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ドラマとダンス、2つの「カンタービレ」を連続上演! 森新吾インタビュー

森
 
DIAMOND☆DOGS(D☆D)のメンバーとして活躍するかたわら、優れたクリエーターとして構成・演出・振付のジャンルでも才能を発揮している森新吾が2つの「カンタービレ」に挑む!

昨年5月に自身の主演作品として発信したショーアクト『ダンスカンタービレ』。森と風花舞をはじめとした女性陣だけで紡がれた作品で、1800年代のロンドンを舞台にしたちょっとダークでミステリアスなステージは多くの喝采を集めた。その「カンタービレ=歌うように」と名付けられた舞台が、D☆D充電期間中の2018年新たな展開を見せることになった。

11月22日〜25日、サイエンスホールで上演される『アクトカンタービレscene1 〜 Smoky Dog 〜』は、脚本・演出に米山和仁(劇団ホチキス)を迎えて男性陣だけで創られる、芝居仕立ての作品。
12月12日〜16日、博品館劇場で上演する『ダンスカンタービレ2018』Mori Shingo & 8 Foxy Girlsは、風花舞や舞羽美海、田野優花など華やかな女性陣のダンスを中心にしたステージだ。
 
連続上演されることになった2つの「カンタービレ」を企画し、演出家としても取り組む森新吾に、公演への意気込みを話してもらった「えんぶ12月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。


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笑って最後にしみじみするカラフルな『アクトカンタービレ』

──2つの「カンタービレ」ということですが、今回『アクトカンタービレscene1』が新たにスタートしますね。
昨年、僕と女性陣だけで構成した『ダンスカンタービレ』をさせて頂いて、とても大きな達成感を得ることができたんです。そこから、これを更に膨らませて「カンタービレ・シリーズ」として展開したいと考えたのが『アクトカンタービレ』です。男性だけで、芝居を中心としたカラフルな舞台になります。僕から発信していくものとして、ダンスだけに特化するのではなく、色々な絵をお見せしたいという想いでスタートしました。
 
──森さんが総合演出という形で、脚本・演出を劇団ホチキスの米山和仁さんが担当するのですね。
今回参加を快諾してくれた町田慎吾君が出ていた劇団ホチキスの舞台を拝見して、素直にとても面白いな!  と思い、紹介してもらって、芝居のディティールの部分を創って頂けることになりました。勿論僕も総合演出としてタクトは振りますが、一役者として客観的にも見てもらえるのが有難いです。お客様には大いに笑って頂きつつ、最後にしみじみとしたものも残る作品になると思います。
 
──D☆Dを卒業された小寺利光さんとTAKAさんが、役者とクリエーターとして参加するのも嬉しいことです。
利ちゃん(小寺)には一役者として出てもらいたい! と純粋に思ってお願いしました。またTAKAちゃんは僕の中ではマストな音楽家なので、安心して音楽面を委ねられます。D☆Dを卒業した2人が関わってくれる形になったのは、よく考えたらそうだよね! というぐらい自然な形とも言えるんですが(笑)、新たなつながりが続くことはD☆Dのファンの皆さんにも喜んで頂けるかなと。他にも水谷あつしさん、入山学さんと、この人たちがいてくれたら安心だという方達が揃ってくれたので、僕自身も楽しみで仕方がないです。

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一生の財産だと思える『ダンスカンタービレ』

──更に12月には『ダンスカンタービレ2018』の上演となります。こちらは2017年の初演を基にした舞台とのことですが、初演で特に感じたことは?
やはりD☆Dではクリエーターの立場で全体を引っ張ることも経験していましたが、いざ舞台となった時には常に絶対的センターとして東さん(東山義久)がいてくれたことが、どんなに大きかったかを痛感しました。普段はあんなにチャラけたキャラなのに(笑)、舞台の芯に立つ為に、これだけのプレッシャーを克服していたのか! ということを、僕自身がセンターに立ったからこそ理解できて、そういう意味でもとても大きな経験になりました。終わった時には燃え尽きたというくらいの突き抜けたエネルギーが、僕自身からも女性陣からも噴出して、僕には一生の財産だと思える公演になりました。その舞台を再びということで、町田君がゲストではなく全公演出てくれますし、舞羽美海さん、田野優花さん等フレッシュなメンバーもいます。2018年版としてブラッシュアップしつつ、風花舞さんや藤田奈那さんはじめ続投メンバーと共に創った初演の素敵なところは活かして、更に掘り下げた舞台にしていきたいです。
D☆Dが充電期間に入って、本当に久しぶりにまとまった休みが取れて、自分を労わったり、突っ走ってきた日々に得たものを見つめ直すこともできました。この二つの「カンタービレ」に今まで培ってきたものと、これから進みたいものを融合させていきますので、是非楽しみに観にいらしてください!

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もりしんご○03年「DIAMOND☆DOGS」に設立メンバーとして参加。舞台構成、振付、演出にも才能を発揮、数多くの舞台を創り続けている。NHK『みんなのうた』の振付を2年連続で手掛けた。近年の主な作品に『Dramatic Musical Collection 2018』『FLAMENCO マクベス〜眠りを殺した男〜』DANCE OPERA『SWAN』2017 LOVE LOVE de SHOW『White Labyrinth』など。また新国立劇場 開場20周年記念オペラ『ホフマン物語』に出演するなど活躍の幅を広げている。


〈公演情報〉
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森新吾presents
『アクトカンタービレ scene1 〜 Smoky Dog 〜』
総合演出◇森新吾
脚本・演出◇米山和仁(劇団ホチキス) 
出演◇森新吾 町田慎吾/小寺利光 神永圭佑 宇佐見輝(劇団スタジオライフ) 若松渓太/水谷あつし 入山学
●11/22〜25◎九段 サイエンスホール 
〈お問い合わせ〉インフォメーションダイヤル 03-5793-8878(平日13時〜18時)
〈D☆D HP〉http://diamonddog-s.com

ダンスカンタービレ

『ダンスカンタービレ2018』Mori Shingo & 8 Foxy Girls
構成・演出・振付◇森新吾  
出演◇森新吾/風花舞 舞羽美海 藤田奈那/長岡美紅 PSYCHE 伊藤佳耶芽 橋本由希子 木野村温子/田野優花  町田慎吾 
日替りゲスト◇東山義久(12日) 中塚皓平(13日) 植木豪(13日夜・15日夜・16日) 長澤風海(13日夜・14日・15日昼) 
●12/12〜16◎博品館劇場 
〈お問い合わせ〉博品館劇場 03-3571-1003
〈劇場HP〉 http://theater.hakuhinkan.co.jp/pr_2018_12_12.html




【構成・文◇橘涼香 撮影◇山崎伸康】



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ピアフそのものと感じさせる大竹しのぶ渾身の熱演と絶唱『ピアフ』上演中!

