいえば、フランス人というところに捉われすぎていると違うかなと。16歳の彼女が持つストレートさを重視したほうがいいのかなと思ったり。バランスを考えていきたいと思ってます」

ーー白羽さんが退団後の第一作にこれを選ばれたのはなぜ? それから相手が男性ということで違いは?

白羽「まだ在団中にこのお話はいただいていたのですが、まず日生劇場には2度程出させていただいたことがあって、まさか卒業後すぐに出していただけるとは思っていなかったので、とても嬉しかったのと、作品の名前を両親に伝えたとき、母がとくに喜んだのですが、絶対に出てほしいといわれました(笑)。そして井上さんとご一緒できることでもぜひと思いました。男性のかたとの共演は初めてで、今はだんだん慣れてきましたが、ポスター撮りのとき、思わず「付けまつげは付けられますか?」と聞いてしまって(笑)。しかもメイクさんに「井上さんが付けられないので、私もやめます」と言ったり、合わせるところがちょっと違ってたみたいです(笑)。宝塚の世界が大好きでしたけど、卒業した今は新しい世界でまた頑張りたいし、その気持ちでいっぱいなんですが、私自身が気がつくよりも、井上さんが気になるところがこれから出てくるのではないかと思っていますし、そのつど意識して直していきたいと思います」



ーー最後にそれぞれ作品への意気込みを。

出雲「宝塚を退団してちょうど1年経って、自分を見つめ直すのにはいい充電期間でしたが、その1年間で、やはり私は舞台に立ちたいと心から思うようになりました。今回その機会をいただいて本当に嬉しく、頑張りたいと思っています」

岸田「全編音楽のミュージカルに初めて出ることで、また違った発見があると思うので、新鮮な気持ちで取り組みたいと思います」

香寿「私は今年、いろいろな舞台、そして役に取り組ませていただいて、またこの作品で今年の最後までいろいろなことを学べるのが幸せだなと。この舞台をいいものにして締めくくりたいです」

白羽「5月に退団して3カ月経つのですが、最初の頃はのんびりしてる自分が嬉しかったんですけど、10日目くらいから動きたくてしかたない自分がいて、早くお稽古したいなと思っていました。初めてのことばかりですが、先輩のかたたちに助けていただきながら、謝先生と井上さんに付いていきたいと思っています」

井上「この作品がどうして愛されるのか、その秘密を稽古しながら探りたいし、できれば、切なくて胸がきゅんとなるあの感じを舞台で再現して、それプラスやはり舞台だからこそというところも出せればいいなと思ってます。頑張ります」

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『シュルブールの雨傘』

●2009/12/528◎日生劇場

   2010/1/1417◎シアターBRAVA!

脚本・作詞◇ジャック・ドゥミ

音楽◇ミシェル・ルグラン

演出・振付◇謝珠栄

翻訳・訳詞◇竜真知子

出演◇井上芳雄 白羽ゆり ANZA 出雲綾 岸田敏志 香寿たつき

<料金>日生劇場/S席¥11000(平日夜は¥9500A席¥5500 

              シアターBRAVA!S席¥11000  A席¥8500 

<お問合せ>東京公演/東宝テレザーブ 03-3201-7777(前売開始9/19)

                   http://www.toho.co.jp/stage/

                   大阪公演/キョードーチケットセンター 06-7732-888(前売開始9/12)

                   http://kyodo-osaka.co.jp

                                       【取材・文/榊原和子 撮影/岩村美佳】

『シェルブールの雨傘』制作発表(9月9日)VOL.1

_MG_0231【フランスの名作ミュージカル映画の世界が甦る】

不朽の名作映画「シェルブールの雨傘」の舞台版が、この冬、豪華キャストで上演される。

カンヌ国際映画祭グランプリなど数々の賞に輝くこの映画は、ジャック・ドゥミ監督が脚本と作詞を、ミシェル・ルグランが音楽を手がけ、1964 年に公開されたフランス発のミュージカル映画で、車の整備士として働くギイと傘屋の娘ジュヌヴィエーヴの恋と別れ、そして時を経ての巡り会いを、美しい音楽で叙情豊かに綴っていくラブロマンス。
ヒロインのカトリーヌ・ドヌーブの出世作でもあり、公開以来、世界各国で大ヒット、観客の涙をしぼったことでも有名である。

