宝塚ジャーナル

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2012年12月02日08:00

『Chanson de 越路吹雪ラストダンス』主演の瀬奈じゅんが一日消防署長に就任！

『愛の讃歌』『ラストダンスは私に』など珠玉のヒット曲を残し、56歳で惜しまれつつこの世を去った伝説のエンターテイナー・“コーちゃん”こと越路吹雪。三十三回忌の今年、その熱く激動の生涯を舞台化した『Chanson de 越路吹雪ラストダンス』が、11月16日から上演されている。

キャストは、越路吹雪に元宝塚歌劇団月組トップスターの瀬奈じゅん、時に親友、時にマネージャーとして越路を支えた岩谷時子の斉藤由貴を中心に、柳家花緑、大澄賢也、別所哲也が菊田一夫、越路の夫・内藤法美、真木小太郎など、越路に大きな影響を与えた男たちを演じ分け、宇野まり絵が取材記者や石井好子などを務めている。

その作品が12月4日から上演される日比谷のシアタークリエで、11月29日、丸の内地区の火災予防と安全が「ナガモチ」することを祈願して「もちつきまつり」が行われ、瀬奈じゅんと柳家花緑が参加した。今年で奇しくも33回目というこのイベントで、瀬奈も３度目の一日消防署長。凛々しい制服姿もすっかり板についている。

就任式の後は、AED（自動体外式除細動器）を使った応急救護訓練。
「共演者の大澄賢也さんが倒れた！」という設定で、瀬奈署長と救命士の指示やアドバイスにしたがって、花緑がAEDを使って応急救護を行った。噺家らしく「賢也さん、別れたショックはもう癒えてますか？」などジョークを交えての実演に、客席は大爆笑。

続いて震災のこと、火災予防安全の心がけや日頃の対策のこと、舞台のことなど、さまざまなテーマでトークショーへ移った。

【トークショー】

――制服を着たお気持ちは？

瀬奈　しっくりきすぎて（笑）。制服はお借りしてるんですけど、いっそのこと「瀬奈じゅん」って名前を入れていただきたいくらいです（笑）。

――昨年の東日本大震災ではたくさんの帰宅困難者がでましたが、当時はどちらにいらっしゃいましたか？

瀬奈　私は都内で車に乗っていたのですが、近くの家に泊めてもらった仲間もいました。

花緑　私は仕事で名古屋に行くのに、東京駅の地下のホームにいました。下からの揺れが強くて、たぶん東京駅で最初に地震に気づいたのは僕だと思います（笑）。下手に動くと危ないので、しばらくは駅の中でじっとしてましたね。

――ご自宅では、地震時に備えて何か対策をされていますか？

瀬奈　はい。枕元にかならず懐中電灯を置いて、水も用意しています。私は阪神・淡路大震災を経験して、まったくご飯が食べられなかった時もあります。今は簡単に食べられる非常食も出ていますが当時はまだなかったので、大変な思いをしました。

花緑　お店の防災コーナーで、簡易トイレとか防災マスクとかを買いました。実際には使わないことを願ってますが。

――一人ひとりの準備がとても大切ですね。ところで、12月4日から始まる『Chanson de 越路吹雪ラストダンス』の見どころをお願いします。

瀬奈　（笑）。もちろん越路吹雪さんの歌も見どころですが、私と斉藤由貴さん以外の出演者の方が何役も何役も演じていて。花緑さんも七変化するので、そこも見どころです。

花緑　瀬奈さんは越路さんの歌を20曲近く歌いますが、そこが見どころで、あとは見なくてもいいです！（笑）

瀬奈　花緑さんの着る派手なコートと、花緑さんの歌う『ろくでなし』が最高だと思います。

花緑　ろくでもないですから（笑）。

その後、いよいよメインの「もちつき」へ。
客席からの「そーれ！」「よいしょー！」との掛け声とともに、重たい杵を振り上げて力強くもちをつき、地区の安全を祈願した。
最後に、署長から感謝状を受けた2人から、色紙のプレゼントと挨拶があった。