ピアフ()「私の回転木馬」

フランスが最も愛したと言われる歌手エディット・ピアフの愛と歌と波乱に満ちた人生を、大竹しのぶが歌い演じる舞台『ピアフ』が、日比谷のシアタークリエで上演中だ(12月1日まで。のち、広島、香川、大阪でも上演)。

ブロードウェイ、ウエストエンドで歴代の名女優によって演じ継がれてきたパム・ジェムスの傑作戯曲『ピアフ』を大竹しのぶが初めて演じたのは2011年のこと。2008年ジェムス自身がロンドンのドンマーウェアハウスでの上演の為に決定版として書き下ろしたものの日本初演で、大竹の熱演、熱唱、栗山民也の演出と共に瞬く間に大評判となり、大竹は読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞。その後、2013年、2016年の再演も大好評で、2016年大晦日の第67回NHK紅白歌合戦で「愛の讃歌」を大竹が熱唱。ピアフが憑依したと絶賛される大竹の歌唱が更に注目を集め、2018年4演目となる今回の公演も、発売わずか3日間で約18.000席が全席完売という熱狂を巻き起こしている。

【STORY】
エディット・ピアフ──本名エディット・ガシオン(大竹しのぶ)は、フランスの貧民街で生まれ、路上で歌いながら命をつないでいた。ある日、ナイトクラブのオーナーがエディットに声をかける。
「そのでかい声、どこで手に入れた」
「騒がしい通りで歌っても、歌をきいてもらうためだよ!」
オーナーに気に入られたエディットの歌声は「ピアフ──小さな雀」の愛称と共に、たちまちにして大評判となる。だが、彼女の心は常に愛を求め、孤独を恐れ続け、歌手としての成功がその渇望を埋めることはなかった。戦争、そして数々の恋、別れ。すべてがエディットを追い詰め、アルコール、やがてはドラッグへと手を染め、心と身体が蝕まれてゆく。それでもそれらすべてを糧にしたようにエディットはマイクの前に立ち、「愛」を歌い続ける……。

ピアフ(ぶ)とシャルル(宮原浩暢)

この作品の特徴は、ピアフの47年間の人生を数々の短いシーンの連続で表現していることだ。もちろん字幕などで年代や場所は提示されるものの、全体の流れとしては謂わばエピソードの畳みかける羅列で、短い場面が移る毎にピアフの置かれた状況や、直面している問題が変化しているから、観る者にも演劇的なイマジネーションの喚起を要求してくる。それでいて、観ていて全く混乱がないのは、劇中に差し挟まれた「愛の讃歌」「私の回転木馬」「バラ色の人生」「水に流して」等々の、ピアフの歌の数々が場面の飛翔を効果的につないでいるからに他ならない。歌手エディット・ピアフが劇中で役として歌っている設定、つまり音楽がドラマを進めるミュージカルとは異なる手法でありながら、紛れもなく音楽によってドラマが運ばれていく鮮やかさは、この作品にしかない醍醐味だ。演出の栗山民也が4演目にして更にスピーディに作品をブラッシュアップしていることも、この効果を高める要因になっている。

そして何よりも大竹しのぶのピアフの見事さが、作品に太く確かな芯を通していることが、すべての根幹を握っている。「ピアフが舞い降りた」とも、「ピアフが憑依した」とも称される大竹の渾身の熱演には、最早畏敬の念を覚えるほどの凄味がある。実際幕が下りて、いったいどの瞬間に大竹は、自分自身を取り戻すのだろう…と、想像しようとしても全く見当がつかないほど、劇中の大竹は愛を求め、苦しみにのたうちながらも、歌うことをやめなかったピアフその人にしか見えない。魂の歌声の数々も胸を打ち、決して品が良いと言えないピアフの数多の言動が、歌っている時だけは神々しさを湛えるのも、すでに演技の域を超えているのではないか?と思わされ、終幕の「水に流して」の絶唱にはただ涙を禁じえない。チケットが売り切れなのに、こんなことを書くのも憚られる想いがするが、それでもこの「ピアフ=大竹」の歌唱は、やはりこの劇中で『ピアフ』が上演されている劇場の客席でなんとしても聴いて欲しい、そんな想いが湧き上がる舞台だ。

ピアフ(大竹しのぶ)「愛の讃歌」
 
また共演者が主な役柄だけでなく、様々な時代と立場でピアフと関わった人々を演じていくのもこの作品の特徴で、全員で歌われる「リリー・マルレーン」の力感など、大竹を囲む面々の力も作品にしっかりと寄与している。
中でも、大竹と共に初演からこの作品への出演を続けている梅沢昌代、彩輝なお、辻萬長が舞台『ピアフ』に欠かせないピースとして果たす役割が大きい。
ピアフの生涯の親友トワーヌの梅沢は、ピアフの環境がどう変わろうと友人であり続けるという、稀有な人物設定に真実味を与える地に足のついた演技で魅了する。粗野でちゃっかりしたところもありながら、心根は真摯なこの友がいたことが、劇中のピアフのひいては観客の救いにもなる存在としての梅沢の功績が、2016年菊田一夫演劇賞受賞につながったのも当然とうなづける。
また、マレーネ・デートリッヒの彩輝は、誰に対しても自我を貫き通すピアフに対等にものが言える、ほぼ唯一アドヴァイスができる人物として強い印象を残している。元宝塚歌劇のトップスターだった人ならではの男装の美しさ、ゴージャスなドレスの着こなしも鮮やかで、演じ歌うことに抑制を利かせられるマレーネをピアフの対照として描き出し、出番の長さ以上に劇中に屹立させた様には、女優・彩輝の成長も感じさせた。もう一役これも大きな役柄で、ピアフの秘書を務める極度の近眼の女性を演じるが、マレーネとの出番が相当な早替わりであるはずなのに、ちゃんと全く別の人物として登場してくるのも見応えがある。
もうひとり、そもそもピアフを見出すナイトクラブのオーナーなどを演じる辻も、ここからピアフの運命が変わっていく人物を、大きな造形で演じて抜群の安定感。最早この人が「そのでっかい声、どこで手に入れた」という台詞を発してくれることが、この作品が動き出す合図とも感じられて、ワクワクさせられる。

