6月15日〜7月1日まで東京・渋谷の東急シアターオーブにて上演される花組公演『戦国BASARA−真田幸村編−』製作発表が18日、都内にて行われた。
『戦国BASARA』は05年に発売したカプコンの大ヒットゲーム。魅力的な戦国武将が登場することで人気を集めているが、その人気はゲームだけにとどまらず、アニメ、映画、舞台、ドラマと様々な分野とコラボレーションし、多くのファンの心をつかんでいる。今回の宝塚とのコラボレーションも“『戦国BASARA』初のミュージカル化”として注目を集めることとなりそうだ。
主演をつとめるのは花組トップスターの蘭寿とむ。蘭寿自身が持つ熱い男役像を真田幸村に重ね合わせ、宝塚歌劇ならではの幸村を目指す。ヒロインとして登場するのは宝塚版のオリジナルキャラクター となる、いのり。いのり役は花組トップ娘役の蘭乃はなが演じる。幸村と相対する上杉謙信役は月組から花組へと組替えとなる明日海りお。この公演が明日海にとっての花組デビュー作となる。
作・演出は以前にもカプコンのゲームを原作とした『逆転裁判』を宝塚で上演し、成功をおさめた鈴木圭が担当。また様々な音楽分野で活躍している千住明が今回はじめて宝塚でオリジナル主題歌を作曲するという点も見逃せない。
宝塚歌劇団初の東急シアターオーブでの公演となる、この『戦国BASARA』。製作発表では蘭寿、蘭乃、明日海の出演者がまずはパフォーマンスを披露。その後、宝塚歌劇団・理事長の小林公一、作・演出を担当する鈴木、またカプコンから『戦国BASARA』シリーズのプロデューサーである小林裕幸が登場し、作品の概要や、上演に向けての意気込みを語った。
＜パフォーマンス＞
＜会見＞
小林（裕） 『戦国BASARA』をご存じない方もいらっしゃると思うのですが、2005年に出たゲームです。戦国時代を堅苦しく描くのではなく、戦国時代を生きた武将ひとりひとりを主人公とし、少年漫画のヒーローのように見立て、時間軸関係なしに伊達政宗、真田幸村、石田三成、徳川家康など･･･有名な武将を取り上げてゲームにしている作品です。本当に多くのお客さんのおかげで、漫画になったり、アニメになったり、舞台になったり、ドラマになったりと様々なエンターテイメントのコンテンツに広がっています。そして今回、まさか宝塚さんとご一緒にミュージカルができる･･･『戦国BASARA』としては初めてのミュージカルなので期待も高いと思います。ひとつゲームネタを言うと、1作目を作るとき、上杉謙信と忍のかすがというキャラクターは、「宝塚みたいな演出で描こう」とディレクターと話をしたんです。謙信とかすがはまさに『ベルサイユのばら』のような武将と忍として描いてきたので、まさか本家の方にキャラクターをやっていただけるとは思いませんで、本当に驚いております。鈴木先生の素晴らしい演出でゲームを超える素晴らしい武将を描いていただけるのではないかな？と、いちファンとしてわくわくしております。是非、『戦国BASARA』と宝塚のコラボレーションを広めていただいて、多くのお客さんを劇場に呼んでください。よろしくお願いします。
鈴木 『逆転裁判』に引き続き『戦国BASARA』を担当できることが本当に嬉しいです。僕自身も『戦国BASARA』というコンテンツを是非宝塚の舞台で、とずっと思っていましたので、本当に嬉しく思うばかりです。新しい劇場に入っていく1作目ということで、すごく大事な公演になります。自分のやりたかったという思いをとにかく作品に投入しまして、6月15日からの公演に全精力を注いで蘭寿率いる花組生と突き進んでまいりますので、是非劇場にお越しください。今日はありがとうございます。
蘭寿 真田幸村役をさせていただきます、花組の蘭寿とむでございます。カプコンさんの大ヒットゲーム『戦国BASARA』を初めてミュージカル化させていただくということで、とても嬉しく思っております。私は以前にも『逆転裁判』でカプコンさんのお世話になりまして、今回またこのような機会を与えていただけたこと、とても幸せに思っています。幸村役としましては、熱血漢ということで、私の個性も生かしながら役作りを考えていきたいと思っております。シアターオーブという新しい注目の集まる劇場で、宝塚初めての公演を花組が担当させていただけますことを嬉しく思っています。花組生となって初めての明日海りおとの共演もみなさまに楽しみにしていただけたらなと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
