えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

黒木瞳主演舞台『京の蛍火』

フィナーレまで見せ場満載! 『絹の靴下』湖月わたるインタビュー

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5月16日に、ミュージカル『絹の靴下』が青山劇場で幕を開ける。
この作品のベースになっているのは、『絹の靴下〜SILK STOCKINGS〜』として1955年に初演されたブロードウェイ・ミュージカル。グレタ・ガルボの映画『ニノチカ』(1939年)を下敷きに作られ、コール・ポーターの最後の作曲作品として知られている。そのブロードウェイ版を映画にしたのが、フレッド・アステアとシド・チャリースの『絹の靴下』で、ダンス名手2人のダンスシーンが見せ場のミュージカル映画として、今も広く愛されている作品だ。

今回はブロードウェイ版をもとに映画版のエピソードも付け加えた、いわば決定版『絹の靴下〜SILK STOCKINGS〜』といえる舞台で、しかも日本初演になる。演出家は、次々に話題作を手がけている鬼才荻田浩一。主演は湖月わたるで、共演者には先日菊田一夫賞を受賞したばかりの今村ねずみ。その他に、ミュージカルで大活躍の樹里咲穂、若手俳優の渡部豪太、ベテラン戸井勝海、人気若手の伊礼彼方や神田恭兵など、贅沢な顔ぶれが揃った。

物語の背景になるのは、冷戦時代のソビエト(現ロシア)、そして華やかなパリ。ソビエトに帰国しない作曲家ボロフを国に連れ戻しにやってきた模範共産党員のニノチカと、ボロフの音楽を使って映画を撮ろうというプロデューサーのスティーブ。2人の駆け引きや、そんな中で生まれるロマンスを描きながら、冷戦の時代や国家を風刺したロマンティックで楽しいミュージカルである。

その稽古も終盤にさしかかった時期、湖月わたるにインタビューした。

【踊る荻田演出】

ーー荻田さんとの舞台は久しぶりですね?

退団のとき『Across』というショーを作っていただいて以来です。もともと荻田先生のデビュー作の『夜明けの天使たち』が、私にとっても初主演作で、その他にも芸術祭で賞を取った『ロマンチカ宝塚'04』というショーをはじめ、沢山の作品に出させていただいて、本当に深いご縁がある方なのですごく嬉しいです。でもお芝居は『夜明けの天使たち』以来なんですよ。それにこういうコメディって、なんとなく荻田先生のイメージになかったのですが、すごく楽しそうで(笑)。もともとお稽古場では楽しそうにしてらっしゃる方なのですが、今回は自ら「こんな感じの振りを」と踊ってくださったり、ご自分が観たいことを具体的に身体を使って表現してくださるので、皆からもアイデアがどんどん出てきて、和やかな稽古場なんです。

ーー荻田さんが湖月さんにと選ばれた作品だそうですね。

ありがたいことにそう言って下さって。宝塚時代にも、アステアさんのダンスを見たりとか少しは触れていた作品だったのですが、今回演じるということで、改めて資料も読んだり、映画を観たりと勉強させていただきました。

ーー今回のはどれにいちばん近いのですか?

ご覧になった方がほとんどいらっしゃらないと思いますが、ブロードウェイミュージカルの『絹の靴下』です。アステア版の映画とは結末が違います。同じハッピーエンドではあっても、さらに幸せな形になるので楽しみにしていてください。 

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【絹の靴下を履く意味】

ーー素敵ですね。そういう物語の中でニノチカはどんなふうに変化していくのでしょうか。

彼女は英才教育を受けたソビエトのエリートなんです。でもそれはもともと純粋で、正義感が強い女性。そんな彼女が初めて外国に、しかも華やかなパリに降り立って、スティーブという今までに会ったことのないタイプの人に出会ってしまう。今までは撥ねのけて来られたものが、スティーブはバリアーをすっすっと除けて、心の中に入ってきてしまうんです。