【挨拶】

瀬奈　今日皆様と一緒に学んだことを、実践する機会がないのが一番なのですが、何かがあった時は、愛する人の命を守れるように、けっして忘れず、そして少しでも多くの方に広めていただきたいと思います！

花緑　防災を考えるのは、3･11以降の日本に本当に必要なこと。備えておくことがとても大事で、それが心配になってはいけませんが、明るく朗らかに生きて、宝塚を観ながら（笑）、いざという時に今日のことを思い出していただければ。僕も先ほど心肺蘇生するのがとてもシンパイでしたが（笑）、助け合いの心で生きていければいいと思います。

『Chanson de 越路吹雪ラストダンス』

原作◇岩谷時子

脚本◇髙平哲郎

演出◇山田和也

出演◇瀬奈じゅん斉藤由貴宇野まり絵柳家花緑大澄賢也別所哲也

●12/4～19◎日比谷シアタークリエ

●12/22◎中日劇場

●12/29～30◎梅田芸術劇場シアタードラマシティ

〈料金〉

東京・大阪公演／9,500円（全席指定・税込）

名古屋公演／A席9,500円 B席7,000円（全席指定・税込）

〈問合せ〉

東京公演／シアタークリエ　03-3591-2400

名古屋公演／中日劇場　052-263-7171

大阪公演／梅田芸術劇場シアタードラマシティ　06-6377-3888

公式ＨＰ　http://www.lastdance-koshiji.com/

※越路吹雪ベスト・アルバム「越路吹雪ベスト100」11月７日に発売
品番：TOCT-29091～95（５枚組）価格5250円
問合せ：EMIミュージック・ジャパン　プライムミュージック第２グループ TEL 03-6830-8173　

【取材・文／塩田史子】

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2012年11月24日16:00

雪組公演『JIN-仁－』『GOLD SPARK！』囲み取材

11月23日、雪組トップコンビ音月桂と舞羽美海の退団公演となる『JIN－仁－』『GOLD SPARK！－この一瞬を永遠に－』、東京公演の幕が開いた。
『JIN－仁－』はテレビドラマ化もされ人気を集めた、村上もとかによる漫画『JIN－仁－』を舞台化した作品。主人公の南方仁（音月）が現代から江戸時代へとタイムスリップ。医者である自分の使命と向き合いながら、坂本竜馬（早霧せいな）や勝海舟（北翔海莉）との出会い、また橘咲（舞羽）という女性との恋愛模様などを1時間45分という上演時間の中に、ぎゅっと詰め込んだ。
ショー『GOLD SPARK！』はタイトル通り、煌びやかな輝きが魅力的。随所で「KEI」と客席参加の掛け声を求める場面や定番の大階段黒燕尾もあり、通常より10分ほど短いショーではあるが、充実度は高い。
囲み取材には音月と舞羽の二人が登場し、ラスト1ヶ月となる東京公演への意気込みを語った。

＜囲み取材＞

音月　みなさま本日はお忙しい中ありがとうございます。いよいよ今日から『JIN－仁－』『GOLD SPARK！』がスタートいたします。雪組の団結力を持って、最後までパワー全開で頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
舞羽　雪組の舞羽美海でございます。本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。雪組がひとつになる『JIN－仁－』と『GOLD SPARK！』で私自身も精一杯頑張って、音月さんと一緒に成長し続けたいと思います。

──音月さんが率いてきた雪組の充実度を感じることができる作品ですが、お芝居とショーの見どころをお願いします。
音月　お芝居、ショーともに下級生にいたるまで重要な役をいただきまして、それぞれが責任を持って、その役と向き合っています。それこそ今回のお芝居の中でも何回か“使命”という言葉が出てきますが、やはり私たちの使命というのはお客様に幸せになってもらうこと、公演を見て楽しかったなと、ハッピーな気持ちで帰っていただくことが私たちの使命だと思っておりますので、一人一人がそれぞれの使命を持って、充実した舞台をお見せできるように頑張っていきたいと思っています。
舞羽　お芝居もショーもやはりお客様がいてくださるからこその私たちだと思います。今回ショーでは参加型の掛け声をしていただくところもありますので、是非、お客様にも声を出して参加していただきたいです。
音月　ショーのプロローグ、中詰め、パレードと3回ほど「KEI」と（笑）、言っていただけると嬉しいです。はい。