今回、ギイ役にはミュージカル界の貴公子として人気の高い井上芳雄が、恋人のジュヌヴィエーヴには今年 5 月に宝塚を退団したばかりの元雪組トップ娘役、白羽ゆりが扮する。

周りを固める実力派のキャストは、ジュヌヴィエーヴの母に香寿たつき、宝石商のカサールは岸田敏志、ギイをひそかに愛するマドレーヌにANZA、ギイの伯母エリーズに出雲綾と、歌唱力と演技力のあるメンバーが集まった。

そして演出・振付は、昨年度の演劇賞をいくつも受賞、今や日本のオリジナル・ミュージカルの第一人者といってもいい謝珠栄が手がける。

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この日の制作発表の壇上には、カラフルな雨傘が飾られていて、舞台効果は満点。そんな華やかな雰囲気のなか、まず井上と白羽のデュエットが披露された。

場面は、兵役でアルジェリアに行くことが決まったギイと、それを悲しむジュヌヴィエーヴの甘く切ないデュエットソング。映画ではそのあと離れがたい2人が残された時間を惜しむように一夜を過ごすのだが、そのきっかけになるシーンだけに、井上と白羽はギイとジュヌヴィエーヴになりきって、愛し合う恋人同士の雰囲気を漂わせる。

_MG_0072美しい歌唱が終わると、演出の謝珠栄とメインキャスト3人が加わって、集まった記者たちとの一問一答が始まる。

 









_MG_0264【キャスト挨拶】

謝「私がまだ初々しかった頃、この映画を観まして色彩の鮮やかさに驚かされて、カトリーヌ・ドヌーブの美しさとか音楽に感動して、そして人生はなんて儚いんだろうとハンカチを濡らしたことを覚えています。その感動をそのままお客様に伝えられたらと思っています」

井上「ギイをやらせていただく井上芳雄です。映画はリアルタイムでは観ていませんが、最近出たDVDを見てすごく新鮮に感じました。歌ばかりで進行するミュージカルというのはほかにも無くはないんですが、歌の種類の違いとか、ミシェル・ルグランの音楽で流れるように進行していく物語に引き込まれましたし、これを舞台でどうやるんだろうと興味が湧いています。とても有名な作品で、『シェルブール』をやると話すと、年配のかたの反応がとくにいいので(笑)、期待を裏切らないように。また今の『シェルブールの雨傘』を作れればいいなと思っています」

白羽「ジュヌヴィエーヴ役の白羽ゆりです、宝塚を卒業してから初めての舞台となります。全曲歌というミュージカルは初めてで、難しさも感じていますが、また新しい気持ちで取り組んでいきたいと思ってます。私も映画を観て、カトリーヌ・ドヌーブさんの美しさと曲の素晴らしさをすごく感じて、それを少しでも自分なりに表現できればいいなと思っています。素晴らしいキャストのかたがたと共演できることも幸せで、たくさんのかたたちに観ていただきたいです」

出雲「憧れでありました東宝ミュージカルに出演させていただけるということで、大変嬉しく思っております。しかも宝塚時代からとてもお世話になっている謝先生の演出で、その素晴らしい感性と豊かな発想でどのような舞台になるのか楽しみです。そしてミュージカル界では有名なキャストの皆さんとご一緒出来ることも幸せです。私は25年間宝塚におりまして、昨年退団したのですが、男のかたと舞台に立つのはこれが初めてで(笑)楽しみです。それから宝塚で仲よくさせてもらった2人と、またこういう機会に巡り会えたことも幸せです。エリーズは病弱で優しい伯母さんです。宝塚時代は個性の強い役が多かったのですが、今回は新たなイメージで頑張りたいと思っています」

岸田「今回の役が宝石商のカサールで、最終的にジュヌヴィエーヴと結婚もすると聞いて、これは金にあかせて手に入れる悪役なんじゃないかと思ったんですが(笑)。とにかくDVDをと思って探したんですが全然なくて、取り寄せてもらってやっと観たら、すごく包容力のある善い宝石商だったんでホッとしています(笑)。全編に流れるミシェル・ルグランの音楽が素晴らしくて、できればあのテーマ曲を歌いたかったんですが(笑)。ちょっと残念ですが、僕も素敵な曲をたくさん歌わせていただきます」

香寿「エムリー夫人の香寿たつきです。私もDVDを探したんですがなくて。小さなビデオ屋さんでVHSを見つけて観たんですが、改めて素晴らしい作品だなと思いました。私は宝塚時代に、同じミシェル・ルグランの「ロシュフォールの恋人たち」という映画をショーにしたものを、やらせていただいたことがあり、そのときからフランスのミュージカルはなんて素敵なんだろうと思っていました。どんなふうにエムリー夫人を演じたらいいかとても楽しみです。また宝塚時代から、そして最近もお世話になった謝先生がどんな演出をされるのか楽しみにしています。新たな自分を引き出していただけると思いますし、素晴らしい舞台にするために、私も頑張っていきたいと思っております」

 

(VOL.2に続く)
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『シュルブールの雨傘』

●2009/12/528◎日生劇場

   2010/1/1417◎シアターBRAVA!

