宝塚ジャーナル

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2012年11月18日20:00

安蘭けいがアリスに！『アリス・イン・ワンダーランド』開幕。囲みインタビュー

誰もが知っているルイス・キャロルの名作「不思議の国のアリス」をベースとしたミュージカルが11月18日、青山劇場で幕を開けた。

フランク・ワイルドホーンが音楽を手掛け、2011年春、ブロードウェイで上演されたこの作品は、時代も現代に置き換えられ、アリスは大都会で１人娘とともに暮らす女流作家。そのアリスが家族や仕事の悩みを抱えて苦しむなかで、「ワンダーランド」に迷い込み、そこで出会う個性的なキャラクターたちとともに、悩みを解決していくまでの成長物語でもある。

アリス役に安蘭けい、ハートの女王にシンガーソングライターでこれが初舞台の渡辺美里、帽子屋に濱田めぐみ、ウサギに田代万里生、夫のジャックに石川禅、芋虫はJOY、娘のクロエには高畑光希、帽子屋の執事モリスは松原剛志、猫のエル・ガドに柿澤勇人など、豪華な顔ぶれで話題のポップでキッチュなミュージカルである。

【ストーリー】
女流作家のアリス・コーンウィンクルはスランプに陥っていた。編集者達も良い作品が全く書けないアリスに呆れ気味。そんなアリスの悩みは仕事だけではなかった。夫、ジャックとの仲もギクシャクしていて、離婚の危機に直面していた。常に疲れていて余裕がないアリスを見て心を痛めていたのは、アリスの娘、クロエ。
ある晩、うたた寝していたアリスがふと目を覚ますと、クロエがぬいぐるみのウサギを追って部屋を出ていくところだった。アリスは慌ててクロエの後を追うが、マンションのエレベーターの様子がいつもと違う。不思議に思いながらも乗り込むと、エレベーターは猛スピードで下降していく。そしてたどり着いた先はワンダーランドだった。

この舞台の初日前日に公開通し稽古が行なわれ、安蘭けい、渡辺美里、濱田めぐみが記者たちの囲みインタビューに答えた。

【囲みインタビュー】

ーー明日、いよいよ初日ですが？

安蘭　どきどきしてます。稽古の成果を観ていただけるので楽しみですが、万全の状態で観ていただけるようにがんばります。

濱田　いろいろな方々と一緒に、ある意味苛酷な稽古場を乗り越えてきたので、みんなでチームワークよくがんばりたいと思ってます。

渡辺　私にとっては初日も初日、初舞台ですので、このお二人のパワーをお借りして無事にスタートしたいと思っております。

ーー安蘭さん、この舞台は童話ともティム・バートン監督の映画とも違うということですが？

安蘭　まったく違うんです。ファンタジーの世界ではあるんですが、皆さんがよくご存知の水色のドレスのアリスではなく、私の今の格好のまま、NYで家族と仕事を持って、でも両立できない、ちょっと痛い女性なんです。そのアリスの頭の中にいろいろな登場人物が出て来るのは同じなんですけど、もっと現実的な世界です。

ーー大人の女性のためのお芝居だそうですね。

安蘭　そうです。テーマがまさに働く女性のためという感じで、身につまされるところがたくさんあると思います。

ーー濱田さんは帽子屋ですが、ジョニー・デップが演じたマッドハッター役ですよね？

濱田　ブロードウェイでも女性が演じていて、何故なのかなと思ったんですが、今回、主役のアリス、安蘭さんのやられるアリスの自我の部分を具現化した形なので、たぶん男性の持っているネガティブな部分よりも女性の持っているしたたかさとか、そういう部分が出たほうが、より深みが増すというか恐さが増すというか…。主役が女性なので女性が演じたほうが分かりやすいのかなと。それに男性の持つ硬質プラス猫のようなずる賢さとか、女性特有の裏の面が加味されているのではないかなと。女性が帽子屋をやるのはチャレンジだと思うし、どれだけ舞台で花咲かせられるかわからないんですけど、チャレンジは意味があるなと思ってます。

