宝塚ジャーナル

えんぶ最新号

彩吹真央 サヨナラレポート vol,2

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【最後の挨拶】

いよいよ最後の大階段を4人が降りて来る。

幕が上がると雪組全員が、男役は白エンビ、娘役は白いドレスで立っている。組長に呼ばれた退団者が順番に降りてくる。黒紋つきに緑のはかま姿という正装である。

大月さゆ
「なっちゃん」と呼ばれて「はーい」と元気に降りてくる。星形の白い花のブーケを、同期の沙月愛奈から、組からは麻樹ゆめみから渡される。
大月「とうとうこの瞬間がやってまいりました。皆様にお伝えしたい言葉はたくさんあるはずなのに、私の中から溢れ出る思いは感謝の気持ち、ただそれだけです。大好きな雪組の仲間たち、最後まで手をつないでいてくれた同期、ともに舞台を作り上げてきた方々、そして愛しい愛しいお客様。皆様の愛に包まれて、ここにこうしていられる瞬間、本当に幸せです。宝塚に入り、経験したすべての出来事、舞台、出会うことのできた全ての皆様を、心から愛しています。本当に、本当に、ありがとうございました」

神麗華
「じん」「はい!」と大きな声で答えが返ってきた。白い薔薇とアマリリスのブーケ。同期は舞咲りん、組からは愛原実花。
神「踊ることが大好きで飛び込んだこの夢の世界、出会い、経験は私にとっての最高の宝物です。宝塚に入ってよかった、今、私は最高に幸せです。でも雪組の仲間やファンの皆様とのお別れはとても寂しいです。たくさんのことを教えてくださった上級生の皆様、可愛い下級生の優しさ、どんなときも私を受け入れてくれた85期の同期。私をいつも見守ってくれた大切な家族、そしてなによりもこうしていつも温かい拍手をくださったすべてのお客様に、精一杯の感謝の気持ちを込めて、ありがとうございました」

未来優希
「ハマコ」「はい」明るい声で降りてくる。黄色の薔薇と白い胡蝶蘭、組からの花は音月桂が、同期の花は水夏希が渡す。
未来「幼い頃からの憧れの舞台、宝塚に入団して17年間、その月日は私のすべてでした。苦しいときも悲しいときも舞台とともに歩み、精一杯生きてまいりました。正直な気持ちを申しますと、とても寂しいです。すごく寂しいです。ですが、未来優希の舞台人生に悔いはありません。たくさんの素晴らしい作品に出会えて、さまざまな役を演じることができました。今はその1つ1つがいとおしくてなりません。
そして、苦楽をともにした雪組の仲間たち、ながさん、ちか、ゆみこ。そして愛する頼もしい下級生のみんな。みんなと同じときを歩んで来たことは私の一生の宝物です。そして未来優希を長い間応援してくださった皆様。皆様の熱い拍手と笑顔と、愛がなければ私は舞台で生きることはできませんでした。この場を借りて心より感謝いたします。宝塚歌劇団、雪組副組長、未来優希、本日をもちまして、宝塚を卒業いたします。皆様、本当に、ありがとうございました」

彩吹真央
「ゆみこー」「はい」爽やかな声が返ってきた。花は桜。同期で元星組の百花沙里が持ってきてくれた。組からは水夏希。
水に向かって何か話しかけてから正面に向く。大きな拍手のなか、最後の挨拶が始まる。
彩吹「1994年の春、彩吹真央は歩き出しました。沢山の方々の愛に彩られた道を真っ直ぐに歩み続けて、たどり着いた今日、宝塚歌劇団を卒業させていただきます。今までに出会ったすべての皆様に、そして水さん率いる、最強で、最高の、雪組の仲間たちに、今日という最高の贈りものをいただきました。明日から、この最高の贈りものを胸に、新しい道を真っ直ぐに、歩んで行きたいと思います。私の夢は永遠に続きます。16年間、本当にありがとうございました」

