えんぶ本誌の宝塚記事取材の機動力を生かして、宝塚歌劇の製作発表、会見などをいち早く紹介。 宝塚OGの公演やインタビューのほかに公演の批評なども展開しています。

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幕末の動乱の中で活躍する五人の白浪! 音楽活劇『SHIRANAMI』上演中!

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河竹黙阿弥の名作『白浪五人男』を大胆にアレンジした音楽活劇『SHIRANAMI』が、1月11日から新国立劇場 中劇場で上演中だ。(29日まで)
この舞台は歌舞伎の人気演目「青砥稿花紅彩画」に描かれた白浪の世界を、尊皇だ攘夷だと混沌とする幕末の時代に移して、表の顔と裏の顔を持つ五人が出会い、この国を守るために立ち上がるという物語。 
 
出演者は、弁天小僧菊之助を早乙女太一、赤星十三郎には元月組トップスターの龍 真咲、南郷力丸は伊礼彼方、忠信利平はゴールデンボンバーの喜矢武豊、そして日本駄右衛門には松尾貴史と、豪華な顔ぶれが顔を揃えている。脚本・演出はG2、ショー場面の演出はショーデザイナーとして知られる市川訓由が手がけている。音楽活劇と銘打たれているように、殺陣やアクションの面白さに加えて、洋楽のショーもあり、和洋折衷で見どころ満載の一大エンターテインメントに仕上がっている。
 
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【物語】
時は幕末。諸外国との通商条約に反対する武士たちが、尊皇だ、攘夷だと喧しい中、古くから天皇家に仕えていた八瀬童子の菊霧(早乙女太一)は、徳川家茂に嫁ぐことになった和宮のお守役として江戸に下り、弁天小僧と名を変えて「ある密書を手に入れる」という密命を受けていた。そして、奉公所の同心を勤める南郷力丸(伊礼彼方)は、幕府を守るために密書を探している。また同時に、ある事情で姿を消した許嫁、小夜(龍 真咲)の行方も追っていた。
一方、武家屋敷ばかりを狙う泥棒・日本駄右衛門(松尾貴史)もまた、江戸の町を騒がせているが、ひょんなことから家茂の御庭番の忠信利平(喜矢武)と相まみえる。それぞれの忠義、思いを抱えて活動していた五人だが、やがて「この国を盗もうとしている」連中の企みに気づき、阻止するために力を合わせることに・・・。

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早乙女太一演じる弁天小僧菊之助は、実は皇女和宮を護りながら江戸にきた八瀬童子の菊霧。女性にも化けられる美剣士として活躍する。華麗な殺陣や鮮やかなアクションはもちろん、短い時間ながら艶やかな花魁姿も見せて、作品のエンターテインメント性に大きな力を発揮している。また菊霧役での抑えた演技の中に和宮に寄せる想いと献身をのぞかせるなど、魅力的な役に作り上げている。
 
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龍 真咲が演じるのは赤星十三郎で、宝塚の男役にも通じる凜々しさで美少年役がよく似合う。実は南郷の許嫁で、安政の大獄に巻き込まれた武家の娘という役どころだけに娘役姿でも登場。そちらでは楚々とした風情を見せる。激しい殺陣シーンも男性陣にまじってエネルギッシュにこなし、確かな実力と華はさすが。

ミュージカルを中心に翻訳劇や洋物舞台を演じてきた伊礼彼方にとって、初めての時代劇となる本作だが、思いがけないほど鬟も着物も似合って、和物にも馴染んでいる。同心・南郷力丸の熱くて真面目な人柄が伝わるだけに、時代に翻弄される許嫁の小夜との恋が切ない。ショー場面では歌とダンスに大活躍、その他にも心情を歌うナンバーなどで聴かせる。

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ゴールデンボンバーの喜矢武豊は、神出鬼没な盗人、実はお庭番の忠信利平役。軽いフットワークとクレバーさを持ち合わせた「出来る男」で、華やかな面差しが和物芝居に映え、台詞の声も良く、役者としても活躍しているだけに安定感がある。松尾貴史の日本駄右衛門とは出会いシーンも含めて良いコンビぶり。

五人のまとめ役とも言える日本駄右衛門には、演技派俳優として評価も高い松尾貴史。度胸と気っぷの良さで江戸の町を守る火消しの頭領らしい懐の深さと実直さがある。とくに後半に駄右衛門の誠実さを伝えるエピソードが登場するが、役柄に相応しい人間性が存在の中に滲み出る。

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まさにエンターテインメント時代劇というべき本作ならではの和洋折衷の真骨頂は、劇中に登場する横浜のホテルのショータイム。ポピュラーなジャズナンバーが次々に飛び出して、龍 真咲、伊礼彼方、鈴木壮麻がダンサーたちとともに歌い踊る。黒船来航を背景にした横浜の異国情緒あふれる場面は、楽しさ満点だ。

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出演者たちは、白浪五人以外も豪華な顔ぶれが揃っている。開国派商人の瑞帆屋卯三郎役には鈴木壮麻、大奥をとりまとめる天璋院など何役も演じわける加納幸和、老中や年寄・瀧山役の小林大介、老中の安藤信正や土御門藤子役の谷山知宏、攘夷浪人の高杉の安田桃太郎など、実力派が時代劇の重みを支える。また事件を伝える読売(瓦版)では、越塚学と谷水力という生きのいい2人が活躍している。
そして、将軍家茂役は若手俳優の小澤廉、和宮には入来茉里が扮し、政略結婚という形からやがて愛し合う若いカップルの姿を丁寧に演じていて、ある意味ではこの作品の大きなテーマを背負う役どころだけに、この2人の爽やかさは大きなポイントだ。