脚本・作詞◇ジャック・ドゥミ

音楽◇ミシェル・ルグラン

演出・振付◇謝珠栄

翻訳・訳詞◇竜真知子

出演◇井上芳雄 白羽ゆり ANZA 出雲綾 岸田敏志 香寿たつき

<料金>日生劇場/S席¥11000(平日夜は¥9500A席¥5500 

              シアターBRAVA!S席¥11000  A席¥8500 

<お問合せ>東京公演/東宝テレザーブ 03-3201-7777(前売開始9/19)

                   http://www.toho.co.jp/stage/

                   大阪公演/キョードーチケットセンター 06-7732-888(前売開始9/12)

                   http://kyodo-osaka.co.jp

                                  【取材・文/榊原和子 撮影/岩村美佳】

 

 

The Musical『 Nine』制作発表(9月9日)

DSCF0147_2【日本版はグイドと9人の女性たちの世界】

イタリアの名匠、フェデリコ・フェリーニが自分自身を投影したと言われる自伝的名画「8 1/2」をもとに作られた『Nine』。天才映画監督グイド・コンティーニと彼を取り巻く女性たちの物語として、上演のたびに大きな話題を巻き起こすこのミュージカルが、新たな形の日本版として上演される。

1982年のブロードウェイ初演では、トニー賞10部門にノミネートされ、5部門の最優秀賞を射止めた。また2003年にデヴィッド・ルヴォーが演出、アントニオ・バンデラス主演で上演したときは、トニー賞6部門にノミネート、2部門で最優秀賞を獲得している。この秋に公開予定のロブ・マーシャル監督による映画版も、次回アカデミー賞の候補になるはずと囁かれるほど注目されている。

その『 Nine』日本版演出は、『COCO』などのミュージカルで手腕を発揮しているG2。フェリーニの分身ともいうべきグイドには、ロックグループSOPHIAのヴォーカルで、『タイタニック』『キサラギ』と舞台でも活躍している松岡充が扮する。また、グイドを取り巻く女性たちは、貴城けい、新妻聖子、シルビア・グラブ、樹里咲穂、入絵加奈子、浦嶋りんこ、今陽子、寿ひずる、そして紫吹淳と個性と実力を兼ね備えた豪華な9人の女優たちが揃った。

この日の制作発表には、女優たちは全員レッド系のドレスで登場、グイドを真ん中に、“愛の物語”としても知られる『Nine』の世界そのままに、艶やかさを振りまいた。

DSCF0146_2【制作発表の挨拶】

G2「ブロードウェイでやってるミュージカルを削ぎ落として人間ドラマにしたいという気持ちがあり、少人数でのミュージカルをやりたいという話をしたときに『Nine』が候補として出てきました。
映画は幻想的でしたが、その美しさは残して、もう少し直感的にわかる話、男と女の部分を表に出す、そして日本人がわかる話にしていきたい。実際にこの物語は、道ばたの名もない花の美しさがわかるみたいな、東洋的なところに到達するので。
少人数ということで女性も9人に絞り込んで、本当はあと12、3人出てくるのですが、9人にしたほうが話は繋がるんです。ただアンサンブルのかたも出ないので、“皆さん相当大変な目にあいますよ”と言ってるんですが、どのかたも“私はたいへんじゃないわよね”と信じているのが(笑)。
その9人の女優さんに取り囲まれる松岡くんは、ちょっと母性を刺激するところがあって、コンサートを観たんですが、トークとか深く掘り下げて、観客にも考えさせようとしているところは、まさにグイドにぴったりです。
この作品の音楽はもともと身体に沁み入る感じなんですが、もっと民族系の少人数のバンドで、ライブ的にびんびん伝わるものにしたいと思ってます」