蘭乃 いのり役をさせていただきます、蘭乃はなでございます。蘭寿さん主演ではじまりました宝塚の『逆転裁判』シリーズは全て客席から拝見しておりましたので、この度『戦国BASARA』という作品に出られますことをとても光栄に、嬉しく思っております。オリジナルキャラクターのいのりという人物が一日も早く『戦国BASARA』の世界の住人になれるよう、お稽古に励んでまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
明日海 蘭寿さん演じられる真田幸村の宿敵、上杉謙信役をさせていただくことになりました。お客様のご期待を裏切ることのない、宝塚歌劇ならではの、そして明日海りおならではの上杉謙信像を作り出すことができたらなと、今からとても楽しみにしております。私にとりましては、花組に組替えさせていただいて初めて参加させていただく作品ですし、シアターオーブでの公演もはじめてなので、緊張感はとてもあるのですが、それを良いエネルギーに変えて、元気にお稽古に取り組んでまいりたいと思います。よろしくお願いします。
──鈴木先生に、現時点での作品の見所は？
鈴木 見所というとゲーム感のファンタジックさをいかに舞台で生かすか、やはり宝塚の舞台なので、男役、娘役がいかにキャラクターを吸収して特性を生かした見せ方をするか、というのが一番大きな課題になると思います。日本物といっても独特のコスチュームですので、そこを生かした演出もしていきたいなと思っております。ゲームでは数多い武将が出てまいりますが、今回は真田幸村を中心に絞りまして、史実にある程度もとづいた話を作っていきたいと思っています。実際は、武田軍と上杉軍で有名な川中島の戦いの後に生まれている真田幸村ですが、ゲームでは武田信玄に忠誠に誓っている・・・幸村を過去の世界に引きずり戻し、この川中島の戦いに参加して、武将としての生き方や葛藤をミュージカル形式で描いていきたいと思っています。宝塚なので歌と踊りとロマンの部分を強調して、宝塚ならではの『戦国BASARA』を作りたいと思っています。
──出演者のみなさんに。今回の公演への意気込みとコスチュームを着てみての感想を。
蘭寿 動きにくいということでしょうか（笑）。座っているのも大変なのですが、すごい再現率だなと興奮しました。これで殺陣があったりするとどうなるだろうと。二本槍を振り回すために筋トレをしなければいけないなと思っております。プレイステーションを買うところからはじめてゲームをやってみたのですが、女性がハマるのがよくわかりました。ボタンひとつでどんどん敵が倒せて（笑）、自分が強くなったような気分になれるので、これは本当に楽しいなと。最後の一騎打ちから私はなかなか進めないのですが（笑）、このゲームの楽しさと宝塚でやる楽しさを両方生み出せるような作品になるのではないかと楽しみにしております。
蘭乃 とても可愛いコスチュームを着せていただけて、嬉しく思っております。いのりはオリジナルキャラクターですので、その特性を生かして、見ているお客様の隣に座れるというか、お客様に共感していただける、そんな存在に出来たらいいなと思っております。
明日海 やっぱり（衣装は）密閉されているところが結構ありまして（笑）、暑いな･･･と思います（笑）。鈴木先生からお話を伺って、男祭りの中の中性的な部分の役割を今回は担うのではないかと思いますので、本番に向けてメイクや着こなしを研究していきたいなと思います。
──幸村というとお館様（武田信玄）との殴り合いであったり、アニメでは足軽ダンスというのがファンの間で話題になったりしていますが、その辺りは期待してもいいのでしょうか？現時点での構想は？
鈴木 細かい部分に関してはコラボレーションというのを意識して作るつもりではいます。そのままのコピーかどうかというのは別なのですが、要素として幸村の話をする以上は必要なものとして取り入れることはかなり多いかなと思います。謙信とかすがも出てきますので、やり取りの中でゲームを思い起こさせるようなシーンはおのずと出てくるかなと思っております。まだ全ての構成であったり、執筆が終わっておりませんので、お約束はできないのですが、そう思っていただいていいかなと思っております。あと足軽ダンスに関しては僕ももちろん映像を見ているんですけれども、宝塚はダンスという部分では日頃からよく行われているので、宝塚のダンスという意味合いが出てきたらいいかなと今現在僕は考えています。