ーーお固いだけのニノチカに変化が起きるんですね。

彼女は贅沢とか快楽は罪であると教えられてきたわけですけど、人間としてはやはり幸せを感じるものですから。そこで彼女の中で葛藤が生まれるんです。そんななかで樹里(咲穂)ちゃんの演じるジャニスにも影響を受けて。

ーーたしか水中レビューの女優さんなんですよね。

羨ましいほど純真に生きて輝いている女優さんで、一人の女性として憧れてしまうんです。そして恋の力も作用し、心のおもむくまま、贅沢とか堕落の象徴だったシルクの靴下を履いてしまうんです。

ーータイトルの「絹の靴下」の意味はそこにあるんですね。

初めてシルク・ストッキングを履いて踊るシーンがあるんです。映画版にしかなかったそのシーンを、荻田さんが今回入れてくださって。そこがすごく素敵なシーンで、ニノチカが自分で自分の殻を1つ破る瞬間なんです。そのダンスはぜひ観ていただきたいです。ニノチカを演じる上での大きなターニングポイントになりそうです。ニノチカは幸せで嬉しくて、こんな気持ちになったのは初めて。でもこんな自分でいいのかどうか、という葛藤を抱えつつ、一幕が終わるんです。

【成長するニノチカ】

ーーそしてスティーブと恋に落ちてしまうんですよね。

今度はその純粋さと天真爛漫さで、スティーブにもパリの街にも、真っ直ぐに向かって行くんです(笑)。ところが渡部豪太さんが扮するボロフという作曲家がいて、彼の曲はソビエトでは国の誇りであり記念式典で使われるほどの才能なのに、その彼の曲がアメリカの娯楽映画に見事なまでに使われているのを見て、ニノチカはすごくショックを受けるんです。そのうえ、そのショックとか痛みをスティーブも周りの皆も理解してくれない、これ以上パリにいてはいけないと決心して、ニノチカは国に戻るんです。スティーブとの別れ…。傷つけ合うシーンがあったりして切ないんですけど。

ーーニノチカが恋を知る前と知ったあと、諦めるという、何段階も心の揺れを表現しないといけないんですね。

そうなんです。そしてソビエトに戻っても、もう彼女は昔の自分には戻れない。芸術家の下宿屋の管理人に格下げになってしまうし。でもそこで皆に表現の自由を与えるというか、彼らの手助けをしてあげる。そういうふうに生き方ももう変わっていくんです。

ーー人間として成長する。

彼女の目覚めがそこであるんです。自分たちのいる世界を客観的に見る目を持てるようになるんです。

ーーすごく大きなテーマも含んでる作品ですね。

でも楽しいシーンが多くて、とくにソビエトからボロフを連れ戻しにやってきて、パリの魅力に惑わされてしまう3人の場面とか、すごく面白いんです。

ーー戸井勝海さん、伊礼彼方さん、神田恭兵さんの3人組ですね。

楽しく盛り上げるという点では、この3人におまかせしてます(笑)。

ーー相手役のスティーブの今村ねずみさんは、先日菊田一夫演劇賞も受賞するなどすごく乗ってるかたですね。

すごいエンターティナーで、身のこなし1つでもアメリカ人の軽やかさかや自由さがあって、ストレートにニノチカの心に入ってくるんです。どうバリアーを張って耐えられるか、その駆け引きをがんばっています(笑)。




【湖月わたるのすべてが?】

ーーデュエットダンスももちろん?

何回かあります。音楽はコール・ポーターさんですから素敵ですし。今回、全部オリジナルな振付けなんです。そして今回は、なんとフィナーレがついておりまして。

ーーさすが荻田さん!

劇中の曲をジャズやらビギンやらいろいろアレンジを変えて、樹里ちゃんと2人のシーンもあって。ちょっとエンビ風の衣装から、一気に引き抜いたら…!

ーーもしかして脚線美ですか?

2人で見せちゃいます!

ーー荻田さん、見せどころもわかってる!