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ダイナミックな映像とジャズを主体にした音楽、スピーディにテンポ良く運ばれていく構成が心地よく、歴史上の事実を挟みながら、想像力をフルに羽ばたかせたストーリーは、痛快でありながらどこかアナーキーな危うさもあって、そこは原典となった「青砥稿花紅彩画」の破滅的な美しさにも通じる世界観と言えるだろう。
エピローグの「稲瀬川勢揃いの場」にあたる場面では、大白浪を背に五人男が居並んで黙阿弥の七五調の口上で見得をきり、大仕事を果たした清々しさのなかで、この先に待つ修羅場へと歩を進めていく。その姿は潔くも晴れやかで、どこまでも格好いい。

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【囲みインタビュー】

 
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G2 喜矢武豊 龍 真咲 早乙女太一 伊礼彼方 松尾貴史

初日を前に、囲みインタビューが行われ、脚本・演出のG2、出演者の早乙女太一、龍 真咲、伊礼彼方、喜矢武豊、松尾貴史が登壇した。

──まず驚いたのは音楽がジャズなんですね。
G2 ラテンに影響されているジャズに統一してみようと思いました。五人の盗賊たちがエネルギッシュに活躍するので、しかも時代劇なので、洋楽を取り入れてみようと。今までこういう取り組みはなかったのではないかと。でも悩みまくった結果この形になりました。けっこう面白いシーンができたと思います。特に霧菊の花魁のシーンでジャズをかけたところなど、いい効果が出たと自負しています。
──演じている皆さんは
喜矢武 基本、僕は音楽には関わりたくないので(笑)、また音楽かい!と思ったんですけど、でもジャズとか面白い試みだと思っています。
 とても難しかったんですが、日々、G2さんの愛情だったり、個性的な皆さんと一緒なので。実は全員B型なんですよね。
G2 だから五人が喋ってるとき、誰も人の話聞いてない(笑)。
早乙女 五人揃うシーンは息が合わないんです(笑)。
喜矢武 五人の話なのに五人のシーンが一番ヤバイ(笑)。
G2  その合わなさかげんをお楽しみください(笑)。
 私は活劇というのは初めてなんですが、皆さんと一緒に盗賊の物語とその裏側にある人情味とか、その時代とか大切にやれたらと思っています。
──宝塚時代と違って男性陣が沢山いますが。
 あまり性別は気にならない。
喜矢武 全員中性的ですからね(笑)。
松尾 いやいやいや。
龍 良い人たちばかりです。
松尾 今、棒読みじゃなかった?(笑)
 (笑)毎日楽しくやっております。
早乙女 本当に個性がバラバラで、こんなに異種の人がいっぱい集まってやるという機会はあまりないので、楽しいです。
──早乙女さんは久しぶりの女形はいかがですか?
早乙女 僕は女形では踊りばかりで、お芝居をしたことがあまりないんです。花魁で台詞を発するのも初めてで。
喜矢武 初めてなのにものすごくエロイ声を出すよね。
早乙女 やだ!(笑)
喜矢武 1回乾燥で喉をやられたとき、寂れたスナックのママかと(笑)。
早乙女 ありましたね(笑)。
──色気に参る?
喜矢武 参っちゃってますね〜。
早乙女   初めて言われた(笑)。
 美しいです。日々美しくなっている。
早乙女 (龍に対して)逆にカッコいいです。
 なんか懐かしい感じです。2年ぶりです。
早乙女 そんな前でもなかったんだ。

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──久しぶりに男役をやっていかがですか?
 男性の中で男役をやるのはどうなんだろう?と思ったんですが、やってみると難しいことはなかったです。
松尾 桜色の着物でお嬢さんの役のときも、舞台の途中まで出るとき男の歩き方をしてるんです。
 言わないで!(笑)
松尾 いや、後ろから見てて「かっこいい!」と思いながら。
伊礼 僕らのほうがめめしいですよね。
──伊礼さんはこの舞台はいかがですか。
伊礼 個人的には初の和物で、所作をすべて一から先生に教えていただいて、集まった役者たちも多ジャンルのプロが集まっていて、このデコボコ感がすごく魅力的なので、このデコボコ感を楽しんでいます。
松尾 すごいよね。同じ生物とは思えない(笑)。それはさておき、僕は音楽活劇『SHIRANAMI』に出るのが子どもの頃からの夢だったので(笑)。
全員 ない!ない!
──G2さんは厳しかったですか?
松尾 厳しいです。もともと立ち位置厳守の方なんですが、セリなどもあるし上からも降りてくるし,覚えきれない。
喜矢武 でも松尾さん「危ないから本当に緊張してやらないと」と言った数秒後にめちゃめちゃふざけてました。すぐ稽古場でふざけるんです(笑)。
早乙女 五人で均等に立つところで、俺の目の前に立ってましたからね(笑)。
松尾 後ろから笑い声が聞こえるから、なんだろうと思って振り向いたらかぶってた(笑)。