大きく激しい拍手に劇場が揺れる。
飛鳥組長が挨拶をする。
「明日からは新しい人生に踏み出すこの4名に、最後にもう一度、皆様からのエールをお願いします」
再び割れんばかりの拍手の中にトップスターの水夏希がマイク前に進む。 
水「皆さま、本日は雪組東京公演の千秋楽をご観劇いただきまして、まことにありがとうございました。今日も…苦しいです。
4人の退団者との夢の時間が、まもなく終わりをつげようとしています。別れの悲しさを語りだしたら…きりがありません。でも、4人の退団者と、今日足を運んで下さったすべての方のお陰で、こんなにも温かい千秋楽を迎えることができました。本当に感謝の気持ちでいっぱいでございます。
そして、今日劇場に来れなかったお客さま、スカイステージをご覧のお客さま、はたまた、スカイステージをご覧いただかなくとも、思いを飛ばして下さったすべての皆さまのお陰で、今日無事に、千秋楽を迎えることが出来ました。1か月間、本当にありがとうございました」

別れの歌は「さよならタカラヅカ」。
「たそがれ そめた 燃える空に ひとり歩く さよなら」美しい歌詞とメロディが別れにふさわしい。水を中心に互いに泣き笑いのような顔で見つめ合う退団者たち。


【カーテンコール】

1回目。全員でラインナップ。
水「舞台は一人では作れないと、毎公演感じておりますけれど、今回は本当に、お芝居もショーもすべての場面に、心が通い血が通った空間でございました。この空間にいることが心地よく、その心地よい空間には、勿論お客様もいらっしゃって、そういう意味でお客様参加型の公演だったと思っています。次回もまたぜひ雪組公演に参加していただきたいと思っています。本日は本当にありがとうございました」

2回目、スタンディングした観客の前に幕が上がる。
水「これからも雪組をよろしくお願いいたします。本日は本当にありがとうございました」
止まらない拍手。

3回目。水とともに4人が登場。
水「本当に最後です!」退団者4名に話を振る。
大月「毎日楽しかったですけど、今日…一生分の楽しみを味わったような気がします。何というか、言葉にはできないのですけれども…本当に幸せです」
水「この間みんなから、某キャラクターの、ポット夫人のポットをプレゼントしたんですが、びっくりするくらい喜んでくれて。とっても嬉しかった、あげてよかった(笑)」
神麗華に向かって、
水「階段を下りてきたときから泣いてたよね」
神「だめですね、こういうの。(泣)」
客席から神へ「頑張れー」と声がかかる。
神「頑張ります(笑)。この…雪組で、このお客様に囲まれて、卒業させていただけるのが、本当に幸せです。ありがとうございました」
水「ジャンケンには負けちゃったけどね(笑)。毎日千秋楽に向けて心の準備をしてきた神は、本当に清らかで、すごく素敵でした」
隣の彩吹に向き直る水。
彩吹「私も本当に幸せで、何の悔いもなく。ただ、私もジャンケンに負けたことが、心残りです(笑)。でも先に踊らせていただきまして(笑)」
水「本当に遠慮がなかったよね(笑)」
彩吹「だって頭ぶつけましたよね?(笑)本当に自由にさせていただきました。水さんに感謝です」
彩吹から反対側の未来に180度向きなおる水、観客から笑いが起きる。
未来「今日は、どの場面に出るときも、下級生が寄ってきて、行ってらっしゃい、って送り出してくれました。戻ってきたら、みんなが、お帰りなさいって。それが幸せで幸せで…雪組は温かい組だなと(声をつまらせる)感じました。なので、その組で17年間もいられた私は、本当に幸せなんだなというのを、今日改めて実感して。はい、今、幸せで満ち足りた気持ちでいます」
拍手のあと、言葉を続ける未来。
未来「すいません、1ついいでしょうか。私から言うのもあれですけど、水…夏希を置いていってしまいます…ぜひ皆さん、水を、次の公演、どうぞよろしくお願いします」
涙で声を震わせながら頭を深々と下げ、残していく同期の心配をする未来。その言葉に涙を見せまいと下を向いていた水が、絞り出すように答える。
水「本当に組替えしてきたときから…はまこなくして私は、ここまで来れなかった…本当にありがとう」
やがて気を取り直したように正面を向いて、
水「本当にありがとうございました」
ひときわ大きな拍手。