松岡「この物語は人間の内面の話で、1人の男がさまざまな女性に出会い人生が変化し、1人の男として成長し、崩壊し、また再生していく。すごく抽象的なストーリーを生の空間で届けるのは至難のワザですが、演者としてはやりがいがあります。前回の『タイタニック』はミュージカルの主演とは名ばかりで、歌がほとんどなかったのですが、今回はたくさん歌わせてもらえそうです」

貴城「私のクラウディアは女優で、グイドの創作意欲を湧かせるような存在と聞いてますので、そんな女性らしさ、女優らしさを出せれば。そして芯の強い女性だと思いますので、そのへんを意識していきたいです」

新妻「妻のルイーザ役ですが、妻役は2度目で、前はサド公爵夫人でしたから特殊な旦那様でしたが、今回も愛人がたくさんいる人で、難しいですが楽しみにしています。世の本妻の皆様の思いを担っていこうと思ってます(笑)」

樹里「ヴェニスのスパのマドンナです。仕事や私生活に疲れたグイドを癒す役です。母性というか包み込む優しさが必要ですが、私はお笑いをこよなく愛す関西人なので、笑いで人を和ませるのは得意なんですが(笑)、女性らしい癒しは初めてなので、素敵な共演のかたがたとC2さんの協力を得て、素敵なスパのマドンナになりたいと思います」

入絵「女優のマリアです。この『Nine』という名作に関われることを嬉しく思っています。松岡さんとは2度目の共演ですが、1度目で真面目でクールで優しい人柄にすっかり惚れ込んでいますので、役作りはすでにできています」

今「ママの役です。この数年母親役が続いて、イケメンの素敵な息子ばかり持てて幸せに思っています。今回も松岡くんのママで光栄です。私はブロードウェイで、アントニオ・バンデラスとチタ・リベラの最高の『Nine』を観てますが、まさか出られるなんて。日本版というのでまた違ったものを作れるのは楽しみです」

寿「ステファニーは評論家でプロデューサーなのですが、とても辛辣な評論家というのを、こんな優しい私が(笑)どこまで出来るか挑戦してみたいです。この素晴らしいメンバー、初めてのかたばかりで、宝塚の後輩たちや、そして可愛い松岡くんと共演できるのが楽しみです」

紫吹「リリアンという映画プロデューサーですが、かっこいい女の人の役はあまりやったことがないので嬉しいです。松岡さんとは『タイタニック』では絡みがなかったので、今回はイジメ倒したいなと(笑)。この役は脚を見せるという印象があるんですが、G2さん、私は出すんでしょうか?隠していただけるんでしょうか?」

G2「相談しましょう(笑)」

 

《欠席のシルビア・グラブのメッセージ》

「カルラは愛人でW不倫、グイドの立場などおかまいなしに滞在中のヴェニスまで押し掛け、結婚を要求する。でもとても素直な女性で、男性だけでなく女性まで引きつける人なので、私もお客様を釘づけにしたいと思っております」

《欠席の浦嶋りんこのメッセージ》

「サラギーナは少年のグイドが出会う近所の海岸に住む娼婦です。9歳のグイドに愛を教えた女性です。回想に登場しますが、印象強く演じられたらと思います」

DSCF0143【一問一答】

 

ーーG2さんが大変と言ってた意味は?また、出演者それぞれにぴったりという意味を詳しく。

G2「みんな出ずっぱりなので、そこがまず大変です。歌っても喋ってもいないのに存在しててもらいます。なぜならグイドの頭の中には常に存在してますから。それから9人のかたたちは、いろいろな役を兼ねていただくんですが、それは僕から見たら、この本の女性は9種類に分けられるからで、その9種類の1つが欠けてもグイドは成立しない。それぞれ求めるものが違うんだということでは、9人に絞ったほうが面白いんじゃないかと思ってます」

ーー物語ではグイドは9歳で変わるのですが、それぞれのかたのターニングポイントを。

松岡「ショートバージョンとロングバージョンがありますが?(笑)ショートで(笑)。SOPHIAのメンバーと出会った時で、19から22歳のあたりですね。人生が変わったし、今に直結してると思います」

貴城「私もショートバージョンで(笑)。宝塚に入って17歳くらいで振付の喜多弘先生というかたに出会ったんですが、先生の口癖が“努力と根性、努力と根性”で、今でも“舞台人は努力と根性だな”と思ってます」