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──楽屋も賑やかですか?
松尾 基本的には楽屋はバラバラなので、劇場に入ってからは会わなくなりました。 
G2 稽古中はよく喋ってたよね。
喜矢武 台詞合わせしてる真面目な人もいれば、ゲームしてる人もいました。
──ゲームは誰が
喜矢武 早乙女太一です。
早乙女 おい!一緒だろ(笑)。今は喜矢武さんの楽屋にずっといます。
喜矢武 自分の楽屋みたいに入ってくるから、僕が集中できないから逃げるんです。僕の楽屋が早乙女太一の楽屋になってます(笑)。
──共演してみていかがですか?
喜矢武 やっぱり勉強になりますね。所作とか教えてくれるし、殺陣がもの凄いんです。僕の悪いところ見つけたりするとすぐ教えてくれる。それがちょっとだけ上から目線で(笑)。いや、1つ1つの動作が全部勉強になります。自分の衣裳すら体の一部みたいに、蹴るときわざわざバサッとやるんです。それがせこいなって(笑)。
早乙女 せこいって(笑)。
喜矢武 衣裳使ってまで派手に見せるという演出ができるので、凄いです。
早乙女 いやいや(笑)。なるべく皆さんに伝えられるものは伝えようと。
──殺陣は慣れていると思いますが、今回とくに大変なことは?
早乙女 五人で一緒に戦うところがけっこうあるのですが、なにせみんな息が合わないから(笑)、そこだけは注意してやりたいなと。千秋楽までにはなんとか(笑)。
G2 猛獣を5匹、檻に飼っているようなものなので、お互いに闘い合う中でなんとかなると思ってます(笑)。
──龍さん紅一点ですが。
 でもあまり女性として扱われないんです、G2さんからも皆さんからも。
松尾 いや、美しいですよ。
 でもそういうところで気をつかわれたりするのもいやなので。とにかく舞台の一瞬一瞬を楽しんでやりたいなと、今はそれだけです。
──早乙女さんから見て龍さんはいかがですか?
早乙女 いや、素敵です。
 噛みそうになってる(笑)。
松尾 ひどい男だな(笑)。
早乙女 素敵です!!(笑)
龍 もういいです(笑)。
──では最後に一言。
早乙女 色んな見せ場や魅力が沢山詰まっています。新年にふさわしく、賑やかに皆さんに元気を持って帰ってもらえるように、エネルギッシュにがんばっていきますので、是非よろしければ観に来て下さい!よろしくお願いします。
全員 観にきてねー!
 
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〈公演情報〉
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音楽活劇『SHIRANAMI』
脚本・演出◇G2
ショー演出◇市川訓由
出演◇早乙女太一 龍 真咲 伊礼彼方 喜矢武豊(ゴールデンボンバー) 松尾貴史 
鈴木壮麻 加納幸和 小澤 廉 入来茉里 
小林大介、谷山知宏、谷水力、安田桃太郎、幸田尚子、越塚学、熊倉功、伊藤教人、南誉士広、加藤学、高橋玲 ほか
●1/11〜29◎新国立劇場 中劇場
〈料金〉 S席11,000円 A席8,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉 公演事務局 0570-200-114(全日10:00〜18:00) 



【取材・文/佐藤栄子 撮影/山崎伸康】




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サスペンスの傑作『暗くなるまで待って』間もなく開幕! 加藤和樹・高橋光臣 インタビュー

加藤×高橋

1966年にブロードウェイで初演されたサスペンスの傑作『暗くなるまで待って』。盲目の若妻と悪党三人組がアパートの一室で繰り広げる駆け引きと騙し合いが、スリリングに描かれるワンシチュエーションミステリーで、日本でも何度か上演を重ねてきた。この作品が、1月25日から2月3日までの池袋 サンシャイン劇場を皮切りに兵庫、名古屋、福岡で上演される。
主人公の若妻スージーには凰稀かなめ、スージー殺害を企てる悪党のリーダー、ロート役を演じるのは加藤和樹、詐欺師で甘い二枚目のマイク役を演じるのは高橋光臣、そのほかに猪塚健太、松田悟志など実力派の若手も参加する注目作品だ。この舞台で共演する 加藤和樹と高橋光臣が、役柄への思い、また盟友である互いの魅力を語り合ってくれた「えんぶ2月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。

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高橋光臣 加藤和樹

ここまでのワルも二枚目も
お互いに初めて

──まず作品についてはどのような印象を?
加藤 僕は2007年に上演された時に観ているのですが、当時はまだ僕自身舞台経験もさほどなかった中で、全ての展開に衝撃を受けて、それ以来いつか演じてみたいとずっと思い続けていたので、今回オファーを頂けたことに喜びでいっぱいです。
高橋 僕はこのお話を頂くまで作品に接したことがなかったのですが、まず台本を読んで大人の雰囲気と色気があるなと感じました。台詞にも細かい駆け引きがあり、ワルなんだけれどもほのかな恋心を抱いたりする描写をどう作るのかに、とても興味を引かれてます。ラストまでスリリングなので、実際にどんな舞台になっていくのかが楽しみです。
──演じる役柄についてはどうですか?
加藤 ロート役を演じさせて頂きますが、僕にとってはこれだけの悪を演じるのが初めてで。
高橋 本当に? ちょっと意外。色々やっているから。
加藤 うん、ここまでの悪は初めて。悪い奴はやってるけど、そうせざるを得ない何か理由があるとか、心根は優しいとかだったんだよね。だから、今回のロートに対しては、どこまで自分が彼に歩み寄れるのか、彼が近づいてきてくれるのかがある意味挑戦かな。見るからに悪そうな人って意外と良い人だったりするしね(笑)。一見悪い人には見えない人が実は…となった時にこそ背筋が凍るような怖さにつながるだろうし、存在そのものに畏怖の念が湧くようなところがロートという人物には重要だと思うから、そこをどう表現できるかを追求していきたい。
高橋 僕が演じるマイクは詐欺師なんだけれども、だからこそ女性から惚れられるくらいの魅力がないと成立しない役で。カズさん(加藤)がワルをやったことがないって言ったけれど、僕も色気のある男前の二枚目役って、ほとんどやっていないんだよ!(笑)。だから今回まず二枚目に徹する! というのが僕もチャレンジングで。
──持ち前の武器が活かせる役ですね!
高橋 いや〜(笑)、僕つい何か面白いことやりたくなっちゃうので(笑)。そこを今回はグッと抑えて、観る人が心を動かされるような存在になっていけたらなと思っています。

