宝塚ジャーナル

えんぶ最新号

『天翔ける風に』レビュー

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初演も再演も観ていて、そのたびに、このミュージカルのもとになった『贋作・罪と罰』の野田秀樹の言葉と、謝珠栄のミュージカル演出の剛腕ぶりに心地よく打ちのめされた覚えがある。

 

今回は、ちょうど同じ時期に野田秀樹が新作『ザ・ダイバー』を地下の小ホールで公演していて、奇しくも同じように女性の殺人者を主人公にすえていたこともあって、改めて2つの作品のなかに、野田の作品の変遷や、時代の変化を突きつけられる感覚があった。

1995年に書かれた『贋作・罪と罰』、そして2009年の『ザ・ダイバー』、思想と大義をまがりなりにも振りかざした三条英から、愛憎の果てに狂気の海に潜り込んだ“女”へ。2つの作品に描かれた「罪」のありようは、14年という歳月以上に隔たっている。

そんな時代的な変化は『天翔ける風に』の演出家、謝珠栄のなかにも何らかの作用が働いていたのではないだろうか。三演目の今回は、これまでの二回より情緒に流れるのを排して、いわば社会的な視点が前面に押し出された『天翔ける風に』になっていた。

 

物語は、ドストエフスキーの「罪と罰」を下敷きにしている。社会の変革をめざす女塾生三条英(さんじょうはなぶさ)は、金貸しの老婆殺害を実行に移す。だがその殺人を目撃した老婆の妹まで手にかけてしまう。思いがけない結果に動揺し自分自身を苦しめる英。そんな彼女を事件を捜査する刑事・都司之助がさらに追いつめる。改革の同志で英を愛する才谷梅太郎は、彼女の犯罪を知って自首をすすめる。そして牢獄の外で英を待ち続けると誓うのだが…。

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抽象化されたセットは赤がベースで、流される血の色と革命の情熱を感じさせる。盆の転換で大川べり、英の下宿、金貸しの部屋、警察署、酒場などにテンポよく移り変わる。その転換を縫うように行われる緊張をはらんだ老婆殺しと、暴力的に弾ける民衆や志士たちの「えーじゃないか」。2つの狂気の対比がみごとで、ストーリーの核は押さえながら、たたみかけるように盛り上げていく演出は、まさに謝珠栄らしい見せかただ。

そんな流れのなかで、三条英という女性が見た時代の混沌と、それに巻き込まれる人間たちの野心やあがき、そして志が浮かび上がる。その誰もが精一杯生きていて哀しく愛しく思えるのは、謝の舞台ならではの懐の深さだろう。

 

相澤裕史主演として三度目の英に挑んだ香寿たつきは、もう彼女以外には考えられないほどこの役を自分のものにしている。取り巻く男優たちがほとんど新しい顔ぶれになったこともあって、香寿も取り組みが変わったのだろう、より内面の葛藤が見える。殺人を犯す前の緊張とおびえ、犯行後の恐怖と錯乱、やがて自分の罪を知り「もうあの頃のように無邪気な心で大川の美しい風景をながめられない」と語る切なさなどが、リアルに伝わってくる。テーマ曲の「大川の向こう」も、場面の変化に応じて自在に歌いこなしている。

 

才谷梅太郎こと坂本竜馬は山崎銀之、歌い手ではないことを考えれば、ミュージカルのメインキャストとしては十分実力を見せたといえるだろう。持ち味のワルがかった裏にある誠実さが、才谷という男のスケールにつながった。

英を追いつめる刑事・都司之助は戸井勝海で、知的ななかに色気と余裕があり、英にどこか愛を抱くような面が見えて新鮮だった。

a-812今拓哉は金で世を渡る溜水石右衛門、英の妹である智を手に入れようと閉じ込めて迫る場面や、去られてからの絶望感をややパラノイアックな演技で見せてくれた。

阿部裕は英の父の甘井聞太左衛門、時代の変化に流されるうちに事件に関わってしまう凡人の卑小さと哀しさを感じさせた。この阿部と戸井、今という3人の歌唱力は、このミュージカルのグレードを上げるのに大きく貢献している。