ーー渡辺さんは初舞台ですね。オファーされたときは？

渡辺　私？という感じでした（笑）。もともとミュージカルは見るのは大好きで、今、そういうチャンスがめぐってきたんだなと。女王様をやれることはまずないのでミュージカルならではとお受けしました。

ーー顔合わせからいろいろ経験ないことで戸惑ったのでは？

渡辺　そうですね。初日には自己紹介から始まって、じゃ本読みしましょうか、みたいな状態をイメージをしていたんですが、「こんにちわ」もなしでいきなり本読みと歌が始まって（笑）。授業のスピードについていくのがたいへんで、新入生というか転校生みたいな気分で（笑）。でもいつもサイドに安蘭さんと濱田さんがいてくださったので、お二人のセリフの呼吸とか歌の呼吸みたいなものを、こんな感じなんだと勉強させてもらいながら。初日から私にとっては充実したお稽古の時間でしたし、お二人のおかげで楽しく稽古させていただきました。

ーー安蘭さんと濱田さんは、渡辺美里さんと共演と聞いたときは？

安蘭　それは皆さんの想像通りです（笑）。

濱田　稽古場でまず第一声でこの「ワンダーランド」の曲を歌われた時、私は隣りだったんですけど、ワーッと（笑）。いろんな思いが駆け巡り、ご一緒させていただくんだなと。なにか出来ることがあれば100％手伝わせていただこうと、そのとき心に決めました（笑）。ですからこうやって無事初日を迎えることができて安心しているとともに、これからも出来る限りサポートさせていただきます（笑）。

安蘭　今、めぐちゃんが言ったように、私たちの青春時代がワーッとよみがえって、これを聞いて育ったんだなと（笑）。そんなに年は違わないんですけど（笑）。そういう思いで観に来てくださる方も多いと思います。友人も渡辺美里さんの生の歌が聞けるんだと大興奮してますから。その気持ちはすごくわかりますし、すごく素敵な女王様になっていらっしゃると思います。

ーーお二人からのアドバイスもありましたか？

渡辺　まずお稽古にどんな格好をしていけばいいのか、この時間はどのように使っていいのかといった細々した事まで、本当に親切に教えていただいてます。最初にお会いしたときから、濱田さんは本当は敵対する役なんですけどナイトのように「全身でお守りしますので」と言ってくださって（笑）。安蘭さんも「もう少し空間を大きく使ったほうが女王様らしいんじゃない？」とか言ってくださったり。さすが場数を沢山踏んでいらっしゃるお二人らしい無駄のないアドバイスで、一言ももらさずに聞いておきたいと思わせるものばかりです。

ーー安蘭さんから観て渡辺さんの女優ぶりは？

安蘭　初舞台とは思えないほどです。セリフも流暢ですし、なんといっても威厳があって、存在感があってそのままで十分です。助言するほどのこともないくらいだったんですが、こういう扮装をされた美里さんを見て「間違いないな」と（笑）。昨日の舞台稽古でもゴンドラで降りて来られる姿に「はい、OK！　何も申し上げることはございません」みたいな（笑）。すごく初日が楽しみです。

ーーほかのお二人の衣裳がすごいんですが、着たくなりませんか？

安蘭　着たくなります（笑）。なんかメイクもがっちりしてるし。私はナチュラルな人間でいなくてはいけないのに感化されて濃くなりそうで（笑）、そうならないように。私はこのまま家から来られるような格好で、ちょっと物足りないんですが。ぜひ休憩時間に着せていただこうかなと（笑）。頭とかも最高です。初舞台でこれはすごいですよ（笑）。