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集中力を必要とする分、
ハマった時には凄いものになる

──今回のような場面が固定された少人数のお芝居の醍醐味についてはいかがですか?
加藤 やはり役者ももちろんですが、お客様が集中してご覧になれる、目を逸らしたくても逸らせないという緊張感があるのが、こういうワンシチュエーションものの魅力かなと思います。
高橋 僕はワンシチュエーションものに出るのは初めてで。台本を読んでもずいぶん制約があるなと。「三歩歩いて〇〇をとって」とか書いてあるよね?
加藤 うん、あるある(笑)。
高橋 そこをどう(深作)健太さんが創るのかというのもあるんだけど、その制約の中で何ができるのかというのが、楽しみなのと同時に難しさも感じる。
加藤 決め事をまず身体に入れないといけないんだよね。この台詞が終わるまでにあれと、あれをやっておかないと、全部が崩れるということさえあるから、そこは役者もスタッフも本当に集中しないといけないので緊張するけど、だからこそ上手くハマった時には凄いものができると思う。健太さんは役者と一緒に考えて、体当たりしてくれる演出家なので、そこは安心感があるかな。
高橋 僕は健太さんとは初めてなので、僕という材料をどうまとめてくれるかも楽しみだし、その為にはまず僕からもどんどんアイディアを出し、意見を聞いてやっていきたいと思っています。

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大人の色気と機微の詰まった
スリリングな作品

──共演者の皆さんも豪華なメンバーですね。
加藤 (凰稀)かなめさんとは『1789〜バスティーユの恋人たち』で共演はしているけど、ほぼ絡みがなかったので(笑)。同じ場面に一瞬いたかな? ぐらいで。
──加藤さんのロナンが目覚めてしまったことで、凰稀さんのマリー・アントワネットが逃げていくんですよね。
高橋 それを共演と言っていいのかってほどだね(笑)。でも結構そういうことあるね。
加藤 そうそう(笑)。ただもちろん稽古場でかなめさんの芝居は間近で見ているし、芝居に対する熱は感じているから、今回初めてしっかりと絡むことによって、どこまで深め合えるか、それに、皆でどう話し合って作っていけるのかもすごく楽しみです。
高橋 僕は松田(悟志)さんとは長いお付き合いで信頼感がありますし、カズさんのことはすべて知っている(笑)というと語弊があるけど、本当に何でもぶつけられる相手なので、今回一緒にできることが何よりも嬉しい。
──それほど親しいお二人なので、照れてしまうかも知れませんが、是非お互いの魅力を。
高橋 これは先に言った方がいいな(笑)。芝居もしっかりしてるし、アクションもできるし、知的で色気もあるのに馬鹿ができる男前。そこが男から見ると本当に魅力的です。
加藤 光さん(高橋)はどこを切っても魅力ばかりなんだけど、とにかく大好きなのは、誰に対しても分け隔てがなく優しいところです。更に役者としては、芝居にしてもアクションにしても揺るぎないベースがあるからブレがない。だからどこにでも行けるし、役をどんどん積み上げていく人なので、観ていて勉強になります。
高橋 あぁ、本当に照れる(笑)。自分を役者としてそんな風に見たことがないから。でもそう言ってくれるカズさんと舞台を作れるので、このサスペンスでありつつ大人の男女の機微の詰まった作品の色気をお客様に感じて頂けるように頑張ります。
加藤 僕はこの作品を心待ちにしていただけにプレッシャーもありますが、今の年齢になったからこそできる役だと思っています。台詞量も情報量も多い作品を、如何にお客様に理解して楽しんで頂けるかを考えながら、最後の暗闇の中での戦いに向けて全員で創っていきたいです。これだけスリリングな作品はなかなかないので、是非期待していて下さい!

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 ■プロフィール
加藤
かとうかずき○名古屋市出身。05年『テニスの王子様』で脚光を浴び、06年歌手としてもCDデビュー。大作ミュージカルで次々と大役、主演を務める一方で、16年にはアーティストデビュー。LIVE活動も精力的に行っている。近年の主な舞台作品に『フランケンシュタイン』『レディ・べス』『ハムレット』『マタ・ハリ』『1789〜バスティーユの恋人たち〜』『タイタニック』等があり、12月には自身の作詞をもとにした作品project K『僕らの未来』に出演した。
 
高橋
たかはしみつおみ○大阪府出身。05年に俳優デビューし、テレビドラマ、舞台と幅広い活躍を続けている。主な映像作品に『科捜研の女』『梅ちゃん先生』『実験刑事トトリ』『名もなき毒』『神谷玄次郎捕物控』『下町ロケット』『せいせいするほど愛してる』『西郷どん』、CMでは救心製薬『救心錠剤』のイメージキャラクターを務めている。主な舞台作品に『しゃばけ』『夕─ゆう─』『ヴェローナの二紳士』『真田十勇士』『光より前に─夜明けの走者たち─』など に出演。


〈公演情報〉
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『暗くなるまで待って』
作◇フレデリック・ノット 
訳◇平田綾子 
演出◇深作健太
出演◇加藤和樹 凰稀かなめ/高橋光臣 猪塚健太 松田悟志  ほか 
●1/25〜2/3◎東京・サンシャイン劇場 
〈料金〉8,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京/サンライズプロモーション東京  0570-00-3337(全日10:00〜18:00)
●2/8〜10◎兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
●/2/16・17◎名古屋・ウインクあいち
●2/23◎福岡・福岡市民会館 大ホール 
〈公演HP〉http://wud2019.com



【構成・文/橘涼香 撮影/山崎伸康】




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シアタークリエへの見事な凱旋で輝くミュージカル『レベッカ』上演中!