ピアフ()とシャルル(宮原浩暢)薔薇

そんな初演からのメンバーに、前回公演から続投の川久保拓司がピアフを支え続けるマネージャーを、出番の度に年齢をきちんと重ねていることを巧みに表現した演技で魅了すれば、イブ・モンタンの大田翔が伸びやかな美声を響かせるカンツォーネの魅力で強いアクセントを残している。
更に、今回公演から新たに加わったメンバーがまた豪華で、シャルル・アズナブールの宮原浩暢が持ち前の歌唱力だけでなく、演技力も長足の進歩を遂げていることを鮮やかに示してくれる。アズナブールは、奇しくもこの9月に来日コンサートを果たし、僅かひと月後の10月に94歳で帰らぬ人となったが、文字通り生涯をシャンソン歌手として全うした偉大なる歌手アズナブールを、きちんと造形して頼もしい。

ピアフ()とマルセル・セルダン(駿河太郎)

ピアフが生涯で最も愛し、その事故死から精神のバランスを崩してゆくマルセル・セルダンの駿河太郎にある温かいぬくもりを感じさせる持ち味と、ピアフ最後の恋人テオの上遠野太洸のカットガラスのような繊細な美しさが、それぞれの役柄に生きていて作品の彩りを深めている。
もう1人、冒頭の司会者をはじめ様々な役柄を演じる上原理生の参加がなんとも贅沢で、ミュージカル界の大きな存在である上原が、歌手ではない役どころで作品を支えた姿に『ピアフ』が演劇界で如何に大きな演目になっているかを改めて感じさせた。

ピアフ()とテオ・サラボ(上遠野太洸)

またこの公演に先立ち、ピアフの命日である10月10日、大竹しのぶによるピアフ楽曲初の音源化であるアルバム「SHINOBU avec PIAF」が発売。このアルバム曲を中心に、2019年1月には大竹しのぶ初のピアフコンサートが兵庫、東京、名古屋で開催されるなど、「大竹=ピアフWORLD」が更なる広がりを見せていて、舞台『ピアフ』が生み出した熱量の大きさを実感する時間になっている。

【囲み取材】
 
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彩輝なお、大竹しのぶ、梅沢昌代

この公演の初日を翌日に控えた11月3日、囲み取材が行われ、大竹しのぶ、梅沢昌代、彩輝なおが公演への抱負を語った。

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──いよいよ明日から初日ということですが
大竹 さえちゃん(彩輝)、梅ちゃん(梅沢)はじめ初演からのメンバーと新しいメンバーと、まだ少し緊張があります。でももうはじまっちゃうので皆と力を合わせてまた新しい気持ちで頑張りたいなと思います。
梅沢 「全員野球」で頑張りたいと思います!
彩輝 皆で力を合わせて頑張ります。
──4度目の再演ということですけれども、4度目ともなると気持ちはいかがですか?
大竹 やはり4回目という方がどんどんプレッシャーが大きくなってきているかな?と思います。初めてご覧になる方もたくさんいらっしゃると思いますが、やはり1回目から2回目、3回目、といらしてくださって、4回目はどんなものになるのだろう?と楽しみにしてくださる方も多くて、ということは前よりは絶対に良いものも出さなければならない。二人とも話していたのですが「前の方が良かったね」ではなく、前はあの時のベストであった、今は今がベストなんだなと思えるようにしたいなとは思っています。
──すでにチケットは完売ということなのですが。
大竹 とてもありがたいなとは思いますが、当日券をちょっとは残さないと劇場としてはいけないんじゃないかなって(爆笑)。でもありがたいですし、あまりそういうことは考えないようにとも思っています。

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──チームワークはバッチリですか?
大竹 はい! 女三人で男共に「しっかりしろ〜!」みたいな感じで声をかけます(笑)。
──今回、CDも出されたということで。
大竹 ピアフの曲のCDとコンサートがあるんですが、CDはCDで音楽として1曲、1曲なので、やっぱりこの舞台(で歌うの)とは違う感じです。でも梅ちゃんも聞いてくれて。
梅沢 とっても良かったです。違っていてね。
大竹 そう、舞台とは違う歌い方で。でもピアフの歌というのはそれだけ皆に愛されるんだなというのをすごく思います。何十年も前の歌なんだけれども全然古くないし、悲しい歌でも力強いので聞いていて勇気をもらえるのを感じます。
──コンサートツアーは兵庫で追加公演も出たということで。
大竹 そうなんです。ありがとうございます(拍手)。でも今はこの舞台のことで頭がいっぱいで、1日、1日をね、梅ちゃんが言った言葉で「舞台に命を懸けるまではできないけれども、命を削るくらいのことは毎日」ってね。
梅沢 お芝居って完成はないから、だから毎日頑張らないといけないですし、新しい発見もありますから。


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──4演目をご一緒なさって大竹さんとはいかがですか?
梅沢 毎日毎日ライブ感がある方なんで楽しいです。決めておかなくてもその場で起こることもあって、毎日新しい場面ができていると思います。
──親友役ですよね?
梅沢 売れない娼婦なので、こんなに汚い恰好で申し訳ないのですが(笑)。
──大竹さんの魅力は?
梅沢 本当に命懸けですよ、いつも。だから悩むし、疲れるし、でも頑張るという熱があります。「まぁいいか」(※大竹が朝日新聞紙上で連載中のエッセイのタイトル)ではなくて、頑張るって言ってますね。