──なぜ真田幸村編にしようと思われたのですか？
鈴木 主演が蘭寿とむだということで、僕の中では真田幸村しかないなと思いました。熱さとか、その熱血漢というところが、ゲームで描かれている真田幸村は蘭寿にぴったりだなと僕は思ってます。ゲームの人気キャラクターであるというのもありますが、そういうことを度外視しても真田幸村が合うんじゃないかと思っているので、自信を持ってお送りできるのではないかと。
──ゲームの世界と宝塚の融合というのはどういう点がポイントになりますか？
鈴木 舞台もゲームも世界は違いますが、ひとつのエンターテイメントという部分では一緒かなと思います。舞台の良さとゲームの良さがどこか繋がるところがあると思うんです。それは実際ゲームをプレイしたり、漫画でもそうだと思うのですが、プレイする楽しさ、読んだ楽しさであったり･･･どこかその楽しさが共通する部分を合わせて、舞台の良さとして引き込んでいきたいので、ゲームという素材はとても舞台化するのにふさわしいかと思いますし、そういう意味では自信もあるので、今回も前回（逆転裁判）同様、作れるかなと思っております。
──カプコンさんのゲームは音楽もとても魅力的ですが、音楽に関しては？
鈴木 音楽はもちろんゲーム中に流れている音楽をふんだんに使っていきたいと思っております。さきほどのパフォーマンスで蘭寿が歌っていた真田幸村のテーマも元々ゲームで流れていた曲に歌詞を乗せて、蘭寿に歌ってもらいました。他もそのシーンに合わせた曲はゲームから取り入れてたり、アレンジをして舞台用の音楽として使っていきたいと思っています。千住明先生に関しましては、その中に新しい風というか、ゲームではなかなか前面に出てこないロマンの部分を千住先生に音楽で描いていただけたらと思い、オリジナルで作っていただく予定です。
──出演者のみなさんに役作りに関してと、この公演から明日海さんが花組に組替えとなりますがお互いの印象をお願いします。
蘭寿 熱血漢で忠誠心の深い幸村を演じたいと思っています。そこに自分にしか出せない個性を盛り込んで、幸村に命を吹き込んでいきたいです。そして、みりおちゃんは『ベルサイユのばら』の特別出演のときに少しお芝居させていただいたんですけれど、クールで美しい、でも中は熱い、という印象です。
蘭乃 私はオリジナルで鈴木先生の脚本を見てから一から作っていこうと思っております。やはりいつの世も、自分の愛する人を戦場に送り出す女性の葛藤や苦しみ、そういうものは普遍的なものだと捉えておりますので、幸村が戦場に自らの意思で行くことに対して応援する気持ちが生まれるという、そういう部分を大切に演じたいと思います。明日海さんについては、私、花組に組替えする前は月組におりまして、下級生時代の何もわからないときに大変お世話になっておりましたので、この度、こうしてまたご一緒させていただけることをとても嬉しく思っております。少しでも成長したなと思っていただけるように頑張りたいと思います。
明日海 私、お恥ずかしながら『戦国BASARA』をまだやっておりませんので、今上演中の『ベルサイユのばら』が終わりましたら、必ずや千秋楽の翌日に買いに行って、ゲーム漬けの日々をおくりたいと思います（笑）。役作りとしては、やはり策略家、そして男か女かわからない神秘的なクールな部分というのを作り出していけたらなと思っております。お二人の印象は、蘭寿さんとははじめて『ベルサイユのばら』で一緒にお稽古場にいさせていただいたのですが、冷静一直線、という感じでしょうか。もう、すごいお忙しいスケジュールの中でアンドレをやってらっしゃったので、ザ・仕事人！って感じで、集中力の高さを間近で感じさせていただき、すごく勉強になりました。蘭ちゃんは、月組時代と全然変わっていない蘭ちゃん、というそのまんまの妹のような感じが相変わらず可愛らしいな、といつも思っております。
（C）宝塚歌劇団
花組公演
ミュージカル・ロマン
『戦国BASARA』−真田幸村編−
原作・監修・制作協力◇株式会社カプコン
脚本・演出◇鈴木圭
●6/15〜7/1◎東急シアターオーブ
【取材・文／岩見那津子】
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