本編では樹里ちゃんとほとんど絡まないので、ここで踊らせてもらいます。もちろんねずみさんとのダンスもあるんですが。フィナーレが名倉加代子先生の振付けで。

ーーそれもすごいですね!

(笑)。もう1人の港ゆりかさんの振付けも素敵で、私の靴下のソロは港さんです。今回、私は宝塚にいて何がよかったというと、ニノチカって、同じ「清く正しく美しく」を信じて生きてきた人なんですよ。私も15歳から宝塚音楽学校で鍛えられて教えを信じて、道とか廊下を直角に曲がってきましたから(笑)。宝塚の町を2人で歩くときは、足も「一、二」と左右を揃えて。そういう宝塚を卒業して、今は女優になって新しい自分に出会えてる。そこがニノチカの気持ちとすごく重なるんです。

ーーそういう点でも荻田さんは湖月さんにぴったりだと思ったんでしょうね。純粋さとか真っ直ぐさとかも含めて。

この間、荻田先生とも話していたんですが、今だからできるのかなと。退めて4年経つんですが、いろいろな経験をさせていただいたからこそ、ニノチカの気持ちもわかるし。

ーー女性らしさが出せるようになったから、鉄の女的な部分もやれる。

男役の延長ではなく、そういう部分を作れるのかもしれません。

ーー今の湖月わたるのすべてが見られる舞台ですね。

昨日もフィナーレの振付けで、名倉先生がエンビ服のところを「一応こう振付けたけど、“湖月わたる”で自由にどうぞ」と言ってくださって。思いっきり楽しんで踊りたいですね(笑)。

ーー本当に見せ場がいっぱいですね。

何よりもこの時代のミュージカルって、すごく温かいんです。そして楽しませてくれて、キュンとさせてくれて、切なくて、最後はやっぱり生きる勇気をもらえるんです。理屈抜きで楽しめて、見終わったあと本当に幸せな気持ちで帰っていただけたらと思います。
 

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ブロードウェイ・ミュージカル・クラシック

『SILK STOCKINGS 〜絹の靴下〜』

●5/16〜30◎青山劇場

●6/4〜6◎梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

作詞・作曲◇コール・ポーター

演出・訳詞・上演台本◇荻田浩一

出演◇湖月わたる 今村ねずみ 樹里咲穂 渡部豪太 戸井勝海 伊礼彼方 神田恭兵 他

 

<料金>

東京/S席11500 A席9500 (全席指定/税込)

大阪/11500 (全席指定/税込)

 

<お問合せ>

東京/キョードー東京 03-3498-6666 

大阪/梅田芸術劇場 06-6377-3800

    http://www.umegei.com

 

                

                                【取材・文/榊原和子 撮影/岩村美佳】

 


瀬奈じゅん華麗に始動。コンサート『ALiveーHandsome Womanー』スタート!(5月12日)




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(写真下段に追加)
昨年末に惜しまれて宝塚歌劇団を卒業した元月組トップスターの瀬奈じゅんが、退団後初のコンサートを開いた。
その初日前の通し稽古の模様を簡単にレポートする。

このタイトルの『ALive』という言葉には、3つの意味「1つの人生」「1つのライブ」「あさこのライブ」が込められていて、副題の「Handsome Woman」には、男でもなく女でも中性的でもない、新しいかっこいい女性でありたいという瀬奈じゅんの思いが込められている。
そのタイトル通り、新しく女優として生きていく彼女の魅力を、男役・瀬奈じゅんのテイストを残したままで感じさせてくれた。それはいわばジェンダーを越えた「瀬奈じゅん」という個性そのものの持つ魅力とでもいうべきだろう。

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【構成】
ショーは2幕仕立て、バックダンサーは男性6人と女性4人、コーラスもできるメンバーを揃えている。
舞台上手袖にバンドがいて、あさこの「A」をデザインしたというシンプルでありながら立体的な舞台美術(太田創)が、ライブハウス風のこの劇場によく似合っている。中央に翼のゴンドラが下がっていて、瀬奈じゅんの登場と退場に使われる。