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──彩輝さんからご覧になっては?
彩輝 芝居は、おこがましいかも知れませんがとてもチャーミングで、魅力的で惹きこまれる部分があって、それは魂から演じられているところと、普段からの可愛らしさというところがあると思います。
──彩輝さんご自身は4演目でいかがですか?
彩輝 今回改めて自分の中で構築してきた部分もありますから、今はちょっと緊張しています。
──さっきおっしゃった女三人でコミュニケーションなどは?食事会なども?
梅沢 やったわね。
大竹 結構行ったね。あとは男共も連れていってあげたり(笑)。最初はやっぱり初めての人などは、女三人が怖いみたいで近寄れない感じがありましたが(笑)、今は大丈夫になりました。

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──笑福亭鶴瓶さんの息子さん(駿河太郎)が初めて参加されましたが、上達ぶりは?
大竹 それは皆一緒なんです。皆そうやって一生悩む仕事なので。
梅沢 色々な役をやるシーンがありますから、それを楽しんでねとは言いましたね。
──舞台の上でのラブシーン、裸になるシーンもあるそうですが。
大竹 彼にはね。私は裸になりません(笑)。
──キスシーンについては?
大竹 私は別に…向こうはどう思っているかわかりませんが(笑)。でも綺麗なシーンですから、私は大好きなシーンです。
──製作発表会見以降お父様の鶴瓶さんとお話されたりはしましたか?
大竹 別件でお会いしたことはありましたが、舞台に関してのお話はしませんでした。でも「観にいかなければ」という風にはおっしゃってくれていました。

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──改めて見どころは?
大竹 ピアフの時代、戦前と戦後、また人を愛するということ、愛の物語など、人として基本的なものがいっぱい詰まった話しです。やっぱりあとはエネルギーでしょうか。1場面、1場面本当に短いんですけれども、それを役者が創り上げていくエネルギーを観て頂きたいです。
梅沢 今までご覧になったお客様が「エネルギーをもらった」とおっしゃってくださるので、今回ももっと渡せたらなと思います。
彩輝 演出の栗山(民也)さんが「動物的な人間の生き様、人生をそれぞれが鮮烈に生きているということを皆で感じたら、魂が伝わる」とおっしゃっていらしたので。
大竹 「全てが電子化されていって、何も感じなくなっている若い人が多いから」と話されていて、そうじゃないものを作品から感じて「動物的に生きろ」とよくおっしゃいますね。
──素敵なナンバーが多いですが、どの曲がお好きですか?
大竹 「私の神様」とか「水に流して」が好きですね。

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公演情報〉
『ピアフ』
作◇パム・ジェムス
演出◇栗山民也 
出演◇大竹しのぶ、梅沢昌代、彩輝なお、宮原浩暢(LE VELVETS)、上遠野太洸、川久保拓司、大田翔、上原理生、駿河太郎、辻萬長、万里紗
●11/4〜12/1◎シアタークリエ(東京)
〈料金〉11,500円(全席指定・税込)
〈キャンセル待ち受付〉東宝テレザーブ 03-3201-7777(9時半〜17時半)

全国ツアースケジュール
●12/4◎JMSアステールプラザ大ホール(広島)
〈お問い合わせ〉TSS事業部 082-253-1010
●12/11〜12◎レクザムホール(香川県県民ホール)小ホール(香川)
〈お問い合わせ〉県民ホールチケットセンター 087-823-5023
●12/15〜17◎森ノ宮ピロティホール(大阪)
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーション 0570-200-888





【取材・文・撮影/橘涼香】



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珠城りょうトートと愛希れいかエリザベートにより原点に帰結する宝塚歌劇月組公演『エリサベート』

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トップ娘役愛希れいかの退団公演であり、宝塚歌劇『エリザベート』10回目の節目の上演でもある宝塚月組公演ミュージカル『エリザベート〜愛と死の輪舞〜』が東京宝塚劇場で上演中だ(18日まで)。

1996年に宝塚雪組によって初演されたこのウィーンミュージカルは、宝塚歌劇に歌だけで綴るミュージカルの可能性を拓き、上演回数1000回、観客動員数250万人を突破する人気演目として成長を遂げてきた。今回の月組公演はその10度目となる再演で、実に10回目にして、これまでの宝塚バージョンとは明確に異なる顔を作品が見せたことが、非常に大きな驚きと見応えを表出させるものとなった。

とは言え、その宝塚バージョンは2002年春野寿美礼トップスター時代の花組公演で、トートとエリザベートが互いの勝利を確信して歌い競うナンバー「私が踊る時」が加えられて以降、細やかな芝居や演出の調整はあるものの、大枠としてはこれまでの基本路線が踏襲されている。今回の月組公演もその意味で、大がかりな変更が加えられた訳ではないのだが、それでいて確かにこれまでの宝塚バージョンとは違う色合いを示したのが興味深い。これは最も下級生でトート役を演じることになったトップスター珠城りょうと、『エリザベート』史上最も長い主演経験を持ってエリザベート役を演じることになったトップ娘役の愛希れいかという、これまでの宝塚歌劇『エリザベート』上演史で初となる、両者の取り合わせがたくまずして描き出した、2018年月組版だけのカラーと言える。

元々ウィーン生まれのこのミュージカルでは、タイトルロールの皇后エリザベートが死に魅せられる願望の象徴として存在していた「死=トート」役を、エリザベートを愛してしまった「黄泉の帝王」と位置づけたのが、小池修一郎の宝塚版潤色の大きな仕掛けだった。人間に対して絶対的な優位、完全な勝利を握っているはずの「死」が、生きたままのエリザベートに愛されたいという願いを持ってしまう。この「禁じられた愛のタブー」を描く「愛と死の輪舞」のパラドックスが、ウィーンミュージカル『エリザベート』をトップスターが男役であることが揺るがない宝塚歌劇のシステムに添わせることを成功させた、今日わが国の『エリザベート』人気の根幹になった出発点だった。だから初代の一路真輝から、トートは妖しい幽玄のイメージを纏ったこの世ならぬ者として舞台に位置していた。それは直近の宙組公演で、太陽のような明るさを誇った朝夏まなとが演じてさえも、変わらずに引き継がれているものだった。