4回目
幕が上がると彩吹1人。割れんばかりの拍手に包まれて涙ぐんでいる。客席から声を揃えて「ゆみこさーん、ありがとう」という言葉がかかる。「本当に、本当にありがとうございました!」とまた涙ぐむ。止まらない拍手。興奮した客席から「ゆみこさん、ありがとう」の声が飛びかう。水と全員が出て来る。
水「雪組の、最強の、メンバーの中から4人も抜けてしまうのは…とても寂しいし残念ですけれど、4人の退団者と過ごした時間に悔いはありません…本当に、本当にありがとうございました」

5回目。
全員で登場。
客席から「ゆみこさん、ありがとう」の声が飛ぶと、
彩吹「Thank You!」(笑)。
2階席から「はまこちゃん、結婚してー!」と男性の声。雪組生からヒューヒューと声が飛ぶ。
未来「私、雪組のお嫁さんにしたいナンバーワンだから(笑)」
水「明日から2人とも女性としての、まあ、前から女性なんですけど(笑)、なんか不思議というか、先に行ってしまうなんてね、まぁ私も次でやめるんですけど(笑)、実感がわいてないというか、次は4人もそちら側から、対面式で参加してください」
温かな笑いと涙の中に、やはり声を詰まらせながらの挨拶となる水。
水「でも、本当に雪組にとっても心に残る大切な公演となりました。本当に…1カ月間、ありがとうございました」

6回目
帰りたくない観客はひたすら手を叩き続けている。
退団者4名と水が、上手袖からカーテン前に登場、そのまま銀橋に歩いて出てくる。水に真ん中を譲ろうとする未来と彩吹、そのままでいいと手を振る水。
水「今日は(みんなの)晴れの日だから。どうしようか? 最後のお花を選んだポイントなんか聞く?」
盛大な拍手で応える観客。

大月「ユーチャリスです。とても香りがいいんです。真っ白なお花にしたくって」
花に顔を寄せて香りを確かめる水。
水「今日の楽屋入りも、とっても可愛くってねぇ」

神「白い薔薇とアマリリスです」
水「キラキラしてるのね」
神「はい、ラメをつけてもらいました」

未来「白い胡蝶蘭と黄色の薔薇です。私は黄色が好きなので」
水「はまこは化粧前も楽屋着も何もかも黄色なんですよー」

彩吹の桜を見ながら、
水「初めて見ました!」
彩吹「ご覧の通り桜でございます。桜の花が大好きで、春が大好きで、卒業を決めたのも、春に卒業したかったという思いだったので、桜を持たせていただきました」

そのまま銀橋で最後の挨拶をする水。
水「(4人に)思い残すことはないですか?」
うなずく4人。
水「本日をもちまして、4名は宝塚歌劇団を卒業致します。そして、雪組公演1ヶ月間、本当に本当に、心からの感謝を込めまして、ありがとうございました」