新妻「5年前の23歳のときに出会った『ミス・サイゴン』というミュージカルが私の人生を変え、ここに立たせているのだと思います。その同じ役の大先輩である入絵さんと共演できるのが幸せです」

樹里「私も5年前で、23歳ではないんですけど(笑)、宝塚の男役を卒業して女優になったことで。それから自分の世界がものすごーく広がって、毎回素敵なスタッフやキャストのかたに出会えることが本当に嬉しく思っています」

入絵「私は21歳でしたが、やはり『ミス・サイゴン』です。大学4年で福岡に帰らなくてはならないというお正月で、本当に『ミス・サイゴン』がサイゴのチャンス(笑)でした」

今「2つありまして、ピンキーとキラーズを解散した20歳のときで、売れすぎたのでアイドル脱出が大変でした。そのあと結婚、離婚とオールマイティを経験してNYに行き、いろいろなことを学んで帰ってきた30歳です。それが今、ミュージカルなどに出させていただけるもとになってます」

寿「5歳から子役をしてまして、それがこういう仕事をさせていただくもとになっているかなと。そこから宝塚に入って、結婚して離婚して、でも子どもを3人授かったことが、この世界でいろんな役をさせていただくうえで大きなことだったと思います」

紫吹「私も宝塚で男を演じてきて、卒業して女に戻って5年経ちまして、今回、やっと大人の女性の役にめぐり会えたので、この役をターニングポイントにしたいと思ってます」

ーー松岡さんはミュージシャンでもあり役者でもありますが、切り替えは?

松岡「ミュージシャンと役者は、まずマネージメントの窓口が違うので(笑)。どちらを通していただくかでギャラも違いますし(笑)、SOPHIAはグループですのでちょっとお高くなりますね(笑)。そういう切り替えもありますが、基本的には来てくださるかたに精一杯の表現を見せるというのでは同じです。ただそこに行きつく過程は全然違います。SOPHIAの場合は自分自身で全部決められるし、掘り下げられるし、でもストップしてしまうのも自分自身、同じだけ責任があります。こういう舞台は、共演の皆さんと刺激をし合いながら作れるし、それに『Nine』なら松岡充ではなくグイドを観にこられるわけで、それをいかに作るかという作業だと思います」

 

 

The Musical 『Nine 』

12/11〜27◎ル テアトル銀座 

2010/1/9〜10◎シアターBRAVA

演出・訳詞・上演台本◇G2

音楽監督◇荻野清子

出演◇松岡充 貴城けい 新妻聖子 シルビア・グラブ 樹里咲穂 入絵加奈子 浦嶋りんこ 今陽子 寿ひずる 紫吹淳

 

<料金>

ル テアトル銀座  ¥12000(全席指定/税込)

シアターBRAVA S席¥12000/A席9000(全席指定/税込)

<チケットに関するお問い合わせ>

東京公演/サンライズプロモーション東京 0570-00-3337

大坂公演/キョードーチケットセンター 06-7732-8888

 

               【取材・文/榊原和子】

 

 

『天翔ける風に』レビュー

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初演も再演も観ていて、そのたびに、このミュージカルのもとになった『贋作・罪と罰』の野田秀樹の言葉と、謝珠栄のミュージカル演出の剛腕ぶりに心地よく打ちのめされた覚えがある。

 

今回は、ちょうど同じ時期に野田秀樹が新作『ザ・ダイバー』を地下の小ホールで公演していて、奇しくも同じように女性の殺人者を主人公にすえていたこともあって、改めて2つの作品のなかに、野田の作品の変遷や、時代の変化を突きつけられる感覚があった。

1995年に書かれた『贋作・罪と罰』、そして2009年の『ザ・ダイバー』、思想と大義をまがりなりにも振りかざした三条英から、愛憎の果てに狂気の海に潜り込んだ“女”へ。2つの作品に描かれた「罪」のありようは、14年という歳月以上に隔たっている。

そんな時代的な変化は『天翔ける風に』の演出家、謝珠栄のなかにも何らかの作用が働いていたのではないだろうか。三演目の今回は、これまでの二回より情緒に流れるのを排して、いわば社会的な視点が前面に押し出された『天翔ける風に』になっていた。

 