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だが、珠城りょうのトートは、それら歴代のトートとは明らかに異なる質感を持って舞台に登場してきた。それはゴールドに様々なカラーのメッシュを入れた新たな髪色や、小池自らがトートのテーマカラーの変遷について宙組版の制作発表会見の折「トートに例えば赤という訳にはいかない、やはり寒色でないと」という趣旨の発言をしていたにも関わらず、結婚式の赤いロングコートや、「私が踊る時」の赤いスカーフなど、トートの衣装に赤が登場してきたこととも、恐らくは密接に関係があるだろう珠城トートだけの新しさだった。それほど珠城トートは熱く、剥き出しの感情を露わにし、どこかではむしろ抑制された生活をおくっている皇帝フランツ・ヨーゼフよりも人間的に見えるほどに、エリザベートを求めていた。その姿は珠城の男役として恵まれた大柄の体躯のイメージも手伝って、この世ならぬ者と言うよりもむしろカリスマのロックスターを思わせた。端的に言って赤を着せたいトートには、実に斬新なものがあった。
 
一方愛希のエリザベートの劇中に芯として立つ存在感にも、歴代の宝塚版エリザベートの枠には到底収まらない強さがあった。それは、冒頭の自由を求める詩の朗読シーンから顕著に表れていて、初代の花總まりから実咲凜音までのエリザベートが、自由な魂への少女らしい憧れを表現していたのに対して、愛希のエリザベートの自由への希求には、祈りとも言える切迫感があって驚かされたものだ。この朗読にすべてが象徴されている、愛希エリザベートが自由を求めるエネルギーには、仮に彼女がオーストリー皇后にならなかったとしても、魂が求める自由には到達できなかったのではないか?とさえ思わせる渇望があり、それがダンサーとしての評価が最も高かった「娘役・愛希れいか」が、近年では最長の6年間というトップ娘役経験で培った歌唱力、演技力と共に、舞台を覆いつくすパワーとなって迸っていた。やはり再び端的に言って、すでに宝塚のトップ娘役というカテゴリーから飛翔しているエリザベートがここにいた。

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この二人の関係性を俯瞰した時に、真っ先に思い出すのが本家ウィーン版の『エリザベート』の存在なのは、思えばあまりにも運命的だ。最も若いトップスターの珠城演じるロックスターのようなトートと、最もトップ娘役としてのキャリアを積んだのちの愛希演じる生命力の塊であるエリザベートとの真っ向勝負が、宝塚歌劇10回目の上演にして、作品を本家の趣に帰還させたことは、いったい何のはからいだったのだろうか。ただひとつ言えるのは、ミュージカル『エリザベート』は今も生きているということだ。そんな作品としてのしぶとさ、ひいては宝塚歌劇の奥深さを、この2018年月組バージョンは見事なまでに噴出させた。その作品と劇団の力がこの壮絶なチケット難を呼び、宝塚歌劇の財産演目としての『エリザベート』の価値を改めて知らしめる上演になったことは、愛希れいかの退団公演でもある10回目の『エリザベート』に、最も相応しい輝きを与えていた。珠城率いる宝塚歌劇月組と、宝塚のトップ娘役の立場から飛び立っていく愛希の双方の、今後の活躍に期待が膨らむ時間だった。

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また、今回は専科生の応援を頼むことなく、月組生だけでこの大がかりな作品が上演されていることにも、現在の月組の底力が感じられる。
その筆頭、皇帝フランツ・ヨーゼフの美弥るりかは、エリザベートを深く愛しながらも生まれながらの皇族であるが故に、古い仕来たりの矛盾や皇后の鬱屈に気づけない、高貴な生まれの人間だけが持つある意味の鈍感さを気品高く描き出している。元々初代の雪組のスター分布図が高嶺ふぶきと轟悠で、双方のカラーから必然的に二番手の男役がフランツを演じることになった、というはじまりのキャスティングがそれこそ宝塚の仕来たりとして踏襲されているだけで、二枚目男役としては相当な辛抱役であるフランツを、皇帝としての務めと皇后への愛の狭間で葛藤する人物として成立させた美弥の地力がここで改めて証明されたのは喜ばしい。大劇場公演での休演で案じられたが、東京では盤石に公演を務め、高音域の歌い方にも進化を感じさせて、月組の柱の一角としての存在感を示している。

一方大役中の大役であるルイジ・ルキーニの月城かなとは、深い芝居心で狂言回しでもある役柄を自在に活写している。ルキーニがイタリア人であることに説得力のある美貌も生きたし、客席への語り掛けも当意即妙。課題だと感じられたフィナーレのダンスシーンも東京公演で長足の進歩を見せて頼もしい。
 
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皇太子ルドルフの暁千星は、母の愛に飢えた青年皇族の面が際立つ。卓越したダンスに生命力があるのが、ルドルフ役としては難しさも孕むが、それ故に凝縮した出番のルドルフがより輝くのも事実で、役替わりの革命家エルマーも含めて暁のスター性はやはりまぶしい。フィナーレナンバーの踊りっぷりにも胸のすく思いがして、目を離せない魅力がある。
その暁との役替わりでルドルフを演じた風間柚乃は、オーストリー=ハンガリー帝国の行く末に心傷める憂国の皇太子の色が濃い。新人公演、また代役で演じたルキーニ役での縦横無尽な演じぶりといい、このルドルフ、そして革命家シュテファンいずれでも非凡な演技力を披露していて、稀有な若手実力派としての末頼もしさが光り輝く公演になった。