4人を袖に順番に送ると、最後に残って客席に一礼する水。
別れのセレモニーは滞りなく終了した。

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【パレード】

パレードは約7000人というトップスターなみの賑わいの中で行なわれた。
晩春の穏やかな宵に、清々しい白い服のファンの姿が整然と並んでいる。

終演から約1時間ほど経った21時頃から、退団者の楽屋出は始まった。

まずはさっぱりした笑顔で大月さゆが去っていく。

ニコニコしているが泣きはらして眼が腫れている神麗華。

きりっとしていて優しげな笑顔を浮かべて歩んでいく未来優希。

彩吹真央は、桜を持ってゆっくりと歩いて来た。報道のカメラの前で止まって撮影タイムを取る。
そして、向きを変えてファンたちの前に立った彩吹真央に、四方から声を揃えて送別の言葉が贈られる。
「雪のように、花のように、私たちを包んでくれたゆみこさんに、ありったけの愛を込めて。Thank you!」
彩吹「私も愛してるー!」

明るく顔をほころばせて手を振り、雪組男役スター彩吹真央は、この日、宝塚歌劇団を卒業していった。
胸に抱えた桜のように、潔く、晴れやかに。


彩吹真央さん、未来優希さん、神麗華さん、大月さゆさん、
幸せな未来でありますように。

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鮮明な写真が少ないことをお詫びいたします。
【取材・文/榊原和子】

 

 

 

彩吹真央 サヨナラレポート vol,1

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温かさと寒さが交互にやってきた激しい春、その春も終わろうという4月25日、彩吹真央、未来優希、神麗華、大月さゆの4人が宝塚から去って行った。

その日は旅立ちにふさわしい爽やかな宵で、彩吹が手に持った桜の花が夢のように儚く美しくよく似合っていた。

3月26日に初日を開けたときからあっというまの1ヶ月で、とくに退団者のファンにとっては1日1日と、残りの日々を切なく数えた毎日だっただろう。その別れの日を遅まきながら報告させてもらう。

 

雪組公演『ソルフェリーノの夜明け−アンリー・デュナンの生涯−』『Carnevale 睡夢−水面に浮かぶ風景−』の千秋楽、本公演が終了した19時過ぎから、この公演で退団する彩吹真央のサヨナラショーが行われた。
トップスターの退団以外はめったに行なわれないサヨナラショーだが、雪組二番手スターとして組を支えてきた彩吹真央の功績を讃える意味もあっての待遇だったのだろう。

ショーのフィナーレ後、飛鳥裕組長がこの東京公演を振り返り、天皇皇后両陛下のご来臨をたまわったこと、毎日の熱い拍手に励まされたこと、専科の汝鳥怜、未沙のえるへの感謝などが語ったあとに、退団する彩吹真央についての話をする。
「宝塚生活16年の彩吹真央が退団する公演でもあります。水夏希を支えて雪組の礎を築いてくれました。彩吹真央の最後のステージ『彩吹真央サヨナラショー』を最後までご楽しみ下さい」と紹介、サヨナラショーは始まった。

 

【彩吹真央サヨナラショー】

緞帳が上がると、大劇場と同じように、大階段に濃いエンジ色のタキシード姿で彩吹が立っている。
歌は「足跡のない道」(2009年『RIO DE BRAVO!!』)、朗々としたソロが響く。

続けて、歩きながら銀橋に出て切なく歌う「雪解けに咲くマリンカのように」(08年『カラマーゾフの兄弟』)、「カテリーナ・イワーノヴナ!」という呟きのようなセリフが入る。

その思いを受け取るように登場した白いドレス姿の大月さゆ、2人が踊る「ラブソング」(07年『シルバー・ローズ・クロニクル』)のダンス。そして歌をデュエットする2人は、もうあの作品の若者たちというより大人で優雅な恋人たちだ。

次は未来が登場、ヴォリームたっぷりに「ジョイフル、ジョイフル〜」と歌い出すのは、朝海ひかるのお披露目と、同期の水夏希のプレお披露目、そして全国ツアーで歌った思い出の「Joyful!!」(03年『JJoyful!!』、07年『Joyful!!II』)だ。雪組のメンバーたちも黒と金のパンツルックで現れ、賑やかに手拍子で大合唱が響く。