志士ヤマガタの平澤智は初演から同じ役だが、今回はよりパワフルで民衆のエネルギー全体を引っぱる力になっていた。

溜水と婚約する智は剱持たまき、凛とした乙女の強さで溜水と対峙するシーンを熱演。ソロも美しい。

福麻むつ美は、母親の三条清と金貸しのおみつの2役。この2つの役は最後のシーンの「なんの役にも立たない年寄りは早く死んだほうがいいんだろうね」と、英に問いかける母の言葉で存在が重ねられるのだが、その見せ場をきちんと締めた。

a-395そのほかに12人の男性ばかりのアンサンブルが、志士として民衆として登場するのだが、1人1人の身体能力の高さは圧倒的で、謝作品のもっともエンターテイメントな部分を背負っていたのは彼らだといっても過言ではない。

 

そんな優れたメンバーで三演目を成功させた謝珠栄のカンパニー「TSミュージカルファンデーション」は、大資本に頼らない手作りの公演を、もう24年も続けて、実績を積み重ねてきた。この『天翔ける風に』も、主宰の謝の思いだけで上演した初演の頃を思えば、今回はまさに名作の凱旋公演という趣きで、出演者にもスタッフにも上演することの喜びと誇らしさがみなぎっていた。その熱気のなかで、ヒロインの香寿たつきはひときわ幸せそうに三条英を生きていた。

 

 

TSミュージカルファンデーション

『天翔ける風に』

2009/8/21〜30◎東京芸術劇場中ホール 他

原作◇野田秀樹「贋作・罪と罰」より 

演出・振付 謝珠栄

出演香寿たつき 山崎銀之丞 戸井勝海 今拓哉 阿部裕 平澤智 剱持たまき 福麻むつ美 他

                         【文/榊原和子 撮影/相澤裕史】

『カサブランカ』制作発表(9月1日)VOL2

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ーーこの名作に宝塚版としてどんな特色を持たせるのか。また大空、野々さんのどんな魅力を引き出したいか。

小池「宝塚というのは組単位で公演してますから、宙組の79名いるその人たちが何らかの役割りを、本人たち自身もそしてお客様にも意味を感じていただける出しかた、作品構造が必要だと思うんです。
映画でも役の数は意外と多いんですが、短いなかでものすごいスピードで進んでいく作品ですし、今みても若い人とか高校生くらいの人が見ても面白いと感じると思います。それは情報量がものすごく多いからで、そういう点では役はあるんですけれども、それぞれの役が有機的に絡んで話が進んでいけばいいなと思っています。
沢山の生徒がただ出ていたというのではない意味のある存在というか、『カサブランカ』という物語に、リックとイルザのラブロマンスにからんで、ダイナミックな展開ができればと思っております。
 _MG_9874それから大空ですが、今日も最後にちょっとやってもらったんですが、キスがたいへんうまい人で(笑)。ラブシーンがうまいというか、あんまりベタベタした表向きにフェロモンを出すタイプではないんですが。
今、ちょうど星組が東京公演中の『太王四神記verll 』で、1月と2月に公演した花組版のほうで、ヨン・ホゲという役で出てもらったんですが、偽りの結婚をするキハという女性に婚約披露のときにパッとキスするシーンがあって。これは台本上はしないほうがいいようになってたんですが、動きをつけるときに“ちょっとしてみたら”と言ってみたんです。それをすぐやってくれて、それがかっこよくて。相手がちょっと嫌がってる、避けてるような隙に、唇を盗むのが素早くうまくて(笑)。ないほうがいいという意見もあったんですが、彼女の場合そのほうがかっこいいし、そこにその男性の情念とか思いというのが、自然に一瞬で出ていたので、生かそうと思ったんです。ですから、のちに死ぬ時に「指一本触れてない」というのは大空版では割愛させていただきました(笑)。
今、ヨン・ホゲは凰稀かなめがやってるんですが、こちらは婚約披露でパッと逃げられてしまってキスできないんです(笑)。そのあと死ぬときに「指一本触れてない」というのが、ちょっと無念さが残るみたいな(笑)。大空さんはそういうのが自然にストンといくのがすごいなと。ちょっとヒリズムというんですか虚無的な、あまり明日を信じてないぞみたいで、内側では熱い思いが燃えてる。それ_MG_0318こそハンフリー・ボガードとかが築いた1つのスタイルだと思うんですが、それと非常に近いものを、宝塚の男役のかっこよさだとか美しさ綺麗さ、それを美学というならそれを残しつつ出せるというのが、彼女の最大の魅力だと思うし、一朝一夕で出せるものではないので、これまで彼女が培ってきた1つの芸だと思います。