渡辺　私もライブで普通の格好に戻れない気がして（笑）。何かかぶったりしないと、スタジアムとか大きなところでは物足りなくなりそうで、自分自身コワイです（笑）。

濱田　ファンの方は、それは喜ばれると思いますよ。

渡辺　実は前回のツアーで、すでにちょこちょこ掛け声が「みさと！」ではなく「女王さま！」になってましたから（笑）。次は間違いなくそうなりそうです。

ーー三人で呑みにとかは？

三人　これからですね。

渡辺　稽古はすごくハードなスケジュールだったので、そういう時間を持てなかったんですが、稽古場ですでに仲良くしてて。

濱田　１つの机に三人で座ってて、けっこう詰め詰め状態で過ごしてたので（笑）、姉妹のようなルームシェアの人たちのような（笑）。

渡辺　まだ本番も開いてないのにスピンオフを妄想してたり。

安蘭　休憩中によく話して、舞台の話もするんですが、たわいもない話が多くて、健康器具とか健康食品とか（笑）。　

渡辺　美と健康を追求する姉妹です（笑）。

ーー最後に一言ずつアピールを。

安蘭　『アリス・イン・ワンダーランド』、とても楽しい作品になっています。お子様ももちろん楽しめますし、働く女性に大切なメッセージが込められております。ぜひ皆さん、観にいらしてください。お待ちしております。

渡辺　夢を見る力を与えてくれるようなミュージカルです。ミュージカルというものに慣れてないかたも、ポーンと飛び込んだ瞬間にその世界に入り込んでいただけると思いますので。劇場でお待ちしていますので、ぜひいらしてください。

濱田　今までの『アリス・イン・ワンダーランド』とは一味違った楽しいミュージカルになっております。驚く結末が二幕のラストに待ち受けておりますので、皆様、お楽しみに。大勢の皆様にいらしていただきたいです。お待ちしております。

ミュージカル『アリス・イン・ワンダーランド』

音楽◇フランク・ワイルドホーン　

作詞◇ジャック・マーフィー　

脚本◇グレゴリー・ボイド／ジャック・マーフィー　

演出◇鈴木裕美
出演◇安蘭けい／濱田めぐみ／田代万里生／高畑充希／松原剛志／柿澤勇人／JOY／石川禅／渡辺美里　ほか

●11/18～12/7◎青山劇場
〈料金〉S席12,600円　A席8,400円　B席4,200円

●12/14 ～ 16◎梅田芸術劇場メインホール

〈料金〉S席12,600円　A席8,400円　B席4,200円　

〈問合せ〉東京／ホリプロチケットセンター　03-3490-4949

大阪　梅田芸術劇場　06-6377-3800

公式HP　http://hpot.jp/alice/

【取材・文／榊原和子　撮影／中川正子】

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2012年11月17日02:00

東山紀之＆田口淳之介のダンス初競演作品『NO WORDS, NO TIME ～空に落ちた涙～』に花總まりが出演。

東山紀之と田口淳之介が、ファン待望のダンスで初競演の舞台が発表になった。

【台詞は一切使わず、しかも時間が過ぎるのを感じさせないエンターテインメントを創るー】

演出家G２が書き下ろした新作は、“音楽”と“ダンス”で綴る“台詞のない”物語。

メインとなる基軸は、舞台芸術の世界では地位を確立しつつあるコンテンポラリーダンスの世界。そこにプラスするのは、演劇的なストーリー性。目に楽しく鮮やかに動く美術装置。幻想的な照明効果。場面場面に仕掛けられた視覚効果の面白さ。それらをミックスすることにっよって、先鋭的な芸術へ向かいがちなコンテンポラリーな世界を、そのアート性は残しながら、判りやすく面白いエンターテインメントへと昇華させる。

今夏、舞台『英国王のスピーチ』で内気な男が吃音を克服し国王になるまでの心の葛藤を見事に演じ切った東山紀之。W主演で挑むのはダンスでは定評あるKAT－TUN田口淳之介。火花散るダンスバトルが見どころになる。

共演は、舞台・ミュージカルに活躍中の元宝塚歌劇団トップ娘役の花總まり、本公演の振付けを手がける黒田育世（ダンサー・振付家）、その他に８名のダンサーたちの出演を予定している。

【ストーリー】

描かれるのはある男の日常。

朝起きて、会社に行き、帰宅して、酒を飲み、眠る。

生活感の希薄な毎日を送る男（東山）。男がいつものように会社への道を歩いていると、反対側から１人の青年（田口）がやってくる。青年は男に笑顔で近づくが、男は青年を無視して去って行く。青年は失望して姿を消す。

男はこれ以上、自分を騙して生きていくことはできない。男が生きることをやめようとしたとき、ふと覗いた鏡には青年の姿が映っていた。現実なのか虚構なのか。
二人は不思議な世界（パラレルワールド）に迷い込んでいくー。