──『JIN－仁－』は、どれだけ真剣に今を生きるかがテーマのひとつになっていますが、ご自身と作品がリンクする部分はありますか？
音月　もともと原作のあるお話ですが、斎藤先生が愛を持って台詞を書いてくださいまして、歌の歌詞もそうですが、やはり15年間宝塚で生活してきた自分、音月桂と南方仁という役がすごくリンクいたします。今回、何回かお芝居の中で、全員というか、大勢に囲まれて歌うシーンがあるんですが、雪組のみんなに支えてもらっているような気持ちですとか、みんなやお客様に出会わなければ、今の音月がなかったんじゃないかなと思いますので、その辺りはリンクしますね。
舞羽　先生も愛情を込めて台詞を書いてくださっていて、私自身の言葉も台詞で表現できるのでは、と。芸名の自分にもすごくリンクするところがあって、ひとつひとつ大切に、お芝居もですし、ショーも頑張っていきたいと思います。

──音月さんは宝塚で15年を過ごしてこられましたが、今、どういう気持ちで最後のステージに臨んでいますか？
音月　音楽学校を卒業してから15年、みなさまに支えられて、その愛がなかったら私は、さっきも言いましたがここにいなかったという気持ちがあります。初めて宝塚の舞台を見たときにたくさんのエネルギーと幸せな気持ちをいただいて、私もいただくだけではなくて、自分も発信する立場になりたいと思ったのが、本当に一番最初の私の原点なんです。ずっと心にその思いがあって舞台に15年間立ってきたので、最後の最後までその気持ちと、本当に心身共に笑顔でみなさまに最高の舞台をお届けできるように、と思いながら一日一日大切につとめていきたいと思っています。

──ちなみに最初にご覧になった舞台はなんでしたか？
音月　生ではじめてみたのは涼風真世さんが退団される公演で『グランドホテル』という作品でした。少し宝塚の作品というよりも、海外ミュージカルという色が強かったんですが、出ている男役の方々が男性にしか･･･（笑）。初めてご覧になる方ってそうおっしゃるんですが、本当に男性にしか見えなくて「この世界は一体なんなんだろう！？」と。本当に華やかで夢があって。よく映画のエンドロールのときって、見終わって脱力と言いますか、立てないじゃないですか。私も宝塚の舞台を見たあとに、客席からなかなか立てなくて、わーっと鳥肌が立って「すごく素敵な世界があるんだなぁ」と思ったのが第一印象だったので、私もお客様に同じ気持ちをお届けできるといいなと思います。

──ひとつひとつの出来事が最後になっていきますが、その事に対するお気持ちを聞かせてください。
舞羽　先日、大劇場を卒業させていただいて、そして、あと1ヶ月という時なんですが、私自身はいつも通り変わらずで、とにかく自分自身も成長したいですし、お客様に喜んでいただける舞台をと思ってつとめておりますので、まだ実感があんまりない部分があって。でもやはり終わっていく中で、宝物になるようにちゃんと自分の中に刻んでいきたいなと思っています。
音月　私も舞羽と一緒であんまり「これが最後だ。このひとつひとつが最後だ」って気持ちになってしまうと、ぐっときてしまうものがあって、なかなかお芝居に集中できないので、そこまではまだ実感がないというか、そういう風に思わないようにしています。でも少し違うのは、自分が出ていない場面を袖から見て、雪組の下級生がすごく頼もしいなと感じたこと。今までも見ていて「ここはああだな、こうだな」と注意やアドバイスをすることは多かったのですが、一人一人が命をかけて舞台に、思いをぶつけている姿を見て「あ、これならみんなに任せて、今後の雪組も大丈夫だな」という気持ちになったんです。お客様にも恥ずかしくない舞台をお届けできるんじゃないかと。そんな中で私たち二人は支えてもらっているので、安心して今日から毎日舞台に立てるんじゃないかなと思いました。