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2018年に開場10周年を迎えた東京日比谷のシアタークリエで、10周年記念公演ファイナルとなるミュージカル『レベッカ』が上演中だ(2月5日まで)。

ミュージカル『レベッカ』は、20世紀前半から活躍した小説家ダフネ・デュ・モーリアが1938年に発表した長編小説「レベッカ」を、『エリザベート』『モーツァルト!』『マリー・アントワネット』『レディ・ベス』等々の大ヒットミュージカルを生み出したミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイのゴールデンコンビがミュージカル化した作品。サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックによる映画版が殊の外有名だった作品を、全編歌で綴るミュージカルとしてサスペンスフルに、更にロマンの香りも高く創り上げた舞台は2006年のウィーン初演以来、大好評を博した。そんな作品を世界で2番目の上演国として発信したのが、2008年に開場したシアタークリエで、その後、10年間に海外の新作のいち早い上演や、埋もれていた幻の作品に光を当てるなどの様々なチャレンジを続け、演劇界に大きな足跡を残してきたシアタークリエの歩みを象徴する、記念碑的作品が、満を持して10周年記念ファイナル公演として帰ってきた。

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大塚千弘

【STORY】
天涯孤独の身の上で、アメリカ人富豪ヴァン・ホッパー夫人(森公美子)の世話係を務める「わたし」(大塚千弘/平野綾/桜井玲香 トリプルキャスト)は、モンテカルロのホテルで、イギリスのコーンウォールに大邸宅と広大な土地“マンダレイ”を所有する上流紳士マキシム(山口祐一郎)に出会う。先妻レベッカの事故死の影を引きずるマキシムは、忘れていた心の安らぎを与えてくれた「わたし」を見初め、「結婚して欲しい」とプロポーズする。身分も階級も異なるマキシムに惹かれる心を押し隠してきた「わたし」も、愛を信じマキシムのプロポーズを受け入れるが、ヴァン・ホッパー夫人はマキシムの先妻レベッカはイギリスでも評判のレディであり、「わたし」にマンダレイの女主人が務まるはずがないと警告する。果たして、ハネムーンも終わりマンダレイに着いた二人を出迎える召使いたちの中には、レベッカに幼少時から仕え、彼女亡き今も家政婦頭として屋敷を取り仕切るダンヴァース夫人(涼風真世/保坂知寿 ダブルキャスト)がいて、レベッカが生きていた時と何ひとつ変わらぬままに屋敷を維持していた。ダンヴァース夫人の威圧的な態度に気圧されながら、マンダレイの管理をするマキシムの友フランク(石川禅)、マキシムの姉ベアトリス(出雲綾)、その夫ジャイルズ(KENTARO)に温かく迎え入れられた「わたし」は懸命にマキシムの良き妻になろうとするが、マキシムに隠れて屋敷に出入りするレベッカの従兄弟ファヴェル(吉野圭吾)、入江のボートハウスで出会ったベン(tekkan)等の言動からも、屋敷の至るところ、更に人々の心の中にもレベッカの存在が色濃く残ることを意識せずにはいられなかった。やがてそんな今はいないはずのレベッカによって、二人の結婚生活にも次第に影がさしていき……。
 
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平野綾

ゴシック・ロマンとして名高い『レベッカ』は、やはりなんと言っても「サスペンス映画の神様」とも称されたアルフレッド・ヒッチコックの手による映画版が著名で、特にダンヴァース夫人を演じたジュディス・アンダーソンの怪演とも呼びたい強烈な演技が強い印象を残している。ヒロインに固有名詞がなく、観る者が「わたし」を通して物語に入っていく道筋がつけられていることもあって、ヒロインがマンダレイで追い詰められていくサスペンス感が強烈で、端的に言って夜1人で鑑賞するのは恐ろしいと思える世界観が広がっている。
そこからすると、このミュージカル版にはぐっと情緒的で、ロマンティックな色合いが濃い。それには恐怖感以上に、個々の人間心理に深く踏み入ったミヒャエル・クンツェの脚本・作詞と同時に、複雑でありながら耳に残る美しいメロディーを数多く書いたシルヴェスター・リーヴァイの音楽の力が大きく寄与している。冒頭に歌われる「夢に見るマンダレイ」が、特にその効果を発揮していて、レベッカというあまりにも強大な影に「わたし」が愛の力で対峙していく物語の、ロマンの香りを強く際立たせている。作品中最も有名な楽曲と言って間違いないだろう、ダンヴァース夫人のナンバー「レベッカ」が繰り返し歌われることによるサブリミナル効果や、マキシムの懊悩を描く「神よなぜ」「凍り付く微笑み」等のビッグナンバーと、ベアトリスとジャイルズの「親愛なる親戚!」ヴァン・ホッパー夫人の「アメリカン・ウーマン」等、軽やかでリズミカルなナンバーが共存することで、物語の色彩が格段に豊かになった。
このミュージカルならではの醍醐味は、アンサンブルメンバーが歌う数々の楽曲の面白さにもあふれていて、山田和也の演出が出演者1人1人の個性を丁寧にすくい取っているのも目に耳に愉しい。何よりサスペンスフルな物語展開の緊迫感に、シアタークリエの濃密な空間がピッタリで、クリエ発ミュージカルのスタートを切った作品が、栄えある10周年記念の掉尾を飾ったことの意義を改めて知らしめていた。