花總まり『エリザベートスペシャルガラコンサート』より
撮影／冨田実布

『NO WORDS, NO TIME ～空に落ちた涙～』

作・演出◇G２

振付◇黒田育世

音楽◇和田俊輔

出演◇東山紀之　田口淳之介　花總まり　黒田育世　他

●2013/1/18～2/5◎東京グローブ座

●2013/2/8～12◎森ノ宮ピロティホール

〈料金〉東京／S席9500円　A席7500円　B席5500円

大阪／9500円

〈問合せ〉東京／03-3366-4020　東京グローブ座

　Quoras エンタメ事業局　0570-020-400（24時間テープ案内）

大阪／キョードーインフォメーション　06-7732-8888（10:00～19:00）

公式サイト　http://www.nowords-notime.jp/

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2012年11月13日14:00

水夏希が優しく強い客家の女性を演じる『客家～千古光芒の民～』

写真提供／シアターフォーラム

謝珠栄のルーツともいうべき「客家（はっか）」をテーマにしたミュージカルが、宝塚OGである水夏希の主演で上演中である。（11月18日まで天王洲銀河劇場、大阪公演は11月23日、24日）

「客家」とは古代中国の王族の末裔であると言われている漢民族で、戦乱から逃れるため、中原から南へと、移動、定住を繰り返していった。移動先の原住民から見れば「よそ者」であったため「客家」と呼ばれたが、独自の言語や文化を持ち、世界中で多くの優れた人材を輩出している。

謝自身は祖母が台湾の「客家」であることから、日本ではこれまであまり知られていなかったこの民族にまつわる物語を今回取り上げることにしたという。現在、日本とは領土問題を抱えている中国がモチーフになっていることで、上演の困難もあったかと想像するが、であるからこそ、謝の根源的なメッセージである「いのち」や「生きること」が、より強く語られる作品になっている。

物語の構成は、外枠に現代があって、貿易取引のため台湾を訪れたデイビット（坂元健児）は、一人の女性（未沙のえる）から「客家」にまつわる史話を聞かされる。そこから約700年以上の時をさかのぼり、中国の南宋末期に時代は戻る。

当時の南宋は、モンゴル帝国に追いつめられ亡国の一途を辿っていた。そんな祖国を立て直すために客家人の文天祥（吉野圭吾）は、皇帝の理宗（坂元健児）のために戦いに身を投じることを決心する。そんな兄を心配する妹の文空祥（水夏希）は、先祖の教えである「土」を大事に生きようとしていた。だが兄の身に起きた出来事が動乱の中に空祥を巻き込んでいく…。

写真提供／シアターフォーラム

舞台美術は客家たちが暮らす素朴な山里をベースに、そこが吊り物や照明などで都の王宮やモンゴル軍の陣地などに変わる。その中で平和な暮らしを生きようとしている空（くう）や周りの客家人たちが、いやおうなくモンゴルとの戦いに巻き込まれていき、剣を手にして戦うことになるというドラマが展開される。

南宋の英傑で伝説的な人物と言われた文天祥について、やや書き込みが少ないのが残念だが、兄を慕う空が戦いか平和かに揺れ、小さな「いのち」のために剣を取るいきさつや、最後まで「生きよう」とする過程はきめ細かく描かれていて、謝が自分と客家の女たちの真の強さを、空という女性に託した意志が伝わってくる。

空を演じる水夏希は優しさと強さ、土と風の心を同時に持った女性像を生き生きと演じていて、男役だった技術を生かした殺陣やアクションも颯爽と見せる。また謝作品ならではのダンスシーンが今回は中国舞として登場するが、柔らかな動きのなかに切れのよさがあり、新体操のように長い布を操る舞など難易度の高いものも綺麗に踊っている。

兄の文天祥を演じる吉野圭吾は、最初の登場から高潔で意志の強い人間を感じさせ、客家の村では仲間や妹に慕われる優しさと大きさを、モンゴル軍に捕まってからは苦しみや痛みに耐える強い姿を、それぞれ短い場面の中に見せる。