演出は藤井大介で、宝塚でも瀬奈との共同作業の多かった演出家だけに、ファンからの要望をもとにセレクトしたという楽曲を巧みに使って、瀬奈のこれまでの舞台と新しい旅立ちを織り込んだような形に構成してある。

その大きな流れの中で、瀬奈は1幕で24曲、2幕で13曲をメドレーも交えながら歌い継いでいく。(音楽は青木朝子)
宝塚時代の曲、ミュージカルの名ナンバー、男性アーティストのポピュラー、ストリートミュージック、ラテンなど、ほとんどが耳に馴染みのある名曲ばかり。
瀬奈は、宝塚時代より音域の広がった柔らかい歌声で、ファルセットへの移行も滑らかに、これらのナンバーを気持ち良さそうに歌いあげる。タイトルナンバー『ALive』は新曲(作詞/藤井大介、作曲/青木朝子)で、瀬奈じゅんの今の気持ちをそのまま伝えるものになっている。

得意のダンスも、ふんだんに取り入れられていて、振付けはANJU、KAZUMI-BOY、青木美保が担当。一幕を主にANJUが、ニ幕を主にKAZUMI-BOYが手がけていて、ストリート系からドラマティックなもの、そして男役時代そのままのダンスシーンもいくつかあり、どれも瀬奈らしいダイナミックかつ端正な動きをみせてくれる。

衣装はモノトーンが基調だが、1カ所だけ真紅のスーツスタイルになるのは強烈な印象。ほとんどパンツスタイルだが、その姿ではどこか女性性を浮き立たせ、豪華な水色のドレス姿や深いスリットから太腿をのぞかせる姿では、逆にマニッシュな魅力を感じさせる。
そんな不思議な魅力こそ、瀬奈が今回のコンセプトとして掲げたジェンダー=性を超越した世界であり、ジェンダーの意味を強く感じさせながらも、同時にその枠組を軽やかに超えて、自由に行き来するスターであると伝えてくる。
宝塚時代の男役そのままではない、女優・瀬奈じゅんならではの新しい「ファンタジー」、それはおそらく、彼女の方向性の1つとなっていくにちがいない。そんな楽しい予感を感じさせるコンサートである。

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【瀬奈じゅんコメント】

今、舞台稽古を終えました。そして「私は何より舞台が好きなんだ」と、改めて実感しております。
このような大規模なコンサートをやらせていただける奇跡と、こんな素敵な仲間たちと作り上げることができた幸せに心から感謝しています。
私らしいコンサートを皆様にお届けしたいと思っておりますので、どうぞ千秋楽までよろしくお願いいたします。

2010年5月12日      瀬奈じゅん

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【楽曲】

一幕

PART1 Antenatalー出生前のー 振付ANJU 

『昨日まで僕の背中には翼があった』

PART2  Acitiveー活動的なー 振付青木美保 

クラブMixメドレー

『翼の折れたエンジェル』

『アゲハ蝶』

『浪漫飛行』

『マスカレード』

『Caprichosa』

『翼の折れたエンジェル』

MC

『Choo Choo TRAIN』

MC

『ALive』

PART3 Affractー魅惑するー 振付青木美保 

『Believe』

『抱いてセニョリータ』

『青春アミーゴ』

『夢物語』

PART4 Agonyー狂わんばかりの気持ちー 振付ANJU

『瞳をとじて』

『Calling You』

『Bad Again』

PART5 Astralー星からのー 振付ANJU

『Mack The Knife』

宝塚メドレー

『すべての愛を』

『キラーK』

『まことの愛』

『魅惑の王子』

『朝日の昇る前に』 

『HOT TAZZ』Heet On Beat

『ランベスウォーク』

MC

『ZERO』

 