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桜井玲香 

そんな作品を彩る出演者の多くが初演以来の持ち役を深めているのも、やはりこの企画の重みを感じさせるし、新たなメンバーが吹かせる風もまた更なる見どころを生んでいる中で、マキシム・ド・ウィンターを演じる山口祐一郎が、変わらずに作品の芯を担っている安定感には大きなものがある。スラリとした長身と甘いマスクとどこまでも伸びる歌声で、唯一無二というほどミュージカル界にとって貴重な存在だった山口が、経験と年輪を重ね、尚このマキシム役が無理なく演じられるだけでなく、役柄の苦悩や揺れ動く心情をよりリアルに表出する深みを加えた姿は圧巻。今回「わたし」役にトリプルキャストが組まれたことで、それぞれに対する山口のマキシムの表情が異なってくるのも、なんとも魅力的だった。

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そのトリプルキャストの「わたし」は、日本版オリジナルキャストの大塚千弘が、帝国劇場再演バージョンから8年の時を経て同じ役柄を演じ、瑞々しさを失わずにより感情の襞を深めているのが頼もしい。観客が彼女の目線で物語を観る「わたし」というヒロインの在り方に、当然でもあるだろうがやはり一日の長があり、緩急の豊かな歌唱力がマキシムやダンヴァース夫人との掛け合いのナンバーに際立った。

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一方平野綾は「わたし」役そのものこそ初役だが、近年ミュージカル界で次々に大役に挑んできた経験値が生きて力強い。制作発表や囲み取材で見せるむしろおっとりした佇まいが、舞台に立つと燃えるようなパッショネイトに変換する、平野綾という表現者の魅力がそのまま「わたし」にも投影されていて、愛故に強さを兼ね備えていく「わたし」の変化に見応えがあった。

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この二人に並んで、翻訳ミュージカル初挑戦の桜井玲香が「わたし」を演じるプレッシャーには、果てしもないものがあっただろうと思うが、それだけに役柄に体当たりする桜井の懸命さが、新たな人生に飛び込んだ「わたし」の心許なさと、怯え戸惑いながらも姿なきレベッカとの戦いに挑んでいく様にストレートにつながったのが、予想以上の効果を生んでいる。可憐な容姿も加わり無条件に応援したくなる「わたし」像はこの作品の本質を突いていて、発展途上の歌唱も美しい声質に伸びしろを感じさせた。経験を重ね花開いている同じ「乃木坂46」の生田絵梨花に続く、ミュージカル界での今後の活躍にも期待したい。

「レベッカ」保坂&桜井
 
そしてこの作品全体の色を決めていると言って間違いない存在であるダンヴァース夫人は、再演バージョンに続いての出演となる涼風真世が、亡きレベッカがそのまま憑依したかのような威厳と位取りの高さを示せば、初役の保坂知寿がレベッカへの狂信的な崇拝を緻密に表現して興味深い。片や元宝塚歌劇団のトップスター、片や元劇団四季のヒロイン女優と、日本のミュージカル界にとって欠かせないカンパニーを出自に持つ二人が、やはりそれぞれの生まれ育った場所を想起させる表現で役柄にアプローチしているのが、何よりの興趣を生んでいた。

他に初演からの続投キャストでは、マンダレイの管理を任されているフランクの石川禅が、この年月でより役柄に相応しい味わいを身にまとっているのが大きな効果を生んでいる。近年アクの強い役柄でもヒットが多い人だが、やはり本来の持ち味がひたすらに誠実なフランク役に合っていて、「わたし」を励ます「誠実さと信頼」の持ちナンバーが滋味深く耳に残った。レベッカの従兄弟ファヴェルの吉野圭吾は、逆にアクの強い役柄をどんなに色濃く演じても、徹底的に下品にはならない魅力が活きている。このミュージカル全体の色彩からも、吉野のファヴェルの匙加減は絶妙で、良いアクセントになっていた。非常に難しい役柄であるベンの動物的な判断を純粋に見せるtekkan、マキシムの義兄ジャイルズを軽妙洒脱に演じるKENTAROも味わい深い。

「レベッカ」平野2

また、初役の面々では、ジュリアン大佐の今拓哉が、マキシムへの友情と、冷静な裁判官であろうとする職業倫理の狭間で揺れ動く心情を巧みに表現しているし、マキシムの姉ベアトリスの出雲綾の、宝塚時代から定評ある歌唱力と共に、温かみのある声質そのものがマキシムと「わたし」の絶対的な味方である役柄をよく生かしている。更にヴァン・ホッパー夫人の森公美子が、この女性の世話係はどれほど大変だろうかと、冒頭「わたし」に観客が肩入れするに十分な居丈高さを表わして尚、どこかで憎めないものを残すのが森ならでは。これによってヴァン・ホッパー夫人の警告が、単に「わたし」への嫉妬から出たものではなく、作品にとって重要な一言になることに、説得力を与えていた。

他に前述したように、アンサンブルの面々の働き場も極めて多く、館の召使いたち、イギリスの上流階級の人々、群衆へと早変わりしていく様も鮮やかで、コーラスの魅力も満載。シアタークリエ10周年の掉尾であり、新たな10年への出発でもある作品を輝かせる力になっていた。改めて、折に触れて上演を重ねて欲しい作品だと感じさせたミュージカル『レベッカ』が、日本版誕生の舞台に見事な凱旋を果たしたことを喜びたい。

「レベッカ」桜井全景

〈公演情報〉
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ミュージカル『レベッカ』
脚本/歌詞◇ミヒャエル・クンツェ
音楽/編曲◇シルヴェスター・リーヴァイ
原作◇ダフネ・デュ・モーリア
演出◇山田和也
出演◇山口祐一郎、大塚千弘/平野綾/桜井玲香(トリプルキャスト)、石川 禅、吉野圭吾、今拓哉、tekkan、KENTARO、出雲綾、森公美子、涼風真世/保坂知寿ダブルキャストほか
●1/5〜2/5◎日比谷・シアタークリエ
〈料金〉12,500円全席指定・税込
〈問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-77779時半〜17時半
公式ホームページ https://www.tohostage.com/rebecca/




 【取材・文/橘涼香 舞台写真提供/東宝演劇部】




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新トップコンビお披露目で華やぐ宝塚歌劇月組公演ミュージカル『ON THE TOWN』上演中!