_MG_0331野々すみ花はこう見えてたいへんな演技派で、今日もピアノのそばに行って「もう一回弾いて」と言葉をかけますが、相手のかたはピアノで精一杯でたいへんだったと思うんですけど、そのへんのもっていき方が彼女は非常にうまいので、リハーサル見て大丈夫だなと思っていたんです。こういう至近距離にいても、この役の人は本当にそう思っているんだなという、役の内側からの衝動とか動機というものを確実に持って演じることができる。そういう点で宝塚の娘役の中で、たぶん世間全体の演技者のなかでも数少ない本物の才能を持った人だと思います。
誉めすぎてはいけないんですが、この狭い空間でやってることになんらかの真実味というか、2人の間に緊密な感情がそこにあるんだということを感じさせる、そういうことでは彼女はたいへん優れてると思います。若くして主演という地位に就きましたので、わりと等身大に上手い人なので、こんどは2000人に伝えていけるかですね。
大空祐飛という人とのコンビは『銀ちゃんの恋」でたいへん素晴らしかったのですが、大空もニヒルにやってても、たぶんリアリティを求めていると思うので、ぴったりのコンビだと思うし、役の上で好きになったり喧嘩したりというなかで、野々が返してくる球がちゃんと意味を持ってると思うので、まだ新進であってもやりやすいんじゃないか、いい演技派の2人だと思います」

_MG_0208ーー有名な作品ですが、名台詞は再現されるのですか? また映像の使用は? 

小池「セリフ関係で参考にさせていただいてるのは、アメリカで出版されている対訳のものですが、あちらでは10種類くらい出てます。英語の勉強用の中級なんだそうですが。映画の字幕でいちばん有名なのは高瀬鎮夫の訳なんですが、確かに面白いんですけど意訳というか超訳なんです。2行くらいでばっと読ませるので、高瀬さんの解釈、高瀬さんの表現になってますから。一応今回はもとのシナリオからいちいち訳しています。映像はですが最後に飛行場のシーンなどに使うと思います」

ーー大空さんと野々さんは、映画のボガードとバーグマンについてどんなイメージを。

大空「私が持ってるイメージとしてはダンディで大人で、宝塚の男役としては一朝一夕では表現できない魅力出すね。ちょっとした仕草であったり佇まいだったり、懐の深さとかチャーミングなところとか、渋みがあってセクシーで、いい男だと思います」


_MG_0282野々「イングリッド・バーグマンは、ある記事で読んだら“世界が選ぶ名女優ベスト4”に選ばれていて。本当に高い地位を持ち、自信に満ちあふれていて、『カサブランカ』を撮影したとき20代だということで、若く初々しいしい感じがありつつ、セリフがなくても醸し出す雰囲気はとても女性らしいかただと思うので、私も精一杯がんばりたいと思います」









ーーお互いの印象と宙組を率いていく抱負を。

大空「つい先日、博多座公演を終えまして、野々とは仕事するのは初めてではなかったのですが、今回は立場も違い責任も重くなったなかで、気負わずに自分たちの持ってるものを全てぶつけ合おうという目標で公演に挑んだんです。先ほど小池先生が言ってくださったことが全てだと思いますし、そこまで先生が見抜いてくださって嬉しいなと思ったんですけど、宝塚の大劇場はとても大きいんですが、そこで様式、姿の美しさを残しつつ、でもそこにリアルな感情を持ち合わせていたいというのが私のモットーなので。それに必ず反応してくれる、どんな球を投げてもそれに見合った球を打ち返してくれる、キャッチボールができる相手役に恵まれまして、これからが楽しみですし、博多座公演も充実したものとなりました。