二幕

PART6  Allureー誘うー 振付KAZUMI-BOY

『アウトローブルース』

『朝日のあたる家』

『デスペラード』

『Luck be a Lady』女神よ今夜だけ女らしく

PART7  Aboveboardーありのままにー 振付KAZUMI-BOY

『愛の旅立ち』

PART8  Ablazeー燃え立ってー 振付KAZUMI-BOY

『アモーレミオ』

『Apasionado!!』

『LOADED』

『El Vient』

PART9  Affectionateー深く愛しているー 振付KAZUMI-BOY

『黒い鷲』

MC

『ALive』

PART10  Achromticー無色のー 振付振ANJU

『昨日まで僕の背中には翼があった』

PART11  Anniversaryー記念日ー 振付青木美保

『奇跡』

 



瀬奈じゅんコンサート

『ALiveーHandsome Womanー』

構成・演出◇藤井大介(宝塚歌劇団)

出演◇瀬奈じゅん 
東山竜彦、橋本好弘、武田晴彦、千田信司、加賀谷一肇、宮垣拓也、樺島麻美、染谷妃波、岩崎亜希子、後藤藍

●5/12〜18◎赤坂ACTシアター

●5/22〜23◎NHK大阪ホール

〈料金〉S席¥10000、A席¥8000

〈問合せ〉

東京/サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10:00〜19:00)  

大阪/キョードーインフォメーション 06-7732-8888(10:00〜19:00) 

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【取材・文/榊原和子 撮影/岩見那津子 追加写真撮影/初沢亜利】

 

甦るラインダンス〜GHQが撮った宝塚歌劇『春のをどり』上映会/貴重な映画を1日だけ公開。

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戦争のために閉鎖していた宝塚大劇場が再開したのは、1946年4月22日、2年2ヶ月ぶりだった。
最近ヒットしたミュージカル『愛と青春の宝塚』の、まさに背景になった時代。その『春のをどり』が、映画として公開される。

出演しているスターは春日野八千代、乙羽信子、深緑夏代といった一時代を作った人たち。再開第一作の『カルメン』と『春のをどり』は、終戦の喜びを実感させ、人々に平和と復興への意欲をかき立てるものだった。

このときの舞台が、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の戦略爆撃調査団によって、日本の文化施設を撮影するなかの1つとして撮影されていた。
撮影時期は1946年5月6日と7日、宝塚大劇場で観客なしで撮影が行なわれた。

当時まだ日本では不可能だったオールカラー(総天然色)で、華やかな歌と踊りがそのまま映し出され、また宝塚音楽学校を卒業したものの、閉鎖のあおりを受けて初舞台を踏むことのできなかった56名の、喜びのラインダンスもおさめられている。

今回の上映にあたって残存フィルムを1時間に編集、ナレーションはOGの初風諄さんが担当している。
映画上映後には、この公演に出演していたOGを数名迎えてのトークショーも行ない、当時の思い出を語ってもらう。

貴重なフィルムの1日だけの公開である。

 

甦るラインダンス〜GHQが撮った宝塚歌劇『春のをどり』

●5/15  開始14時(〜16時半)

会場:東京ウィメンズプラザ ホール

(渋谷区神宮前5-53-67 こどもの城・青山劇場のすぐ右隣)

料金:1500円(要予約・300名限定)

問合せ:寳塚文化アカデミー

TEL 080-6209-2554 FAX03-3470-2669

予約メール academy.takarazuka@gmail.com

(残念ながら満席になったそうです)

http://yhi1971.com/TICA/

 

【文/榊原和子】


彩吹真央 サヨナラレポート vol,2

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【最後の挨拶】

いよいよ最後の大階段を4人が降りて来る。

幕が上がると雪組全員が、男役は白エンビ、娘役は白いドレスで立っている。組長に呼ばれた退団者が順番に降りてくる。黒紋つきに緑のはかま姿という正装である。

大月さゆ
「なっちゃん」と呼ばれて「はーい」と元気に降りてくる。星形の白い花のブーケを、同期の沙月愛奈から、組からは麻樹ゆめみから渡される。
大月「とうとうこの瞬間がやってまいりました。皆様にお伝えしたい言葉はたくさんあるはずなのに、私の中から溢れ出る思いは感謝の気持ち、ただそれだけです。大好きな雪組の仲間たち、最後まで手をつないでいてくれた同期、ともに舞台を作り上げてきた方々、そして愛しい愛しいお客様。皆様の愛に包まれて、ここにこうしていられる瞬間、本当に幸せです。宝塚に入り、経験したすべての出来事、舞台、出会うことのできた全ての皆様を、心から愛しています。本当に、本当に、ありがとうございました」