一転して静かなイントロが始まり上手から縞のスーツの水、少し間をおいて下手から彩吹が青いスーツ姿で現れる。「マリポーサの花」(08年『マリポーサの花』)のアレンジ・バージョンを踊る2人。顔を見合わせて楽しそうに踊って銀橋までやってきてポーズを決めたあとは、エスコバルが首のペンダントを渡す。それを握りしめて、水のネロが絞り出すように口にしたのは「お前を…忘れない」だった。1人残された彩吹エスコバルがソロで歌う「生きて何を」(同)は、あの舞台での切ない叫びをまざまざと甦らせた。

そして大詰め。「「ハアハハ、ハアハハ、」というリズミカルなイントロに誘われるように組子たちが、そして薄いピンクの総スパンの彩吹が登場して「風の葬列」(08年『ソロモンの指輪』)で盛り上がる。未来の響く声に歌い継がれ、また2人のハーモニーをメインに全員が歌い踊る。水も加わるなかで彩吹を中心に輪になる雪組生たち。最後は大合唱と観客の熱い拍手のなかで「彩吹真央サヨナラショー」の幕が下りた。

 

【退団者4人について】

カーテン前に感激の面もちで現れた飛鳥組長から「大きな拍手をありがとうございました。今頃彩吹真央の心は皆様の愛に包まれてほかほかだと思います」と挨拶がある。

退団者4人の紹介が始まる。

大月さゆ/2003年初舞台、研究科8年。研1でバウ『JUBILEE-S』で樹里咲穂の相手役に抜擢、『堕天使の涙』では本公演でイヴェットと新人公演ヒロイン、また『エリザベート』で新人公演のシシィと抜擢が続いたときの苦しさ。好きだった『シルバー・ローズ・クロニクル』や、『ZORRO』で専科さんの役で勉強になったこと。体当たりで役にぶつかる娘役だったことなどが語られる。

神麗華/1999年初舞台、研究科12年。入団後はダンサーとして頭角を現し、『凱旋門』の代役で演じた好きなダンスが東京で本役になったこと、思い出の作品はバウの『OVER THE MOON』や『Young Bloods!』、『さすらいの果てに』のナキアなどが、紹介される。これからもダンスに携わっていきたいということが語られる。

未来優希/1993年初舞台、研究科18年。身体に内臓マイクがあるのではないかというほどの声を持つ歌手であること。新人公演、本公演と二度演じた『エリザベート』のゾフィが思い出の役であること、雪組トップになった同期生の水夏希を側で支え、副組長としても、そのパワーと大きな声で雪組をひっぱってきてくれたことなどが紹介される。

彩吹真央/1994年初舞台、研究科17年。幼い頃から宝塚が生活の一部だったから、宝塚に入団するものだと思っていたこと。その夢は簡単にはいかず諦めかけていた時に恩師の言葉に励まされ、もう一度チャレンジしたこと。オーディションで掴んだ黒天使や、花組時代に演じた『ファントム』のキャリエール、『エリザベート』では黒天使からルドルフ、フランツと、成長していった役のことなどが語られる。彩吹自身に影響を与えた役は『シルバー・ローズ・クロニクル』のエリオット、「自分も誰かの夢になりたいと思って頑張ってきた」という言葉や、水夏希がトップになった雪組に組替えで戻ってからは、水ととともに雪組を引っ張ってきたことなどが語られる。

[vol.2に続く]

【取材・文/榊原和子】

華やかに幕を開けた花組『虞美人』(舞台稽古&真飛・桜乃インタビュー)

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4月30日、東京宝塚劇場で花組公演、『虞美人ー新たなる伝説ー』の初日が開いた。

1951年に白井鐵造の作・演出で大ヒット、今もなお語り継がれる名作を、今回は木村信司が担当、脚本・演出・音楽・装置・衣装とすべて刷新し、ミュージカル宝塚ならでは大きな舞台の機構を生かした、ダイナミックなミュージカル『虞美人』として作り直した。