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105周年を迎えますます意気上がる宝塚歌劇団が、月組を牽引するトップスター珠城りょうと、新トップ娘役美園さくらをはじめとした選抜メンバーで年始に送る、ブロードウェイ・ミュージカル『ON THE TOWN』が東京国際フォーラムホールCで上演中だ(20日まで)。

ブロードウェイ・ミュージカル『ON THE TOWN』は、レナード・バーンスタイン作曲、ジェローム・ロビンス振付により1944年に初演された作品。1949年にジーン・ケリー主演による映画化『踊る大紐育』が世界的な大ヒットとなったのをはじめ、2014年のブロードウェイ・リバイバル版上演時にも、トニー賞作品賞を含む4部門でノミネートされるなど、大好評を博した。日本でも同じ2014年大人気アイドルグループV6の20th Century、坂本昌行、長野博、井ノ原快彦の主演で初演され、宝塚OGの真飛聖、樹里咲穂が出演している。
そんな作品が、今回初めて宝塚歌劇団で上演されることとなり、潤色・演出を野口幸作が担当。麻咲梨乃、KAZUMI-BOY、桜木涼介、三井聡、永野亮比己という個性的な振付陣が揃い、往年の名作の宝塚版に挑んでいる。

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【STORY】
1944年ニューヨーク早朝6時。海軍水兵のゲイビー(珠城りょう)は、仲間のチップ(暁千星)、オジー(風間柚乃)と共に、24時間の上陸許可を得て初めての大都会、ニューヨークの波止場に降り立つ。早速チップが父親にもらったというガイドブックを頼りに、街へ繰り出す三人。この24時間で大都会を満喫し、まだ見ぬ恋人にも出会いたい!と心躍らせ地下鉄に乗った刹那、ゲイビーは車内に貼られた「今月のミス・サブウェイ」のポスターに写るアイヴィ・スミス(美園さくら)に一目惚れしてしまう。
「絶対にこの娘を探し出す!」と意気込むゲイビーに、はじめはとても無理だと反対していたチップもオジーも協力することになり、「アイヴィ・スミスはカーネギーホールで歌とバレエを、美術館で絵画を勉強中」というプロフィールを頼りに、三人はタイムズスクエアで午後8時半に再会する約束を交わし、手がかりを求めて街に散っていく。
だが、地下鉄会社の上層部に会ってアイヴィの情報を得ようと考えたチップは、タクシードライバーのヒルディ(白雪さち花)に惚れ込まれ、博物館を訪れたオジーは人類学者のクレア(蓮つかさ)に研究対象の「ピテカントロプス・エレクトス」にそっくり!と興味をそそられ、それぞれあっという間にカップル成立。一方、アイヴィを探して街を歩き続けたゲイビーは、ようやくカーネギーホールに到着。遂にスタジオで歌のレッスンをするアイヴィにめぐり会い、タイムズスクエアでデートの約束を取り付け仲間たちと合流するが、約束の時間になってもアイヴィは現れず……

ミュージカル『ON THE TOWN』は、そもそも三人の水兵が上陸許可を得た24時間の間に恋を見つけるものの、不確かな未来に向かって旅立っていかなければならない、人生の悲哀が根底にある作品だ。そこには彼らが再び船に乗り込み赴く先が戦地であるという現実を覆い隠すように、全体の筋立てをコメディーにして、有り得ない偶然や、馬鹿騒ぎをダイナミックなダンスで綴り、未来に希望を見出す仕掛けが施されている。しかもそこに、これぞアメリカのカラッとした感触があるのが特徴で、徹底的なニューヨーク賛歌、海軍賛歌のエンターテインメントに寄せた映画版ほどではないにしても、船へと戻っていく三人の水兵を見送る三人の女性たちとの別れは、「素敵な思い出が出来た!きっとまたいつか!」という、あくまでも前向きなものだ。三人に代わって新たにまた別の三人の水兵たちがニューヨークに降り立つ、新しい明日がまた始まる!という幕切れも、ペーソス以上にガッツがあるのが、さすがはブロードウェイ・ミュージカルだなと思わせる。
今回の宝塚版の上演でも、その色合いは保たれているばかりでなく、音楽監督・編曲と海軍の帽子をかぶって自ら指揮棒も振る甲斐正人が率いるオーケストラの生演奏の迫力と、アンサンブルの群舞で押してくるパワーが、宝塚の美点をよく現している。潤色・演出の野口幸作の目配りも効いていて、三人が繰り広げる大筋の脇に、三人が気づかないままおかしていくもめ事によって、警官を先頭に彼らを追いかけていく人々が増えていくくだりや、博物館での顛末、ゲイビーを元気づけようと店から店をはしごしていく最中に関わる人々など、どこかではちゃんと1人1人が際立つように、出演者全員を立てている気配りが宝塚ならではだ。

ただ一方で、物語全体が三人の水兵と三人の恋人たちという群像劇で作られている為、月組新トップコンビ珠城りょうと美園さくらのお披露目作品という観点で見ると、やや難しさもあったように思う。特にゲイビーとアイヴィが劇中なかなか巡り合えない設定だけに、他の二組のカップルの関係ばかりがぐいぐいと進展していく1幕の流れには、トップスターを頂点とする宝塚歌劇と作品の成り立ちに開きも感じた。だからと言って版権の関係で場面をカットするという訳にはいかない以上、演出のテンポ感をもう少しあげても良かったかも知れない。
それでもゲイビーが二組と合流する2幕になると全体もグッとしまってくるし、ゲイビーとアイヴィが手を取り合うことが、新トップコンビの出会いと重なるようにも感じられ、作品の終わりがより前向きに見えたのも現代的。ここからはじまる新しい月組にも期待が高まった。