神麗華
「じん」「はい!」と大きな声で答えが返ってきた。白い薔薇とアマリリスのブーケ。同期は舞咲りん、組からは愛原実花。
神「踊ることが大好きで飛び込んだこの夢の世界、出会い、経験は私にとっての最高の宝物です。宝塚に入ってよかった、今、私は最高に幸せです。でも雪組の仲間やファンの皆様とのお別れはとても寂しいです。たくさんのことを教えてくださった上級生の皆様、可愛い下級生の優しさ、どんなときも私を受け入れてくれた85期の同期。私をいつも見守ってくれた大切な家族、そしてなによりもこうしていつも温かい拍手をくださったすべてのお客様に、精一杯の感謝の気持ちを込めて、ありがとうございました」

未来優希
「ハマコ」「はい」明るい声で降りてくる。黄色の薔薇と白い胡蝶蘭、組からの花は音月桂が、同期の花は水夏希が渡す。
未来「幼い頃からの憧れの舞台、宝塚に入団して17年間、その月日は私のすべてでした。苦しいときも悲しいときも舞台とともに歩み、精一杯生きてまいりました。正直な気持ちを申しますと、とても寂しいです。すごく寂しいです。ですが、未来優希の舞台人生に悔いはありません。たくさんの素晴らしい作品に出会えて、さまざまな役を演じることができました。今はその1つ1つがいとおしくてなりません。
そして、苦楽をともにした雪組の仲間たち、ながさん、ちか、ゆみこ。そして愛する頼もしい下級生のみんな。みんなと同じときを歩んで来たことは私の一生の宝物です。そして未来優希を長い間応援してくださった皆様。皆様の熱い拍手と笑顔と、愛がなければ私は舞台で生きることはできませんでした。この場を借りて心より感謝いたします。宝塚歌劇団、雪組副組長、未来優希、本日をもちまして、宝塚を卒業いたします。皆様、本当に、ありがとうございました」

彩吹真央
「ゆみこー」「はい」爽やかな声が返ってきた。花は桜。同期で元星組の百花沙里が持ってきてくれた。組からは水夏希。
水に向かって何か話しかけてから正面に向く。大きな拍手のなか、最後の挨拶が始まる。
彩吹「1994年の春、彩吹真央は歩き出しました。沢山の方々の愛に彩られた道を真っ直ぐに歩み続けて、たどり着いた今日、宝塚歌劇団を卒業させていただきます。今までに出会ったすべての皆様に、そして水さん率いる、最強で、最高の、雪組の仲間たちに、今日という最高の贈りものをいただきました。明日から、この最高の贈りものを胸に、新しい道を真っ直ぐに、歩んで行きたいと思います。私の夢は永遠に続きます。16年間、本当にありがとうございました」

大きく激しい拍手に劇場が揺れる。
飛鳥組長が挨拶をする。
「明日からは新しい人生に踏み出すこの4名に、最後にもう一度、皆様からのエールをお願いします」
再び割れんばかりの拍手の中にトップスターの水夏希がマイク前に進む。 
水「皆さま、本日は雪組東京公演の千秋楽をご観劇いただきまして、まことにありがとうございました。今日も…苦しいです。
4人の退団者との夢の時間が、まもなく終わりをつげようとしています。別れの悲しさを語りだしたら…きりがありません。でも、4人の退団者と、今日足を運んで下さったすべての方のお陰で、こんなにも温かい千秋楽を迎えることができました。本当に感謝の気持ちでいっぱいでございます。
そして、今日劇場に来れなかったお客さま、スカイステージをご覧のお客さま、はたまた、スカイステージをご覧いただかなくとも、思いを飛ばして下さったすべての皆さまのお陰で、今日無事に、千秋楽を迎えることが出来ました。1か月間、本当にありがとうございました」