グランステージ
『JIN－仁－』
原作◇村上もとか／集英社
脚本・演出◇齋藤吉正

ショー・ファンタジー
『GOLD SPARK！－この一瞬を永遠に－』
作・演出◇中村暁

●11/23～12/24◎東京宝塚劇場

＜HP＞
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/292/index.shtml

【取材・文／岩見那津子】

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2012年11月22日16:00

安蘭けいが演じる現代人アリスの成長の物語『アリス・イン・ワンダーランド』

『アリス・イン・ワンダーランド』が青山劇場で開幕した。2011年春にブロードウェイで上演された本作品の日本初演である。

ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」をベースに現代人が抱える悩みや苦悩を主人公アリスが解決するために、物語の個性的なキャラクター達とともに体験し、本当に大切なことを再発見していく成長物語だ。ブロードウェイのオリジナル衣装を着用しているのだが、どれもカラフルでデコラティブ。世界観が見事に表現されていて、目でも楽しめる。

フランク・ワイルドホーンのキャッチーな音楽と、個性豊かで実力派のキャストが揃い、暖かでとにかく楽しいミュージカルに仕上がっている。ディズニーランドに訪れたときの高揚感にも似た、テーマパークのようなミュージカルだ。

主役のアリスを演じるのは安蘭けい。女流作家で、離婚間近の夫ジャック（石川禅）と娘のクロエ（高畑充光）がいる。スランプに陥っていて、編集部でもさんざんに呆れられている。仕事で苦労する現代女性を映し出して、自分をみるようだ…と観客が共感しやすい役だ。安蘭は仕事に疲れて家族にわめきちらしたり、スランプでどうしようもないような様をリアルに演じている。ワンダーランドに迷い込んでからは、次々に出会うキャラクター達と軽快に踊ったり、歌ったり、立ち回りもとほぼ出ずっぱりだ。コミカルなやりとりも楽しい。クロエを思い歌う「あなたのことを取り戻したい」がいい。

濱田めぐみが演じるのは帽子屋。強欲で非常な人物。アリスの分身で、彼女の欠点ばかりを集めて出来あがった存在だ。濱田ならではの魅惑的な歌声で引きつけ、ダークな魅力たっぷりに演じる。安蘭×濱田の対決は見ごたえ十分だ。

ボーカリストの渡辺美里が初舞台、初ミュージカルデビューというのも今作品の目玉のひとつ。ハートの女王を演じる。初舞台とは思えないほど、舞台に自然にハマっていた。作品の世界観にも溶け込みつつ、役の持つ威厳と渡辺自身の存在感がぴったりとリンクして、気持ちいい。

ワンダーランドの個性豊かなキャラクター達は、情緒不安定なウサギ（田代万里生、訳知り顔の芋虫（ＪＯＹ）、キザな猫エル・ガト（柿澤勇人）、夫のジャックにそっくりな白のナイト（石川）、帽子屋の秘書モリス（松原剛志）。

田代はかなりのハマリ役。繊細で可愛いなウサギを何とも愛らしいキャラクターに仕上げている。ルイス・キャロル役も演じているが、こちらは知的で優しい雰囲気だ。ＪＯＹも今作品が初舞台。持ち前の歌の上手さを生かしてジャジーな曲「芋虫のアドバイス」を歌いあげ、芋虫という珍しいキャラクターをコケティッシュに演じる。