物語は、ドストエフスキーの「罪と罰」を下敷きにしている。社会の変革をめざす女塾生三条英(さんじょうはなぶさ)は、金貸しの老婆殺害を実行に移す。だがその殺人を目撃した老婆の妹まで手にかけてしまう。思いがけない結果に動揺し自分自身を苦しめる英。そんな彼女を事件を捜査する刑事・都司之助がさらに追いつめる。改革の同志で英を愛する才谷梅太郎は、彼女の犯罪を知って自首をすすめる。そして牢獄の外で英を待ち続けると誓うのだが…。

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抽象化されたセットは赤がベースで、流される血の色と革命の情熱を感じさせる。盆の転換で大川べり、英の下宿、金貸しの部屋、警察署、酒場などにテンポよく移り変わる。その転換を縫うように行われる緊張をはらんだ老婆殺しと、暴力的に弾ける民衆や志士たちの「えーじゃないか」。2つの狂気の対比がみごとで、ストーリーの核は押さえながら、たたみかけるように盛り上げていく演出は、まさに謝珠栄らしい見せかただ。

そんな流れのなかで、三条英という女性が見た時代の混沌と、それに巻き込まれる人間たちの野心やあがき、そして志が浮かび上がる。その誰もが精一杯生きていて哀しく愛しく思えるのは、謝の舞台ならではの懐の深さだろう。

 

相澤裕史主演として三度目の英に挑んだ香寿たつきは、もう彼女以外には考えられないほどこの役を自分のものにしている。取り巻く男優たちがほとんど新しい顔ぶれになったこともあって、香寿も取り組みが変わったのだろう、より内面の葛藤が見える。殺人を犯す前の緊張とおびえ、犯行後の恐怖と錯乱、やがて自分の罪を知り「もうあの頃のように無邪気な心で大川の美しい風景をながめられない」と語る切なさなどが、リアルに伝わってくる。テーマ曲の「大川の向こう」も、場面の変化に応じて自在に歌いこなしている。

 

才谷梅太郎こと坂本竜馬は山崎銀之、歌い手ではないことを考えれば、ミュージカルのメインキャストとしては十分実力を見せたといえるだろう。持ち味のワルがかった裏にある誠実さが、才谷という男のスケールにつながった。

英を追いつめる刑事・都司之助は戸井勝海で、知的ななかに色気と余裕があり、英にどこか愛を抱くような面が見えて新鮮だった。

a-812今拓哉は金で世を渡る溜水石右衛門、英の妹である智を手に入れようと閉じ込めて迫る場面や、去られてからの絶望感をややパラノイアックな演技で見せてくれた。

阿部裕は英の父の甘井聞太左衛門、時代の変化に流されるうちに事件に関わってしまう凡人の卑小さと哀しさを感じさせた。この阿部と戸井、今という3人の歌唱力は、このミュージカルのグレードを上げるのに大きく貢献している。

志士ヤマガタの平澤智は初演から同じ役だが、今回はよりパワフルで民衆のエネルギー全体を引っぱる力になっていた。

溜水と婚約する智は剱持たまき、凛とした乙女の強さで溜水と対峙するシーンを熱演。ソロも美しい。

福麻むつ美は、母親の三条清と金貸しのおみつの2役。この2つの役は最後のシーンの「なんの役にも立たない年寄りは早く死んだほうがいいんだろうね」と、英に問いかける母の言葉で存在が重ねられるのだが、その見せ場をきちんと締めた。

a-395そのほかに12人の男性ばかりのアンサンブルが、志士として民衆として登場するのだが、1人1人の身体能力の高さは圧倒的で、謝作品のもっともエンターテイメントな部分を背負っていたのは彼らだといっても過言ではない。

 

そんな優れたメンバーで三演目を成功させた謝珠栄のカンパニー「TSミュージカルファンデーション」は、大資本に頼らない手作りの公演を、もう24年も続けて、実績を積み重ねてきた。この『天翔ける風に』も、主宰の謝の思いだけで上演した初演の頃を思えば、今回はまさに名作の凱旋公演という趣きで、出演者にもスタッフにも上演することの喜びと誇らしさがみなぎっていた。その熱気のなかで、ヒロインの香寿たつきはひときわ幸せそうに三条英を生きていた。

 

 

TSミュージカルファンデーション

『天翔ける風に』

2009/8/21〜30◎東京芸術劇場中ホール 他

原作◇野田秀樹「贋作・罪と罰」より 

演出・振付 謝珠栄

出演香寿たつき 山崎銀之丞 戸井勝海 今拓哉 阿部裕 平澤智 剱持たまき 福麻むつ美 他

                         【文/榊原和子 撮影/相澤裕史】

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