_MG_0271宙組は全員揃ってというのは、今度の集合で初めてなのですが、今の段階では本当にパワフルな組ですし、5組のなかでいちばん新しい組なので、非常に伸びしろがあるというか、可能性は果てしないなというのを感じます。自分がどうやって率いていこうとかは、とくに思わないのですが、私と野々が加わったことで何か化学反応を起こして、宙組に新しい風が吹けばいいと思いますし、自分がどんなパフォーマンスをしていても、組子には見られてると思うので、それだけのものを稽古場から見せていけるような居方をして。私がなにか言ったことで、みんなの可能性が1つ開いたらいいんじゃないかと思います」

野々「博多座を無事に終えられたことで、何よりも安心しているんですけど、大空さんからの私の印象をうかがってたいへん恐縮でございます。小池先生からもそのような言葉をいただいて、もったいないようなお言葉で、ありがとうございます。私も、大空さんがどんなふうに舞台をもっていかれるか、それをいちばん身近で感じられる立場にいることは幸せなことだと思います。宙組に組替えというときは“私はどうなるのだろう”という思いでしたが、大空さんは言葉でなく宙組の組子全員を引っぱっていかれるすごく大きな力を持ってらっしゃるので、私もそれに付いていって宙組の皆さんと、新しい組が素敵な組になるようにがんばります」

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宝塚歌劇宙組公演
NTT東日本・NTT西日本フレッツシアター
ミュージカル『カサブランカ』

11/13〜12/11◎宝塚大劇場

2010/1/3〜2/7◎東京宝塚劇場

脚本・演出◇小池修一郎

出演◇ 大空祐飛 野々すみ花  他宙組/専科・萬あきら 磯野千尋

<料金>
宝塚大劇場 SS席11000/S席8000/A席5500/B席3500/(全席指定/税込)前売開始・10月10日
東京宝塚劇場 SS席11000/S席8500/A席5500/B席3500/(全席指定/税込)前売開始・12月6日

<チケットに関するお問い合わせ>

宝塚大劇場 0570-00-5100
東京宝塚劇場 03-5251-2001 

<公演概要> http://kageki.hankyu.co.jp/

               【取材・文/榊原和子 撮影/岩村美佳】

 

『カサブランカ』制作発表(9月1日)VOL1

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宝塚宙組公演『カサブランカ』の制作発表が行われた。

これが宝塚大劇場お披露目となるトップコンビ、大空祐飛と野々すみ花が主演し、1942年に作られた不朽の名画を、小池修一郎が脚本と演出を担当する。この制作発表の会場は、東京駅そばのジャズクラブ。主人公のアメリカ人リックはモロッコのカサブランカでナイトクラブを経営しているが、その設定にふさわしい雰囲気のなかでの会見になった。

_MG_0203粋なジャズの生演奏のなか(ピアノはパウロ・ゴメス)、客席から白いジャケット姿のリック・大空が登場。ヒロインのイルザ・野々と短いやりとりを演じる。その流れで有名な「As Time Goes By」をデュエットして、短い時間ながらも映画の雰囲気へと記者たちを誘う。










その後、ステージ上で、歌劇団理事長小林公一、協賛のNTT東日本とNTT西日本の取締役各氏、演出家小池修一郎、トップコンビからそれぞれ挨拶がある。

小林「NTT東日本、NTT西日本さんに、7回目のご協賛をいただきます。1940年代の有名な映画をもとにしたラブストーリーですが、かねてより皆さまからご希望が寄せられ、舞台化したいと思っていたものです。やっと交渉がまとまりました。世界のどこに出しても恥ずかしくない宝塚作品にしていきたい」

NTT西日本取締役営業本部長「毎年注目作品に協賛させていただいており、どの作品もご好評いただき嬉しく思っております。フレッツでは7年目、7回目の協賛となります。いまインターネットは動画時代、ますます舞台芸術との関わりが深くなっています。宝塚では、安蘭けいさんのラストディのライブ配信などもお手伝いいたしました。今回の作品を協賛できることも喜んでおります。たいへんな有名映画で、男のダンディズムを描いていることも宝塚にふさわしいと思って期待しています。これからもブロードバンドと宝塚歌劇団は、ますます協力しあって推進していければと思っています」