柿澤はチャラくてお気楽な猫を、陽気でＨＡＰＰＹに演じる。思わずアリスも一緒に踊ってしまうラテンの「人生を楽しもう」が楽しい。

石川は、優しいが少し気の弱い夫のジャックと、勇敢だがどこか抜けた白いナイトのジャックを、同じ雰囲気を残しながらも違うキャラクターのように演じ分ける。

松原のモリスは愛すべき悪役といった感じ。キレた雰囲気がいい。高畑は両親を慕いながらも、不仲なふたりに心を痛める様子と、後半の人形のような様子の対比がいい。

役者全員が個性豊かな役を演じていて、今回は特にハマリ役ではないかと思わせてくれる。実力派が揃うからこその醍醐味だ。ワイルドホーンの音楽は曲ごとに様々なテイストで楽しめる。ミュージカルならではの面白さを詰め込んだ、おもちゃ箱のようにも思える。

ミュージカル『アリス・イン・ワンダーランド』

音楽◇フランク・ワイルドホーン　

作詞◇ジャック・マーフィー　

脚本◇グレゴリー・ボイド／ジャック・マーフィー　

演出◇鈴木裕美
出演◇安蘭けい／濱田めぐみ／田代万里生／高畑充希／松原剛志／柿澤勇人／JOY／石川禅／渡辺美里　ほか

●11/18～12/7◎青山劇場
〈料金〉S席12,600円　A席8,400円　B席4,200円

●12/14 ～ 16◎梅田芸術劇場メインホール

〈料金〉S席12,600円　A席8,400円　B席4,200円　

〈問合せ〉東京／ホリプロチケットセンター　03-3490-4949

大阪　梅田芸術劇場　06-6377-3800

公式HP　http://hpot.jp/alice/

【文・撮影／岩村美佳】

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2012年11月20日15:00

月組公演『ベルサイユのばら－オスカルとアンドレ編－』製作発表会

2013年、宝塚歌劇団99周年目の幕開きを飾る月組公演『ベルサイユのばら－オスカルとアンドレ編－』の制作発表会が19日に行われた。池田理代子の大人気漫画『ベルサイユのばら』を原作とし、1974年に宝塚で初演されて以来、多くのファンに愛されている宝塚の代表作である。オスカルとアンドレを龍真咲と明日海りおの二人が役替わりで演じるのが今回の上演の大きな話題の一つ。また宝塚大劇場公演のみではあるが、花組トップスターの蘭寿とむ、12月25日付けで雪組に組替えになる壮一帆の二人がアンドレ役で特別出演することでも注目を集めている。
まず月組の龍、愛希れいか、明日海によるパフォーマンスがあり、龍が「愛の巡礼」、明日海が「心の人オスカル」を、最後に愛希を加えた3人で「愛あればこそ」を披露。ひとときではあったが、会場全体に『ベルサイユのばら』の世界が広がった。
その後の会見には脚本・演出を担当する植田神爾や、原作者の池田理代子をはじめ、龍、明日海、愛希の3名が扮装姿で。また特別出演の蘭寿と壮が登場し、それぞれ『ベルサイユのばら』への思いを語った。

＜パフォーマンス＞

＜挨拶＞

小林公一（宝塚歌劇団理事長）　宝塚は再来年の2014年に100周年を迎えます。来年からアニバーサリーイヤーといたしまして、話題作、大作等を上演していきたいと思っております。その最初を飾る作品と致しまして、宝塚歌劇の至宝ともとも言えるべき『ベルサイユのばら』を上演させていただきます。こうして100周年に向けまして、さまざまな情報発信ができますのも、1974年に『ベルサイユのばら』の初演をし、それが非常に大ブームになったからだと思っております。原作者の池田理代子先生が、もしこの『ベルサイユのばら』という作品を書かれていなかったら、今、このような状況で、このような立場で宝塚歌劇団というのは存在していなかったかもしれません。今回の『ベルサイユのばら』につきましては植田先生が新たな脚本、演出で構成し、さらに華やかでドラマティックな作品に仕上げげていただいております。役替わり公演ですとか、各組からの特別出演、本当に宝塚歌劇を支えるスターたちの今回の『ベルサイユのばら』を楽しんでいただければと思っております。