皇太后ゾフィーの憧花ゆりのもこの公演が退団公演。これまでも謂わばスター組長として数々の大役を演じてきた憧花の集大成に相応しい役柄を得て、君主制を守り抜こうとする皇太后、ただの嫁いびりの姑に堕ちては成立しない「宮廷でただ1人の男」を十二分に表現して有終の美を飾った。
エリザベートの自由への憧れを体現する父・マックスを、愛希の同期生の輝月ゆうまが演じられるのが月組の豊かさで、粋でダンディーな自由人をセンターにいない時にも闊達に表す輝月の芝居心と歌唱力が共に活かされた。同じく愛希の同期生の晴音アキがリヒテンシュタインに扮したのも手厚い布陣で、やはり歌唱力に秀でる晴音の力量が光る。またグリュンネ伯爵に紫門ゆりやが配役された時には、宝塚世界での時の流れに感慨も覚えたが、品良く姿も良いスターがこの役柄を演じる妙味はむしろ感動的。ヒューブナ—男爵の響れおな、ラウシャー大司教の千海華蘭、シュヴァルツンベルク侯爵の颯希有翔ら、ゾフィーの取り巻きの要人たちがそれぞれに個性的なのも良い効果になっている。 
また、各革命家エルマーとシュテファンを役替わりで演じた蓮つかさの非常に優れた役者ぶりが、このかなり難しいだろう二つの役柄の演じ分けでより鮮明になったのも嬉しいことだったし、夢奈瑠音以下黒天使も充実。中でもマデレーネの天紫珠李に注目株の勢いがある。ツェップスの光月るう、ヘレネの叶羽時が役柄を的確に表現し、マダム・ヴォルフの白雪さち花、少年ルドルフの蘭世恵翔もそれぞれの歌声で作品の重要なパートを支えた。
中でも特筆すべきはヴィンディッシュ嬢の海乃美月で、自分をエリザベートだと信じている精神を病んだ女性を歴代最もあざとさのない、美しい表現で描き出してこれは出色の出来。自由を追い求める真実のエリザベートと魂が確かに共振した場面は、この2018年版月組バージョンの大きな成果のひとつと言え、着実に力を蓄えて来た貴重な娘役である海乃を改めて大切にして欲しいと感じた。

更に、フィナーレナンバーで次期トップ娘役に決定している美園さくらを珠城と踊らせるなど、細かい配慮も行き届いていたが、ここのアレンジはいくら珠城が異色のトートを熱演しているにしても、やはりラテンでない方が良かったのではないか。これは音楽監督の吉田優子に一考して欲しい点だが(『エリザベート』のフィナーレナンバーにはそもそも定型の魅力があり、仮にアレンジも出尽くしたのであれば歴代の良かったものの再演でも全く問題はないと思う)。

宝塚歌劇10回目の『エリザベート』が、珠城と、大輪の花を咲かせて宝塚を去っていく愛希による、唯一無二のバージョンになったことが、長く記憶に残るに違いない舞台となっている。

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また初日を前に月組トップコンビ珠城りょうと愛希れいかが囲み取材で、記者の質問に応えた。

【囲み取材】

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まず珠城が「今の月組だからこそできる『エリザベート』をお客様へお届けしたいと思っておりますし、今回10回目の節目の公演でもありますので、『エリザベート』という作品への思いも大切に胸に留めながら公演を務めて参りたいと思います」と挨拶。

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続いて愛希が「私ごとではありますが、この公演で宝塚歌劇団を退団させていただきます。最後の日まで、皆様への感謝の気持ちを忘れずに精一杯務めて参りますので、どうぞよろしくお願い致します」と、自身の退団への想いも重ねての挨拶を述べて、特別な公演への想いが場に溢れる。

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その中で、歴代と違う自分ならではの役作りを問われて珠城が、一言で表すのはとても難しいと述べつつ、自身が身長もあり、男らしい男役と称されることも多いので、トートの絶対的存在を力強く出し、そのトートが感情を露わにするところを明確に出していきたい、という趣旨の方向性を語ると、愛希も私らしさとは何かを常に模索していて、エリザベートの強さと儚げな弱さを意識していると、それぞれに役柄のコントラストを追求していることが印象的だった。

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また、愛希の退団に際して、これまでお互いの気持ちや月組の仲間との気持ちの共有を大切にしてきたので、愛希との集大成を観て頂くのに、『エリザベート』はとても良い作品だったと感じていると珠城が語ると、珠城のトートの胸の中に終幕飛び込んでいける、安心してそこへ行けると愛希が答え、二人のトップコンビの集大成に相応しい作品への手応えを感じさせる時間になっていた。

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尚、囲み取材の詳細は、舞台写真の別カットと共に2019年1月9日発売のえんぶ2月号にも掲載致します!どうぞお楽しみに!
  
〈公演情報〉
宝塚月組公演
三井住友VISAカードミュージカル『エリザベート〜愛と死の輪舞〜』
脚本・歌詞◇ミヒャエル・クンツェ
音楽◇シルヴェスター・リーヴァイ
オリジナル・プロダクション◇ウィーン劇場協会
潤色・演出◇小池修一郎
出演◇珠城りょう、愛希れいか ほか月組
●10/19〜11/18◎東京宝塚劇場
〈料金〉SS席 12,000円、S席 8,800円、A席 5,500円、B席 3,500円(税込)
〈お問い合わせ〉0570-005100 宝塚歌劇インフォメーションセンター



【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】


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傑作コメディで初共演『カクタス・フラワー』 水夏希・吉田栄作 インタビュー

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イングリッド・バーグマンとウォルター・マッソー、ゴールディ・ホーンという、往年の名優たちが共演した映画版でも知られる傑作コメディ『カクタス・フラワー』が、水夏希と吉田栄作の初共演で、11月10日にDDD青山クロスシアターで開幕した。(12月8日まで。のち大阪、静岡でも公演)
 
舞台は NY。中年の歯科医ジュリアンは、家庭を大切にする誠実な男である事を証明するため、既婚者を装い、若い娘トニと交際している。ある日彼女から、「奥さんに会いたい」と迫られたジュリアン。堅物の独身看護師ステファニーを、急遽妻に仕立てるが……。
 
フランスの舞台劇『Fleur de cactus』を原作に、『ガイズ&ドールズ』や『ハウ・トゥー・サクシード〜努力しないで出世する方法〜』の脚本で高く評価されたエイブ・バロウズがブロードウェイで舞台化、大ヒットとなった作品だ。
今回の翻訳上演は、ミュージカルからプレイまで幅広く手がける板垣恭一が演出を務め、キャストには水夏希、吉田栄作、増田有華、松本幸大(宇宙 Six/ジャニーズ Jr.)、松尾伴内、青木さやかと、豪華キャスト6名が顔を揃えている。
どこか懐かしい正統派コメディでありながら、人間の愚かさ、愛おしさを見事に描き、古さを感じさせないこの作品について、堅物の独身看護師ステファニーを演じる水夏希と、歯科医ジュリアンを演じる吉田栄作にインタビュー。到着したばかりの舞台写真とともにご紹介する。