別れの歌は「さよならタカラヅカ」。
「たそがれ そめた 燃える空に ひとり歩く さよなら」美しい歌詞とメロディが別れにふさわしい。水を中心に互いに泣き笑いのような顔で見つめ合う退団者たち。


【カーテンコール】

1回目。全員でラインナップ。
水「舞台は一人では作れないと、毎公演感じておりますけれど、今回は本当に、お芝居もショーもすべての場面に、心が通い血が通った空間でございました。この空間にいることが心地よく、その心地よい空間には、勿論お客様もいらっしゃって、そういう意味でお客様参加型の公演だったと思っています。次回もまたぜひ雪組公演に参加していただきたいと思っています。本日は本当にありがとうございました」

2回目、スタンディングした観客の前に幕が上がる。
水「これからも雪組をよろしくお願いいたします。本日は本当にありがとうございました」
止まらない拍手。

3回目。水とともに4人が登場。
水「本当に最後です!」退団者4名に話を振る。
大月「毎日楽しかったですけど、今日…一生分の楽しみを味わったような気がします。何というか、言葉にはできないのですけれども…本当に幸せです」
水「この間みんなから、某キャラクターの、ポット夫人のポットをプレゼントしたんですが、びっくりするくらい喜んでくれて。とっても嬉しかった、あげてよかった(笑)」
神麗華に向かって、
水「階段を下りてきたときから泣いてたよね」
神「だめですね、こういうの。(泣)」
客席から神へ「頑張れー」と声がかかる。
神「頑張ります(笑)。この…雪組で、このお客様に囲まれて、卒業させていただけるのが、本当に幸せです。ありがとうございました」
水「ジャンケンには負けちゃったけどね(笑)。毎日千秋楽に向けて心の準備をしてきた神は、本当に清らかで、すごく素敵でした」
隣の彩吹に向き直る水。
彩吹「私も本当に幸せで、何の悔いもなく。ただ、私もジャンケンに負けたことが、心残りです(笑)。でも先に踊らせていただきまして(笑)」
水「本当に遠慮がなかったよね(笑)」
彩吹「だって頭ぶつけましたよね?(笑)本当に自由にさせていただきました。水さんに感謝です」
彩吹から反対側の未来に180度向きなおる水、観客から笑いが起きる。
未来「今日は、どの場面に出るときも、下級生が寄ってきて、行ってらっしゃい、って送り出してくれました。戻ってきたら、みんなが、お帰りなさいって。それが幸せで幸せで…雪組は温かい組だなと(声をつまらせる)感じました。なので、その組で17年間もいられた私は、本当に幸せなんだなというのを、今日改めて実感して。はい、今、幸せで満ち足りた気持ちでいます」
拍手のあと、言葉を続ける未来。
未来「すいません、1ついいでしょうか。私から言うのもあれですけど、水…夏希を置いていってしまいます…ぜひ皆さん、水を、次の公演、どうぞよろしくお願いします」
涙で声を震わせながら頭を深々と下げ、残していく同期の心配をする未来。その言葉に涙を見せまいと下を向いていた水が、絞り出すように答える。
水「本当に組替えしてきたときから…はまこなくして私は、ここまで来れなかった…本当にありがとう」
やがて気を取り直したように正面を向いて、
水「本当にありがとうございました」
ひときわ大きな拍手。

4回目
幕が上がると彩吹1人。割れんばかりの拍手に包まれて涙ぐんでいる。客席から声を揃えて「ゆみこさーん、ありがとう」という言葉がかかる。「本当に、本当にありがとうございました!」とまた涙ぐむ。止まらない拍手。興奮した客席から「ゆみこさん、ありがとう」の声が飛びかう。水と全員が出て来る。
水「雪組の、最強の、メンバーの中から4人も抜けてしまうのは…とても寂しいし残念ですけれど、4人の退団者と過ごした時間に悔いはありません…本当に、本当にありがとうございました」