小池「本日はコットンクラブにようこそ。この空間だととても雰囲気が出ますが、宝塚の大きな空間で個人と個人の心理のもつれや絡みをどう見せていくか、現在もいろいろ思案中です。なんとかこの『カサブランカ』という作品の新たな展開ができれば幸せです。映画を好きな方も多く、名作中の名作ですので、気軽にいじれない部分もあります。皆さんのイメージを損なわないようにしたいし、かといってそのままでは面白くないとも思っています。宝塚歌劇団が演劇化するというところで、新たな化学変化が起きてくれるのではないかと期待しています」

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大空「宙組の大空祐飛でございます。本日はお集まりいただきありがとうございます。不朽の名作と言われる『カサブランカ』を宝塚の舞台でできたら素敵ではないかなと、以前思ったことがありましたが、今回このようなお話をいただいて、びっくりいたしましたし嬉しく光栄にも思いました。この作品をやるにあたって、映画をなんども見れば見るほどその素晴らしさを感じ、責任の重さをひしひしと感じています。映画のハンフリー・ボガードがあまりにも素敵なので、私はどんなイメージで作ろうかまだつかめないでいるのですが、今日この素敵な場所で、素敵な名曲「As Time Goes By」を歌わせていただいたことで、小池先生の描かれる世界に入っていくのがとても楽しみになりました。『カサブランカ』の世界初のミュージカル化という話題性と、私にとっては宙組に異動して、新生宙組のお披露目公演となりますので、その期待と話題性に負けないような、充実した舞台を作れますように、全力で稽古に挑みたいと思います。先ほど男のダンディズムとか男の美学というお話が出ましたが、このリックという役をいただけたことは、男役として最高の光栄と思っていますし、私にとって最大の挑戦だと思っています。本当に全身全霊で役作りに励みたいと思っておりますので、皆様どうぞよろしくお願いいたします」

野々「宙組の野々すみ花でございます。本日はありがとうございます。名作『カサブランカ』のお話を伺ったとき、嬉しく光栄な気持ちもありましたが、私にこのような責任のある役がつとまるのだろうかという不安もございます。本日このような席で大空さんとご一緒に出させていただいて、また身の引きしまる思いがいたしましたし、これからどういった作品を作っていけるのか、自分自身期待も高まってきました。70年近く愛されてきたこの作品は、皆様に愛されるものがたくさん詰まっていると思いますので、その映画の世界から抜けだした舞台でどうなるのか、自分自身でもまだわからないのですが。至らない点もたくさんございますが、小池先生と大空祐飛さんと宙組の皆さんに付いていって、良い作品にできたらと思っております。よろしくお願いいたします」
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記者からの質疑応答が始まる。

ーーこの『カサブランカ』はかなり前からオファーしていたのに、版権元がなかなかOK といわなかった経緯があるようですが、それが許諾がおりたわけは?

小林「確かに毎年というわけではないのですがお願いはしていました。2年程前からワーナーの日本支社のかたとつながりが出来て、改めてお話させていただき、やっと上演する機会を得たんです。宝塚だからなぜ舞台化のOKをいただけたのかは、よくわからないのですが、やはり大きな舞台を作ってきた実力と、たくさんのお客様に観ていただけること、いろいろな作品を宝塚調でやれるところなどが、総合的に判断されたのだと思います」

ーーこのポスターはモノクロ調ですが、舞台でこういう感じをどう表現するのでしょうか?