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クールな二枚目の中から
出てくるコメディセンス

──映画でも有名な作品ですが、お二人はどんな形で知りましたか?
吉田 僕は今回のお話をいただいてから初めてDVDを拝見しました。映画の公開が1969年で、ちょうど僕が生まれた年で。
水 えーっ!そうなんですね!
吉田 50年前ですから、やはり多少の古さは感じますが、イングリッド・バーグマンがそれまでと違う面をみせた作品で、ゴールディ・ホーンはそこからスターになっていったわけで、色々な意味でエポックな作品だったのだなと思いました。
 私も今回のお話があってからDVDを拝見して、王道のコメディというか、話の筋がよく出来ているなと。色々なことが一度ごちゃごちゃになるのですが、最後にうまく、それも思いがけない方向でまとまるのが見事で、物語をうまく着地させているなと思いました。
──正統派コメディを演じる吉田栄作さんは珍しい気がしますが。
吉田 そうですね。ただ作品の一部がコメディタッチになるというのは、例えば『ローマの休日』などで経験しているので。
 栄作さん素晴らしいです! コメディタッチの動きとか引き出しがすごく多くて、このクールな二枚目の中から出てくる!出てくる!(笑)。ご覧になる方はギャップ萌えすると思います。
吉田 いやいや(笑)。
──ジュリアンは歯科医で、なぜか既婚者と偽っているのですね。
吉田 これまではちょっと結婚はしたくないということで嘘をついていたわけですが、トニという若い女性を本気で好きになってプロポーズするんです。でも妻帯者だと言っていたばかりに、奥さんと会いたいと言われて、これまで頼りにしてきた看護師のステファニーに助けてもらいます。ステファニーは優秀で献身的でなんでもまかせられる女性で、それまでもきっと色々助けてもらってきたと思うんですが、ジュリアンはそれを当たり前のように思っていた。でもこの騒ぎをきっかけに、いつも近くで寄り添ってくれていた彼女の存在に気づくことになるんです。
──そのステファニー役ですが、水さんもあまり演じていない役どころでは?
 そうですね。でもステファニーのちょっとコメディな部分は、非常に近いです。私は人生がコメディで(笑)、日常的にかなりボケが入るので、それを知っているファンの人たちから見れば、「あるある!」みたいな感じだと思います(笑)。
──ではアプローチしやすいですね。
 でも自分に近いって一番難しいですからね(笑)。いつも通りってなんだろう?と、ごくナチュラルにやっていることを分析して演じるわけで、自覚しないでやっていることを客観的に捉え直すという作業が必要なので。
吉田 そう。芝居化するということが大事なんですよね。普通にやればいいと言いますけど、それが一番難しいんです。

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スポーツに例えて
わかりやすい板垣演出

──吉田さんは、ジュリアンという役へのアプローチはいかがですか?
吉田 この作品は、全部のキャラクターがそれぞれ背負ってる背景がけっこうリアルで、そこをきちんと持って演じないと嘘くさくなるんです。演出の板垣(恭一)さんもそれをとても大事にされていて、例えば松本(幸大)くんのイゴールなら売れない作家で、松尾(伴内)さんのハーヴェイはジュリアンと友人関係だとか、そういう要素を体の中にちゃんと持って芝居をしないといけない。ですからジュリアンも、まずはそういう背景を体に入れていくことが大事だと思っています。コメディという部分はその後のことなので。
──そのコメディ部分ですが、演じるときの一番大事なことは?
吉田 まずは台詞の掛け合いが大事ですね。それも絶妙なタイミングでやらないといけない。
 この作品の登場人物たちは、相手には嘘をついているのがわからないと思って喋っているのですが、お客様にはそれがわかっている。そこを笑っていただくわけです。その見せ方がやはり難しいですね。
吉田 ジュリアンはそれが一番多いのでたいへんです(笑)。
──キャストは6人と少人数で、若手では松本さんと増田有華さんが参加していますね。
吉田 2人ともすごく頑張っています。大人のコメディなので難しいと思うのですが、そこを必死で付いてきてますね。
 本当に真面目で一生懸命で、稽古が終わったあとも板垣さんがワークショップ的なことをされていたり、芝居の基礎を教えてもらっているなと。
吉田 板垣さんの愛をものすごく感じますね。
──青木さやかさんと松尾伴内さんは、コメディには強い方たちです。
 お二人とも楽しくて、出ていらっしゃるシーンをいつも笑いながら拝見しています。私も絡む場面があるのですが、毎回変えてこられるのでリアルに笑ってしまって(笑)。ステファニーとしてはイラッとしなくてはいけない場面なのに、困ったなと(笑)。
──笑いのシーンは、受ける難しさもありそうですね。
 でも受け身すぎると会話が成立しないので。飛んでくることをにしっかり反応しないといけないかなぁと。
吉田 この台詞をどう受けてどう返すかという、言葉のキャッチボールをちゃんとするのがストレートプレイの基本ですからね。 
 私は今回が初のストレートプレイなのですが、会話の1つ1つへ細かく丁寧に反応することが大事だなと、そこをちゃんとやらないとストーリーが流れていってしまうというのがよくわかりました。
──ストレートプレイへの初挑戦で、またフィールドを広げていくことになりますね。
 というより、これまでもミュージカルや朗読で演じてきたお芝居の世界を、さらに掘り下げていってる感じがします。今まではあまり意識せずに演じていたものを、丁寧に細かく自覚しながらやっている感じです。
──宝塚を退団して9年ですね。退団直後だったらこのステファニー役は難しかったですか?
 全然できなかったと思います。今も全然出来てないんですけど(笑)。台詞を覚えて、立ち位置を覚えることは簡単なんです。ここで振り向いてとか。でもそれではまったく面白くないんです。そんな記号的なことをやってもただ説明しているだけでしかなくて。板垣さんがいつもおっしゃっているのは、台詞じゃないところで何を感じさせるかということで、そこが一番難しいところなんですが。でもこれを乗り超えたら何か1つ掴めるのだろうなと思っています。
──板垣さんはロジカルに演出をつける方だそうですね。 
吉田 よくスポーツに例えてくださるんですが、僕はバスケットボールをやっていましたから、とてもわかりやすいですね。フォーメーションを大事にするとか、出来ないやつがいたら出来るまで付き合うとか、そういう意味では映像より舞台のほうがスポーツに近いですから。 
 そう思います。とにかくすごく丁寧に演出してくださるんです。それだけコメディというのは難しいのだろうなと思います。