背景となるのは紀元前3世紀、絶大な力を誇った秦の始皇帝が亡くなり、再び戦乱の世となった時代。皇帝の座を争う武将たちの1人、楚の武将・項羽とその妻である美しい虞妃がたどった悲しい運命を、宿敵である漢の劉邦との覇権争いなどを絡めながら描き出している。

この日、朝早くからの舞台稽古では、中国の華麗な衣装をまとった花組生たちによって、熱の入った稽古が繰り広げられた。

真飛聖の項羽は、桜乃扮する虞妃をひたすら愛し抜く男性として愛の世界を築き上げつつ、覇王として天下をとるための戦いを激しさ見せながら演じる。彼と義兄弟の契りを交わしながら、のちにライバルとなる劉邦に扮するのは二番手男役スターの壮一帆。劉邦のしたたかな生き様を、時折り笑いを誘う演技を交えながら描き出す。
彼らを取り巻く武将の韓信・愛音羽麗や軍師の張良・未涼亜希といった男役スターたちの活躍も見どころの1つだし、若手たちにも数多く役が与えられていて、戦いと政略のドラマのなかで、それぞれ盛り上げる役割りを担っている。1本立てでショーがないかわりに、フィナーレは洋風に仕上げてあって、宝塚らしい華やかなダンスシーンも楽しめるという中身豊富な公演になっている。

また、この公演は花組トップ娘役として、さまざまな役柄で活躍してきた桜乃彩音の退団公演で、千秋楽には本公演に加えて「桜乃彩音サヨナラシヨー」が上演される。

その大作の舞台稽古を終えて、真飛聖と桜乃彩音が晴れやかな表情で記者団の前に登場した。

 

【真飛聖・桜乃彩音 挨拶と一問一答】

_MG_6960真飛「本日は朝早くからありがとうございます。千秋楽まで項羽と虞美人コンビで精一杯つとめて参りますので、よろしくお願いいたします」

桜乃「本日は本当にありがとうございます。この公演で宝塚を卒業させていただきます。長い間本当にお世話になりありがとうございました。最後まで精一杯頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします」

ーー桜乃さんが卒業されるというのでたいへん残念なのですが、今回とくに、お互いにこういうところが素敵だなと思うところがあれば。

真飛「すべて可愛いです。どれというのではなくて、もう集大成ということが彼女の中ではあるからかもしれないんですけど。今回は、初めて最初から夫婦という役で、今までは兄妹とかが多く、恋愛は少なかったので、久しぶりの2人の恋愛物というのでとても嬉しいんですけど。彼女の幸せオーラというのが、見ていてこちらに伝わってくるので、すべて愛しいと思いますし。でも、やはり最後に自害する前の剣舞の踊りなど、なんとも言えない彼女の表情とかに、あれはもうたまらない愛おしさを感じてます」_MG_6958

桜乃「ありがとうございます」

真飛「はは、のろけ対談みたいだね(笑)」

桜乃「本当に今まで強く私のことを引っ張ってきてくださって。芝居の中でも、ゆうさん(真飛)とご一緒してると安心感があって、すべてを預けていられます」

真飛「真似しないでよ(笑)」

桜乃「本当に最後の公演で、こうやって夫婦の役をさせていただけることが本当に幸せですので、最後までゆうさんのおそばでついていって、幸せでいられるように、心を込めて役を作っていけたらと思っております」

ーー今回は名作のタイトルを背負ってるわけですが、そのうえで役に取り組んだ工夫があれば。

真飛「そうですね、以前上演された作品とはいっても、曲も「赤いけしの花」とあと1曲以外は全部新曲ですので。昔ご覧になっていたかたも「赤いけしの花」は懐かしいと思われても、ほかはリメイクされているので、新作という思いで観てくださっていると思うんですが。でもやはり以前されていた方々が魂を込めて演じられていた、そして「あれは名作だったよね」と語り継がれている『虞美人』というものを、今回観ていただき、「こんなお話だったんだ」とか、新たなる伝説と今回は付いているんですけど、「こういう形で再演してるんだね」というふうに観ていただけたら嬉しいです。項羽に関しては本当に真っ直ぐでウソが無い人物ですので、やっていて心が洗われるほど真っ直すぎるので、(桜乃に)ごめんね、心配になっちゃうよね(笑)。誤解を招きかねないくらい真っ直ぐに生きてる人物なので、やっていて気持ちがいいです」