植田　今日はこんなにたくさんの方々にお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。皆様方の方がご存じかもしれませんが、この3人が月組を背負うようになってから、組が大変パワフルになってきました。そういう月組のエネルギッシュさを『ベルサイユのばら』の世界の中でどう生かそうかな？そういうような気持ちがしております。強力な応援、蘭寿、そして壮、この二人が応援にきてくれますので、100周年を前に99周年に宝塚各組の窓を開けて空気を通し、そして100周年に活性化した宝塚ができればなと思っております。作品はこれぞ宝塚、夢とロマンの溢れる宝塚を徹底的に追求して作りたいと思っておりますので、どうかみなさま、ご後援のほどよろしくお願いいたします。本当にありがとうございます。

池田　今年は原作がこの世に生まれて40周年、そして再来年が宝塚で上演されまして40周年ということで、単なる数字合わせなのですが、いろいろな方から「宝塚で当然やるでしょ？」というように聞かれまして、それが今日こういう形で発表させていただけることを大変、大変嬉しく思っております。オスカルとアンドレの役替わりって「なんか上手いことやるな」って感じなんですね（笑）。あの最低2回見に行かないといけないじゃないですか（笑）。そういった歌劇団側のご努力にも非常に感激している次第でございます。最初に上演されました頃のことを私は昨日のことのように覚えていますし、演出の植田先生もまだ髪も真っ黒で（笑）。この先、たとえ我々が消えても･･･頑張りますけどね、頑張りましょうね？植田先生（笑）、もし我々が消えても原作、そして宝塚歌劇団の『ベルサイユのばら』はずっと上演される作品であってほしいなと心から願っております。そしてこの『ベルサイユのばら』で新しいスターさんたちが生まれていくこと、私自身は老後の心の支えとさせていただきたいと思っております。そんなところでしょうか（笑）。どうぞよろしくお願いいたします。

龍　みなさま本日は三井住友VISAカードシアター宝塚グランドロマン『ベルサイユのばら－オスカルとアンドレ編－』の製作発表にお越しいただきまして、まことにありがとうございます。この度、オスカル役とアンドレ役をさせていただきます龍真咲でございます。私は『ベルサイユのばら2001』で初舞台を踏ませていただきました。再びこの作品に巡り会えましたことに、強いご縁を感じ、とても嬉しく思っております。そして今回は先ほどご紹介にもありました通り、蘭寿さんと壮さんという熱いお二方とご一緒させていただきますことを大変嬉しく、頑張りたいなと思っております。月組生一丸となって、精一杯お稽古に励んでまいりたいと思います。本日はありがとうございます。

愛希　今回ロザリー役をさせていただきます愛希れいかでございます。この作品に出演させていただくことができ、本当に嬉しく、幸せに思いますと同時に、今回はオスカル役、アンドレ役の役替わり公演であったり、蘭寿さんと壮さんとご一緒させていただけるということで、本当に今から楽しみな気持ちでいっぱいでわくわくしています。私自身まだまだ未熟者ですが、この作品に精一杯取り組んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

明日海　本日はお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。明日海りおでございます。今まで家で本を読む、もしくは客席で観る側だった憧れの『ベルサイユのばら』にこうして出演させていただくことになりまして、本当に光栄に思っております。役替わりで、オスカルをさせていただき、アンドレもさせていただき、蘭寿さんと壮さんがいらっしゃるときは側でお勉強させていただきながら、もう一つ役をすることになります。三役の役替わりに挑戦するのははじめてなので、気力と体力をばっちり備えて挑んでいきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

蘭寿　花組の蘭寿とむでございます。私は今回はじめて『ベルサイユのばら』に出演させていただきます。宝塚の宝であります『ベルサイユのばら』に出演させていただけますこと、大変光栄に思っております。3日間という短い期間ではございますが、だからこそ龍真咲さん演じるオスカルをより深く、強く、愛し抜きたいと思っております。新春の月組公演に華やかな彩りを添えられますよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

壮　同じくアンドレ役をさせていただきます、壮一帆でございます。私は全国ツアー、そして外伝を含めますと、実に『ベルサイユのばら』は5回目の出演となります。アンドレ役も今回3度目になりますので、一度演じたことがあるからこその緊張感、そしてその緊張感をまた自分自身へのパワーに変えまして、この月組公演がさらに盛り上がりますよう、そして宝塚もさらに盛り上がりますよう、一生懸命頑張りたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