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正直に生きたら良いことあるよ!
というハッピーな物語

──お二人は初共演ですが、稽古の中で感じたお互いについては?
吉田 仕事の話で言えば、この公演でストレートプレイに初めて取り組んでいらっしゃる。そしてこの方向もやっていきたいという思いがあることで、すごく真摯に、それは皆さんそうなんですが、一生懸命に取り組んでいらっしゃる。その姿がとても愛おしいですね。この作品は相手役に対してそういうふうに思う気持ちが大事なのですが、そう思わせてくれます。一緒に良い作品にしていきたいし、この作品がまた次に繋がっていくことがお互いに一番いいことなので。
 栄作さんはとにかくかっこいいです! 本当にそれ以外の言葉が見つからないんですけど。でも先日親睦会があって、お酒を召し上がられて、意外な面も見られて(笑)、それも含めて素敵だなと。なんといっても誰もが憧れる方で、その方の相手役でいつも側にいられる、それはやっぱり楽しいし、嬉しいです(笑)。とにかくこの作品を引っ張っていってくださる存在で、この作品の中で自由に存在していらっしゃる。一緒に出ている場面はもちろん、他のかたとの場面でも、「なるほどなあ」と思いながら拝見していて、コメディの勉強もお芝居そのものも学ぶことばかりです。
──吉田さんは、明るい役も陰のある役も、二枚目もコメディも出来て、作品の幅も広いですね。
 だからすごく安心なんです。栄作さんに寄り添っていれば間違いないという安心感があって、1人でなんとかしなきゃという感覚がまったくないんです。
吉田 そういうふうに思っていただけるのが一番嬉しいですね。共演の方に安心してやっていただけるということが、僕のやるべき仕事だと思いますから。
──舞台も数多く出ていらっしゃいますが、映像の仕事にフィードバックするものは?
吉田 舞台はやり直しがきかないということで、すごく芝居の筋肉が鍛えられるんです。僕は映像から出てきて、今も基本では映像の人間だと思っていますが、そこに帰ったときに、舞台で学んだことが大きく反映されているのを実感しますから。
 舞台での経験が具体的に役に立つということですか?
吉田 そう。例えば打てなかった球が打てるようになるとか、ピッチャーだったら球種が増えていくとか、登山で言えば見たことのない景色を見られたとか。新しい役柄や台本に出会ったとき、解釈や表現の仕方が広がるのを自分でも感じるので、やはり舞台を続けることは、僕にとって大事だなと思っています。
──そんなお二人が演じる『カクタス・フラワー』について、改めてメッセージをいただければ。
 お客様に絶対にクスクス笑っていただける作品です。でも笑いだけでなく、観ている方の人生で共感できるところも多いと思いますし、最後は、正直に生きたら良いことあるよ!みたいな、背中を押してもらえるようなハッピーなお話です。
吉田 観にきてくださるお客様も、それぞれ色々な人生を抱えていらっしゃって、その大事な時間を劇場に来ていただくわけですから、とにかく楽しんで笑っていただいて、最後はほっこりした気持ちで帰っていただけたら。東京公演だけでも37回ありますから、毎日どんどん深まっていくと思います。その成長とか進化もぜひ観ていただければ嬉しいですね。

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■プロフィール
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みずなつき○千葉県出身。1993年宝塚歌劇団入団、2007年雪組男役トップスターに就任。2010年退団後は、舞台を中心に活動中。主な出演舞台は、『屋根の上のヴァイオリン弾き』、『新版 義経千本桜』、ブロードウェイミュージカル『シカゴ』宝塚 OG バージョン、
ミュージカル『アルジャーノンに花束を』、リーディング『パンク・シャンソン〜エディット・ピアフの生涯〜』、ミュージカル『キス・ミー・ケイト』、『ラストダンスーブエノスアイレスで。聖女と呼ばれた悪女 エビータの物語』、DRAMATIC SUPER DANCE THEATER FLAMENCO 『マクベス〜眠りを殺した男〜』、夢幻朗読劇『一月物語』など。

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よしだえいさく○神奈川県出身。1988年、東映映画『ガラスの中の少女』でスクリーンデビュー。以降、TV ドラマ『もう誰も愛さない』では、ジェットコースタードラマとして話題に。また音楽活動でも、シングル 17 枚、アルバム 8 枚をリリース。毎年夏に音楽ライブも展開、2009  年にはメジャー音楽活動も再開した。最近の出演作は、舞台『私はだれでしょう』、『これはあなたのもの1943−ウクライナ』、『ローマの休日』、映画『グッバイエレジー』、『花戦さ』『響 -HIBIKI-』、ドラマはNHK 土曜ドラマ『忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜』、TBS『LEADERS供戮覆鼻 

【舞台フォトレビュー】 
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〈公演情報〉
WEB用
 
シーエイティプロデュース
『カクタス・フラワー』
作◇エイブ・バロウズ
上演台本・演出◇板垣恭一 
音楽◇和田俊輔
出演◇水夏希・吉田栄作/増田有華・松本幸大(宇宙Six/ジャニーズJr.)
/松尾伴内・青木さやか
●11/10〜12/8◎DDD青山クロスシアター
●12/11◎サンケイホールブリーゼ
●12/13◎静岡市清水文化会館(マリナート) 大ホール
〈料金〉8,000円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉atlas 03-6279-0545(平日12:00〜18:00)  


 

【構成・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃 舞台写真提供/シーエイティープロデュース】



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