小池「舞台はモノクロではないので(笑)、DVDもカラー着色のが売られてて驚いたんですが、舞台はたぶんカラフルに展開すると思います。熱い太陽に焼かれた白い石とそれに対する影という、光と影のイメージがありますので。舞台上でビジュアルの色彩感が損なわれることはないと思います」

ーー大空さんと野々さん、ステージで実際に歌ってみた感想は。

大空「このような形で皆様の前で演じるのは初めてですし、まだ作っている段階なのですが、でも原作の映画をイメージして自分なりにやってみました。流れている曲もとても素敵ですし、全体のムードみたいなものを今日は再現していただけたので、演じるうえで、映画に流れている空気感とか、雰囲気の大人っぽい部分とかを体感することができました。これからの役作りが楽しみになってきました」

野々「私も本日このような場で演じさせていただきまして、自分自身がこの空間で衣装を着て、イルザという人物になって再現できたことで、これからの期待も高まりました。映画のイルザという人物だけでなく、宝塚の娘役として自分がどういった表現をできるか、これからもっと原作を理解しつつ深めていきたいなと思いました」

ーVOL2 へ続くー

 

 

 

宝塚歌劇宙組公演
NTT東日本・NTT西日本フレッツシアター
ミュージカル『カサブランカ』

11/13〜12/11◎宝塚大劇場

2010/1/3〜2/7◎東京宝塚劇場

脚本・演出◇小池修一郎

出演◇ 大空祐飛 野々すみ花  他宙組/専科・萬あきら 磯野千尋

<料金>
宝塚大劇場 SS席11000/S席8000/A席5500/B席3500/(全席指定/税込)前売開始・10月10日
東京宝塚劇場 SS席11000/S席8500/A席5500/B席3500/(全席指定/税込)前売開始・12月6日

<チケットに関するお問い合わせ>

宝塚大劇場 0570-00-5100
東京宝塚劇場 03-5251-2001 

<公演概要> http://www.

               【取材・文/榊原和子 撮影/岩村美佳】

 

The Musical 『AIDA アイーダ』レビュー


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安蘭けいの歌声を久しぶりに堪能した。
高音部も男役だったとは思えないほどよく出ていて音域が広くなった。発声やセリフまわしの縛りから解放されたせいか、感情をたっぷり乗せて伸び伸びと歌っている。

_MG_5The Musical 『AIDA アイーダ』は、2003年に星組が上演した『王家に捧ぐ歌』を、ほとんどそのままのストーリーと音楽で外部上演、宝塚のオリジナル・ミュージカルがどこまで外で通用するか、その力を問う公演だといってもいいだろう。

そのチャレンジは、『王家に捧ぐ歌』のヒロインから『AIDA アイーダ』のヒロインへと、巧みにスライドしてみせた安蘭けいを得てみごとに成功した。この作品が現代日本のミュージカル界で、貴重なレパートリーとしてこれからも上演される可能性が大きくなったことを喜びたい。

 




もちろん成功のファクターに、演出の木村信司の力が大きいことはいうまでもない。『AIDA アイーダ』における彼の演出は、オペラのダイナミズムへの志向がより強まった気がする。この国際フォーラムCには盆がないため、場面転換はセットを割ることや、高さや向きに変化をつけることぐらいしかできないうえ、動けるエリアもあまり広くない。そのなかで精一杯ダンスや動きの迫力も見せているが、やはり歌の力と役者同士が生みだすドラマそのものが、見どころ聴きどころになってくる。その点ではスタンダードなオペラ的作りだといえよう。
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音楽は甲斐正人で、アイーダ、ラダメスの新曲も含めて、彼の生み出すメロディの美しさはこの作品の土台だと改めて感じさせられる。アイーダ、ラダメス、アムネリスの3人の愛と葛藤、エジプトのファラオやエチオピア王、戦士や奴隷、女官たち、それぞれの立場や心の動きが、楽曲の力を借りて鮮明に伝わってくる。外部用のアレンジも適確で、星組版ではコメディソングだった「エジプトは強い」なども、民の驕りを象徴するナンバーとしてストレートに歌われる。