＜質疑応答＞
──『ベルサイユのばら』という作品の魅力、また役作りはどのように考えていますか？
龍　まず池田理代子先生の劇画の世界を読み直しまして、その時に受けたインスピレーションであったり、大切にしたいものを、息づかせていきたいと思っています。あとは植田先生のお稽古でしっかりとオスカルとアンドレ、両役とも成長させていただけるように必死にしがみついていきたいなと思っております。今はもうただ頑張りますという言葉のみなんですが、精一杯やりたいと思いますので、どうぞお楽しみになさっていてください。

愛希　私は漫画よりも先に2001年の『ベルサイユのばら』を宝塚で、はじめて見させていただいたんですが、すごく宝塚らしくて、本当に漫画からそのまま出てきたよう･･･という印象が強かったです。私がその作品に今こうして出演させていただけるということが、すごく嬉しくて。ロザリーという人物に関してはオスカル様を慕って、どれだけオスカル様を愛せるか、ということを今回、頑張りたいと思います。

明日海　池田先生の漫画はオスカルとアンドレのみならず「今日はどの役に感情移入して読もうかな？」というわくわく感があって、そういう素敵な、いろいろな人の心情が入り混じっている作品にこうして月組みんなで挑めることをとても嬉しく思います。その中で私なりのアンドレ、そしてオスカルを作り出していけたらなと思います。

蘭寿　私はファン時代に大劇場公演を観させていただきまして、池田理代子先生の描かれました『ベルサイユのばら』の世界が、宝塚にこんなにもぴったりと合うのかと、夢と愛の溢れる世界に涙が止まらなかった記憶があります。アンドレの役作りに関しましては、オスカルの気高い志と、女心をより深く近くで理解し、包容力溢れる男性を作りたいなと思っております。

壮　先ほどお話にもありましたように、やはり宝塚歌劇団の『ベルサイユのばら』というのは池田理代子先生の原作があってこそだと思っております。なので、今回演じさせていただきますアンドレに関しても、原作の漫画のイメージを損ねることなく、そして原作のファンでいらっしゃるみなさまのご期待、それから宝塚の『ベルサイユのばら』のファンでいらっしゃるみなさまのご期待に背くことのない、包容力溢れるアンドレにしたいと思っております。『ベルサイユのばら』は、お稽古場でも伝統ある雰囲気というものがありまして、経験者としてその辺りも次に繋いでいけるように、私自身若輩者ではありますけれども、その辺りも少しずつでもみなさんにお伝えすることができたらいいなと思っております。

──植田先生に。新たな『ベルサイユのばら－オスカルとアンドレ編－』ということで、演出面で変更はありますか？
植田　やはり池田先生の原作があるわけですから、それ以上にはみ出すこともできないので、その中でどうするのかということを特に考えているんです。特に最近、初演のときの宝塚の現状と今の現状がすごく似てるなと思うんです。だからこそ今度は徹底的に宝塚の良さ、伝統ある宝塚の舞台を作ってみようと思っております。

──特に強調されるような場面はありますか？
植田　今度の目玉は、最後の馬車に乗って天国に行くんですけれども、これをクレーンでやって、二人を乗せて、馬車そのまま空中へ飛んでいこうと思っております。これは大きな見せ場だと思っております。

──パフォーマンスをされた月組の3人へ。改めて主題歌を歌われていかがでしたか？
龍　いつも作品に巡り合う毎に、役に巡り合う毎に思うんですが、自分が持っている役に対してや曲に対しての印象と、演じてみての印象が一致するところと、一致しないところがあるんです。そこを上手く同じ線の上に乗せられるように、台詞も歌も、全てを同じ一つの線に乗せられるように、これから作っていきたいと改めて思いました。