逃亡してきた捕虜のモンゴル兵バヤン、実は…、という役を演じる伊礼彼方は、前半は抑えた演技ながらただならぬ気配がある。また、正体を見せてからの猛々しさでモンゴルという帝国の怖さを伝える。最後に見せる懐の深さがいい。

写真提供／シアターフォーラム

坂元健児はアメリカ人貿易商と、南宋の皇帝理宗の２役で、国難のなかで翻弄される皇帝の役を現代の会社を守ろうとする実業家につなげる。どちらの役も誠実さと周囲への愛を感じさせるのが、この人の魅力だろう。

皇帝を意のままに操り、なおかつモンゴルとも通じる宰相のカジドウは今拓哉、歴史でも有名な人物なのだが、この舞台では悪役に徹した作りで、物語の道筋がわかりやすくなっている。

写真提供／シアターフォーラム

客家の仲間たち、ミンとシュアンの畠中洋と平澤智、若者のチュンの上口耕平やルオウの渡辺大輔も、天と空の妹をよく支える存在として活躍。それぞれ激しい戦いを生きるだけに終盤が切ない。

そのほかにも科挙に合格して医学を志す才を演じる吉田朋弘、側近の塑に扮する照井裕隆なども見せ場がある。ソロダンスで魅せる植龍の王建軍や千田真司、モンゴル側の小林遼介をはじめ出演者全員がよく踊り、歌い、戦う。

そんな激しさの中に笑みをたたえてふっと現れるのが、兄妹の母親役の未沙のえる。何事にも動じない大きさと地に足の着いた柔らかさが、大きな救いになっている。

平和を愛し戦いを避けたために定住できず、移り住んで生きなければならなかった民族、「客家」。だが「生きること」は、世界中に自分たちの「いのち」を伝え、繋げていくことである。そんな謝の思いが込められたラストシーンが心に沁みた。

写真提供／シアターフォーラム

写真提供／シアターフォーラム

TSミュージカルファンデーション

『客家～千古光芒の民～』

演出・振付・作詞◇謝珠栄

脚本◇斉藤栄作

音楽◇玉麻尚一

出演◇水夏希、吉野圭吾、坂元健児、伊礼彼方、未沙のえる、平澤智、今拓哉、畠中洋、照井裕隆、渡辺大輔、小林遼介、吉田朋弘、上口耕平、千田真司、松岡雅祥、脇田伸悟

●11/9～11/18◎天王洲　銀河劇場

●11/23～11/24◎兵庫県立芸術文化センター　阪急中ホール

〈料金〉

東京　S席9,500円、A席6,000円

兵庫　A席8,000円、B席5,000円

〈問合せ〉ＴＳミュージカルファンデーション　03-5738-3567

http://www.tsmusical.com/stage/

【文／榊原和子　撮影／中川正子】

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2012年11月10日01:00

『ラストダンス』主演の瀬奈じゅんが越路吹雪さん三十三回忌にお墓参り

伝説のエンターテイナーとして数々の歌や舞台、映像で活躍した大スター、越路吹雪の生涯を舞台に甦らせる『Chanson de 越路吹雪　ラストダンス』が、12月４日から日比谷のシアタークリエで上演される（11月16日、かめありリリアホールで幕開け、地方公演あり）。

その舞台の演出家・山田和也と出演者たち７人が、越路吹雪さんの命日にあたる11月７日、越路さん夫妻のお墓のある川崎市の本遠寺で行われた三十三回忌の法要に参加した。

菩提寺である本遠寺は、作曲家だった夫君の内藤法美氏の実家と縁のあるお寺で、生前の越路さんの写真や愛用品をはじめメディアに出た際の資料なども保存してあり、在りし日の越路吹雪さんを偲ぶことができる場所でもある。

大澄賢也、柳家花緑、別所哲也、瀬奈じゅん、斉藤由貴、宇野まり絵

この法要の参加者は、瀬奈じゅん（越路吹雪役）、斉藤由貴（岩谷時子役）、宇野まり絵（記者と石井好子）、柳家花緑（古川ロッパ、菊田一夫、黛敏郎ほか）、大澄賢也（小林一三、内藤法美ほか）、別所哲也（秦豊吉、真木小太郎ほか）というキャスト陣と演出家の山田和也。