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そんな群像劇でセンターを務める大任を託された珠城りょうの、おおらかで正統派の持ち味が、この旧き良き時代の作品に殊の他よく合っている。『雨に唄えば』でも感じたことだが、この人の芯に落ち着きのある男役像は、こうした古典作品を引き立たせる何よりの力になる。トップスターが幻想シーンとフィナーレナンバーを除いて水兵姿のまま、というだけでも宝塚歌劇としてはかなり特殊ケースだが、ゲイビーが喜びに溢れた姿、運命の恋人に会えない切なさ、恋を失ったと思い込んで落ち込む姿、等々を表情豊かに見せることで、その特殊さを払拭していて頼もしい。それだけに、フィナーレで登場した士官姿は待ってました!というばかりで、実に魅力的だった。

その珠城の相手役として新トップ娘役になった美園さくらは、台詞発声の声質が抜群に美しいだけでなく、今回かなり露出の多い衣装が続く中で、ポージングも常に美しい美点を披露。通常宝塚のオリジナル作品であれば、トップ娘役にはあまり回ってこないだろうシーンもあるアイヴィ役を、独特の個性でクリアしていて、珠城とのコンビで新たな魅力、新たな作品を紡いでいってくれる可能性を感じさせた。大劇場公演のお披露目に『宮本武蔵』が控えている振り幅も、トップ娘役として貴重な経験になるに違いない。

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また、トップスターである珠城に対して舞台上でほぼ同格の役柄を、組の次世代のメンバーが務めていることにも、月組の力強さを感じる。その1人暁千星は、24時間のニューヨーク観光を綿密に計画してガイドブックに首っ引きだったチップが、友情の為説を曲げ、更に思わぬ女性から惚れ込まれ…という予期せぬ出来事の連続の中で逞しくなっていく様を自然体で見せている。チップに夢中になるタクシードライバー・ヒルディを、上級生の白雪さち花がパワフルに演じ、その振り切りぶりで過度なセクシャルムードに倒れないことも良いコントラストになっていて、チップに残る少年性にあざとさがないのも暁の個性故。はじめ押されっぱなしだったチップが、終盤にはきちんとヒルディをかばっている姿にも、チップのドラマが感じられた。

もう1人オジーの風間柚乃は宝塚メモリアルの100期生が、珠城と暁を向こうに回して、なんら不足のない骨太な演技を披露していることに舌を巻く思いがする。珠城りょうというスターがそもそもどっしりとした落ち着きを誇っているのに、更に地に足がついて見える風間の堂々とした舞台ぶりはほとんど驚異的で、それでいながら決して地味に倒れない絶妙な上手さは、末頼もしいを通り越して空恐ろしいほど。そんなオジーの恋人になる人類学者クレアに、本来男役の蓮つかさが扮したが、同じく芝居巧者の蓮が悪びれないあっけらかんさをよく表現していて、このカップルを観ているだけでもなんとも心憎いやりとりが多くあり、抜擢の理由がよくわかる面白さだった。

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そうした女性役の大役が上級生や男役に回っていることもあって、娘役たちに役が少ないのは痛しかゆしではあるが、役柄のダイナミックさや色合いを考えると、今回に於いてはこのキャスティングが妥当だったと思う。中では大きな役柄のアイヴィの声楽教師マダム・ディリーの夏月都のエキセントリックさは相変わらず絶好調だし、ヒルディのルームメイト・ルーシーの叶羽時が、思い切りの良い「可愛くない女性」の造形で役者魂を感じさせれば、晴音アキも豊かな歌唱力とコメディセンスで魅了する。歌唱力と言えば男役陣の一角、輝月ゆうまもクレアの婚約者ピットキンで、壮大だからこそ切なくも可笑しいソロナンバーを聞かせるし、場末のショーのチープ感を巧みに表出する千海華蘭も随所で活躍。警官コンビとして持ち前の品の良さを発揮する紫門ゆりやと、惜しくもこの公演で退団となった輝生かなでのダンス力も輝くだけに、せめてこのクラスにはもう少し大きな役があればとどうしても思うが、その中で、それぞれの持ち場を真摯に務める姿に感動を覚えた。玲実くれあ、春海ゆう、颯希有翔、佳城葵らもポイントポイントで目引くし、若手期待株の天紫珠李、彩音星凪、結愛かれん、礼華はるも「ここにいます!」ときちんとアピールしてくる力を改めて感じた。

ここに現在宝塚バウホールで主演公演『Anna Karenina(アンナ・カレーニナ)』を上演中の美弥るりかを筆頭に、月城かなと、海乃美月などがいることを考えると、月組の層の厚さは大変なもので、この往年の名作ミュージカルを支えた新トップコンビを筆頭とした、月組の地力を改めて感じる公演となっている。

〈公演情報〉
宝塚歌劇宙組公演
ブロードウェイ・ミュージカル『ON THE TOWN』
作曲◇レナード・バーンスタイン
脚本・作詞◇ベティ・コムデン
脚本・作詞◇アドルフ・グリーン
原案◇ジェローム・ロビンス
潤色・演出◇野口幸作
出演◇珠城りょう、美園さくら ほか月組
●1/6〜20◎東京国際フォーラムホールC
〈料金〉S席 8,800円 A席 6,000円 B席 3,000円 (全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉宝塚歌劇インフォメーションセンター 0570-00-5100(10時〜18時)
〈公式ホームページ〉http://kageki.hankyu.co.jp/
   

 
【取材・文・撮影/橘涼香】






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