5回目。
全員で登場。
客席から「ゆみこさん、ありがとう」の声が飛ぶと、
彩吹「Thank You!」(笑)。
2階席から「はまこちゃん、結婚してー!」と男性の声。雪組生からヒューヒューと声が飛ぶ。
未来「私、雪組のお嫁さんにしたいナンバーワンだから(笑)」
水「明日から2人とも女性としての、まあ、前から女性なんですけど(笑)、なんか不思議というか、先に行ってしまうなんてね、まぁ私も次でやめるんですけど(笑)、実感がわいてないというか、次は4人もそちら側から、対面式で参加してください」
温かな笑いと涙の中に、やはり声を詰まらせながらの挨拶となる水。
水「でも、本当に雪組にとっても心に残る大切な公演となりました。本当に…1カ月間、ありがとうございました」

6回目
帰りたくない観客はひたすら手を叩き続けている。
退団者4名と水が、上手袖からカーテン前に登場、そのまま銀橋に歩いて出てくる。水に真ん中を譲ろうとする未来と彩吹、そのままでいいと手を振る水。
水「今日は(みんなの)晴れの日だから。どうしようか? 最後のお花を選んだポイントなんか聞く?」
盛大な拍手で応える観客。

大月「ユーチャリスです。とても香りがいいんです。真っ白なお花にしたくって」
花に顔を寄せて香りを確かめる水。
水「今日の楽屋入りも、とっても可愛くってねぇ」

神「白い薔薇とアマリリスです」
水「キラキラしてるのね」
神「はい、ラメをつけてもらいました」

未来「白い胡蝶蘭と黄色の薔薇です。私は黄色が好きなので」
水「はまこは化粧前も楽屋着も何もかも黄色なんですよー」

彩吹の桜を見ながら、
水「初めて見ました!」
彩吹「ご覧の通り桜でございます。桜の花が大好きで、春が大好きで、卒業を決めたのも、春に卒業したかったという思いだったので、桜を持たせていただきました」

そのまま銀橋で最後の挨拶をする水。
水「(4人に)思い残すことはないですか?」
うなずく4人。
水「本日をもちまして、4名は宝塚歌劇団を卒業致します。そして、雪組公演1ヶ月間、本当に本当に、心からの感謝を込めまして、ありがとうございました」

4人を袖に順番に送ると、最後に残って客席に一礼する水。
別れのセレモニーは滞りなく終了した。

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【パレード】

パレードは約7000人というトップスターなみの賑わいの中で行なわれた。
晩春の穏やかな宵に、清々しい白い服のファンの姿が整然と並んでいる。

終演から約1時間ほど経った21時頃から、退団者の楽屋出は始まった。

まずはさっぱりした笑顔で大月さゆが去っていく。

ニコニコしているが泣きはらして眼が腫れている神麗華。

きりっとしていて優しげな笑顔を浮かべて歩んでいく未来優希。

彩吹真央は、桜を持ってゆっくりと歩いて来た。報道のカメラの前で止まって撮影タイムを取る。
そして、向きを変えてファンたちの前に立った彩吹真央に、四方から声を揃えて送別の言葉が贈られる。
「雪のように、花のように、私たちを包んでくれたゆみこさんに、ありったけの愛を込めて。Thank you!」
彩吹「私も愛してるー!」

明るく顔をほころばせて手を振り、雪組男役スター彩吹真央は、この日、宝塚歌劇団を卒業していった。
胸に抱えた桜のように、潔く、晴れやかに。


彩吹真央さん、未来優希さん、神麗華さん、大月さゆさん、
幸せな未来でありますように。

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鮮明な写真が少ないことをお詫びいたします。
【取材・文/榊原和子】

 

 

 

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