眩しいほどの秋晴れの中、一行は夫妻の墓前に立ち、まずは瀬奈から越路さんのお墓に、大澄から内藤さんのお墓にそれぞれ花束が捧げられる。そののち全員が焼香を行い、越路さんと内藤さんの魂に舞台の成功を誓った。

その後、本堂内にある越路さんの舞台写真や遺品を前に、住職と越路さんの事務所会長、コスモス会（越路さんファンクラブ）代表者などが語る越路さんのエピソードに耳を傾けた。越路さんの好きな花はコスモス、「踏まれても踏まれても、また立ち上がって咲き続けるから」ということが理由だったという。また、楽屋着にしていたという浴衣に瀬奈じゅんが袖を通して、「越路さんを感じます」と感激する場面も。越路吹雪という存在に身近に触れることで、近づいた公演初日に向けての思いをさらに強くした出演者たちだった。

【囲みインタビュー】

瀬奈　本日はお集まりいただき、ありがとうございます。このように越路吹雪さんのお墓にお参りする機会をいただいたことを幸せに思っております。越路さんからたくさん力をいただいた気がします。魂を込めて演じたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

斉藤　岩谷時子先生の役を演じます。先程お墓に参らせていただいて、越路吹雪というお名前のお墓で本名の内藤美保子ではないところが印象深くて、それだけ越路さんの女優、歌手ということへの強い思い入れを感じて、何かがわかったような気がします。とても良い機会をいただいたなと思っています。

宇野　越路さんを大好きな記者の役を演じます。お墓に参ったことでよりお稽古に集中して頑張りたいと思いました。越路さんが『ラストダンス』という作品を観てくださって楽しかったと言っていただけるような舞台にしたいと思っています。

別所　真木小太郎という越路さんを愛し恋い焦がれて、でも結ばれなかった役なんですが、改めて越路さんと内藤さんが寄り添っているお墓をみて、僕も結婚しましたが、夫婦になることとか家族になることってどういうことなんだろうと考えさせられました。それから今回稽古してみて、東宝の、帝劇のミュージカルとかその歴史を体感できる作品だと実感しました。みなさんと越路さんのスピリットを分かち合えたらと思います。

柳家　宝塚歌劇団理事長や古川ロッパ役など６役を演じます。これだけたくさんの役をやるのは落語以外ではありません（笑）。それだけたくさんの方たちが越路吹雪さんの周りにはいたんだなと。その役のことに追われていたんですが、このお墓参りに来て越路さんを身近に感じて、こんなに晴れたことも、越路さんに上からパワーを送ってもらった感じです。もし今日が雨ならこのお墓の階段ですべって転んだ人も出たのではないかと（笑）。そういう心配をさせないのが越路さんらしいなと。力を貸していただいたと思います。お参りしながら、この作品に関われたことをありがとうございましたと言わせていただきました。

大澄　小林一三さん、内藤法美さんなど６役をさせていただきます。内藤さんのお墓の前で、今日の天気のように清々しい気持ちで、お二人と対面できたという気がしました。やはりお二人の夫婦の愛の形を、あの寄り添うように並んでいるお墓に感じて感動しましたし、内藤さんから、越路さん役の瀬奈さんを大事にな、という声が聞こえた気がしますので公演の最後まで愛し抜こうと思いました。

山田　超楽しい作品になります。日本のショービジネスを作ってきた人たちの物語なので、日本のショービジネスの賛歌のような作品になると思います。

——みなさん、越路さんについてご存知のことは？

瀬奈　映像はあまりお好きではなかったようでそんなに残ってないのですが、歌っているお姿などを拝見すると、すごくご自分の世界を確立していて、深い世界を持ってらっしゃる方だなと。好きな曲ですか？　今まではすごく「ろくでなし」が好きだったんですが、この作品の中でいろいろ触れているうちに、今は「夢の中に君がいる」がいちばん好きです。