愛希　私もファン時代から知っている、よく聞いていた曲だったので、今歌わせていただいて、本当にこの作品をさせていただけるんだなと実感しました。

明日海　今まで自分も夢見心地で聞いていた曲ばかりなので、歌うとなるととてもテンションが上がってしまうんですが、実際歌ってみると難しいくてですね、歴代の先輩の方々は本当にお上手だったんだなと実感しております。またお稽古場で役を深めて、歌唱の面だけでなく、内面から深く、いろんなことを感じて歌えるようになれたらなと思っております。

──植田先生へ。先ほど初演当時の宝塚の状況と今が似ているとおっしゃっていましたが、具体的にどのような点が？
植田　初演は40年前なんですけれども、その頃はアンダーグラウンドという言葉がはやって、全体にどこの劇場に行っても暗かったんです。それで感動もするし、涙も出したんですが、でも宝塚は違うなというのをいつも見ながら思っていました。宝塚という伝統は、こういうやり方じゃない、という意味で99周年にもう一度、宝塚の伝統、夢とロマンと愛に溢れた、甘いかもわからないですけれども、そういう世界を再現してみたいなと思います。40年経ってますから色んな所で手垢が付いてきてるんです。それを全部取り払って、そのために榛名由梨も演技指導に来てもらうんですが、もう一度初心にかえってやってみたいと思っております。

──龍さんは3人にアンドレを相手にオスカルを演じ、なおかつご自身でもアンドレをやられますが、そのことへの意気込みを。また明日海さんの3つ目の役とは？
龍　はじめて愛される役というか、このように情熱的に、しかも役替りで魅力的なお三方にそのように思われるということなので、しっかりとオスカルの女らしさであったり、国を思う女性である面以外の強さであったり、弱さというものを表現していきたいです。オスカル、アンドレ役、どちらとも演じるということなので相乗効果で、台詞だけではない心の中の気持ちを演技で表せるように、しっかり作り上げたいと思います。本当に楽しみにさせていただいております。

明日海　3つ目の役は私もまだ知らなくてですね。明日集合日となっておりますので、その香盤を見に行きたいと思います（笑）。私もとても楽しみです。オスカルとアンドレをさせていただくことに関しましては、オスカルでもアンドレでも龍真咲さんとがっつり組ませていただくということで、相手役の愛希にはやきもちを焼かれるのでは？と心配ですが（笑）、それも彼女の納得がいくぐらい素敵に演じなければと思っております。

──蘭寿さん、壮さんに。好きな場面は？
蘭寿　私はワインに毒を入れるシーンが･･･。あのシーンの一連が大好きでございます。

壮　大好きな場面はたくさんあるんですけれども、私はアンドレとして生きているならば最後の「俺は今日まで生きていて良かった」という、あの台詞がもうアンドレの喜び全てが詰まっている場面なので、本当に大好きな場面ですね。

──これだけ上演を重ねてきた中で、１つとして同じ作品がないというのが『ベルサイユのばら』だと思いますが、かつての名場面、例えばバスティーユですとか、ショーのボレロなどはあるんでしょうか？
植田　ショーのボレロはやりたいと思っております。喜多先生の名振付ですし、やはりベルばらの世界、宝塚の世界なのであれは使いたいと思っております。今回は特にアンドレとオスカルが役替りするので、書きながらものすごく難しかったのが、いつも一緒に出てるのに、ある時は役が変わっているということの大変さがあったので、なるべく二人を離してやりたい、離してやりたいというような気持ちがありました。そういったところも苦労はしたんですが「宝塚のベルばらは進化している」と言っていただけるよう、宝塚は頑張っていると言われるものにしたいと思っています。

三井住友VISAカードシアター
宝塚グランドロマン
『ベルサイユのばら』－オスカルとアンドレ編－
～池田理代子原作「ベルサイユのばら」より～
脚本・演出◇植田紳爾　演出◇鈴木圭

●2013/1/1～2/4◎宝塚大劇場
●2013/2/15～3/24◎東京宝塚劇場

＜HP＞
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/310/index.shtml

【取材・文／岩見那津子】