桜乃「私も、初演をご覧になっていたお客様もいらっしゃって、「観たんですよ」とかお話をうかがって、そういう方たちのためにも、美しい思い出を壊さないように演じたいと思っておりますので。あと虞妃に関しては、真っ直ぐすぎる項羽様を愛する虞妃も、清らかで、実在していた人物ですので、誠意を込めて心を込めて、素直な気持ちのまま、この役を演じることができたらと思っております」

_MG_6946時々顔を見合わせて、項羽と虞妃そのままに微笑み合いながら、記者たちの質問に答える真飛聖と桜乃彩音。最後に「皆様、どうぞよろしくお願いいたします」と真飛が挨拶、会見を終えて、大きな拍手に送られ楽屋に戻って行った。

 




花組東京宝塚劇場公演『虞美人ー新たなる伝説ー』

4/30〜5/30

当日券等の問い合わせ/東京宝塚劇場 03-5251-2001

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 【取材・文/榊原和子】

 

訃報「小林公平氏逝去」

阪急電鉄の社長、会長を歴任した元宝塚歌劇団理事長の小林公平(こばやし・こうへい)氏が、5月1日午前6時20分、肺炎のため池田市内の病院で死去した。82歳。東京都出身。

通夜は2日午後7時〜、葬儀は3日午前11時〜、エテルノ西宮(兵庫県西宮市高畑町2の25)にて、いずれも密葬で行ない、後日あらためて「お別れの会」を行う。
喪主は長男で阪急阪神ホールディングス取締役、宝塚歌劇団理事長、公一(こういち)氏。


【小林公平氏略歴】

1950年 慶應義塾大学経済学部を卒業。1951年 千代田銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入社。阪急電鉄の創業者、故小林一三氏の孫と結婚したのを機に、1959年に阪急不動産に入社。その後、京阪神急行電鉄(現阪急電鉄)に移り、副社長などを経て1987年から阪急電鉄社長、1993年から2002年まで会長を歴任したほか、阪急ブレーブス会長、阪急交通社会長、阪急百貨店会長、関西テレビ放送会長、阪急阪神ホテルズ会長などをつとめた。

宝塚歌劇団との関わりにおいては、1966年に理事に就任、1974年6月〜1980年6月、1984年1月〜1985年6月の2度、理事長をつとめる。1987年からは宝塚音楽学校の理事長、1996年からは校長も兼任するなど、宝塚歌劇団の発展に大いに寄与した。

理事長時代に『ベルサイユのばら』を大ヒットさせ、1994年にはフランス・パリ公演など日仏交流を進めた功績でフランス芸術文化勲章を受章した。国内では1990年に藍綬褒章、2002年に勲一等瑞宝章を受章している。

文化人としても文筆や絵画などに意欲的で、「公文健」というペンネームで作詞、また脚本を執筆、2002年『ON THE 5th』と2006年『愛するには短すぎる』の原案を、2009年『コインブラ物語』では原作を手がけた。
宝塚歌劇の機関誌「歌劇」には、その時々の宝塚歌劇や一般芸能についての随想を記した「花の道より」を1972年3月号から毎月掲載、通算450回分は計4冊の本にまとまっている。執筆は、最新の「歌劇」5月号で通算453回を数えた。





初日の客席に必ず座られて、観客とともに楽しまれる姿が目に残っています。
心より哀悼の意を表させていただきます。
【文・榊原和子】 

 


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