斉藤　岩谷先生に私は『レ・ミゼラブル』でお会いして、いろいろ越路さんのこともうかがいました。岩谷先生によるとたくさん話さずとも好きになってしまうような人だと。岩谷先生が書かれたご本を読むと、燃え尽きるように歌われて、岩谷先生がご自分の人生をかけて守り続けていた方だったのだなと。そういう気持ちを今、じょじょに発酵させながら稽古を進めているところです。

宇野　私が生まれる前に亡くなっていて、でもお名前だけは聞いていました。それで今回いろいろ古い映像とか拝見して、すごい方がいらしたんだなと。エンタテイーメントの道を広げられたし、すごいパワーがあって、歌への愛情もすごくて、こんなふうに表現できる人に私もなりたいなと思いました。

別所　僕が演じる役の中の小林秀雄さんもそうですが、いろいろな方たちが太陽のような越路さんに引き寄せられていたんだなと。僕も越路さんへの入り口は岩谷先生でしたが、僕が尊敬する岩谷先生が一生かけて全てを捧げられた、そういう相手が越路さんですから。そういう引き寄せられた方々の物語でもあるので、まず一番に岩谷先生に観ていただきたいですね。

柳家　亡くなったとき僕は８歳くらいでしたからリアルでは観ていた記憶はないんですが、その後、映像とかで拝見してました。歌はいろいろな人が歌うじゃないですか。「ろくでなし」なんか梅ちゃん（梅垣義明）のを見過ぎてて（笑）、鼻から豆を出すのとか（笑）。でもその「ろくでなし」を今回は歌わせていただくので、豆は完全に断ち切って（笑）。僕はあと菊田一夫先生とか渋谷森久さんとか、有名でご本人をよく知っていらっしゃる方が多い役なので、面白い体験をさせていただいてます。

大澄　花緑くんの「ろくでなし」は最高ですよ（笑）。越路さんの話は鳳蘭さんからよく聞いていました。内藤さんに関しては四季にいらした浜畑賢吉さんにうかがってます。岩谷さんはいろいろ書かれているんですが、内藤さんが越路さんについて書かれているものはあまりないんですね。愛の形はいろいろあるけど、男としての夫として越路さんを支え、河野美保子という人と出会った内藤さんという方を少しでも伝えられたらと思っております。

山田　僕が大学１年のときに越路さんは亡くなって、お会いできなかったのですが、それをいいことに想像力で作ればいいと。この作品はドキュメントではないので。残っている映像や音楽の真似をする気はないので。とにかく僕や高平さんの創造する人間ということで、似てないからといって怒らないでねという予防線なんですが（笑）。その人たちが生きた時代やその人たちが愛したエンターテイメント、その人たちを観にきてくださるお客様、そういうすべてへのオマージュですね。でもとにかく楽しい作品です。

——どんな曲が入っているのでしょうか？

山田　皆さんが思われるあれもこれも入ってます（笑）。一幕では宝塚時代から帝劇ミュージカル、日劇ミュージカル、シャンソンやリサイタルなどを追っていきますし、二幕ではもう少しパーソナルな部分に迫って、いろいろな歌を挟み込んでいきます。とにかくゴージャスな音楽劇という感じです。

——瀬奈さんは大先輩の役を演じるわけですが、プレッシャーは？　また女優で歌手でエンターティナーの越路さんとご自分との共通点は？

瀬奈　共通の部分はやはり同じ舞台人としての部分で、どの時代でもどんな立場でも同じなんだなと感じます。宝塚ということに関しては、人それぞれポリシーとか信念はあって、必ずしも同じではない部分もあります。でも同じ宝塚というところで育った大先輩なんだなと、今回改めて実感しています。プレッシャーは、自分よりも周りからの「プレッシャーでしょう？」という声がすごくて（笑）。

山田　歌がたくさんあるのがプレッシャーだよね。

瀬奈　そうなんです。すごい数で。

山田　全部で22曲くらいあって、全員、それをリプライズを含め何曲も歌うんですが、瀬奈さんは20曲歌いますからね。

瀬奈　覚えるのがたいへんです。でも頑張ります（笑）。すごく楽しい作品ですので、ぜひ観にいらしてください。

上から越路さんの遺品、浴衣を羽織る瀬奈、越路さんが愛用したソファ。