舞台美術は最近の木村作品をほとんど手がけている大田創で、ピラミッド型のセット数台をベースに、デフォルメした吊りものに象徴的な意味を持たせて、古代エジプトのイメージを伝えている。またセリがないこの劇場で地下牢への移動をどう見せるかに注目していたのだが、ピラミッドの高さを生かしたアイデアには刮目させられた。
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出演者では、安蘭けいのアイーダが経験者のキャリアを発揮して役と物語をしっかり把握、ドラマを引っぱっている。衣装もヘアメイクもナチュラルになって、生身の女性を感じさせながらも、宝塚版では抑制気味だった王女の誇りも惜しみなく出して力強い。
_MG_4JPG歌唱も、テーマを伝える「私に見えたもの(アイーダの信念)」や「王家に捧げる歌(世界に求む)」、ラダメスとの愛のデュエット「月の満ちるころ」、そしてACT1の終わりの「アイーダの孤独」や、ACT2のエチオピアの惨状のなかで歌う「私は愛する」など、新曲も含めてどれも心に突き刺さる。ラダメスとの並びは、伊礼彼方の大きな体躯を前に華奢ではかなげに見える。恋人同士としては、ACT2になってから2人とも硬さがほぐれて切なさや愛が伝わってくる。

伊礼彼方は、まず身体のラインの美しさで目を奪われる。それがラダメスの内面に入り込ませにくいほどインパクトがあるのは贅沢な不満で、誠実さが根にある人なのでヒーロー役として不足はない。後半で見せるアイーダへのひたむきな愛や地下牢での再会の喜びで見せる激情は、伊礼の男性としての魅力が大きく出ているだけに、エジプトの軍人らしさがもっと加わればさらに大きさが出るだろう。歌唱も高音部の安定が課題だが、こなれてくれば低音部の響きは魅力的だけに表現が深まりそうだ。

アムネリスのANZAは、小柄なためにエジプトの王女としての威厳がやや不足して見えるのが残念だ。そのぶん王女よりも女の部分が前面に出る作りになって、ラダメスに拒まれる部分では哀れが深まる。セリフも歌唱も美しい声で魅力的だが、アイーダに対峙する歌やセリフに威圧するくらいの迫力が加わればなおいいだろう。

ファラオは光枝明彦、ラダメスを信頼し王女を慈しむ偉大なエジプト王としての懐の深さを感じさせる。エチオピア王のアモナスロは沢木順で、気がふれた様子の演技は不気味でまがまがしい。アイーダの兄のウバルドは宮川浩で、復讐と闘争心が全身からにじみ出る。この3人の底力のある歌声と神官役の林アキラのオペラティックな歌唱が、ミュージカルとしての厚みを出している。またアンサンブルでエジプト人、エチオピア人、女官、戦士など何役も演じる23人の活躍が、この舞台に迫力を加えている。とくにコーラス部分での彼らの働きは頼もしい。


_MG_7JPG終幕の地下牢は、初演以来涙なくしては見られない名シーンだが、今回はとくに抱き合うように横たわる2人を見下ろすかのように、高い壁が非情にそびえ、戦いの犠牲になった恋人たちの愛の物語を、よりいっそう切なく浮かび上がらせていた。
 
 



これまで日本のミュージカルといえば、海外の翻訳ものがほとんどという現実のなかで、今回、宝塚から生まれ、外部で新しいキャストたちによって新鮮な命を吹き込まれた『AIDA アイーダ 』。
その成功に心から称賛を送るとともに、
当たり役アイーダで、ミュージカル・スターへの幸せな第一歩を歩み出した安蘭けいに、大きな祝福の拍手を送りたい。

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The Musical 『AIDA アイーダ 』
ー宝塚歌劇『王家に捧ぐ歌』よりー

8/29〜9/13◎東京国際フォーラムC 

9/18〜10/4◎梅田芸術劇場メインホール

脚本・演出◇木村信司(宝塚歌劇団)

作曲・編曲・音楽監督◇甲斐正人

出演◇ 安蘭けい 伊礼彼方 ANZA 光枝明彦 沢木順 、宮川浩 林アキラ 他

 

<料金>

国際フォーラムC S席12000/A席8000/B席5000/(全席指定/税込)

梅田芸術劇場メインホール S席12000/A席8000/B席4000/(全席指定/税込)

<チケットに関するお問い合わせ>

梅田芸術劇場 06-6377-3800

<公演概要> http://www.umegei.com

           【取材・文/榊原和子 撮影/岩村美佳】

 

 

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